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仮定世界のログキーパー -仮定世界創造神録ー  作者: 田園風景
魔法末期時代 (神域残響52)
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4-9.追及

  満天の星空の下。焚火を挟んで男二人が向かい合っていた。

 ダーリオンとワタルである。


「さて……単刀直入に聞くぞ」

「はい、何でしょう?」

「お前の経歴を調べさせて貰った」


  焚火の爆ぜる音が、沈黙を縫う。

 可能な範囲で調べたが、ワタルはいつの間にかレジスタンスに参加していた。

 何時参加したのか、参加する前はどうしていたのか、いくら調べても判らない。

 国のスパイかと、レジスタンス内での動向も注視した。

 だが、レジスタンスに害する行動は一切ない。


「……それでも分からん」


  ダーリオンは、真っ直ぐにワタルを見据えた。


「お前は何者だ?」


  ワタルは一瞬だけ視線を逸らし、困ったように笑った。


「やだなぁ、リーダ―。俺はワタル。体制に不満を持つただのレジスタンス隊員ですよ」

「そうだな」


  ダーリオンは頷く。


「他に目的があるなら、もっと不審な点が出ていてもおかしくない」

「でしょ?」

「だが、俺が言いたいのはそこじゃない」


 エルデの話では、ワタルは何度も窮地を救っている。

 しかし――その目撃証言は、辻褄が合わない。

 ワタルが長期間アジトを離れた記録はないのだ。


 ワタルが行っているのは、どれもレジスタンスの利になる事ばかり。しかしそこに、理屈に合わない目撃証言。


 暫く沈黙が続く。

 しかし、ワタルがふう、と一息ついた。


「確かに。俺はリーダーに隠していることがあります」

「それはなんだ?」

「それは言えません。ただ、俺はレジスタンスの敵でも別勢力でもなく、味方です。その事に嘘偽りはありません」


 ダーリオンは、その目をじっと見つめた。

 欺瞞、悪意、計算――

 そこにあるのは、どれでもなかった。


「……良いだろう。確かに、お前はこれまでよくやってくれているしな」


  全ては分からない。

 だが、釘は刺した。

 それで十分だと、ダーリオンは判断した。

 それに隠していることを明らかにし、その背景に邪な感じはしない。

 放置しても問題無いだろう。


「ええ。これからも宜しくお願いします」

「ああ。頼むぞ」


  焚火は二人の間で静かに燃え続けていた。



  翌日。

 旅を再開して程なく、一行は洞窟の前に辿り着いていた。

 洞窟の周囲を徘徊するのはジャイアント・マンティスやレッサー・サラマンダーといった一段と手強い魔物。

 その事実が、ここに目的の魔道具があるという期待を一行に抱かせた。


「ここにあるんだな?」

「ええ。話に聞いた“対魔法の盾”がここにあるはずです」

「二人でなければ倒せないような魔物を引き寄せているのです。きっとここに強力な魔道具があるのでしょうね」


  陣形を組む。

 先頭はダーリオンとエルデ。

 その後ろにルミリア。左右と後方をワタルとレジスタンスが固める。


 洞窟に人の手が入っている様子はない。ダーリオンが中を覗いてみるが、中はかなり広いようだ。

 試しに松明を放り入れるが、変な様子もない。


「中は広く、かなり暗い。明かりを絶やさないように注意しろ」


  皆が頷き、松明と魔法の光が準備される。

 日光にも負けない光が、辺りを照らしている。

 洞窟の中まで照らすが、見えている範囲には何も見えなかった。


「中に魔物は居ないのでしょうか?」


  ルミリアが不思議そうにつぶやいた。

 それに答えたのはエルデが壁を指さした。


「いえ、居ます。ほら、この壁を見てください」


  エルデが示した所には苔が生えていたが、傷跡のように剥がれた跡があった。


「これは魔物が通った時、爪か何かが当たって削れて出来たのです。この跡は新しい。きっと最近魔物が通ったんです。他にもありますが、それはまた今度にして……という訳で、進むにあたって備えてください」

「なるほど……勉強になります」


  それぞれ片手に剣、片手に松明を持つ。

 魔法の明かりを灯しているのは、エルデとルミリアの二人。


「よし、行くぞ!」


  影の向こうに魔物の目が見えないか……一行は慎重に歩を進めた。


 程なく……魔物が襲い掛かってきた。

 予想していた襲撃とはいえ、視界の制限された戦いというのは神経が削られた。

 雑魚のはずのゴブリンが影から忍び寄り、ジャイアントバットが一行を取り囲む。

 ワーラットが岩陰から強襲を仕掛け、よろけて踏み留まったところがスライムの塊になっており、危うく足を溶かされそうになった。


 ただの冒険者であれば、重傷を負って撤退していたに違いない。

 しかし彼らはただの冒険者ではなかった。


「どうしたどうした? もっと掛かって来い!」


  ダーリオンはジェルドから剣の手解きを受けており、元々鋭かった剣の腕が更に磨きが掛かっていた。

 隙の無い剣技に、彼に襲い掛かった魔物は近づくことも出来ずに屍を晒していた。


「やりますね。これは僕もうかうかしていられないな」


  エルデも剣技を繰り出すが、それに加えて無詠唱の火の矢を放ち、遠近共に隙が無い。

 それらに押されて魔物は下がるが、そこへ襲い掛かったのがルミリアの魔法。


「《リコシェ・ブリッド》」


  魔法球が縦横無尽に跳躍し、魔物を弾き飛ばした。


 これ以上、魔物が湧いてこない事を確認し、一行は更に奥へと進んだ。


 少しだけ広い場所に出る。


「ここは……魔物の巣か?」


  そこに、一行の行く手を塞ぐ巨大な影が現れた。


「こいつ……小型だが、双頭の巨人エティンか」


  オーガーと比べても頭一つ抜けた巨大な身体。

 太い腕に粗雑な棍棒を持っている。

 古代、魔物と神が交わった結果の一つと言われている。


「盾を探すためにも、コイツを無視する訳にも行かないな!」


 ダーリオンとエルデは剣を持ち直して、エティンに立ち向かった。

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