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33. レインの純情

少し短めです。

エレン視線でお送りします。

 初めて見た光景だった。


 堅物で愛想などこれっぽっちも無いと言われていた男が、ポットを持って目を真ん丸にしている女生徒の前で膝をついていた。


「……えっ--と、何をしているんだ?」


 ドアを開けて部屋の中に踏み込んだ瞬間に、そこにいた者達の視線が一斉に自分の方に向いたのが判った。見慣れぬその場の光景と、明らかに残念なモノを見るように変わった視線が痛い。


「レイン? カテシーナ嬢に何しているんだ?」


 僕はレインの後ろに近づいて声を掛けた。掛けたのだけど……


「エレン様! ちょっとこちらにいらっしゃって!」


 物凄い俊敏な動きで、ヴィヴィが僕の腕を引っ張った。引っ張ったまま、皆が座っている大テーブルまで連れて来られた。


「ちょっと、な、なんなの? ヴィヴィ? おい、ハインツ? 何が起きているんだ?」


「しっ! エレン様、少し黙っていらして」


 ヴィヴィの華奢な手が、疑問を投げつけた僕の口を塞いできた。何なんだ、この姿勢? 体勢? ヴィヴィが身体を密着させる様に僕に引っ付いて、僕を見上げている。


 良く判らないが、僕にとっては思い掛けずヴィヴィを抱き締める様な体勢になった。


『あのですね、今、レイン様がカテシーナ様にパートナーのお申し込みをされたのですわ』


 ヴィヴィは僕の口を押えたまま、小さな声で教えてくれた。うん。こんなに近くで囁かれるように声を聞いた事は無かったな。


『この現状、お判りになって?』


 諭すような声で、ヴィヴィは僕に尋ねてきた。

 そうか、さっきのレインはカテシーナ嬢に申し込む為に膝まづいていたのか。判った。よーく判った。

 僕はヴィヴィの手に自分の手を添えると、小さく頷いて返事をした。ということは、僕は最悪のタイミングでこの場に登場してしまったのか? レインには申し訳ない事をしてしまった。多分、彼にとっては初めての申し込みじゃないか?

 というか、ヴィヴィはまだ僕の口を押えたままだ。ただ、目線は僕の顔から振り返る様にしてレインとカテシーナ嬢の方を向いている。この体勢に何も感じていないのか、興味の対象は僕よりあちらの二人の方にあるのか……今の段階では、残念ながら後者なんだろうね。






「それで…‥カテシーナ嬢、返事は貰えるだろうか?」


 十分な間を置いたせいで、タイミングを逃した(逃させてしまった?)レインが口を開いた。いつもの口調よりも何となく不安そうにかさついた声だった。


「……」


 さっきからずっとポットを持ったまま、カテシーナ嬢が固まっている。


「カテシーナ嬢?」


 もう一度レインが声を掛けた。


「……ま、ま、さか本気ですか? 私を誘うとか、冗談ではありませんか? ああ!! パートナーがいない者同志、ここは一つ手を組んでと---」


「違う!!」


 ワタワタとしながら答えていたカテシーナ嬢の言葉を遮って、レインが彼女の目の前で立ち上がった。スラリとしたカテシーナ嬢よりも頭一以上大きいレインが、耳を真っ赤にしているのが判った。


「私は、カテシーナ嬢! 貴女にパートナーになって欲しいと思っている。決して冗談や酔狂で言っているのではない! 今のままの貴女が良いのだ」


 目の前で繰り広げられている求愛劇。他人のこんな姿を初めて見た。それもレインだ。何と言っても堅物の女っ気の無いこの男が、初めて女性の前で真っ赤になっている。


「ほ、本当ですか? 今のままの私で良いのですか? 本当に?」


「ああ。今、目の前にいる貴女がいい。私のパートナーになってくれるか?」


「わ、ワタクシでヨロシケレバ?」


 こちらも真っ赤になっているカテシーナ嬢が、疑問形で受け入れた。ちょっと挙動不審な感じだけど、彼女もこういう場面には慣れていなそうだし、目の前のレインに気圧されているのかな?






「ああ、で、でも私のヴィヴィエット様()()は、変えられませんけど?」






 カテシーナ嬢は平常運転だった。しかし……()()? ()()()()()()











 


お久し振りです。1ヶ月以上間が空いてしまいました。

これからまた少しずつ更新していきますね。


ブックマーク、誤字脱字報告、いつもありがとうございます。

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