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冗談で作ったVキャラで異世界転移したけど、命のやり取りとかあり得ないのでギルドの受付嬢をやってます  作者: 水無月/成瀬


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第22話 人生最後の見せ場

「アアァァァァ! 腕が!」


 ナイルズが痛みにのたうち回る。


「遅いんだから……後は任せますわ……」


 カレンはそのまま気を失って、アルクは黙って空を見上げた。


 そこにカレンたちと同じ、漆黒のコートに仮面をつけた者が立っていた。


「ハッ、今さら仮装か? 悪いが匂いで誰だかわかってるんだぜ、ちんちくりんの金髪チビ」


「うるさい男ね。これは仕事着なの。私の趣味じゃないし、誰がちんちくりんのチビだって?」


 冷たい声を発しながら、エーリスは邪魔だと仮面を放り捨て、フードを外す。


 解き放たれた銀髪が風になびき、紫瞳がアルクの視線とぶつかった。


「その姿は……なるほど、変身のスキル持ちか」


 エーリスの変化に、一瞬だけアルクは驚くがすぐになにかを納得したようだった。


「まさか姿が変わった程度で、俺に勝てるとおも――」


 最後まで言い切る前に、エーリスが動いた。


 一瞬でアルクの前に移動すると、いつの間にか持っていた剣でその首を斬った。


 確かな手応えがあったが、エーリスは舌打ちして後ろに飛んだ。


 遅れてエーリスがいた空間を、アルクの蹴りが豪速で通過した。


「ふーん、ホントに不死身なのね。気持ち悪い」


 特に感慨もなくエーリスが呟けば、


「負け惜しみはやめろよ。どれだけ意表をついても勝てないのがわかっただろ。諦めてさっさと死ねよ、亜人」


「亜人、亜人、亜人、亜人ってオウムなの? それともそれしか言葉を知らないアホゥなの? まぁ、どっちでも良いわ、少しだけ遊んであげる。壊れない相手は久しぶりだものね」


 エーリスは剣を肩に担いで薄っすらと笑う。


「ほら、早く全力を出しなさい。ここが貴方にとって、人生最後の見せ場よ」


「馬鹿にしやがって! ずいぶんとデカく――」


 エーリスが剣を振るう。


 距離を無視して、一瞬でアルクの四肢を両断した。


「一回」


 瞬時に回復するアルクだったが、エーリスがまた剣を振るう。


「二回」


「貴様……」


「三回、ほらどうしたの? 月の下では不死身なんでしょ? なら朝までそうして木偶のまま死ぬ気?」


 退屈ね、とエーリスはわざとらしくあくびをして見せる。


「ち、調子にのるなよ! 亜人が!」


 アルクが叫ぶと、ギン! っと鋼がぶつかる音が響き、彼の四肢は今度は斬る事が出来なかった。


「フフ、ほら、やっぱり人間じゃないじゃない」


 愉快そうに目を細め、エーリスは一旦手を止めた。


 なぜならアルクの姿が見る見る変わっていくからだ。


 身に付けてきた白銀の鎧が膨張した筋肉によって弾き飛び、代わりに黒く長い体毛が全身を包んでいく。口が長く前に伸び、ギラリと光る牙が並ぶ。最後に、獣の耳が頭に生えた。


「殺してやる。この姿を見た奴は全員、殺す!」


 アルクの姿がブレる。


 超高速移動の残像を残してエーリスに迫ったが、それよりも早く、エーリスは空高くに移動していた。


「フフ、なるほどなるほど。人狼ね。吸血鬼にとっては天敵とされるモンスターだけど、残念ね。私の敵にはならないもの」


 アルクが飛ぶ、が、やっぱりその時にはエーリスの姿は遥か遠い所に移動していた。


「ちょこまかと! 御大層な事を吐くクセに逃げるだけか!」


 吠えるアルク。


「これがホントの負け犬の遠吠えって奴ね。逃げる私を責めるより、追いつけない自分を責めなさい」


 エーリスが剣を二回振るう。


「無駄だ――なに?!」


 切断は出来なかったが、アルクの胸に十字の傷と鮮血を飛ばす。


「ほら、どうしたの? 人間なんだから、魔法を使えば? さっきみたいに速さを強化してみなさいよ。あぁ、貴方亜人だったわね、ごめんなさい」


「クソが! 死ねよ!」


 傷を瞬時に治し、アルクが腕を振るう。


 生まれた烈風がエーリスを襲うが、彼女はつまらなそうに足を止めた。


「馬鹿の一つ覚えね」


 ただ剣を振るう。それだけで烈風は斬られて消えてしまう。


「馬鹿は貴様だ!」


 そこにアルクが突っ込んでくる。


「フフ、えーとなんだったかしら? あぁ、『アクセル』だっけ?」


 そんな事を言って、エーリスはアルクの横を高速で通り過ぎて後ろを取る。


「この世界の魔法は呪文を唱えるだけだものね。まぁ事前準備の契約や適性が必要だけど、代替出来る能力があるなら、偽装は出来るものね」


 フフッと笑うエーリス。


「……グゥゥゥ!」


 アルクが犬のように唸り、殺気を乗せた視線でエーリスを睨む。


「どうしたの? もしかして、もう終わりかしら?」


エーリスの言葉を無視して、アルクは蹲るナイルズと倒れているカレンの所に戻った。


 無造作にナイルズを掴むと、口を大きく開けてその腹に噛み付いた。


「ガハッ! あ、アルク? なんで……」


 そんな声を漏らすナイルズだったが、アルクは気にせず腸《はらわた》を貪り食った。


「悪いなナイルズ。この姿を見た奴は全員殺すって決めているんだ。だから、アイツも殺した。亜人の為だとか言うから、俺のこの姿を見せてやったのに、アイツは俺を受け入れなかったからな」


 すっかり細くなったナイルズを放り捨て、次にカレンを拾う。


 ニヤリとアルクがナイルズの血で汚れた口を歪ませる。


「良いことを教えてやる、チビ。俺は生き物の、それも人の腸を食えば食うほど強くなるんだよ。これで、今度こそお前は殺してやる」


「へー、なるほど。貴方のスキルってそういう能力なのね。面白いわね。でも、ソイツを口にするつもりなら、お遊びは終わりにするわよ」


 エーリスの瞳が細く、冷たくアルクを見る。


「…………ほざけよ、チビが! 月があれば不死身の俺は殺せる奴はいないんだよ!」


 口を大きく開けてカレンに噛み付こうとするアルクに、エーリスは舌打ち一つしてその背後に移動すると、手を伸ばしアルクの心臓を掴んだ。


 そして躊躇なく、握り潰す。


「……ゴフッ」


 アルクが口から血を吐き、カレンを落とし膝をつく。


「な、なんで回復しない……」


 背後にいるエーリスを睨み、アルクが疑問を口にする。


「さぁ? 秘密」


 それだけ言ってエーリスは腕をアルクの体から引き抜いた。


 鮮血に染まる手を一舐めして、


「不味い血ね」


 それがアルクが聞いた最後の言葉だった。


 月光の下で、アルクは二度と覚めない眠りについた。


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