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第3話 拒絶

「まずいわ!この時刻!」


 私はジャマイカの陸上選手ヨハン・ブレーク張りの加速を見せる。


「コーナーで減速するな」


 乱れる呼吸。


「何とか間に合って・・・」


 鐘。


「ないけど・・・」


 前に進む。


 下駄箱。


 履き替える。


 階段を上がる。


 教室の前。


「この授業中の空間にはどうしても抵抗がある。だって、絶対私に視線が集まるじゃない!


「ええ、本能寺の変に信長は・・・」


だから、私は・・・ここで、待つ!


「その時、明智光秀は・・・」


教室の前にまるで武士のごとく堂々と鎮座する。


「徳川は・・・」


二時間目まで私は武士になるのだ!


「本能寺で起こった話―」


「ヒマだ~」


 こういうときこそ背に乗せたギターで・・・・・・・


「あら?」


ええ、なので私は手を前方に構えた。指を弦があるであろう位置にかける。


そして、弾く。


「これが、俗にいう“エアギター”というやつだ」


この“エアギター”の利点は騒音の心配nothingなところね!


 足音。


「も・・・錦さん?」


 ギクっ!まさか、違う先生が見回りを・・・


 音の方を向く。


「スミマセン!今、ギターを弾いている最中で・・・あ!そうじゃなくて、教科書が・・・」


 口に手を添える。


「ギター、まだ弾いていたんだね・・・」


 この男の子は。


「えっと・・・」


誰だっけ?


「同じ小学校で」


ああ、そういえばいたな~


桜大将おう だいすけくんだよね?」


 確か小学校時代―


「お前の苗字“おう”って変だよなー」


「別に変ではないだろ」


「おう!ダイスケ!」


「おい!」


「これなら、呼びやすい!」


「まあ、いいけど」


「お~う、ダイスケー」


「やめろー」


 とかいじられてたなー


「うん!覚えていてくれたんだね。とっても、うれしい」


 彼は屈託のない笑顔を私に浴びせた。


「まあ、ね」


私には少し眩しすぎる。


「それで、その・・・」


「うん」


「どうして、この時間に?」


「それは、大将くんもだよ」


 目。


「オレは授業中に体調崩しちゃって」


 うわ!大将くんはちゃんと理由があるのね!


「それで、保健室に行っていて・・・」


それに比べて私は寝坊が理由で遅刻なんて・・・


「それで、錦さんはどうして・・・」


 どうしよう・・・体のいい言い訳が思いつかない。


 夢。


「そうだわ!」


「も、錦さん?」


「私ね」


 頷く。


「魔物と戦っていたの!」


「魔物?」


「その魔物は人なら誰しも戦ったことがある悪ーいやつなんだけど」


「それは、オレも?」


「うん。大将くんも過去に戦っているはずよ」


「そっか・・・」


 目を逸らす。


「今まで、錦さんはそんな魔物と戦っていたんだね。それなら仕方ないね」


「ごめんね。人の苦闘も知らずに。安易だった・・・」


「うんうん、全然!」


 そう私は戦っていたんだ。


「じゃあ、ギターもそれが原因で・・・」


「え?」


「じゃあ、オレとなりのクラスだから・・・」


「う、うん」


「じゃあ、またね」


「またー」


 そして、私たちはそれぞれ別々のクラスへ。


 鐘。


 席に着く。


「野花はこの後、どうする?」


「私は・・・あ!」


「どうかした?」


「いや、百合のお父さんって・・・」


 みる。


「おい!囲め!囲め!」


 ホント、嫌だ。


「スパーリングすっから、リング作れ!」


どうして、この・・・


「えいやあー!」


 男という生き物は。


「がはははは」


自覚しない。


「おい、みてるぞ」


自分たちがどれだけ愚かな生き物なのか・・・


 視線。


「ねえ、野花」


「何?」


「アイツ絶対!野花のこと好きだよね」


 体を向ける。


「おい、よかったじゃーん。佐藤さんお前のことみてるぞ」


「馬鹿!そんなんじゃねえし」


好意のある者からの好意ほど・・・


「お前、サンドバックな」


 つまらないものはない。


「野花に興味を持たれようと声大きくしちゃってさあ」


視線を逸らす。


「ホント、男って単細胞生物だよ~」


窓の外に広がる景色が少し変わる。


「男ってどいつもこいつもあんな奴らばかり」


天気が悪い。


「なのに、なんで・・・」


今にでも雨が降りそうだ。


「どうしてあんな男を好きになってしまったのだろう・・・」


そういうと彼女は窓の外を見た。


「天気、悪いね」


ぽつりと雨粒の音がする。


「そうね」


その音を私は聞き逃さない。


「あなたのことを好きなあの男のことを私は・・・」


 いいかも。


「の・・・野花にその・・・頼みがあるんだけど・・・」


「何でも言って」


 手を広げる。


「アイツに・・・」


 頷く。


「拒・・・ぜ・・・」


「うんうん」


 手を握る。


「・・・話してやってほしいのだけど」


 息を吐く。


「アイツは野花のことが好きだから・・・その・・・野花なら・・・」


「ホント、アナタってつまらない人」


「え?」


「もういいよ」


 目を逸らす。


「ま、待って!」


 わ、私は!・・・好きな人のためを想って・・・ただ、それだけなのに・・・この時、私は大切な友人と想い人を失った。


「どうして・・・」


 拒絶・・・ね。


 よかったのに。


「やっぱり、あの曲を送らないと」


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