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第16話 空っぽの才能

彼女は怪訝そうに私を見つめた。ギターには目もくれず・・・


 しなやかな音。


「今までは」


音が乱れる。


「ジャララン!」


 そう、これはあの時と同じこと。


「だから、私は負けん!」


「ジャン!」


 だけど、いつだって。


「野花様―」


 勝敗は第三者によって決められる。


「負け」


「ジャン」


「野花様―」


「ジャン!ジャン。ジ。ジリジリ」


「野花様―」


 笑う。


「なんて、滑稽な」 


弦から指を離す。


「あの時と一緒」


「どう!私!ギター弾けるんだ!」


「え、すごーい」


「ふふん」


 間。


「それじゃあ、私の本気・・・」


 ノイズ混じりの汚い音。 


振り返る。


「あはは。私、リコーダー下手っぴなんだよね」


 全視線が彼女に集まる。


「野花ちゃんがリコーダー下手なんて」


「なんか、意外―」


「でも、気を遣ってるだけなんじゃないの」


「そうかも」


 笑いが多い。


 離す。


「そうだ。あなたは何もかも奪っていくんだ。私が欲しかった視線も全て」


 あのときから、何も。変わっていない。全部無駄。


「なによ、あの子」


「ねえ」


 間。


「はあはあ」


 息が苦しい。


「どうしてよ」


音が鬱陶しい。


「こんなの」


「いらない」


 鈍い音。


次の日。


「大将君、ありがとう」


 呼吸。


「私、分かったんだ。私はギターが好きじゃないって」


「もも・・・さ」


「さようなら」


 どうして、こんなことに。


「大将、お前は“あの音”を追いかけるべきじゃない」


「なんでだよ!父さん!」


「“あの音”はなあ」


 彼女の姿がどんどん離れていく。


「何かに縋った者にしか」


 俺には弾けない。


「お前には弾けない。ギターを純粋に好いているお前には」


 もう、意味がない。


最上百合。


「私が野花を特別であってほしいと願うのはね。野花が父と似ていると思ったから。父のことなんて知りもしないくせにね。

けれど、思うの。彼女は特別けれど、違う。だから、せめて・・・言葉では伝えられなかった想いを伝えたいと」


「だから、私にギターを教えて」


 もう、無意味。


「ごめん。その話はなかったことにして」


「え」


 終わった。


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