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第10話 白百合

「わたくし、最上百合と申しますが」


 突然、オレの目の前に現れた気品あふれる少女。


 揺れる長い髪。


「あの方と仲がよろしくて?」


「え?」


 目。


「ああ、雄二のことか」


 頷く。


「いいよ、多分」


 瞬き。


「そうですか・・・」


 間。


「オレのこと知ってる?」


「はい?」


「オレたち、一応小学校から同じなんだけど」


「もちろん、あなたのことは知っていますよ」


「よかった」


「ええ、確か名前は・・・」


「だ・・・」


「だ・・・」


「うんうん」


 首を傾げる。


「いー」


「ああ」


「そうそう!」


「思い出しましたわ!あなたの名前は」


「ダイくん!」


「ダイスケ!」


「大将と書いてダイスケ!」


「え?ダイスケ?」


 少女は目を丸くする。


「まあ、読みづらいもんねー」


「いえ・・・」


「そう?」


 瞬き。


「それで、何の用なのかな?」


 彼女とオレは小学校からの同期だ。が、これまでそんなに話すこともなく過ごしてきた。


「いいえ」


それに、彼女はどこか小難しい性格であまり他人と仲良くしている様子はなかった。


「最上さんって、確か佐藤さんと・・・」


「それはもう、終わりましたの」


 無表情。


「ですので、そのお話は・・・」


まるで、人形のようだ。


「そうなんだ・・・それで、オレに何の用?」


「単刀直入に言います」


「うん」


 間。


「ギターとは人生を捧げるだけの価値がありますか?」


 ギターがなんだって?


「えっと・・・」


「私の父は元々、ギターを弾いておりました」


 あの噂は本当だったのか・・・


「父は毎日毎日、飽きることもなくギターを弾き続けていたそうです」


 何、それすごい。


「ですが、その結果父はギターに呑まれ、母と私を捨てました」


 眉をひそめる。


「ギターとはそのような価値があるというのですか?」


「そのような?」


 前に出る。


「ギターとは特別な人間を捨てられるほど崇高なものなのか?」


 思い出す。


「特別な人間をも変えてしまうものなのか?」


 特別・・・それは人によって異なる概念だ。


「特別な人間を変えるか否か・・・オレには分からない」


 唾を飲み込む。


「だけど、うーん。少なくとも普通の人間の人生なら変えられる力があるとオレは思う。崇高か否かに関しては・・・」


 目をみる。


「まあ、人それぞれだろうけど」


 指をつまむ。


「有無を確かめるためには実際に弾いてみるしかないのですか?」


 考える素振り。


「それは・・・」


 答えは確かに持っていた。


「そうかもしれない」


 言葉を濁した。


「あなたにとってギターとは・・・」


「どういう存在なんですの?」


 オレにとってのギター?


「私の質問に答えていただき誠に感謝申し上げます」


 その問いに対し、オレは答えを出すことができなかった。


「絆創膏、貼っていないのですね?」


 指に視線を向ける。


「え?」


「いえ、なんでもありません」


 オレは・・・


「では、これで」


 ギターを弾いたことがない。


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