表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今世では恋を諦めた伯爵令嬢ですが、前世の夫が今世で執着してきます  作者: 陽ノ下 咲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/30

第二十二話 晩餐会の夜に②

 そうして、フィオナとセシリアは連れ立って会場へと向かった。

 懇親会の会場は、すでに多くの人で賑わっていた。

 華やかなドレスに身を包んだ貴族たち。

 色とりどりの装いの中で、自分の姿が、ひどく目立っているのが分かる。


(……視線が痛い……)


 ひそひそと交わされる声。


「あれ、セシリア様よね……?」

「いつもの騎士服じゃないわ……」


 いつもの自分を知る者ほど、驚いている。

 騎士服の時に周りから向けられる視線とはまるで違った、好奇や興味の視線に戸惑う。

 それらが、じわじわと居心地の悪さを生んでいく。


(……落ち着かないわ)


 思わず目線を伏せかけた、その時。


「大丈夫よ、セシリア」


 フィオナが、そっと微笑んだ。


「とても似合ってるわ」


 優しい声音に、はっとした。

 そして、背筋を伸ばし顔を上げる。


(しっかりしなければ)


 そう思った、その時だった。


「やあ、フィオナ、セシリア」


 聞き慣れた、穏やかな声がしてそちらを振り返ると、そこにはレオナルド殿下と、その隣に立つエドガーの姿があった。

 その姿を認めた瞬間、セシリアはドレスの裾を摘み、深く腰を折って最上の礼を取った。

 レオナルドはそんなセシリアの姿を見て、軽く目を細める。


「前にも思ったが、セシリアはドレスだと雰囲気が随分と変わるな」


 楽しげな声音でそう言った。


「……なるほど、これは確かに……」


 意味深に笑い、そして、ちらりと隣を見る。


「お前がここまで分かりやすくするとは……。本当に面白いな」

「……何のことでしょうか」


 エドガーが淡々と返すと、それに対し、レオナルドは楽しそうに笑った。


「とぼけるなよ、エドガー。まさかお前が、ドレスの色でまで、周りを牽制するとはな」

「それが何か?セシリアに変な虫を付ける訳にはいきませんから」


 さも当然といった風に返すエドガーに、レオナルドは面白そうな顔をして、肩をすくめた。 


「いや……しかし本当に珍しいものを見せてもらっている」


 ちらりとセシリアを見る。


「普段はあれだけ隙のない男がな。ここまで露骨だと、いっそ清々しい」

「殿下」


 エドガーがわずかに、怒ったような低い声でレオナルドを静止した。

 けれどレオナルドは気にした様子もなく続ける。


「いいじゃないか。これでも応援してやってるんだ」


 にやり、と悪戯っぽく笑った。


「……なあ、セシリア。こいつ、なかなか面白いだろう?」

「……はあ」

 

 そう言われてもセシリアは返答に困ってしまい、曖昧に相槌を打って誤魔化した。

 そして、ちらりとその隣へ視線を移す。

 次の瞬間、熱を帯びた深い紫の瞳とまっすぐにかち合い、胸が、どくりと大きく鳴った。

 その時、エドガーがふわりと微笑み、ゆっくりとセシリアとの距離を詰めた。


「……綺麗だ」


 低く、落ち着いた声で囁かれる。

 熱を帯びた瞳で、うっとりとしたように見つめられ、セシリアの頬が一気に熱を持った。


(……なに、これ)


 そしてその時セシリアは、ふと、自分がこの状況を、全く嫌だと感じていない事に、気づいてしまった。


(どうして……)


 戸惑いながらも、胸の奥が静かに揺れる。

 そんな彼女に向かって、エドガーは、そっと手を差し出した。


「セシリア、私と踊っていただけませんか」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ