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望まぬ君を望む世界  作者: 波積 形り
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第二十三話:希望の剣、スぺイ・a

宿に帰ったヒエラル達を待っていたのは誰も居ない部屋だった。

これはヒエラル達がレニタティスと交戦していた丁度その時に始まる。

メーディスの町に明かりが灯るとき、ユウは奇妙な人物に遭遇する。 

 メーディスの町は職人の町。その為か他の町よりも早く新しい技術が運用されている。近代的な街灯もその一つだ。

 その為この町の夜は街灯と工場の明かりによって比較的明るい。特に、年の瀬の祭りの時期は特にだ。

 ユウは今、居なくなった護衛、ネスを探しに夕方の町に出ていた。

 しかし、ユウは困ったことに成っていたのだ。

 探しに来たネスどころか、同じくネスを探しているはずのフォルトゥナさえも見つけられずに居たのだ。

 それどころか歩き回っていたらユウは宿への帰り道すらわからなくなってしまっていた。

 この時にはユウは認めなければいけないと思い始めてしまった。

 いや、認めざるを得ないというのが正直なところだ。

 自分が()()()()なのではないかと。

 道に迷うのは何も今回が初めてではない。もっとしっかりしなければ。と、そう思った。

 一先ずは誰かに道を聞くか?

 いや、それは止そう。

 ユウはヒエラルがこの町に着いた時念のため敵に居場所がバレないようにと言っていたことを思い出した。

 

「ちょっとそこのお兄さん、何かお探しかい?悩み事かい?」


 占い師、だろうか。白装束にフードを深くかぶって、路地の片隅で机と一脚の椅子、そして机の上には大きな水晶玉が置かれている。

 ユウは初め自分に話しかけているのではないと思っていた。しかしどうやらユウに話しかけているらしい。

 

「……すいません」


 ユウは目を逸らしてその場を後にすることにした。

 聞いたことがある。観光客に少しでも何かを尋ねさせ、それを教えたから金を払えと言うのだ。そんなのに付き合う必要はない。


「ちょっと、待ってくださいよ。私は何も怪しくない普通の占い師ですよ」


 占い師はユウを引き留めようと立ち上がって手を伸ばした。

 その時点でもうあからさますぎた。そもそも聞いても居ないのに自分が怪しくないという人間が怪しくないわけがないのだ。

 ユウは急ぎ足でその場を後にした。




 しばらく、歩いただろうか。

 人通り多い場所に行こうと進んでいると、海沿いの広場に出てきた。

 ユウは広場の隅の欄干に手を掛けて海を見た。

 欄干の真下はすぐ海だったが、もう日が暮れて良くは見えなかった。

 もう空は暗く、海のほんの少し先には近くの島の明かりが見えたが、近くの海もその広場も薄暗く、一つの街灯の明かりだけが、人々を照らしている。

 この薄暗さが、ユウに町の中心からかなり離れてしまったことを感じさせた。

 

「行く方向間違えたかな」


 欄干にもたれかかって、海と反対にメーディスの町を見る。

 町にはそこそこに高い建物もある。あそこからならば町全体を見渡せるだろう。いや、そうでなくても見晴らしのいい場所にまずは向かった方が良かった。

 そうユウが後悔していると。


「ちょっと、そこのお兄さん。何かお探しかい?今なら初回は()()()占ってあげるよ」


 また、さっきと同じ人だった。

 歩き疲れていたせいか気が付かなかったが、ユウが今居る広場にさっき路地で会った占い師が待っていたのだ。

  

「……一体何なんですか――仕方ないですね、本当に無料なんですよね?」


 ユウが振り切った後場所を変えたのだろう。だがまさか変えた場所に偶然通りがかるとは、ユウはこのことに何か縁を感じた。


「もちろん、もちろん。この私に嘘は無いよなんたって、世界一よく当たる占い師だからね――さて、それでは何を占おう。何でもいいよ」


 占い師は水晶玉の周りで手を揺らしながら尋ねる。

 しかしいざ占うと言われると何を言えばいいかぱっと思い浮かばなかった。

 

「……まあ、何んでもいいなら。とりあえず俺の泊る宿までの道を教えて欲しいな」


「なるほどなるほど。ではそれを占おう」


 戯れのようなつもりだった。しかし占い師はそれを本気にしてしまったようだ。水晶玉を見つめながら何かぶつぶつと呪文のような言葉を呟いた。


「……おー、んーー。お、見えてきました。見えてきましたよ――」


「え!……いや、まさか」 


 ユウは宿の詳しい住所を言うべきではないとヒエラルから言われていたが、とりあえず宿の近くの場所までの道を普通に聞けばよかったと後悔した。

 こんな占いで、名前さえも話していないというのに泊まる宿がわかるはずはないのだ。


「見えた。あなたの行き先が――暗い、暗い場所が見えます……」


「はぁ、そう」


 もう、この時点で、ユウはこの怪しい占い師に付き合うんじゃなかったと後悔した。

 そもそもユウは占いなんて言うものを信じていないのだ。どうせ誰にでも当てはまりそうなことを言うだけのものだろうと。


「お、もっと見えてきましたよ――暗く、そして深い、冷たい場所――そう、それは例えば()()()()()。とか」


「え?……」


 今、占い師が何かおかしなことを言ったことはユウにもわかった。

 だが、その瞬間。聞き間違いでは無いかとユウが一歩占い師に近づいた瞬間。突然風を切る音と共に衝撃がユウの背後から襲う。

 そうそれはどこか遠くから銃で狙撃されたような。


「あら、まさか。踏み込みが浅かったかしら?」


 間一髪。狙撃はユウのわきの下をかすめ抜けて行った。

 しかしその一発の銃声によって、静かだった広場は突然逃げ惑う人々で大騒ぎになった。

 だが、逃げ惑う人々は気が付かない。広場でただ二人、まるで時間がそこだけ流れていないかのように振舞うものが居た。

 

「……な、今のは一体?」


 ユウもその場から離れようかとも思った。

 しかし、突然の事で驚いて、離れるタイミングを失ってしまった。


「その質問の答えを占うのは追加料金が発生します――……なんてね。私の名はスぺイ。そして今狙撃したのは私の妹――早い話、あなた達がこの町に取りに来たものが欲しいの、場所だけでも教えてくれない?」


 スぺイ。そう名乗った女が右手で水晶玉を撫でながら、ユウに尋ねる。

 突然の事でユウにはとても驚いたことだが、しかしスぺイの提案に対して首を縦に振ることはできないことはすぐにわかった。

 そもそも詳しい場所をユウは知らない。しかし知っていたとしてもそれを渡すわけには行かない。ユウの愛する人にはそれが必要なのだ。

 そのためどうにかしてこの場を切り抜けなければいけない。幸いにも、すぐに次弾が来る様子は無かった。


「――断る」


「なるほど。でもそれでいいよ。答えなくてもそれでいいよ」


 ありえないほどあっけない。それはスぺイがどうせユウはすぐに話すだろうと高を括っている。と、言うふうでもなかった。

 それはユウの口から出る言葉という信号に頼らない、何かより確かなものから情報を得ようとしているかのような。


「まあ、話をしようじゃない?()()。安心して。今はまだ撃たないから」


「……どこで俺の名前を、俺は名乗っていないはず」


「私に隠し事はできない。そうそれは例えば物を落とせば地面に落ちるくらいに当たり前の事。私たちはみんなそう。そういうふうな能力(特別)を持ってる――でもそれはあなたも同じでしょ?何か持ってる」 


「俺にも……」


 ユウにもスぺイが行って居ることに心当たりがある。

 それはもうかなり前になる。ユウがこの世界に来た時の事、ユウは大まかに二つの特別な何か、力が与えられていた。

 一つは強く念じることで、手にナイフを取り寄せるもの。もう一つは指先からすごく細い糸を伸ばすもの。

 

「それは私たちと同じ根の能力(特別)――だけど、だけど。それよりあなたも必要なのよね?世界の果てに生る果実が」

 

「……世界の果てに生る果実?――」


「まあ、見た人はいないから、果実かどうかはわからないけど――で、あなたはあなたの愛する人のためにそれが必要。でもそれは私たちも同じ」 


「だから、それを譲れって言うのか?そんなの駄目だ」


「何故?」


「それは、愛しているから……当然だ」


「そう、でも、私たちもそれは同じだわ、むしろニーア・トリーア?そんな田舎娘なんかに使うよりずっとずっと良い」


「は?」


 くだらない戯言。そう思っていてもユウには不快だった。

 そもそもこんな話をして、スぺイにどんな得があるというのか?いや、無い。

  

「――は、ははは。そう、見えた見えたよ。果ての果実、それがいまどこにあるのかね」


 勢いよく、愉快そうに笑い声と共にスぺイが立ち上がる。

 しかしその場所はユウでさえも知らない。どのような手段を使ったとしてもユウからその情報を得ることはできないはずだ。

 

「ま、待て――」 


 バンッ。

 スぺイが立ち去ると同時にユウは背後からわき腹に銃撃を受ける。

 銃撃の方向から背後の町の方からの銃撃で間違いない。

 しかしそもそも今ユウが居る広場は街灯が一つあるだけで、相当暗い。にも拘わらずこれほどまでに正確に狙撃することができるのだろうか。

 いや、それももしかすると。スぺイが言って居た能力(特別)と言うものなのかもしれない。


{……銃弾を狙った場所に当てる能力か?だとしたらかなり不味い。一先ず身を隠さないと}


 ユウはその一心でスぺイの残していった机の影に身を潜めた。


「くっ、血が」


 ユウは打ち抜かれた部分を上着を撒いて止血を試みた。

 だが、そうこうしている間にもうスぺイの背は遠くなっていた。

 もし、スぺイの言っていた通り果ての果実の場所を知っているのなら。追いかけなければ取り返しがつかなくなる。しかし遮蔽物も無い広場を進めばもう一人の敵の銃撃を避けられるとは思えなかった。

 

「どうする?このままじゃ……いや、もう、()()()()()()


 ユウは踏み出した。

 しかし広場に出ることは敵にとっては恰好の的だ。銃弾がユウの進む先に降る。

 が、それが当たることは無い。なぜならユウが進むのは広場ではない。ユウが向かったのは海の方角だった。

 広場の欄干を勢いよく飛び越え、そしてそのまま暗く、冷たい冬の海へと身を投げた。

スぺイと名乗った占い師と、もう一人の謎の狙撃手によって海に身を投げるまで追い込まれたユウ。

果たしてスぺイの言っていたことは事実なのか?そして果ての果実を手にするのは誰なのか?

次回:第二十三話:希望の剣、スぺイ・b





投稿がもう10日ほど開いてしまいました。

これもそれも能力の詳細がふわふわしたまま書き始めたせいです(解決済み)

まあ、解決したので次に進めますよ。多分。

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