第二十話:ただ一人、愛する人を救うためなら・a
ここから第三部?です。
これまでのあらすじ
突然に神を名乗る者から死んだのだと伝えられ、別の世界へと転移することに成った望まない少年、ユウ。
しかしユウは別の世界であっても自分は変わらず、何かを望むことは無いと思っていた。
だがしかし、その考えは別の世界で出会った一人の少女、ニーア・トリーアとの出会いと別れによって大きく変わることに成る。
ユウとその仲間たちとの決死の覚悟によって残酷なニーアとの離別を回避することに成功する。
しかし、ニーアは原因不明の病に侵されていたのだ。
ユウはその病の原因を突き止めるため城の使用人として働くことに成る。
しかし、城での生活に慣れてきたある日、城に住む王女が誘拐されるという事件が発生する。
ユウは王女を取り戻そうとする亡国の王子、ヴェローナに協力し、命と未来を賭けた旅に参加する。
しかし、最後でかつ最初の裏切りによって、ユウは失望しヴェローナの元を去ることを決めた。
ユウはこれにより行き場を失ったが、それに一人手を差し伸べる者が居た。
本当の未来を手にするユウの旅が再び始まる。
本当にこんなことに成るとは夢にも思わなかった。
何が、と言うのもまさかかつての敵たちとこんな、こんな……
「おーーーい。ユウ、出店出てるぞ、食うか?」
「要らない」
「別にいいだろ、せっかく祭りだって言うのに」
今この町では年の瀬の祭りが行われているらしい。らしいというのはユウ達がこの町に到着したのはほんの数時間前であり、この町についてはほとんど知らないからだ。
ユウが今いる町。名はメーディス。これまで居たカプツィナの町から南西方向の海沿いに位置し、古くから海上交通の中継地として発展。
また、メーディスの周辺には大小様々の島があり、橋や船でそれぞれ行き来ができるようになっている。これらの島々を合わせて大メーディスと呼ぶこともある。
大と言っても、そのすべてを合わせた人口はカプツィナよりも少ない。しかしその為かカプツィナとは全く雰囲気の違う、穏やかな街と言う感じだ。
「なぁ?それより、本当に俺はこんなところに居なきゃいけないのか?」
ユウは祭りのためか人通りがある出店通りを先行している女性に尋ねた。
その女性の名はフォルトゥナ。彼女とユウの関係はあまり簡単ではないが、あえて言うのなら同僚だろうか。
最もフォルトゥナはともかく、ユウはフォルトゥナの事を良くは思ってはいないが。
「別に、でもせっかく何日もかけてこの町まで来たんだ。初日ぐらい観光しても良いだろ――それに、目的の物は持って帰るまでが重要なんだ。ここで休まなきゃばてる。だから仕方ない。だろ?」
「……仕方ないか。こうしている間にもニーアに残された時間はどれだけあるかもわからないのに」
ユウ達がこの町に来た目的はある物を取りに来たのだ。それはにわかには信じがたいが万病に効くという薬だ。
今も病に侵されているユウの愛する人、ニーア・トリーアのためにそれを欲していた。
なぜ、こんな話になったのか、それは今現在から半月前に遡る。
半月前。ユウは信じていた仲間が敵と繋がっていることを知り、深く失望し無気力になっていた。
だが、それに生きる目的を与えたのはかつての敵だった。
もしも愛する人を救えるなら、どうするか?
結局のところ、ユウには理に支配された言葉は似合わなかった。
あーだからこーだから、ではなく。愛する人を愛するから、そしてこれからも愛していたいから戦う。
それだけで十分だった。
「つまり、整理すると。その薬の当てを俺に取りに行けと言うわけだな。取りに行く代わりに真っ先にニーアにその薬を使えるってことだな?」
ユウはかつての敵のボスである恰幅の良い男性、サショーに確認を取った。
「ああ、それで間違いない。ただ、君が取りに行くのは君がその方が安心できるだろうからだ。そうだろう?」
「そうだな」
ユウはそれを取りに行く間ニーアの傍を離れることに成るが、それでも直接この目で確かめたかった。
「もちろん一人で行けとは言わない。あれは多くの人間に価値があるものだ。奪おうとする輩が居るかもしれない。その為にこちらから何人か護衛をつけよう――……ヒエラル」
「はい」
サショーが呼ぶと、すぐにその後ろで待機していた背の高い男が返事をする。
「……なあ、まさか、護衛って、ヒエラル?」
「はい。我々の中でこれに適した人間は他に居ない。ヒエラルと、アノミー、フォルトゥナ、ネス、この4人に任せる。何か不満が?」
サショーはまるで悪気が無い様子で言う。
しかしユウにとってはこの四人は直接戦った敵だったのだ。それなのに今から何日も一緒に行動することになるのはとても気まずかった。
だが、他に適任が居ないというのならそれも仕方がない。ユウは渋々ではあるがその条件を飲むことにした。
「それで、その薬がどんなもので、どこにあるんだ?」
「詳しいことはヒエラルに伝えておくから。移動中にでも説明を聞いてくれ」
「待った。それはつまり遠いのか?」
「……まあ、少し」
そう言うわけで、すぐにでもユウは出発することを余儀なくされた。
船に、馬車に、多少の歩きも併せて半月もかかってしまった。
「なあ、場所はどこなんだ?薬はこの町のどこにあるんだ?」
「言っただろ、安全のためにヒエラルが一人で取りに行くって、それを教えたらお前は取りに行こうとするだろ」
「……まあ、そうだな」
「はい、この話はおしまい。着いた、ここだ」
フォルトゥナがある建物の前で足を止める。
そこはこの町に用意されたフォルトゥナ達の隠れ家だ。
「ただいまー。町の様子は何ともなかったぞ」
フォルトゥナが隠れ家の中に居た仲間に挨拶して中に入る。
そこはレンガ造りの建物で、表には宿と看板が掲げられていた通り、内装もそのような雰囲気だった。
「あれー?ヒエラル居たんだ。例の薬は?」
「……それはまた後にした。さっき出てだのは義手を取りに行ってきたんだ」
宿のロビーに居たのは。隻腕の男ヒエラルだった。
しかし、取りに行ったという割に使っていないことを見るとまだ義手は完成していないらしい。
「ところで、ネスとアノミーは?まだ帰ってないの」
「アノミーは部屋で寝ている。ネスは……まだ帰って来てない」
「ふうん、まあ、ネスなら大丈夫でしょう。日が暮れるまでには帰って来るでしょ」
「そうだといいんだがな」
ヒエラルにはそれは少し不安だった。
ユウが知る限り、ネスは10歳程度の物静かな印象の女の子だ。この町の治安はこれまで居たカプツィナの町よりは良さそうだが、大丈夫なのだろうか。
日が沈み始めてきた。
町にはカプツィナの町には無かった街灯が多数点灯され始める。
しかし未だにネスは帰ってこなかった。
[――おかしい――……ユウ、大変だ。ネスが居なくなった。探しに行くのを手伝ってくれないか?」
フォルトゥナがユウに願う。その様はまさに今が緊急事態であるということを物語っている。
だが――
「断る。それはお前たちの門題だろ。俺には関係ない」
ユウには関係のない事だ。
共に行動しているとはいえ仲間でもない、むしろ敵と言った方が近い。そんな相手のいうことを聞く理由は無い。
それはこの町に来る半月と言う時間があっても変わることは無い。
「――わかったよ。わかってたよ。じゃあ私は一人で探しに行くから、勝手にしろ……」
フォルトゥナは少し怒った様子で立ち去る。
だがだからと言ってそれを見送ったユウは考えを変えることは無い。
ただ、フォルトゥナの言ったある言葉にユウは少し引っ掛かった。
「……一人でって言ってたよな……」
アノミーやヒエラルも少し前から宿から姿を消していたが、どうやら少なくともネスを探しているわけではないらしい。
「この広い町を、もう日も落ちてきているのに……」
ユウは静まり返った部屋の所為で想像しなくてもいい事を想像してしまう。
もしも見つからなければどこに居るのかもわからない人を探し続けるのだろうか?
もう二度と会えないのだろうか?
――それはあまりにも酷なことじゃないか?
「……まあ、この町に居るのもほんの数日だしな。それに祭りだって言うし。町の様子をこの目に納めておくのもいいもんだよな――」
ほんの少し魔が差した。と、そう思った。
ユウは宿の外の町に出る。
外の空気はとても冷えた。だが、少し暖かい気持ちがした。
外の寒さと、暖かさ。
次回、港町にて・a
だいぶ時間が空きましたが、ある程度先の展開は考えました。
これからも楽しく考えて、書いて、続ける。(意気込み)




