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望まぬ君を望む世界  作者: 波積 形り
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第七話:王女様は美しいものがお好き・1

ここからテーマは新しくなります、といっても完全に続きです。

少し短くなりましたが、始まり始まり。


 ある朝に大都会カプツィナの街の一角にある宿屋で一人の青年と老人が話をしている。

 青年は老人に何度も頭を下げる。けれども老人は何にせよ何も気にしていない様子だ。

 その青年は宿屋の二階へと行き。扉の壊れた部屋に入った。

 中はひどい有様で、窓は割れ、家具は倒され物は散乱していた。

 青年は部屋の中を物色し、幾つかの紙やカバンを拾い部屋を出た。もちろん扉から。

 青年の名はユウ。人探しでこの町に来て、望みを見つけたこの世界とは少し違う世界から来た住人。

 今はわけあって少ない荷物を集めて、指定された場所へ向かう予定だった。

 指定された場所とは。ユウがこの町に来た目的であり大切な人、ニーア・トリーアとの未来を得るために違法な組織と交わした契約。その組織のヒエラルと名乗る男によって来るようにと言われた場所だ。


「はぁ、いったい俺は何をやらされるんだ――いや、何だって良い俺はもう逃げない」


 宿屋を出てすぐの街角で頭を抱えて葛藤するユウ。

 そんなユウに後ろからユウよりもかなり体格のいい男が声をかけた。


「お、ユウじゃねえか。元気か?」


 ニューキー。このカプツィナの街の貧民街の住民の一人。

 数日前のヒエラルとの交戦からユウとは挨拶するような関係だ。


「ああ。まあまあだな」


「そうか――なあ、ユウ。お前なんか変わったか?」


「ん、いや別に。それより俺今から予定があから、じゃあな」


「あ、ああじゃあな」


 ユウはニューキーと別れ指定された場所へと地図に沿って向かった。

 これから違法な組織の元へ行くことをユウはニューキーは勿論他の誰にも言っていなかったし、言ってはいけなかった。

 ただ、貧民街の住人であるニューキーにはユウが何か良くないことをするのだろうということは薄々感づいていた。

 だが感づいたからと言ってそれを咎めたり意見するようなことは当然ない。あくまでそれはユウの問題なのだから。





「ここか」


 ユウが地図に沿ってたどり着いた場所はカプツィナの街の中心に近い服を売っている店の用だった。

 見かけに派手さは無く、遠目で見えるカプツィナ城から続く落ち着いた白とグレーの街並みによく馴染んでいた。

 しかしユウは知っている。ヒエラル達の組織はこのように外観は普通に見える建物の裏にアジトを隠していることを。

 ユウは固唾を飲んで、その服屋のドアを開き中へと入った。すると――


「いらっしゃ~い。あら、あらあら。ちゃんと来たじゃな~い。まさかヒーちゃんが紹介した子がこんな子だったなんて」


 ユウが扉を開けて飛び込んできたのは化粧の濃い中年の女性だった。それがユウを見つけるや否やユウの手を引き、早口で喋りながらユウを店の中へと入れた。

 いきなりの出来事にユウは驚くばかりだったが、その女性はユウの後ろに回ると、ユウの体のいたるところに手を当ててきた。


「いっ、いったい何を」


 驚いて声を発するも、その女性はまるで聞こえていないようだった。


「なるほど、腕はこれぐらい、胴回りは、あら細いわね、ちゃんと食べさせてるの、ヒーちゃん?」


「無駄話はほどほどにしてもらっていいか。適当に見繕ってくれ」


 ユウは気づかなかったが、店の中には人がもう一人居た。

 ヒエラル。ユウをこの場所に呼んだ張本人だ。少なくとも指定された場所を間違えたわけではないことは確かだった。

 ヒエラルに言われその女性は店の奥へとそそくさと行ってしまった。


「おい、いったい何なんだよこれ?」


「何?見ての通り、服を買うんだ」


「は?」


 ユウはヒエラルが言ったその言葉に呆気にとられた。

 ただ確かに状況だけで言えば服屋で服を買うのは何もおかしくはないのだが。

 しかしいまユウの服を買うという状況はおかしかった。


「どういうことなんだよ、わかんねえよ。なんで服を買うんだよ?いったい何のために」


 ユウが説明を求めた。今起こっていることがとてもユウの想像とはかけ離れていたからだ。

 しかし、ヒエラルが説明する前にさっきの女性が店の奥から何着かの衣服を持って戻って来た。


「とりあえず、大きさが合って、良さそうなのは幾つか持ってきたけどどれにする?」


「適当で良い。だがそうだな、こっちの上着の方が俺は良いと思う」


「わかったわ、シャツはどうする?こっちの方は――」


「おい、聞いてるのか?」


 ヒエラル達がユウを抜きにして話していることにユウは苛立ち、大声でヒエラルに再び声をかけた。


「はぁ、どうした。いきなり大声を出して。服を買うとさっき言っただろう」


「そうじゃない、俺は仕事の話をすると言われてここに来たんだ。そろそろ何をすればいいのか話して欲しい」


「ああ、そうだったな――外を見て見ろ」


 ヒエラルが店の窓を指さし言った。


「何が見える?」


「何って、城だ。城が見える。それがいったい……」 


 この町で最も大きな建造物でこの町のランドマークでもある城。遠くからでもその姿はよく見える。


「お前が今からする仕事。それは――あの城で使用人として働くことだ」

これからどうなるのか、今はまだ謎のままで。

次回は明日の20時の予定(未定)

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