レベル5
城の入り口まではグランダム軍は来なかったが、城の城門の前には大勢のグランダム軍が待ち構えていた。
俺たちが処刑ステージに現れたことは、もう情報が飛んでいるようだ。
「貴様ぁぁぁぁ!冒険者ジンサイトだな?!」
門の前に陣取っている兵士の1人が叫んだ。俺も叫び返す。
「死にたく無い奴は道を開けろおおおお!」
「王に会いたいならば、正式な手順を踏め!!これでは反乱だぞ!?」
「……」
なんか、兵の言うことも一理ある。
正式な手順を踏んで断られたなら、乗り込むのもアリかもしれないが、いきなり武力で攻めたら、まるで簒奪者みたいだ。
『仁さん、思うままに生きるのじゃ』
アヤカのじいさんの言葉が脳裏に浮かぶ。
(……悪いことをしてるとは思う。だけどよ、50000人もの兵士を送って来てるんだ。それは殺意があると言うことだろ?なら、殺られる覚悟も当然あるだろ)
俺は大声で叫び返す。
「押し通ぉぉぉぉぉる!!!」
俺は剣を抜いて、兵士の中へと走り出した。
~~~~~~~~~~~
何人斬ったか覚えていない。
出来るだけ殺さないようにはしてるが、死んだ奴も居るだろう。
城門の前の兵士を片付け、門が開かないので身体強化で門をよじ登り、中へ入る。
腕の立つ兵士も居た。スキルレベルでは3はありそうなやつだ。
だが、流石に俺の敵ではなかった。
俺はばっさばっさと切り捨てながら、だだっ広い城の廊下を奥へと突き進む。
謁見の前のような場所にたどり着くと、ひとりの男が玉座に座っていた。
だが、どう見ても王には見えない。
一言で言うならヤクザだ。
剣も西洋風の剣ではなく、《ダンビラ》とでも言うのだろうか、鍔のない刀のようなものを持っている。
「お前が王か?」
そいつはニヤリと笑い、
「まさか。にいちゃん、帰んな。ここはにいちゃんの散歩道じゃねえぜ?」
「日本人か」
「おうよ。俺は渡世者だ」
本物のヤ◯ザだったか。
「王はどこだ?」
「知らねえな」
「…………殺すことになるぞ?」
男は目を見開き、
「ほっ、おー、おー!いきがっちゃってまあ!」
男はスーッと目を細めた。
「斬った張ったは俺たちの領分だ。ガキはママのところに帰りなよ」
「ここは異世界だ」
「関係ねえな」
俺はゆっくりと男に向かって歩き出す。
すると、
カチャ
男は亜空間バッグを持ち、中からピストルを取り出した。
そして銃口を俺に向ける。
俺の足は止まった。
「坊主、見たことあるか?これが本物のチャカだ」
「…………」
「ビビったか?やっぱガキだな」
俺は男に問う。
「抜いたからには命をかけろよ?」
「はっ!、バカが」
ズダーン!!
男はいきなり発砲して来た。
見える。
流石身体強化レベル4だ。だが、余裕で避けれるってほどでもない。
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!
男は連続で発砲する。あの銃はリボルバー式だ、多分とか言われてるやつだろう。
「……終わりか?」
俺が全弾よけて男に言うと、男はいやらしく笑い、
「まさか」
亜空間バッグからドラム式のマシンガンのようなものを取り出す。
「ほれ、避けてみろよ」
「っ!」
接近して斬れば良かった。だがもう遅い。
ズダダダダダダダダダダダダダ!!!
俺は全力で謁見の間を走り回る。
秒速何発かわからないが、謁見の間を埋め尽くすほどの銃弾が飛び交う。
近づこうにも全く近寄れない。
銃弾が止まる。
俺はすぐに男にかけよるが、男が亜空間バッグから次のマシンガンを出す方が早かった。
ズダダダダダダダダダダダダダ!!!
どうしようもない。
俺は逃げながらミコトに話しかける。
「ミコト!見てんだろ?!」
『もっちろん見てるわよ?』
くそが。
「見てんなら助けろ!!」
『だって、あたし喋るなって言われたし?』
「っ!!今は非常時だろうが!」
『全部避けてるじゃない。非常時には見えないわ』
ズダダダダダダダダダダダダダ!!
男のマシンガンは三本目に入った。
「な、なんとかしてくれ!!」
するとミコトは、
『え~っ、どうしようかなぁ~』
「遊んでる場合じゃねえんだよ!!」
銃弾の雨だぞ?よくこんな時に悠長なことを言ってくるものだ。
やっぱミコトはアヤカの友達なだけはあるな。
『なんかご褒美があればなぁ~』
「……てめえ…………」
ズダダダダダダダダダダダダダ!!
『あっ、言っとくけど、あたし契約通りにやってるからね?これは契約にはなかった話よ?』
くそが!
どいつもこいつも!!
「わかった!わかったよ!観光に連れてってやる!!」
『っ!ホントっ!』
「ああ!」
『地球じゃないわよ?!』
「わかってる!俺はお前らじゃねえ!!」
当たったら死ぬんだぞ?!早くしろ!
『オッケー、じゃ、行くわよ!』
『#セーフティデバイス!__全てを通す鍵__#、#リリィーーーース!!!__解放__#』
俺の体が金色に発光し、巨大な力が流れ込む。
《超硬化》
《振動》
脳内にスキルが浮かぶ。
「ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」
ヤ◯ザは銃を撃つのを止めて、俺を見た。
俺は全身にみなぎる力を押さえつけ、男を睨む。
「な、なんだそりゃぁ……」
「お前が知る必要はない」
全てをぶっ壊したくなる。
もう、どうでもいい。何もかも消えてしまえばいい。
男はまたマシンガンを構え、俺に向かってぶっぱなす。
ズダダダダダダダダダダダダダ!!
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!
俺は微動だにせずに、弾丸を体で受け止める。
弾丸は全て、俺の体で弾かれた。
男はその光景を見て、苦虫を噛み潰す。
銃口から煙をあげるマシンガンを投げ捨て、
「バケモノめ……」
「ヤ◯ザに言われたくないな」
男は段平を抜いて構えた。
「…………舐めるなよ、俺はスキルレベル5だ」
「ほう」
ちょうどいい、実験になる。
つうか、こいつもう殺そう。いや、城ごと破壊しよう。
男の体が蜃気楼のようにブレた。すると、
キン!!
男は俺を袈裟斬りにしていた。
見えなかった。
速い。
だが男の段平は、真っ二つに折れた。
「なっ!」
男は驚愕の声をあげると、ものすごい速さで俺から引いた。
「くそが!」
男が唾を吐く。
俺は男に斬りかかるが、男は俺の数倍は速い速度で俺から逃げる。
流石レベル5だ。これは追いつけないな。
何度も追いかけていたが、男も俺が速度で敵わないとわかったのだろう。次第に表情に余裕が戻ってくる。
「がははははははっ!当たらなけりゃどうしようもねえな!えぇ?ガキよ!」
「……」
それでも追いかけていると、いつの間にか俺の剣が奪われた。
「ははっ、ちっと借りるぜ?」
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!!
男の速度は更に上がる。
俺はその場に立ちすくみ、腕をクロスして男の斬撃を体で受け止める。
「がははは!良い剣だなっ!これなら折れそうもねえ!どっちが先にくたばるかな!!」
イライラする。
こんな世界無くなってしまえばいい。
こいつも、グランダムも、全て無に帰ればいいんだ。
俺は腹に力を入れて、息を大きく吸い込む。
スーゥ、
それを思いっきり吐き出す。
「死の咆哮!」
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
スキル《振動》を声に乗せ、思いっきり咆哮した。
謁見の間、いや、城自体が地震よりも細かく揺れ、壁や柱に亀裂が入り出す。
バリン!
ガラスは弾け飛び、壁がボロボロと剥がれ出す。
「ぶはっ!!!」
目で追えないほどの速さだったヤ◯ザは、目、耳、口、穴という穴から血を吹き出して、うつぶせに床に倒れこんだ。
俺は男に歩いて行き、つま先でごろんと男を転がす。
男は息絶えているようだ。
「つまらんな。そうだ、もうこの城要らねえだろ。……ぶっ壊してやる」
俺は大きく息を吸い込み、
「ハウリング・デス!」
「おお────」
俺が咆哮しようとすると、いきなりユニークスキルの力が消えた。
「……………………あれっ?」
すると脳内にミコトの声がする。
『何やってんのよ!!力に飲まれすぎよ、ジン!!』
「お?、お、おう……」
『あたしが観光に行く前に世界をぶっ壊す気?!』
どうやらドラゴンの時のより破壊衝動に飲まれていたようだ。記憶はあるのだが、自分じゃないように感じる。
「あー、助かった。ミコト」
『わかればいいのよ。早く日本に戻りなさいよ?地図持って帰ってきてね』
「ああ……」
そんな約束もしたな……。
まあ良い。一度くらいは仕方ない。
俺は謁見の間を出ようとしたが、王の玉座の後ろの垂れ幕から、何か人の手のようなものが見えた。
それが気になって駆け寄ると、
「……、あー、マジか…………」
金の冠のようなものを被り、高そうな服を身に纏った50代ぐらいの男が、全身から血を流して倒れていた。
どうやら、垂れ幕の後ろから覗き見していて、ハウリングデスの巻き添えを食ったらしい。
「……気づかなかった…………、色々ありすぎたから……」
まさか一言も話さないで王を殺してしまうとは……。
「まあ、いっか。とりあえず次の王を探すか。息子とか居るだろ」
俺は謁見の間から出た。




