like a 核弾頭
はっきり言って感謝してる。
絶対口には出さないが、俺はこのロリーズに心から感謝してる。
俺は人を大量に殺した。日本で裁判を起こされたら100回じゃ効かないほど死刑にされるほど殺した。
だが、俺は自分の殺人に気づいた瞬間から、思いふける瞬間さえ作られずにぎゃあぎゃあやられ、罪悪感地獄に落ちることさえも許されなかった。
夜は夜で、俺に『後悔する暇なんて与えない!』と言わんばかりに、ずっと二人が奪い合うように俺に跨がっている。
これじゃあ神に懺悔することも出来ない。
まさか、まさかだよ?
こいつらそれを分かってやってるのか?
自ら人殺しした俺が、罪悪感で潰れないためにこんなことを?
……まさかな、考えすぎだ。このクソロリーズにそこまで頭が回るはずがない。
「まだか?エリー」
俺が質問するとエリーは、
「ん?あー、おとといあたりからコツは掴んでるわよ。もうディアーブロでちゃんと満足出来るようになったわ」
「なんの話だよ!!フェルズまでまだかって話だろ!!」
やはりこのクソガキが、そんなに頭が回るわけがない。
大殺戮のあの日から、すでに10日が経っている。あの日から追っ手は一度も来ていない。もう諦めたのだろうか。
それに、そろそろ着いてもいい頃なのだが、エリーはスキルで分かると言うので道を任せているのだが、一向につかない。
するとザラが俺の手を握り、くいくいと引っ張ってきた。
「(あたいも楽しいから黙ってたけど、エリーはわざと道を間違えててるよ)」
「……っ、は?!」
俺はゆっくりと先頭を歩くエリーを見て、エリーにすぐさま駆け寄り、ほっぺたを強めにつねりあげた。
「いっ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
俺はつねりあげながらゆっくりと言う。
「い、い、か?、い、ま、す、ぐ、た、だ、し、い、ほ、う、が、く、へ、む、か、え!!」
「追っ手を避けてたんじゃない!痛い痛い痛い!!、わかった!わかったから!アザになっちゃうわよ!!」
エリーは進行方向を90度曲がった。
このクソロリが。
~~~~~~~~~~~
ギルドの亜空間バッグが消えた。とうとう40日経ったことになる。
流石にフェルズ共和国には入り、今日にでも首都ファイザに着く予定だ。それにしてもフェルズ共和国はエルフが多い。そしてとても優しい。
国境で一悶着は当然予想していたのに、ものすごく暖かく迎えられ、国境兵たちはファイザまで護衛を付けるか?とかまで行ってきた。どこまでサービスがいいのか。
フェルズ国軍の申し出を丁重に断ると、「金は大丈夫か?」「次の村ではここに泊まれ」など、本当に至れりつくせりなオモテナシだ。
そんなんが、立ち寄る町立ち寄る村で、延々と続いている。グランダムとは大違いだ。本拠地をフェルズにしたのは正解だったかもしれない。
あー、だけど、まあ、しかし、そんなことよりも……、
当分せっくるはいらねーわ…………。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
~~エリーとアヤカが別れた日まで時間を遡る~~
アヤカは、首都ファイザの中心、まごう事なき城にしか見えない建物の中に居る。
この城がフェルズ共和国、大統領官邸だ。
アヤカは3日ほど大統領に謁見を頼んだが、全く謁見が通らないので、なんと力技に出た。
官邸前に赴き、結界魔法を自身に張り、風魔法で兵士が傷つかないようにブンブンとぶん投げた。
1時間もそれを続けると、兵士たちもアヤカに殺意が無いことがわかり、どうしようか考えこむと、アヤカはいきなり魔法を解き、自分から両手を出して兵士に捕まった。
兵士はそれを大統領に報告すると、「面白いから連れてこい」と言われ、やっと大統領の面前に立つことに成功したのだった。
「はじめまして大統────」
「御託はいい、どうせお前は今から死ぬのだ。面白いから要件だけは聞いてやる。言ってみろ」
大統領は白髪の壮年のエルフだった。
肘掛に肘をつき、頬杖をしてアヤカを見ている。
「ふむ、人族の割になかなか美しい。それに魔法も得意なようだな」
「ありがとうございます。私の要求は1つのみです。今、冒険者ギルドに指名手配されている『ジンサイト』と言うものが居ますが、もし冒険者ギルドから援軍要請が来ても、フェルズ共和国は応じないで頂きたいのです」
「ジンサイト?」
大統領の側近のような奴が、大統領にすぐに近寄りヒソヒソと報告する。
「ほう、たかがそれだけの為に死にに来たか。だが残念だったな、お前は犬死だ」
アヤカは表情を変えずに澄まし顔で、
「ではジンサイトの────」
「バカが、犯罪者だろうが。何故助けねばならん」
「助けなくてかまいません。軍を送らないだけ────」
「同じことだ。ふむ、そんな冒険者などどうでもいいが、面白い。精鋭を一万人そいつの討伐に送ってやろう。そいつはなかなか腕が立つそうだが、一万人に勝てるかな?どんな絶望を顔に浮かべるのか楽しみではないか」
「……」
大統領はニヤリと笑う。
「だが……、貴様がワシの情婦になると言うなら考えてやらんでも無い」
「……」
大統領はいやらしい笑みを浮かべる。
「さて選べ。ワシの情婦となり男を救うか、ここで死んで男も死ぬか」
「……」
「ワシは気が短いぞ?情婦になれば望みを叶えてやろう」
アヤカはフッと鼻で笑った。
「ん?」
そして、片側の口角を上げて言う。
「大統領、何か勘違いされてますね?」
「なんだと?」
「私は望みなど言っておりません。要求と言ったのです。あなた方が私に降伏を許す条件に、ジンサイトに兵を送らないことを要求したのですよ?」
「ああ?」
謁見の間にいた兵士や側近たちが、「無礼者!」や、「殺せ!」などの怒号をまくし立てる。
するとアヤカの唇が少し動く。
「(魔力増幅……魔力操作……並列魔法……魔力爆発)」
バリン!!
アヤカの手錠が粉々に吹き飛ぶ。
そして、室内に台風が発生したかのように、魔力が視認されるほど濃密にうねりをあげてアヤカの周りを回る。
「バカな!!魔封錠だぞ!!!」
ブオオオオオオオオオ!!
大統領や兵士は、荒れ狂う魔力風から耐えるように腕で顔を隠す。
次第に魔力の渦が落ち着くと、アヤカの身体には、まるでオーラのようにゆらゆらと揺らめく炎のような魔力を纏った。
そして魔王のような微笑みのアヤカは、両手を大きく広げると右手には火炎旋風のような竜巻、左手にはブリザードのような竜巻が現れる。
「な、なんだあれは…………」
両手にそれぞれ魔法を放つなど、ここ100年聞いたことがない。それにアヤカの纏う濃密な魔力、明らかに自身の数十倍以上に感じられた。
兵士や側近はすでにアヤカの魔力に当てられ、失神している。
「さあ、選びなさい。私の要求を飲むか、首都を灰にするか。全ては貴方次第です」
「…………化け物め…………」
アヤカは片側の眉、片側の口角をあげ、
「私は気が短いほうです。早くしないとついつい魔法を放ってしまいそう……」
大統領は血相を変える。この女はやる。本気でやる。たとえ後がどうなろうと、やると言ったら絶対にやる。と。
大統領の本能がガンガンと警鐘を鳴らした。
「ま、待て!ま、待ってくれ!!!」
「そんな言葉は聞きたくありません」
「わかった!飲む!飲むから!」
アヤカはまた鼻で笑い、
「よく聞こえませんね」
「の、飲ませてくれ!頼む!この通りだ!!」
大統領は椅子から降り、床に土下座した。
アヤカは両手の竜巻を消す。
「いいでしょう。貴方の願いを叶えます。私の要求を飲ませてあげます」
「か、感謝する…………」
大統領は生きた心地がしなかった。背中どころか全身から汗が吹き出し、膝が笑うことだけは意地で堪えていた。
これでもフェルズで五指に入ると言われた魔法使いだ、その意地もあった。
「約束、お忘れなきよう。もし、その時は」
「わかっている!!元々そんな冒険者などどうでもよいのだ!!クソっ!50年寿命が縮まったぞ!」
アヤカはニコリと笑い、
「冗談がお上手ですね。それでは」
と、大統領に背中を向ける。
「ま、待ってくれ!」
アヤカは足を止めて振り返る。
「な、名前を聞かせてくれないだろうか?」
アヤカは指一本を顎に当て、「んー」と可愛く悩んだ。
「いいでしょう。アヤカコンドと申します」
「アヤカ、コンド?」
「はい」
大統領は少し俯いた。アヤカは歩き出す。
「似ている……、伝説の冒険者、エルフの友、古代遺跡の全てを知る者、天下無双、数々の2つ名を欲しいままにした、ユーゾコンドに……」
出て行こうとしたアヤカはピタリと足を止めた。
「ユーゾコンド、ですか?」
「…………ああ……」
アヤカコンド
ユーゾコンド
アヤカコンドウ
ユーゾウコンドウ
アヤカはパッと閃いたように手を叩く。
「あー、それ、私の祖父です」
「っ!な、なんだと!!!」
「それにユーゾコンドではありませんよ?トモゾコンドです」
大統領は目を見開く。
「っ!な、何をバカな!冒険者登録証も残っているのだぞ!?」
「ですが、孫が言うんです。トモゾコンドが本名ですよ?」
「っ…………」
アヤカは菩薩のような微笑みを浮かべ、
「それでは、ごきげんよう」
アヤカは大統領官邸を後にした。
「さて、仁さんはエリーに任せれば大丈夫でしょう。今のエリーは今の仁さんよりも強いですからね。…………、私は…………仁さんがお帰りになられる屋敷を作って、魔改造をして待ちましょう。お風呂は大きくしないとベティに怒られますね。あっ、大統領、屋敷をくれるでしょうか?、聞いてみましょう」
アヤカは悪魔の微笑を浮かべた。
名も知らぬ大統領よ、
生きろ。
それしか送る言葉はない。
アヤカはきびすを返し、まるで自分の家に帰るかのように、悠々と大統領官邸の中へと再度歩いて行った。




