モテちゃって困るなぁ
俺たちはフェルズ共和国へと街道を歩く。街道には途中で簡単な標識もあり、迷わずにフェルズ共和国まで行けるそうだ。だが当然危険は多い。それでも時間的リミットがあるのだから迷子にはなりたくない。うまく行けばランスロットたちに追いつけるかもしれないってのもある。
「なんか悪かったな、あたいのために」
「いいんだ、言ったろ?元々お尋ね者になる要素があった。それが早くなっただけだよ」
いやそうではない。ザラを連れて来なければ、ギルドと無戦闘和解の道も数%はあった。だが、今回のこれで確実に消えたことになる。
ザラの荷物を亜空間バッグにしまい、ザラに服を着させて森の中を歩く。
「これならベティと一緒に行けば良かったぜ……」
「そいつは情婦か?」
「いやあ、情婦は居ねえよ。ベティは俺のメイド、他の奴らは仕事仲間だ」
「ふーん、人族なのに情婦じゃねえんだ」
「……何?」
俺は隣を歩く120cmのロリババアを見下ろす。
ザラは俺をチラリとだけ見上げて来て前を向いた。
「人族は色欲が強いだろ?それに他種族だと妊娠しにくいから、情婦を持つ奴が多いね」
「まじかよ、また新事実」
多分人族が色欲が強いのではない。どの種族も人族より長命だ。長命ならば人族よりも子供を産める期間が長い。だからのんびりなのだろう。
それに対して人族は、日本的に考えればどんなに頑張っても子供を産めるのは50歳までくらいだろう。それ以降は命の危険も増えるし確率も下がる。だが寿命が2倍なら?
そういうのが関係してると思われる。
「つかザラ、もう少し早く歩けねえか?もし追って来てたらすぐにおいつかれちまうよ」
「ドワーフに無茶言うんじゃないよ。ならあんたがあたいをおぶっておくれよ」
「…………」
~~~~~~~~~~~
「やっぱ人族は色欲が強いねぇ」
ザラは俺の額を持ち、上から見下ろしながら俺の顔を覗き込む。
「どこからそうなったんだよ」
「あたいの腿と尻を味わいたいからだろ?」
「……てめえ、ぶっ飛ばすぞ?」
俺はおんぶはやめた。中腰が疲れるからだ。だから子供サイズだし肩車にしたのだが、こんなことを言ってくる。
これだからババアは。
「第一、ズボン履いてるじゃねえか」
「ならサービスで脱いでやろ」
「もう大人しくしてろよ!」
このパターンでフェルズまでなんてやってられない。まあでもあまり悲観されなくて良かった。
「あたいのせいで……」とかメソメソされてるよりはマシだ。
後ろから蹄の音が聞こえてくる。リズムからして馬車ではなく裸馬だ。
俺はザラを下ろして剣に手をかけて身構える。
やはり追っ手だった。
「お前、Cランク冒険者のジンサイトだな?」
「Dだったけど上がったのか。いつのまに」
ポス!
ザラが俺の尻をパンチする。
「そのくらい確認しとけよな?」
「うるせえ」
馬は4頭、そのうちの一人が俺に馬上から話しかけている。どいつも真新しい鎧を身につけた騎士のようだ。
「お前には拉致監禁の容疑がかかっている。大人しく女を解放しろ」
「はあ?!」
俺ではない、ザラが声を上げて俺の前に一歩出た。
「てめえらの目は節穴か?みろ?!これが拉致監禁されてるように見えるのかよ?あたいは旅に出たかっただけだ、それの護衛にこいつを雇った。何がおかしい!」
まあ、誤魔化して言えばその通りだ。だがまさか拉致監禁と来るとは。
「我らは知らん。我らに命ぜられてるのは女の#保護__・・__#とジンサイトの捕獲だ」
「なら必要ねえから帰んな」
「それは我らが決めることではない」
「じゃあ話のわかる奴連れてこい!この状況を見て拉致なんてバカなことを言わない奴をよ!!」
すると後ろの騎士が、
「貴様!黙っていれば!我らはグランダム国軍、第2大隊の正規騎士団だぞ!国軍に楯突くつもりか!」
「あたいにゃ関係ないね。何も悪いことしてないのに、なんであたいが捕まらなきゃならないんだい」
「捕まえるのではない、保護だ」
「同じだよ!」
「貴様は騙されている」
ザラは「へ?」と言う顔をし、大笑いを始めた。
「ぎゃはははは!ただの護衛に何の騙し要素があるんだい?!むしろこいつはあたいのことが邪魔なんだ!あたいがかじりついてる方なのに騙されてるって何だい!あんたらガキの使いより酷いね!ぎゃはははは!」
騎士たちの顔は真っ赤だ。だが、騎士たちも事前の情報と違いまくっているので、戸惑っているから攻撃してこなかったのだろう。
だけどそれも終わりだ。ここまで煽られちゃやるしかないだろう。
「貴様ぁ、保護対象だからと言わせておけば!愚弄するにも程がある!!」
騎士の一人が剣を抜き、ザラの脳天に向かって振り下ろしてきた。
なかなか早い。
俺はザラの腹を抱くように抱え、騎士の剣からザラを守る。
「おいおい、保護対象を殺しちゃダメだろ」
「黙れ!貴様ら二人ともここで死ねば、あとは死体を運ぶのみよ!」
「死人にくちなしってか、最低だな」
騎士たちは馬から降り、全員が剣を抜いた。
俺は左手に抱えているザラに向かって、
「ザラ、お前も殺害対象みたいだからこのままでやるぞ」
「っ!あ、あたいを抱えたままかい?」
「ああ」
俺は剣を抜く。
騎士は四人で俺を囲んできた。
「でああああ!」
背後のやつが切り掛かってくる。
何故せっかく背後にいるのに、声を上げながら攻撃するのか。
俺は振り返りながら騎士の剣を振り払い、俺が動いた瞬間に剣を突き入れてきた右のやつの剣をしゃがんでかわす。
そこに逆側のやつが俺に向かって剣を振り下ろすが、それを見切りながらしゃがんでかわした剣を上に向かって切り払い、腹に蹴りをいれた。
「ぐはっ!」
「どうする?やるのか?死んでも知らんぞ?」
「このままおめおめと引けるかあ!」
1番偉そうなやつが、袈裟斬りに切ってくる。それを半身で躱すと、返す刀を水平に切ってきた。それを剣で受け、そいつは俺の剣に滑らすようにして剣をふりあげ、
「隙あり!!」
とまっすぐ振り下ろしてくる。
「そんなものねーよ」
俺はすっと横に躱し、そいつの首を刃のない背側で叩く。
「がっ!」
男は白目を向いて倒れた。
俺は後ろを振り返り、
「おら、隊長は気絶したぞ?。どうすんだ?まだやるのか?」
騎士たちの顔は明らかに怯えている。
「ひ、ひけえ!!」
「隊長を持って帰れよー」
騎士は隊長を馬の背に乗せて、四人で帰って行った。
ザラは俺に抱かれたまま、じーっと俺の顔を見上ていた。
「ん?よし、行くか」
俺が一回ザラを地面に下ろすと、
「お前、バカだったんだな。何で馬を奪わないんだい?」
「…………あっ」
「剣とベッドじゃあやるようだけど、頭が足りないんだね」
俺は顔が真っ赤になるのを感じる。ザラが見つめているから「まさかまた惚れたか?面倒だな」とか心で思っていたのが小っ恥ずかしい。
「う、うるせえ!!!あいつを置いてかれたら困るからだよ!!」
「とんだ甘ちゃんだな」
「もう黙れ!」
俺はザラを肩車して、全力で走り出した。




