新発見、か?!
自宅へ帰ると、アヤカが仕切り出した。
ベティも含めた全員がテーブルに座る。
「まず1番大事なことから話します。エリー」
アヤカはギュンと首を向け、エリーを見つめる。
「これから話すことはとても大事なことです。そして聞いてしまったらもう引き返せません。今ならここを抜けて出て行ってかまいません」
「な、何なのよ……怖いわね……」
「もっと怖い話になります。どうしますか?先に地球へ帰ってもいいですよ」
エリーは少し考えこんでから、
「残るわ。たとえどうなっても」
「孤児院はどうするのですか?貴女が今ここを出ればまだ可能性は残り、ここにいたら救えなくなるかもしれませんよ?」
「っ、……それでも残るわ。どのみちここを離れたら私に可能性はないと思う。なら、答えは1つよ。日本では『死なば諸共』って言うんでしょ?」
エリーも真剣な顔で答える。
「そうですか。ならば約束します。あと2ヶ月以内に17万ユーロ、必ず用意します。すでにここにも1000万以上ありますし、私にも遺産があります。不可能ではないでしょう」
「……い、いいの?」
「はい、そのかわり本当に死なば諸共です。エリーにも存分に働いてもらいます。覚悟はいいですか?」
エリーは目を閉じて、目を開く。
「あの遺跡でエリーは死んでたわ。それもエリーのミスで。だから、今のエリーは助けてくれたジンに従う」
「…………わかりました。ベティさん」
「はい」
次にアヤカはベティを見る。
「この世界を出る覚悟はありますか?」
「おい、アヤカ」
まさかそんなことを考えてるとは。確かにミランダの前例があるから不可能ではないだろうが、言語理解もないぞ?
だが、ベティは即答だった。
「愚問です。私はすでにご主人様の物」
「言葉も通じませんよ?」
「たかが言葉でしょ?覚えればいいだけだわ」
ベティの素の話し方が出てきた。ベティも本気だ。
「……ですね。ベティさんには愚問でした。ごめんなさい」
アヤカが頭を下げる。
「アヤカ、そろそろ説明しろ」
「はい」
アヤカは亜空間バッグからガラス玉を二つ出す。淡い光と強い光だ。
「仁さん、これに見覚えは?」
「…………あん?」
「どこかで見たことありませんか?」
「…………」
どこだ?アヤカが言うんだから俺はどこかで見てるはず。
「私はありますよ。先程思い出しました」
「……」
この言い方は異世界じゃないな?……地球で?日本で?…………、あっ。
「まさか……」
「はい、アレは光を失っていましたが、間違いないでしょう」
「嘘だろ?」
数珠だ。
じいさんが死んだ時抱いていたって数珠だ。たしかにこのガラス玉を繋げれば、あの数珠にそっくりだ。
このガラスなのか水晶なのかわからない質感もピッタリ。
「あ?ちと待て、は?、いやいや」
「混乱はわかります。私も大変混乱してます。ですが、ギルドがあそこまで動揺する内容、見たことあるこの玉、そもそも何故貸し出せるのかが疑問でした。貸し出すには元が無ければ貸せないのですから。それしか考えられません」
「マジかよ……」
だがアヤカは少し微笑んで、
「はい、これが当たりでしたね」
アヤカの予想はとんでもないことを言っている。まず数珠=この玉だと仮定すると、近藤のじいさんは異世界経験者だと言っている。
そしてギルドと俺たちの深い繋がりは、もちろんスキルレンタルだ。ギルドが俺たちに強く出れる理由はスキルをレンタルしてるからだ。言い換えればギルドとしては最も守りたいものとも言える。
アヤカはこれがスキルの素だと仮定している。
仮に、これがスキルの素だとすると、俺たちはギルドの制限から離れて自由にスキルを得ることになる。それは避けたいだろう。
アヤカがこの間ミレイを言いくるめた内容に、『ギルドはスキルを抑えてるんだから、俺たちはギルドの言いなりだ』ってのがあった。それが出来なくなる。ギルドは困る。
万が一、俺たちがとんでもないスキルをたくさん持って、好き勝手にやるようになれば、ギルドの面目丸つぶれだし、責任問題にもなるかもしれない。
だが何故じいさんはこれを抱いて死んだ?
そして玉の中の光は?沢山の疑問が残る。
アヤカの顔を見ると、アヤカはうんと頷いて、
「何にしても日本に帰って確認が先です。そこが勘違いなら全ては白紙ですから」
「…………」
こりゃあ、とんでもないことになってきた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
まずはベティとエリーに俺たちの予想を説明する。ベティを連れて日本に行くのは、もしかしたらギルドに止められて二度と異世界に戻れない可能性があるからだ。そうなるくらいならベティは日本で生活することを選ぶ。アヤカはそれがわかっているから質問したのだった。ベティも説明を聞いた後でも、意思は変わらなかった。
エリーも同様だ。
「まず、ベティさんを連れて向こうに行くには、ギルドの裏をかかなければなりません。そこでエリー」
「なんでもやるわ」
「ありがとうございます。隠密と気配消失を使って転移門の部屋の中に張り込んでください。そしてミレイさんがあのパソコンをどう操作してるか盗み見て欲しいのです」
「任せて。あの猫女に出来てエリーに出来ないわけが無いわ」
「お願いします」
「アヤカさん、私はどうしたらいいですか?」
ベティがアヤカに質問する。
「私たちはエリーには申し訳ないですが、ギルドに行動がバレないように普通に生活しましょう。そうですね、グランダムの街を観光がてら、ぶらつきましょう」
「わかりました」
「仁さんも一緒に、出来るだけ楽しそうにお願いします」
「俺はお前らと一緒ならいつでも楽しいよ」
するとアヤカとベティの顔は一気に赤くなった。
「ご、ご主人様、誘ってるんですか?お風呂入りますか?一瞬で溢れてしまってるのですが」
「仁さん、私の気持ちを考えてください!私だって我慢してるんですよ?襲われたいのですか?」
「…………」
なんだこいつらは。一体何が溢れてて、一体何がお前の琴線に触れたのか。
「ちょっと!えこひいきはやめてよね!」
うるさいガキだ。俺はエリーの頭を撫でる。
「ああ、お前も必要だから」
エリーはうっとりと目を細めた。逆に修羅と氷の女王が目覚めたが、付き合ってられないので、表に出た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「仁さん、つけられてますね」
「ああ、俺も気づいてる。下手な尾行を付けやがる」
俺が表に出ると、2人はすぐについてきた。エリーはすぐに転移門部屋に行ったらしい。
買い食いやウインドウショッピングをしていると、チラチラと後ろで隠れてる奴がいた。隠れたら尾行だと言ってるみたいなものだが。
ひとしきり回ったあと、ドワーフの武器屋に行く。
ドワーフの親父は俺を見ると口角を上げたが、後ろにアヤカが居るのを確認すると、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「おっちゃん。しばらく遠出をするかも。剣を見てくれるか」
ドワーフは黙って剣を取った。
そして鞘から抜いてまじまじと剣を見る。
「お前、何を切った?」
「あー、狼だな」
「嘘をつけ」
「いや、本当だ。数がちょっと多かったけど」
ドワーフはギロリと俺を見て、
「明日まで預かる。明日来い」
「あー、わかった」
アヤカが丸腰はダメだというので、親父は鋼鉄製のオーソドックスな剣を渡してきた。鍛冶屋に代車システムがあるとは……。
家に帰り、エリーを待つが帰ってこないので、先に3人で風呂に入る。
だが、またエロなしだった。
さすがに俺も少しムズムズしてきている。
そして、エリーが帰ってきた。
「ギルドはジンをかなり警戒してるわ。それとやっぱりそれはスキルが封入されている玉だって。古代の遺跡とかには残ってるのがあるらしいわ」
「なるほど、遺跡にあるのですね。良い情報です」
「あとやっぱり、私たちがスキルに気づいてるとは思ってないみたい、業突く張りと思ってるみたいよ。どうせ帰りにはふっかけてくるだろうと思ってるみたい」
想像より大事になってないな。
俺はアヤカを見て、
「なあ?これベティを連れて帰ったら、逆に俺たちが気づいてるとバレないか?」
「ええ、ですがもう少し確信が欲しいです。エリー、申し訳ありませんが、もっと情報を得てもらえませんか?」
「オッケー、まっかせて!」
今日は張り込みも御開きとなり、それぞれ眠りについた。
だが、夜中にはエリーが俺の布団に潜り込んできた。
まあ、ガキなので手は出さないが。




