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大先輩

3日経った。


剣も研ぎ直してもらい、エリーの情報も集まった。


エリーは転移門の操作方法を覚えた。言語が現地語だが、地球のパソコンと大差ないらしい。多分電気を魔力に変え、地球の技術者の協力を得て、改造してるのではないかと言っていた。昔か今かはわからないが、冒険者が居るくらいだ、そういう奴が居ても不思議ではない。


それとやはりギルドは俺たちがスキルの玉だとは気づいてると思ってないらしい。ミレイはギルドマスターと相談し、再度懐柔に動けと命令されたようだ。玉も、『今回に限って』金貨500枚まで出しても良いと言われてると言う。そのかわり今後は大人しく売れと約束させるつもりのようだ。


ギルドは玉を欲しがってるのではなく、俺たちの手元にあることによって、万が一スキルの玉だとバレることを恐れてるのだと言う。それはそうだろう。まだ玉からスキルを取り出す方法はわかってないが、もし取れたらギルドに金を払わなくても良くなる。もちろん転移門がなければ結局は異世界にはいけないのだが、優位性の一つがなくなるのは避けたいのだろう。




「じゃあベティ。今回は残ってくれ」


ベティは俯いて、


「お戻りになりますよね……」


ベティはすごく不安そうだ。

俺はベティの唇にキスをした。


「大丈夫、今回は必ず戻れるから。安心しろ」

「はい……」

「行ってくる」

「行ってらっしゃいませ」





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





転移門の部屋に入り、呼びボタンを押すとミレイが飛んできた。


「帰るの?」

「ああ、とりあえずな」

「玉を売るつもりはないの?」

「今はな、でも向こうで金が必要なんだ。そのうち売るかもしれない」

「そう、一応言っとくけど、次に来た時までに売るなら、今回に限っては高値で買ってもいいわよ?ただし、見つけたら毎回それをギルドに売る約束をしなさい」

「そっか。考えとくよ」

「ええ。次はいつ?」

「まあ、1週間後ぐらいかな?」

「わかったわ。待ってる」

「ああ」


今回はエリーを先に行かせた。俺たちが居なくなったあとにエリーに何かあっては困るからだ。

エリーの転移が終わったあと、俺たちも転移門に乗る。ミレイはミランダに渡してくれとバッグを1つ持たせてきた。


シュン


一瞬で日本に着く。


「おかえりなさい、ジンサイトさん」

「ああ、ただいまミランダ、これを」


俺はミレイから渡されていたバッグをミランダに渡す。


「ありがとう、ジンサイトさんのバッグも受け取ります」

「だな」


俺とアヤカは亜空間バッグの中身を全てだし、車に積み替えた。

水の樽を向こうに置いてきて良かった。



そそくさと車に乗り、まずは俺の家に向かう。


「ドキドキします、仁さん……」

「ああ、俺もだ」


これがじいさんの数珠と同じならば、良くも悪くも事態が動く。

やはり心が落ち着かない。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




家についた。

飛び出るようにドアを開け、急いで家の中に入る。そしてじいさんの数珠を掴み取る。


「っ!!!アヤカ、見ろ!!」


アヤカに数珠を見せると、


「見ろ!数珠なのに中に糸が通ってない!!どうやってくっついてるんだ?!」


葬式の時は気づかなかったが、数珠のように形は変化するのに、玉の中に糸が通ってないのだ。ありえない。

物理的に説明がつかない。

アヤカはおずおずと数珠を両手で握り目を閉じた。


パラン!


「っ!」


なんと数珠はさっきまでの形状が嘘のように、27個のガラス玉にほぐれたのだ。


「アヤカ!何した?!」


アヤカはゆっくりと俺を見て、


「……魔力を……込めました」

「マジかよ……」

「確定です。おじいちゃんは異世界に行ってたか、異世界人です」

「あー、その線もあるのか。でも戸籍は?」

「アングラですが、戸籍の売買も不可能ではありません」

「確かに……」


アヤカは数珠を握りしめて、天井を仰ぎ見てため息をつく。


「おじいちゃん……」

「やってくれるぜ……」


しばらくするとアヤカは俺を見る。


「ならば玉の中の光はどこに行ったのでしょう」

「なんかじいさんが他に何か残してないのか?」

「おじいちゃんの遺品は全部整理しましたが……」


するとアヤカはポンと手を叩き、


「納屋!!納屋があります!!そこに何かあるかもしれません!」

「よし、行こう」

「はい!」


俺たちは急いで車を走らせた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「仁さん、こっちです!」


近藤家の庭につき、車を止めるとアヤカはダッシュで走り出した。

納屋はガレージのような掘っ立て小屋の隣にひっそりと佇んでいた。多分室内は6畳あるかないかだろう。

トタンの壁の、木にトタンを貼り付けただけのドアを開け中を見る。


中は壁沿いに棚がびっしりとつけられていて、床はほとんど地面が露出している。俺とアヤカは棚を引っ掻き回すように、本かヒントになるものを探していく。


ない、何もない。


「仁さん」


アヤカに呼ばれて目を向けると、部屋の奥の方の地面に、工事現場で使うような分厚い鉄板が無造作に敷いてあった。

大きさは畳一畳分ぐらいだ。


俺は近くにあったバールを持ち、鉄板の隙間にバールを入れて、テコの要領で力を入れる。


「ふんんんん!!」


全く動かない。1ミリも動かない。

この工事現場の鉄板のような奴は重い。それはそうだ、通常この上をダンプなどが走ったりするのだから。


だが、ここまで動かないわけはない。浮かすわけではない、横にずらすだけなのだから。この動かなさは異常だ。


「アヤカ」

「はい!」


アヤカは土のついた汚れた鉄板に手のひらを当て、目を閉じて魔力を流す。


ボワーン


鉄板は淡い光を放って、ゆっくりと蓋のように開き出した。

俺とアヤカは顔を見合わせる。


「仁さん……」

「行こう」


少し涙目になってるアヤカの手を握り、大きく口を開けた鉄板の地下室の階段を降りる。


地下は結構深いようだ。

俺はスマホを取り出し、ライトをつけて先に進む。アヤカは怯えるように俺の腕を掴んでいる。


俺はアヤカの様子に少し吹き出しそうになった。オークの大群に向かって行くくせに、こんな地下室くらいで何を怯えてるのか。


バタン


鉄板の扉が自動で閉まった。

俺は一瞬振り返ったが、前に向き直り先へと降り進む。


階段の終わりが来た。地下10mほど降りたのではなかろうか。

階段の右手側に古風なスイッチが付いてたので、俺はおもむろにそれを入れる。


パッ!!


一気に照明がついた。

少し眩しくて目を瞑ったが、そーっと目を開ける。


「嘘…………」

「まじかよ……」


地下の室内は20畳ほどある。そこのど真ん中に、


転移門が置いてあった。


電気がついた室内を見て回る。


そこはもう博物館のようだった。


宝物庫に鎮座していそうな騎士剣、拳大の宝石のようなものがついた杖、先が3本に割れている槍、グローブの先に刃物がついたガントレット、まるでロボットのような全身鎧、禍々しい形をしている一対の短剣、水をそのまま生地にしたような瑞々しいほどのドレス、様々な物が何十個と飾るように置かれていた。


「仁さん、これ……」


俺が装備類を眺めていると、アヤカが俺を呼んだ。転移門につながるパソコンのキーボードの上に、白い封筒が置かれている。


俺はアヤカに気を遣ったのだが、アヤカは黙って頷いたので、俺はそれを手にとって中身を確かめた。



拝啓、これを読んでるものへ。


ワシは近藤 友蔵。

これを見ているということは、ノヴァリースに行ったことがあるものじゃろ。じゃから行ったことがあると仮定して話をする。


まずこの転移門に驚いたじゃろうが、実はこれが試作機第一号じゃ。

ワシが?残念ながら違う。アレクサンドラと言うエルフが作ったものじゃ。

何故これがここにあるかと言われると、話せば長くなるのじゃが、一言で言えば、アレクサンドラはこの地球に迷い込み、帰るためにこれを作り上げたと言うことじゃ。

もっと詳しくじゃと?お前さんには必要ないじゃろ。これはワシとアレクサンドラの大切な思い出じゃ。


ここにある品々はワシが若い時にアレクサンドラとノヴァリースを冒険した時に得たものじゃ。もうワシには必要ない、好きに使うといい。

転移門も使いたいなら使うといい。転移先はフェルズ共和国の外れじゃ。


もっと色々教えろ?バカモン!少しは自分で調べんか!ワシにはワシの冒険があった、お前さんにはお前さんの冒険があるじゃろ。

試行錯誤も楽しみのうちじゃて。なんでもやってみればいいんじゃ。


くれぐれも無茶はするでないぞ?

頑張りなさい。



追伸


彩花よ、もし彩花がこれを読んどるなら安心せい。彩花はアレクサンドラの子でも孫でもないわい。歴とした日本人じゃ。



「「…………」」


俺とアヤカは顔を見合わせる。

徐々に怒りがこみ上げてきて、ほぼ同時に叫んだ。


「おじいちゃぁぁぁぁん!!」

「こんの、くそじじいぃ!!」


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