悪魔と小悪魔
「焦らしが長すぎます、ご主人様」
「いや、ほら、アヤカもエリーも居るし」
「ご主人様は言いました、これは私の権利だと」
「いや、そう言ったがよ」
お分かりだろう、風呂だ。
ベティは俺たちが依頼から帰ると、急いで風呂を沸かし、風呂に入れと催促してきた。
「私は待ちました。充分待ちました。ご主人様の居ない10日間も、お帰りになってからの今日までも、一切不平を言わずに待ちました。もう我慢の限界です。溢れてしまっています」
「…………」
一体何が溢れてると言うのか。
だが、ここでハイそうですかと言ってしまったら、修羅が目覚めるだろう。俺はまだ北斗七星の隣の星は見たくない。
俺が俯き思案していると、ベティは涙をツーっと流した。
「わかりました……。所詮私は盗賊に犯された女。汚らわしいですよね。それに奴隷の分際で権利など。……やっぱりお給金もお返しします。申し訳ありませんでした…………」
「っ!わかった、わかったから!ベティは汚らわしくない!!」
俺ベティの両肩をつかみ、ベティを見つめる。ベティも潤んだ瞳で俺を見る。
「……本当ですか?」
「ああ、本当だ!」
「…………入りますか?」
「ああ!入るよ!」
「二言はありませんか?」
「ない!」
「……ではご準備します」
「ああ……」
ベティは風呂の準備に取り掛かりはじめた。
とりあえずアヤカには話をしてわかってもらおう。ちゃんと説明すれば理解してもらえるはず。
……ん?ベティ、アヤカに何を渡してる?……何故アヤカに頭を下げてるんだ?……っ!それ目薬?!目薬ですよね!?
俺が文句を言おうと口を開いた瞬間、2人はグリンとこっちを向いた。
「二言はないのですよね」
「仁さん、不平等はなしですよね?」
「っ!」
俺はもうヤケになった。
「あーもう!やってやるよ畜生!!まとめてぐっちゃぐちゃにしてやる!後悔するんじゃねえぞ!!」
その夜、2人の女は悪魔の恐ろしさを一晩かけて身体に刻み込まれた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
~ジンの知らない舞台裏~
「ベティさん、協力しませんか?」
アヤカさんはオークの集落討伐出発前、ご主人様が自室でエリーと2人で話をしている時に私に話を持ちかけた。
私はご主人様の部屋に聞き耳を立てるようにしていたところをアヤカさんに話しかけられ、ちょっと恥ずかしいと言う思いと、うるさいなと言う思いで眉をしかめた。
「何をですか?」
「仁さんとベッドを共にすることです」
アヤカさんの言葉に私はちょっと驚いた。それは何故か。
「……何を言ってるのですか?あなたは奥様にもなれる方、むしろ私がお邪魔なのでは?」
アヤカさんは首を横に振る。
「それがそう簡単にはいかないのです。仁さんは何故か私を抱こうとしません。興味はありそうな視線を感じていますが躊躇してるのです。こう言うのは、あまり時間が開いてしまうと逆に抱けなくなるのです、私も少々焦ってます」
「……」
「ベティさんはもう仁さんと寝ているのでしょう?……いや、お話を聞いた限りですとお風呂場でなさってると言うことですか?」
私はアヤカさんの言動の意味がわからないが、顔つきを見る限り嘘をついても仕方ないなと思った。
「その通りです」
「私もそこに参加させてください」
「っ!!」
「きっかけが欲しいのです。きっかけさえ出来てしまえば後は楽です。……ベティさんもお風呂の約束を取り付けるまで大変だったんじゃないですか?」
「…………」
たしかに大変だった。一瞬男色なんじゃないかと疑ったこともある。
「仁さんは女を2人持つと言うことにさえ抵抗を見せるのはご存知ですよね?あの人の中の常識では、ベティさんにお金をたくさん持たせて自由にしてあげることがベティさんの幸せと勘違いしてますよ?そう言う人なのです」
言われなくてもわかってる。そんなそぶりは何度も見てる。
「ですから協力しましょう。私はきっかけが欲しい、あなたは仁さんとずっと共に居たい。……私たちが協力すればなんでも叶います。そして、仁さんは2倍幸せになれます。そう、思いませんか?」
「…………」
アヤカさんは小さな水の小瓶を渡してきた。
「これは目薬といいます。仁さんは女の涙にはとことん弱いです。権利や義務で攻め立てるよりも、古典的な女のやり方のがよく効く人です」
「あなたは…………」
アヤカさんはにっこりと笑う。
「私たちの想いは同じ。いつまでも仁さんと共に。独占したいわけではない。でも仁さんを全身全霊で幸せにしたいし、自分も仁さんと居るのが幸せ。ですよね?」
「…………」
私とアヤカさんはかたく握手をした。
デーモンが2人の女を蹂躙しているその夜、そのドアを少しあけ、のぞいている少女が1人。
「うわぁ……エッロ!……、わっ、すごっ。ネットより迫力ある……。……嘘っ、腕?!…………、入った…………、…………エリー、入るかな…………」
エリーのその白い指は、悪魔に抗うような女の嬌声に合わせるように、自身の乙女を優しくなぞり上げた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
やってしまった。
とうとうやってしまった。
しかも2人同時にやってしまった。
もちろんどちらも良い女だ。俺にはもったいないほどの女たちだ。だがどちらも恋愛感情があるかと問われると、はっきり断言することができない。
それなのにやっちまった。
朝日が差し込むベッドを見る。
そこには疲れ果てて眠る女が2人。
現地人らしく、少しだけ小麦色に日焼けした肌。ブロンドの肩口ほどの長さの髪は、毎日洗っている効果が遺憾なく発揮され、朝日を照り返している。
そして程よい肉付きで、お尻はぷりんとしている。日頃、よく働いている証拠だろう。
もう1人は、豊満な肉体の女。
柔らかな白目の肌が朝日に眩しい。
どこを触っても柔らかく女性的なラインなのに、全くデブには見えないから不思議だ。
胸はFとブラに書いてあったが、ここまでデカイとは思わなかった。俺が鷲掴みすると指の間から肉がはみ出ると言うのは、想像より破壊力があった。それに10代でもないのに、ここまで重力に抵抗できてるのは素晴らしいと思う。どこもかしこもしっかりと上を向いている。
ベティが起き上がってきた。
「おはよう、ベティ」
「…………、おはようございます、ご主人様」
ベティはベッドから起き上がろうとするも、ガクッと腰砕けになりベッドから落ちそうになった。俺は急いで支える。
「大丈夫か?」
「すいません、昨日の余韻が……」
と言って顔を赤らめた。
やめろ、そんな顔をされると反応してしまうから。
「す、すぐ朝食の準備を致します」
ベティは下着だけ身につけ、服を持って出て行った。
同時にアヤカも眼を覚ます。
「おはようございます、仁さん」
「おはよう、アヤカ」
アヤカは掛け布団のシーツを胸元で持ち、胸を隠しながら髪をかきあげる。
そして、目線を自分の太ももあたりに落とした。
「どうした?」
アヤカは俺を見る。
「…………まだ入ってるみたい……」
だからやめろ。朝から反応させようとしてくるな。
「仁さん、ありがとうございます」
「……」
礼を言われるとこっちが困る。むしろ『ありがとうございます!ごちそう様でした!』と言うのはこっちのセリフだと言うのに。
「前にも言いましたが結婚を迫ったりはしませんから。仁さんさえ良かったら、ずっとそばにいさせてください」
「……」
どう返事して良いかわからない。
俺もだんだんわかってきた。
アヤカは爆弾みたいな女だ。セクシーで可愛く、顔も歳も俺好みだし文句の付け所がない。だが、中身が想像と違いすぎた。
上手くやっていけるのだろうか、少し自信がない。……やっちまったが……。
「仁さん」
「っ、へ?」
いきなりアヤカに話しかけられてびっくりした。
「そう言う時は私が他の男に抱かれてるところを想像してみてください」
「抱かれる……」
また何を言ってんだこいつは。
アヤカが他の男に抱かれる……。俺が初めての女……。他の男があの大きな胸を……、くびれをなぞり、魅惑的な脚を…………そして…………。
「嫌だな……」
とボソリと言うと、アヤカはにっこりとして、
「それで充分です」
「……そうか……、って人の心を読むんじゃねーよ!!」
アヤカは小悪魔のように笑う。
「仁さん、わかりやすいから」
「うるせえ!!とっとと着替えろ!」
「はい」
全く……先が思いやられるよ……。




