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緊急依頼

朝飯を食ってるところでエリーがぎゃあぎゃあわめく。やっぱガキだ。


「もうちょっと同居人に気を使えないわけ?!」

「お前は居候だろうが」

「ひどっ!ジンはちゃんと認めたじゃん!」


身長が140あるかないかのまるで小学生みたいな女、銀髪の三つ編みを二本前に垂らしたイタリアとロシアのハーフ。ロリコンホイホイのエリーが子供みたいに騒ぐ。


「エリーにだって言う権利はあるわよ!」

「うるせえ、黙って飯を食え」


それでもまだ何やらとエリーが言ってるが、アヤカが、


「エリー?」


と優しく微笑みながら呼んだ。エリーは少し怯んだように、


「な、何よ?」

「あまり騒ぐようですと、昨日の晩、エリーがどこで何────」

「わあああああああ!!!」


エリーはいきなりガタンと椅子から立ち上がり、両手をあげてブンブンと振り、アヤカの言葉を遮った。エリーは何故が一瞬で涙目だ。


「はい、大人しくしましょうね?」

「あんた、見てたの?」

「もちろんです」

「おい、何の話だ?」


と、俺がアヤカに聞くと、アヤカは微笑んだまま、エリーは顔を真っ赤にして2人同時に答えた。


「「ジン(さん)には関係ないのよ!!」話です」

「……」


料理の最後の一品をベティが持ってきた。


「ベティ、一緒に食えよ」

「はい、一緒に頂かせてもらいます」


ベティも食卓へ座った。

俺はエリーたちを追求するのも面倒だったので話を切り替えた。


「えー、まず今日はギルドにオークを渡してあるから、それの代金を貰いに行ってくる。そのあとは引っ越しすることになる」

「ご主人様、場所はもうわかっております、鍵も頂いております。後はご主人様の亜空間バッグがあれば引っ越しは行えます」

「お、そうか」


オーク討伐の数日間の間にミレイとベティで段取りはしといてくれたようだ。


「なら飯食ったらやろうか。それとエリー、お前の方はどうなんだ?」

「……」


エリーはスープを飲んでいた手を止め、俺をきつい視線で見上げた。何か言い淀んでるようだ。


「何だ?まだ薬草覚えてないのかよ」

「…………」


エリーは答えない。するとアヤカは軽くため息をつき、


「エリー、仁さんには何でも素直に答えるのが得策ですよ?あなたの浅知恵程度では考えるだけ逆効果です」


と言った。エリーはキッとアヤカを睨んだ。だが、何かを諦めたような顔で、


「あんたまるで後宮(シラーリオ)管理人(ディレトーレ)みたいね」

「そう思ってもらって構いませんよ」


何だ?どうなってる。

エリーはふんっと鼻を鳴らし、俺に向き直った。


「薬草は覚えたわ。あの猫女にはもう薬草採取は終わりと言われたわ。薬草採取をやりたい人はたくさんいるから、次の子供達のために薬草採取を卒業しろって言われたの」

「ほう」


意外だ。ちゃんとまじめにやってたのか。するとエリーは自分のパーカーのポケットから金貨5枚取り出してテーブルに置いた。


「…………とりあえずこれだけ返すわ」

「いい、やるから持ってろ」


もうくれてやったんだ。こいつのこれからには金が必要だろう。だがエリーは苦虫を噛み潰したような顔をする。そしてチラリとアヤカを見た。アヤカは何も言わずにエリーに頷いた。

エリーは苦しそうな顔でまた俺を見る。


「……お金は稼げた。でもエリー一人でやってく自信がないの。…………お願い、エリーをパーティに入れて。一緒に生活させて……」

「…………」


どうする。正直エリーを入れることのメリットはない気がする。

それに手間がかかる女が増えるだけだ。こいつも性格に難ありだし、アヤカと俺がいればそれなりの仕事はこなせるはずだ。


するとアヤカが、


「仁さん、信頼できる戦力と言うのはなかなか手に入らないものです。エリーはもう裏切ることはないでしょう。充分反省もしています」

「でもよ……」

「今は手が足りてるように思えるかも知れませんが、仁さんがこれから進む道には必ず人手が必要です。悪くないと思いますが」

「あぶねーんだよ。こいつがあのオークとかと戦えるとは思えねえよ」


ガタンとエリーが立ち上がる。


「エリー頑張るから!ジンの言うことにも従う!!お願いよ!」

「んー……」


するとアヤカはエリーに耳打ちをした。エリーもボソボソとアヤカに答える。再度アヤカがエリーに耳打ちすると、


「エリーは職業斥候なのっ!戦うよりも調査とか潜入とかそう言うのが向いてるかも!危なくないようにするわ!」

「……」


俺はアヤカを半眼で見るが、アヤカはにっこりとするだけだ。


「あー、わかったよ。じゃあスキルのレンタルから練り直しだな」

「やったっ!!」


エリーはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。


「良かったですね、エリー」


エリーはアヤカを睨みつけ、


「あんたホントおっかないわ……。何モンなのよ」

「私はただのレイヤーですよ?」

「っ!レイヤーなの?!」

「ええ、一木アキラの名前でレイヤーしてます」

「っ!そう言えばネットで見たことあるかも!うっそ、超有名じゃない!!」

「そうでもありません」


そっからは二人のコスプレ談義が始まった。

まあ、丸く収まったような気もするが、やはりアヤカがフィクサーなのではないだろうか。

ひょっとしたら俺もアヤカに良いように使われてるだけなんじゃ。


するといきなりアヤカはこちらを向いて、


「私の全ては仁さんのものです。永遠に……」

「だから心を読むんじゃねえよ!!」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




ベティがバッグを置いてってくれるなら引っ越しはやっておくと言うのでベティに亜空間バッグは預けた。するとアヤカもエリーと一緒にベティを手伝って日用品などの補充をバッグにしておくと言う。


ということで一人で普通のリュックを背負い、一応冒険者装備も身につけて冒険者ギルドに来た。

装備はアヤカが、『いつ何があるかわからないから丸腰はダメだ』と言う。街中で何があると言うのか。


「よお、ミレイ」

「ジン。計算は出来てるわ。詳細が必要?」

「あー、いいや。任せるよ」


ミレイは皮袋をドサッとカウンターに置く。なかなか重そうだ。


「簡単に。依頼の報酬はまだよ。確認が取れたら一人頭金貨5枚が出るわ。それとオークキングだけど買取でいいのよね?」

「というと?」

「素材として鎧にしたりも出来るけど」

「あー、面倒だからいいや」

「面倒って……。ジン、装備はちゃんと手入れをしなさいよ?」

「手入れって言ってもよ」

「出来ないなら鍛冶屋に行ってしてもらいなさい。とにかく放置はダメよ?」

「わかったよ、これから行くよ」


ミレイははぁ、とため息をつき、


「オークキングで金貨100枚、それ以外のオーク全てで金貨150枚、合計250枚よ」

「マジか!!」


一気に大金持ちだ。アヤカも俺もレンタル代が一人百万以下だ。金貨にすれば10枚以下。ならば2300万のプラスと言うことになる。


(これは異世界バブルか?とんでもねえな)


いくら命がけと言っても日本でここまでの儲けは簡単には出ない。だがそのまま日本には持って帰れないのが痛いところだ、収入証明が出来ないからだ。


俺が金を受け取りリュックに皮袋をしまうと、ミレイは登録証を裏側で返してきた。

なんだ?浮かない顔だなと思ってたが、何かあるのか?

俺は一度自宅に帰って地下から転移門の部屋へ入り直した。






「悪いけどまた緊急依頼よ」

「いいけど、何かあったのか?」


ミレイの話はこうだ。


ここから東に5日ほど行った所にガランドン王国という国があるらしい。その国との国境ギリギリあたりに古代の遺跡があって、その遺跡に調査に行っている日本人が消息を絶ったと言うのだ。それの生存確認と救出に向かって欲しいと言う。その日本人は二人組でガランドンで仕事をしているとのこと。日本では旭川支店の冒険者らしい。


「出来るだけ早く出発して欲しいの。ジンたちもレンタル期限があるから一度は地球へ戻ってもらうけど、すぐにこっちへ戻ってきて」

「どのくらいだよ」

「最低でも今日を含めて3日以内には戻って。もしかしたら生きてるかも知れないから……」


その二人は亜空間バッグをレンタルしてるが、昨日が依頼の期日らしい。亜空間バッグは依頼の期日から10日が経つとギルドに戻って来てしまうと言う魔法仕様なので、その中に物資を入れているなら物資ごとギルドに戻ってしまう。そうなるとそいつらは水も食料も無くなることになるから、命の危険があるとのことだ。


「なるほど、なら本当にギリギリだな」

「ええ、そう。その人たちも割とベテランだから死なせたくないのよ」


新人なら死なせてもいいのかと突っ込みたかったがやめといた。


「わかった。すぐに準備に取り掛かる」

「ええ、頼むわ。気をつけて」


俺は自宅に戻った。

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