男の生き様
「では行ってまいります」
「ほ、本当に2人で行くのかい?」
「もちろんです。本気の仁さんを舐めないでいただきたいです」
「……」
俺は何も言わないで歩いた。
俺をここまで煽ったアヤカを恨んではいない。むしろ自分で決断した。
そんな自殺行為を何故するのか。
別に功名心が0とは言わないが、そんな理由でやるわけでもない。ましてや、さらわれた女たちを助けるためでもない。
限界が、
自分の限界が知りたかった。
自分はどこまでやれるのか。
本当に俺には力があるのか。
俺の今までの感触でも、剣術レベル3と身体強化レベル2の相乗効果はまだまだこんなもんじゃないと感じてる。
命がかかってるのに。
俺もアヤカに乗せられて麻痺してるのかもしれない。
でも……、どうしてもやってみたかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ブシュ!
俺はすぐさまオークの懐に入り込み、一撃で絶命させていく。まるで無人の野を歩くがごとく歩き進む。
徐々にオークの数も増える。
一体が二体同時に、三体を斬り捨てると六体の編隊が俺たちを襲う。
だが、俺は次々とオークを殺していく。
(動く、見える。身体が軽く感じる)
50はやっただろうか、次第にオークの数もどんどん増える。
「感電嵐!」
ズガガガガガガァァァァァン!!
アヤカが魔法を唱えると、轟音と共に雷が降り注ぎオークが動きを止めていく。俺はそれを心臓を、首を一突きにしてオークを屠る。
「仁さん、寄って!」
俺は後ろ向きにジャンプし、アヤカの隣に立つと、アヤカの腰までスリットが入ったロングスカードが、下から風を受けてるかのように大きく花開く。
「はあああ!!私の魔力よ!!唸れ!ファイアァァァァ、ウエィブ!!!」
ゴオオオオオオオオオオオ!!
火の壁がボワっと地面から立ち上り、それが放射線状に広がりながら、オークを次々と焼いていく。
『『プギィィィィィィィィ!!』』
オークの断末魔が辺り一面に響き渡る。
すると、火の中から一回り大きなオークが飛び出してきた。
俺は右に避けつつ腕を切り落とし、後ろに回りつつ膝を砕いた。
動けなくなり膝を地についたオークはものすごい目で俺を睨んできた。その目つきは俺が首に剣を差し入れても続いていた。
流石に疲れが貯まる。アヤカも肩で息をしているが、身を奮い立たせながら魔法を唱え続ける。
「ロック、バレット!!!」
ズドドドドドドドドド!
ガトリングガンのように石の玉が発射され、オークの身体を次々と蜂の巣にしていく。俺はアヤカの頭を飛び越えて、剣を袈裟斬りに振り下ろす。
ズバン!
アヤカを背中から狙っていた、一回り大きなオークは真っ二つになった。
「はあ、はあ、はあ、はあ、あと、あいつか、はあ、はあ」
「はい、…………あれが、、、ボスですね」
身長は3mはあるだろうか、ものすごい筋肉隆々で、ギロチンのような円盤のようなとんでもない刃渡りの剣?を担いで、オークは俺たちを見ながらニヤニヤとしている。
「豚頭め……」
アヤカは背中に背負っている亜空間バッグのリュックから、ポーションを二本取り出した。一本は俺に手渡し、一本は自分で一気飲みをする。俺も続いてポーションを煽る。
「仁さん、サポートします」
「いくぞっ!」
俺はオークボスに向かって走り出した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ブォン!
「ざっけんな!」
硬い、皮膚が異常に硬いのだ。
剣が当たってもかすり傷一つつけられない。対して敵の巨大オークの剣?は、一発当たったら確実に輪切りされる。
「ワールウィンド!」
アヤカの見えない風の刃を、オークは剣を楯のように寝かせることで魔法を防御した。
見えないのに何故狙いがわかるのか。
「はあああああああ!」
その隙に俺はオークの右側に回り込み、脇腹に向かって渾身の力で剣を突き入れる。
ザシュ!
刺さった。刺さったが、5cmほどしか刺さってない。全く致命傷にはなってないだろう。
ブォン!
オークの返す刀が来た。俺はそれをギリギリかわした
はずだった。
ほんの少し、ほんの少し頭をかすめただけなのだが、まるでハンマーに殴られたような衝撃が俺を襲う。
「ぐっ!!」
「仁さん!!」
視界が揺れる。
地面が空を塞いでいる。
俺は意識が闇に沈みそうになってるが、それを気合いで跳ね返す。
「うおおおおおああああああ!!」
だが、意識を失わなかっただけで、地面は揺れ、足が言うことを聞かない。
間違いなく脳が揺らされた証拠だ。
「スタティックトロン!スタティックトロン!!」
アヤカがオークに向かって懸命に魔法を唱えるも、もう魔力がないのだろう、ランクの低い魔法しか出せなくなっているようだ。
「いやあああ!仁さん!!」
オークはひざまずく俺の前に立ち、天に向かって剣を振り上げる。
するとアヤカが俺の上に覆いかぶさってきた。
「っ!バカヤロウ!!」
俺は最後の力をふりしぼり、アヤカを横に投げ飛ばす。
「やめてえええええええ!」
アヤカは俺に手を伸ばす。
覚悟を決めた。
俺の冒険はここまでのようだ。
俺はアヤカの方を向き、最後に笑顔をプレゼントした。
ドーーーーーン!
突然オークの頭が爆ぜた。
「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」
けたたましい雄叫びとともに冒険者達がオークボスに群がっていく。
「やれえ!!!キングを倒せえ!!」
ランスロットの叫び声が響き渡る。
生き残りの冒険者たちだ、撤退してなかったのか。冒険者たちは皆決意を固めたような顔をし、3m強の化け物のようなオークに突撃していく。
「だ、めだ、やめろ……」
ブォン!
「ぎゃあ!」
「がはっ!」
オークが剣を薙ぐたびに、胴体が泣き別れする奴らが地面に転がっていく。
「やめろおお!」
無理だ、お前らには敵いっこない。無駄死だ。
だが、冒険者達は引かない。まるで何かに取り憑かれたようだ。
「ああああああああ!!」
一際甲高い叫び声だ。
ティアモは短剣を両手に持ち、オークに突撃していく。だがティアモに向かってオークは剣を横薙ぎにする。
「よせ、ティアモオオオオオ!!」
キン!!
ザシュ!
「がはっ!」
「……」
トラオだ。
トラオはすんででティアモとオークの剣の間に入り、自身の剣を地面に突き立てオークの剣を堰き止めた。
だが、止まらなかった。
トラオの体は、トラオの大剣ごと真っ二つに割れ、ティアモはトラオの上半身と激突し吹っ飛ばされた。
「トラオオオオオ!!」
ティアモはすぐさま起き上がり、トラオの上半身を抱き上げる。
「ジス、ジィィィィス!!?」
だが、トラオは別れを惜しむ間も無く、物言わぬ肉塊と化していた。
「ジィス!お前、バカヤロー!!」
ティアモは大粒の涙を流す。
「仁さん!!、フライ!!」
状況は悲しんでる場合ではない。
アヤカが渾身の力を奮い、オークを2mほど浮かせた。
俺はすぐにピンと来た。皮膚が硬いなら、柔らかいところを突くしかない。
俺も渾身の力を奮い、浮いたオークの下に入る。オークは落下を始める。
「うおおおおおおおお!!」
オークの落下の勢いを利用して、最後の力をふりしぼり俺はオークの股間めがけて下から突き入れる。
グサッ!!!
俺は腕までがオークの体内に埋め込むほど、下から剣ごとボスオークを串刺しにした。
オークは目を見開き、絶命した。




