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最強のタッグ

転移門に2人で身を寄せ合いながら乗り、光から解放されるとそこにミレイが居た。


「……来たわね」

「ああ」

「登録証を貸して」

「ああ」


何故かミレイまでげんなりしている。

俺はアヤカの顔を見ると、アヤカはキョロキョロと周りを見渡している。


「はい、確認出来たわ。そっちの面倒くさい女、あんたも登録証を貸しなさい」


さんざんな言われ方をしたアヤカは、何食わぬ顔で登録証をミレイに渡した。


「お願いします」

「……ふんっ」


昨日何かあったのだろうか?アヤカの顔を見る。


「なんでもありません。ミランダさんにお願いして少し質問しただけです」


と言った。だがミレイは、


「少し?!!4時間が少し?!こまっかいとこまでグチグチグチグチ!シャンプーがなかったら絶対対応してないわよ?!」

「…………」


なるほど、昨日はミランダだけでなくミレイも巻き込んだと。しかもシャンプーで買収したと。


「ありがとうございました。後日仁さんの自宅に取りに来てください。ご用意しておきます」

「今日の夜行くわよ!」


ミレイは文句を言いながらぴこぴことパソコンを操作する。


「なっ!!」


いきなりミレイが目を見開いた。


「セッ、賢者の女王(セージクイーン)ですって!!!」

「あん?」


ミレイが叫び、驚愕の顔でアヤカを見る。

アヤカは驚いた様子もなく、


「やはり凄いのですね」

「あ、当たり前じゃない!女性の魔術系の最高峰の職業よ!!」

「……は?」

「だと思いました」


アヤカは澄まし顔だ。

俺がアヤカをぽかんと見つめるとアヤカはニッコリと微笑んだ。


「私、仁さんのために頑張りますね?」

「お、おう……」


ミレイは先ほどとうってかわって、「これは掘り出し物だわ」「私のボーナス、いや大出世が目の前に」とかブツブツ言い始めた。


「おいミレイ、そのなんたらクイーンって何だよ?」


ミレイはくるりと首を俺に向け、


「もう幻の、いえ、伝説の職業よ!ものすごく修行すれば、一撃の最高火力はマジカルスターやエンシェントウィザードにかなわないけれど、神聖系まで含めたどんな魔法にも適性がある万能職よ、それも極めて高い水準でね」

「ど、どれくらいすごいんだ?」

「最後に確認されたのは800年前よ、そしてその方は魔術ギルドの創始者」

「マジかよ……」


アヤカはとんだ化け物だった。だが現地人の意味とはちょっと違って、地球人の場合はレンタルスキルに対する適正って意味だが。それでも充分凄い。


「じゃあ、俺は?」

「は?あんたのは地球人専用かしら?見たことないわ。まあでも、あんた向こうで何でも屋をやってんでしょ?同じじゃない。それが表示されただけでしょ」

「……」


なんか、俺の扱いがいきなり雑になった。

なんだこれ。

するとアヤカは俺の肩に両手を置き、胸を押し付けてくる。


「安心してください、私の全ては仁さんの為に。私の力は仁さんの力です」

「……」


俺は微妙な気分になった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




地下道を通って仮自宅に入る。あとで魔術鍵にアヤカも登録してもらわないとな。


「おか……、えりなさいませ、ご主人様」


忘れていた。ベティのことを。ベティはアヤカを見ると一瞬目を見開いたが、何か全てを悟ったような顔をした。


「意外と早かったのですね」

「あ、あー、いや、そうでもないだろ?」

「違います。この日が来ると言う意味です」


ベティの顔は冷静だ。逆に冷静すぎる。まるで氷の女王と言う顔だ。

ベティはその表情のまま、目線はアヤカを見つめたまま俺に話しかける。


「ご主人様、()()が例の()()人ですか?」


コレ呼ばわりはないだろと思いつつも、例のアノ人ってのは俺に好きな人はいるかってあの話のことを言っているのだろう。


「ああ、そうだ」

「来られないはずでは?」

「……予定が変わった」


ベティはまだアヤカを見つめたままだ。アヤカも黙ってベティを見つめている。


「ご主人様、私の待遇は()()今まで通りと思ってよろしいのでしょうか?」

「?」


それは永遠に奴隷メイドって意味か?


「いや、もちろんベティが望むなら変更────」


ぐりん!!


ベティはホラー映画に出てくる人形のように、首だけをすごい勢いで俺に向けた。俺はビクッとしてしまった。


「私は待遇の変更を望んでいません。今後も先日お話した()()()()()を希望します」

「お、あ、び、びっくりした……。ああ、もちろんベティが望むなら待遇は変えない」


ベティの目つきが鋭くなる。


「お約束頂けますか?」

「ああ、ベティが望む限り勝手に変えないから安心しろ」


きっとアヤカが来たから、自分は放り出されると心配してるのだろう。そんなことはしないと明言しておかなくては。ベティもやりづらいだろうし心配しながら生活していたら疲れてしまう。


すると憑き物が取れたようにベティの表情がニッコリと変わり、


「安心いたしました」


そして優しい顔でアヤカを見て、


「はじめまして奥様、私は奴隷メイドのベティです。以後宜しくお願いいたします」


と、深々と頭を下げた。

するとアヤカは、


「はじめまして、ベティさん。私は妻ではありません。仁さんの従者です。ですが特別な事情があり、仁さんから離れることは出来ません。こちらでご厄介になりますが、よろしくお願いしますね」


アヤカの表情は笑顔だ。だがアヤカも人形のように人間味がない笑顔になっている。なんか怖い。


「私にはどちらも同じ事。私の処遇の詳細はご主人様にお聞きしてください」


ベティも人形のような笑顔でアヤカに告げた。アヤカもそれに人形のような笑顔で答える。


「大丈夫です、もう全て聞いておりますから」


全て聞いてる?俺は話してないぞ?


「そうですか。ならば当家の入浴方法もご存知なのですね?」

「入浴方法?」

「っ!!!」


俺は今思い出した。そしてベティのさっきの問いの真の意味を理解した。冷や汗が背中を流れる。

アヤカは眉を顰めて俺を見る。ベティは余裕の表情でアヤカに言う。


「ええ、詳細はご主人様に聞いてください。ご主人様、よろしいのですよね?」


ベティの笑顔の裏には『てめえ今更覆したりしねえだろうな?てめえは約束と言ったぞ』と言いたげな堅い意志を感じる。そして怖い。オークより怖い。


「あ、ああ、ベティの権利だ…………」


ベティはニッコリとして、


「はい、私の権利です」

「仁さん、入浴方法ってなんですか?」


俺はだらだらと汗を掻く。


「あー、いや、その、まあ、また今度な……」


するとベティが、


「あらあら、そんなに汗をおかきになって。汗をお流ししましょうか。お風呂を沸かしますね、もちろん当家の入浴方法で」

「ま、待て!風呂はいい!と、とりあえず今はいいから!」

「そうですか」


ベティはいたずらっ子のような笑みで俺とアヤカを見た。


(こ、こいつ、わかって遊んでやがる!つうかまずい、アヤカになんて説明すれば…………)


だが、アヤカは何かピンと来たようだ。

そして俺の腕をそっと掴んできた。


「なるほど…………、そう言うことですか。あちらが先輩なのですね…………」

「い、いやアヤカ、あの」


俺は後ろを振り返る。

修羅だ、笑顔の修羅がいる。

ここが世紀末ならばこのお方は間違いなく秘孔を突けるに違いない。

そしてアヤカの口から出るセリフと雰囲気がまるで噛み合ってない。


「仁さん、安心してください。異世界にはハーレムは付き物。私は妻ではないのですから、その程度で何も言いません」

「ア、アヤカ────」

「ですが」


アヤカは俺の腕をつねった。


「っ!」

「不公平はいけません。…………わかりますね?」

「あ、ああ、もちろんだ……」


アヤカは手を離した。そしてニッコリと微笑む。


「ならいいのです」


これは参った。先が思いやられそうだ。

いや、これはアヤカとベティに任せる問題ではない。俺がどうするのかしっかりしなくては。

するとアヤカが俺の前に回り込む。


「仁さん、わかっていないかもしれませんが、この世界ではハーレムは罪ではありません」

「っ!」

「いえ、むしろ生活が盤石ならばどれだけ女を囲っても正義なのですよ?女もそれをわかっていますし、下手な男性に付き添うならその何倍も幸せになれるのですから。ね?ベティさん?」


アヤカは後ろを振り返り、ベティに相槌を催促する。

ベティも、


「はい、この世界ではそれが普通です。ご主人様、『女性を囲う』と言う意識は捨ててください。ご主人様の能力(経済力)の範囲内で『女性を守る』のです。そして女は守られている対価を全身全霊で返す。ただそれだけなのですから。どちらかを選ぶと言うのは聞こえは良いですが、むしろ選ばれずに放り出された女の未来は悲惨なものです。助けているという意識を持ってください」

「…………」


そう言われると少し心が軽くなる。

どうしても『金にモノをいわせて女を侍らしている』と言うイメージが強いが、女性もそれを望み、自ら庇護を求めていると思えば罪悪感は薄れる。


俺が考えていると、アヤカとベティが見つめあっているのが視界に入った。ちょっと悪巧みのような笑顔で片側の口角を上げている。

どう言うこと?!


「貴女とは上手くやれるかもしれません」

「はい、私もです」

「「ウフフフフフ」」


背中がゾワっとした。

これで良かったのかもしれない。

そう思い始めていたのに、


「あ、ご主人様。忘れておりましたが外に変なのが」

「あん?」


ベティは地下ではなく正面玄関を指差した。

俺は玄関の戸を開ける。


ギイ


そこには、ドアに聞き耳を立てるように寄り添っている子供がいた。


「てめえ…………」

「あは、あはは~、、こんにちは、ジン……」


イタリアとロシアのハーフ、エリーことエレーナだった。


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