お前の異世界は間違っている!
「おはようございます」
「はぁ~~」
俺は朝から大きなため息をついた。
アヤカがウチに来た。
車から降りたアヤカはとんでもない格好をしていた。
いや、今までのコスプレのなかでは1番露出が少ない。少ないのだが、一体こんな服をどこで買うのか。
まず紺色のくるぶし丈まであるロングワンピースを着ているのだが、上半身は体のラインが浮き出るぴったりした感じで、下半身は腰まで、本当に腰までスリットが入っている。角度によっては中は間違いなく丸見えだ。
そして上半身は半袖で、腕は黒いストッキングのようなシースルーの袖になっている。そして白い胸当て?肩とおっぱいだけを隠すような鎧みたいなのをつけている。
「これは七空やちよのコスです」
「……」
「魔法少女です」
「そうですか……」
俺はもう一度ため息をついてから、
「アヤカ、お前異世界なめてるだろ」
「とんでもない!ちゃんと異世界に合わせました」
「そんな異世界ねーから!なんだこのピラッピラは!!」
俺はアヤカのスカートのスリットのところを握り、ヒラヒラとする。
「やん」
「やん!じゃねえ!こんなんで歩いたらすぐ襲われるわ!」
「それはないです」
「なんでだよ!」
アヤカはニッコリと微笑む。
「私の隣には仁さんがいつもいるのです。それはあり得ません」
「っ!…………」
アヤカは綺麗な立ち姿で、まっすぐ俺を見てくる。
「私も異世界のことをたくさん勉強しました」
「お前のは作り話の異世界だろうが!」
アヤカはゆっくり首を振る。
「いえ、仁さんと行く異世界の方です。先日も文献を読みふけりましたし、昨日も冒険者ギルド青木ヶ原支店に行き、ミランダさんともたくさんお話ししました」
「行ったんかい?!」
「はい、大変ためになりました」
「…………」
本当、異世界のことになるとアクティブになりやがる。
「仁さんが思ってるような服装の方は駆け出しの冒険者の方やランクの低い冒険者の方のことです。高ランクになると皆様個性的な格好をしてますよ」
「俺は見たことねえよ!」
「それは仁さんが低ランクの方しか出会ってないからです」
「……」
「仁さんはSランクになるお方、その従者である私が舐められるわけにはいきません。私の見た目が仁さんの実力と見られるのです」
「危ねえんだよ、本当に!」
「私は魔導師になります。前には出ませんので鎧は必要ありません」
「だからってよ」
「仁さん」
アヤカは真剣な目だ。
「言い方は悪いですがハッタリも必要なんです。舐められるということは必要のない争いも生むのです。……そんな経験ありませんか?」
「……」
確かにある。舐められなければトラオに絡まれることもなかったし、初対面の冒険者にイラッとさせられることもないだろう。
「特に私は女です。そして仁さんが連れて歩く女。女は見た目が大事なのです」
「…………」
「派手な格好をしている、それはそれだけの実力があると思われます。そしてその力は仁さんの力とも取られる。服装は大事なのです」
なんかすげー言いくるめられてる感があるが、一理なくはないと思えてしまう。
「あー、わかったよ、もういいよ。ほら行くぞ?乗れ」
俺は反論するのに疲れて、車の助手席を顎で指した。
なんだ?今小さくガッツポーズしたか?!今「チョロい」って言わなかったか?!!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
冒険者ギルド青木ヶ原樹海支店に着く。
中に入ると、げっそりしたミランダがソファでダレていた。座り方に気をつけろ。パンツが見えてるぞ。
ミランダは俺が入ってきたのに、佇まいを直さない。
「ジンサイトさん、その人、首に縄をつけといてくださいよ」
「ああ、世話かけたな……」
「で、今回は依頼は決まってます。緊急依頼のオークの集落討伐を受けてもらいます。スキルはどうしますか?」
「俺はこの間のセットでいい」
「でしたら、亜空間バッグ、剣術レベル3、身体強化レベル2、言語理解、火と水がレベル2ですね?」
「ああ」
「アヤカコンドさんは?」
ミランダは疲れた目で、俺の後ろに立っているアヤカを見る。
「私は昨日お話したスキルでお願いします」
「なら確認します。詠唱短縮30万、六元素魔法レベル3で40万、魔力増幅レベル2で4万、魔力操作レベル2で4万、気配探知レベル3で10万、それと言語理解、………………しめて89万で良いですか?」
「間違いありません」
「おいおいおいおい……」
いきなりで俺より金をかけている。
俺が73万なのに、それよりも16万も高い。
「アヤカ、やりすぎじゃ?」
俺はアヤカを見るが、
「いえ、これが最適です。仁さんのスキルともバランスを取り、ない物を埋める形である物を省きました。これならばどんな状況も2人で対応出来ます。それにエレメンタリストは、通常6つの魔法をレベル3でレンタルすると60万なところ、40万でレンタル出来る大変お得な────」
「あー、もうわかったわかった!とりあえず今回は任せるよ!」
なんか口ではアヤカに勝てない気がしてきた。
それに俺とバランスを取ったってのも嘘ではない。気配探知は欲しかったし。
俺とアヤカは金をミランダに払った。
「それとこれを現地通貨にお願いします」
アヤカは三百万円をミランダに渡した。
「っ!多すぎだ!」
「両替手数料はないのです。何かあった時のために持っていくのが安心です」
もう不毛な押し引きは面倒だ。
「あーもう、わかったよ!」
ミランダも疲弊しまくっている。
俺はアヤカと俺の金や車の中のキャンプ道具、それに小物や非常食の数々、それとアヤカの車の中のどデカイボストンバッグを3つを、亜空間バッグに収納した。
「では……、have a nice work…………」
ミランダの決め台詞もげんなりしていた。




