表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/85

出発準備

甲府のでかいモールに、キャンプ道具が売っている店が入っている。

その店にアヤカと2人で来た。


「うわあ!すごい、素敵ですね!」

「ああ」


テントはもちろん、ホワイトガソリンで火をつけるランタンや携帯ガスコンロ、焚き火台や鍋やその他色々、なんでも置いてある。


「仁さん、私もお金を出せますから、良いものを買いましょう」

「レンタル代もあるんだぞ?」

「もちろんわかってます」


アヤカは良い笑顔で答える。


「おじいちゃんの遺産が入りましたので」

「それを使うのはどうなんだ?」

「ここが使い時ですよ、コスを買うとかでしたら私も躊躇しますが、将来への先行投資と同じなんです。ここは奮発しどころですっ!」


アヤカは両手で胸を挟むように小さくガッツポーズをした。

やめろ、胸を強調するな。

ブルンブルン揺れてやがる。


しかし楽しそうだ、子供のように興奮してキャンプ道具を見ている。

もう異世界に行くことは決まったんだ、決定するまでのことをむし返しても仕方ない。なら、楽しんでくれてるのも良いことなのかもしれない。逆にそうでなければじいさんに顔向け出来ないって気持ちもある。


「仁さんっ!テントはこれが良いですよっ!」

「おいおい……」


アヤカが指定したテントは、ノルデスクと言うメーカーの三角の形のテントだ。

説明書きを読むと、床面積は5mぐらいで詰め詰めで寝れば8人ぐらいは寝れるという。素材はビニールではなく防水加工のされたコットンらしい。▲の頂点からは煙突を出すこともでき、薪ストーブを中で使うことも出来るらしい。カヤみたいなのも付いていて、虫対策も万全だ。

だが……


「30万……」

「良いものの方が後悔しませんって。それにこのコットン素材ってのが大事ですっ。仁さん、向こう(異世界)にビニールを持ち込む気ですか?」

「あー……」


たしかに向こうでビニールは見たことない。


「鍋とかもステンレスはだめですよ?こっちの鋳鉄製のものを買いましょう。手入れが少し面倒ですが、他の方々(冒険者)に見られて言い訳出来ないものはダメですっ!」

「なるほど……」


アヤカの順応力がハンパない。


「じゃあ、ランタンとかは?」

「現地で買います」

「え?じゃあコンロは────」

「ダメに決まってます」


アヤカは背伸びして、俺にぴったりとくっつき耳打ちする。


「(魔法もあるんですから、魔法で対応出来ることは魔法で片付けましょ)」

「あ、ああ……」


胸が当たってるから離れて欲しい。

俺が接着面を見ていると、アヤカは少し首を傾け、少し微笑みながら、


「こういう時は、『当ててんのよ。』って言うんです」


嬉しそうにそう言った。


「何情報だよ……」


アヤカはまた道具を物色し始めた。


(ああ、俺のキャンプで朝コーヒーの夢が……)


小さなガスコンロでお湯を沸かして、キャンプコーヒーを飲みたかったのだ。だがコンロがダメとなると、いちいち火を起こさなきゃいけなくなる。面倒だ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「62万円になります」

「たかっ!」

「はい、わかりました」


俺は値段にびっくりしたのだが、アヤカは平気な顔で自分のバッグから札束を取り出した。


「アヤカ、ちょっと」

「ここは私に出させてください」

「いや、そう言うわけには」

「お願いします。私に出来ることは私がしたいんです。向こうではお世話になりますから。今は私にさせてください」

「…………」


何度説得してもきかないので、俺は諦めた。まあ、金は後で冒険者の稼ぎから大目に分配しよう。


キャンプ道具は一度で運べない量になった。

2人して山ほど抱えながら2往復して車に積み込む。


「仁さん、お昼を食べて帰りませんか?」

「あー、そうしようか。何食べたい?」

「なら私はアレが良いです」

「ふむ、本当に?」

「はいっ!」


アヤカはにこやかな笑顔でモールの中のフードコートを指差した。


「私こういうとこ好きなんですが、1人では恥ずかしいじゃないですか。ですから仁さんと一緒の今、行ってみたいんです」


その気持ちはわかる。俺も気恥ずかしくて一人でここで飯を食おうとは思わない。こういうとこはファミリー向け────、そう言うこと?


俺がアヤカを見ると、アヤカはニンマリと微笑む。

なるほどね。まあ、いいか。

しかし、けつ丸出しのコスプレをするくせに、フードコートが恥ずかしいって恥ずかしさの概念がぶっ壊れてるんじゃないかと思う。



好きな店で各自飯を買い、フードコートで向かいあって飯を食い、俺の家に帰った。


「私、キャンプ道具の手入れをしますね?」

「あー、俺も手伝うよ」

「大丈夫です。鍋やフライパンなどに油を塗り込んだりするだけですから」

「でもよ」

「でしたら、異世界に持って行きやすいように、タグを取ったり箱から出したりしてもらえますか?」

「わかった」



その日は一日かけてキャンプ道具の準備をし、眠りについた。

アヤカはコスプレすることも襲ってくることもなかった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




今日が日本滞在の最終日だ。


「異世界滞在はどのくらいですか?」

「10日ぐらいかな」

「でしたら一度家に帰って、片付けをしてきます。おじいちゃんのこともしなきゃならないですし」

「あ、なら線香を俺も上げに行くよ」

「わかりました」



アヤカの家に行き、じいさんに線香をやってじいさんに話しかける。


(じいさん、これで良かったか?正直、俺もどうなるか約束は出来ないけど、出来る限りのことはするよ)


俺がこの上八一色村に来た時、近藤のじいさんには良くしてもらった。初めての客もじいさんだったし、口コミで広めてくれたのもじいさんだ。一つ一つは小さなことだが、俺はかなりじいさんに救われた。心の面でも救われた。じいさんがいなかったら、俺はもうこの村にいなかったかもしれない。


「次に帰ってきたら、墓にいれてやるからな。もちろん彩花さんと一緒に」



じいさんとの挨拶が終わり、アヤカに手伝うというと、いらないと言われ、今日の夕飯は冷蔵庫に入ってる、明日の朝うちに来ると言って来た。


俺はそれに従い、自宅に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ