ホームシック
オークの死体は15体亜空間バッグに入っている。まだ数日余裕があるので、もう一度狩りに行こうとも思ったが、彩花さんがどうしてるかが気になったので、一度日本に帰ることにした。
「15体で150万か。えー、次のレンタルに80万、日本の光熱費と税金と国保で……、あー、ベティに金も残してやらねえとな…………。結構かつかつじゃねーか」
だがマイナスではないし、日本で1ヶ月分の収入よりはプラスになっている。むしろ商社時代の月給くらいプラスだ。
損をしてないし次のレンタル代も確保できてる。とりあえずは帰ることにした。
冒険者ギルドに正面から入り、ミレイの所に行く。
「オークの買取を頼みたい」
登録証を裏面で出す。ミレイは裏面なのを確認して、
「そう、じゃあ、買取カウンターに来て」
「ほう」
行ったことないのでミレイの後について行った。
そこはかなり広い場所で、ギルド職員が検品のようなことをしている。そして冒険者のような奴らがバッグから魔物を取り出している。
あいつらも亜空間バッグか。
俺はミレイの背中から、ミレイの頭の上の猫耳の耳元に話しかける。
「亜空間バッグは秘密じゃないのか?」
「きゃっ!ちょっと!」
「あ、すまん」
ミレイも小声で、
「Bランクぐらいになれば持ってる人も少なくないわ。容量は様々だし、ジンのは腐らないけど、普通のは中の死体も時間が経てば腐るけどね」
「……じゃあ買えるのか?」
亜空間バッグを個人で所有すれば毎回50万払わなくて良くなる。買えるなら買いたい。
「言っとくけど、ジンのそれは黒金貨10枚はするわよ?」
「ん?」
「金貨100000枚ね」
「はああ?!」
俺は大声をあげてしまい、みんなの注目を集めた。
だが、すぐにみんな視線を戻す。
金貨10万枚、日本円で……、あー、計算したくない。
「声が大きい!」
「そんなのを貸していいのか?無くしたりしたら?」
「それには魔術加工がしてあって、壊れれば復元されるし、依頼期限プラス10日経っても転移門を経由しないとギルドに返ってくる魔法がかかってるわ」
「ハイテクだな……」
流石魔法。色々物理を無視している。
「ほら、出して」
「ああ」
冒険者が居なくなって俺の順番が来た。俺は検品場にオークを並べていく。
「…………こんなに?」
「ああ、それも街から30分あたりにもオークが徘徊してたぞ?」
「…………集落の可能性があるわね……」
「またあれか」
「良いわ。調査に依頼を出しておくわ」
「わかった」
検品が終わり、金がカウンターに置かれた。
「多くないか?」
「三体で依頼報酬金貨1枚。ジンは1つしか受けてなかったけど、集落の可能性を発見した功績で、特別に全部依頼を受けたとして、報酬を払うわ」
「わりいな」
「いいのよ」
15体で150万、3体につき金貨1枚プラスで、50万。計200万分で、金貨20枚になった。
なかなかの稼ぎだ。
「それと」
「なんだ?」
「エリーが連絡すると言ってたわ……」
「……」
まだ俺も他人を面倒見れるほどではない。レンタル代だって、最低でも50万はかけないと話にならない。子供の面倒は見きれない。
「なんとかしてくれよ」
「ねえ、なんであの子ジンに懐いてるの?」
「あー、」
俺は経緯を説明する。
ミレイはため息をついた。
「人が良すぎるわね、ある意味自業自得ね」
「その程度で?!奴は現地人じゃないんだから人助けぐらい当たり前の感覚を持ってるだろ!」
「しっ!」
ミレイは唇に指を立てる。
「いくら職員しかいないって言ってもどこに誰がいるかわからないわ」
「……ああ、すまん」
ミレイはまたため息をついて、
「ジンはこっちだ向こうだって言う前に女心を勉強するべきね」
「それを言うか……」
たしかに恋愛と呼べるものは一度しかしたことがない。だが俺は31だ。それは勘弁して欲しい。
「あの子の故郷とジンの故郷はどのくらい離れているの?」
「あー、とてもじゃないが歩ける距離じゃない。歩いたら数年かかる距離だ」
「……そう、なら向こうで接触してくるよりも、こっちでの可能性のが高いわね。あの子、ジンにお金を借りるつもりよ?」
「やっぱりか」
薬草採取には鑑定がなきゃかなりの勉強が必要だ。だが、鑑定の金が無いだろうし、鑑定を借りてたら赤字にしかならないんだが、それが分からないのか。
薬草を覚えるまで泊めろとか言われそうだ、俺の家を教えたのは失敗だったか。
「ジンの家に入る地下室の扉に魔術鍵をかけたわ。ジンとあのメイド、それと私しか開けられなくしといたから、地下から家に入られてしまうのは防いだわ」
「お?やるな。助かる」
「いいのよ、私に出来るのはこのくらいしか無いから」
地下から勝手に上がりこまれるのだけは勘弁だ。ベティも地下は特別と分かってるから、地下から現れたらあのガキに言いくるめられる可能性もある。地上から来るならば通常の客として対応出来るだろう。
「…………そう考えるとベティを雇ったのは良かったな」
「ええ、ジンがこっちに居ない時に対応出来る人が居るのは良いことよ。元々ジンの金回りが良くなったら奴隷を買わせるつもりだったの」
「なるほど」
うん、留守番を留守番と思わない留守番は、本格的にここで仕事をするなら必須だったな。
「すぐ帰る?」
「あー、1時間後に帰る。ベティと話をしてくるから」
「わかったわ。それじゃあとで」
「ああ、あとで」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
自宅に着いてからベティと話をする。
「これから俺は出かける。戻ってくるのは正確ではないけど10日前後だ」
「かしこまりました」
「さらに金貨5枚を渡す。これで家具を買え。テーブルも少し小さいし、ベティもソファで寝ないでベッドを買え。それとベティの給料も込みだ。あー、そうだな給料は金貨2枚だ」
「っ!多すぎます!」
ベティは目を見開いた。
「むしろ奴隷に給料は入りません、衣食住を提供されてるのが給料なんですから」
「なら、金貨1枚だ。これは必ず受け取ってくれ。これが俺なりの線引きだ」
全てなあなあにしていたら、本当に現地妻みたいになってしまう。金を払うのは必要なのだ。
「……かしこまりました」
ベティは渋々と了承した。
「あと、わかってると思うが何人たりとも家にはあげるな。誰であろうとも玄関先で対応して、俺が戻った時に報告してくれ。俺は戻るから言伝を聞くと言って追い払え」
「はい、例え王家がやってきても命の限り追い返します」
「そこまでじゃねーから!!」
そうか。ガキ以外も来る可能性があるのか。あるのか?。
「冗談です。お貴族様なら、必ず使いの者が来ますし、その人もご主人様に言伝に来るだけです。心配要りませんよ」
「…………まあ、貴族と関わりはないけどな」
「そのうちありますよ」
「……」
本当にありそうで怖い。
「まあ、そういうことだから。金はケチらなくていい。なんかお前、極貧生活しそうだからよ……」
「大丈夫です。ご主人様と一緒にお風呂に入った時に貧相な体を見せるわけにはいきませんから。ちゃんと栄養は取ります」
「……」
多分これも冗談なのだろう。お前の冗談はわかりずらいんだよ!
「じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃいませ。お早いお帰りをお待ちしております」




