登竜門
異世界に着くと転移門の部屋にミレイがいた。
こいついつもここにいるな。暇なのか?
「よお」
「ジン!、って何その荷物?」
「あー、歯ブラシとか?仮自宅の中でなら良いだろ?」
「……いいけど、なんで亜空間バッグを背負ってるのにそれに入れないの?」
「あっ、なるほど」
それは盲点だった。
ミレイはピコピコとパソコンを打つ。
「オークを受けたのね?」
「ああ、金になりそうだったからな」
「実は駆け出し冒険者の死亡率はオークが1番高いわ。気をつけてね」
「ああ、あり、助かる」
俺はドアを開け、地下道を通り仮自宅へと向かおうとするが、
「ジン」
ミレイが声をかけてきた。
「なんだ?」
「2週間あるんでしょ?1つやって欲しい依頼があるんだけど」
「ん、なんだ?」
「盗賊の討伐よ。一人でじゃないけど、これはこの世界で仕事するなら、早めに経験してもらいたいの」
「んー、わかった」
「なら、表から来て。ちょうど集まってるから一般の冒険者として説明するわ」
「了解」
俺は仮自宅へ向かった。
自宅へ小物類をセットして、置いてある皮鎧などを身につける。
最後に剣を腰に挿し、仮自宅を表口から出た。
「…………異世界だ」
もう三度目だが、いきなり外国に来たようで、少しワクワクする。
「さて、ギルドか」
盗賊討伐は文庫本で見た。文庫本は物語だが、あれにも冒険者の登竜門的なことが書いてあった。俺もそろそろ三度目だ、ひとりじゃないなら経験しとくのもいいだろう。
正面からギルドに入ると、カウンターの1つの前に人だかりが出来ていた。
俺はそれを遠巻きに見ていると、
「来た来た、ジン!こっちよ!」
人だかりの中心から声がした。人だかりが割れると、そこにはミレイがいた。
人だかりのやつらが全員こっちを見る。
「紹介するわ、ジンサイト、Eランクよ。この依頼でDランクになる予定よ」
すると、いかにもいけすかなそうな男が、片眉をあげる。そいつの装備はボロボロまでいかないが、かなり年季が入っている。
「ああん?Eランクのお守りつきかよ!……、装備も、さも今買いましたみたいなのをつけやがって。おぼっちゃまかよ!」
虎のような獣人の男も、それに乗ってくる。
「ほんとだ、ガキみてえな顔をしてやがる。囮にもならねえ」
赤髪の女が、俺の顔を下から覗き込む。
「おい童貞、まずは娼館で男にしてもらってきな?そんな縮み上がった玉で盗賊やれんのかよ。兎狩りじゃないんだよ」
「「「ギャハハハハハ!」」」
ここには7人の男女がいる。そいつら一斉に大笑いだ。
俺は無言でミレイを見た。ミレイはゆっくり首を横に振った。
(ん?あれは手を出すなって意味か?それともこいつらどうしょうもないって意味か?)
どっちかわからないがはっきりしてることがある。それは俺がイラッと来てるってことだ。
俺は目の前の赤髪の女の、皮鎧の脇の下の留め金を速攻で外し、皮鎧を引き剥がし女の胸をむんずと鷲掴みにした。
生ではない、ちゃんとTシャツみたいなシャツを着ている。……ブラもしてるな。
「「「「なっ!」」」」
全員が目を見開く。ミレイもだ。あー、手を出すなだったか。だがもう俺は動いてしまった。俺の指も揉み揉み動いている。
「童貞かどうか試してみるか、ねーちゃん。なかなかいい乳してるじゃんよ」
「てんめえ!」
赤髪女は怒りに震え、下からアッパーをかましてきた。
(見える)
身体強化をレンタルしたからか、女の動きが見えた。俺はアッパーを少し頭を引いて交わした。だが女は、俺が避けると同時に俺の玉に膝蹴りをかましてきた。
(すげえ。頭を引いたら玉蹴りはかわせない。ここまで考えてるのか)
それでもそれは身体強化がなかったらの話だ。
俺は下を見ずに、左手で自分の剣の柄を倒し、女の膝頭に当てて、膝蹴りを止める。
カシャン!
赤髪女は目を見開く。
俺は右手で、女の左の乳も揉んだ。
「終わりか?それとも揉み放題か?」
「ふ、ざ、けん────」
女が自分の腰の背中側にある短剣に手をかけた瞬間、
「そこまで!!」
ミレイが叫び、全員が時が止まったようにぴたりと止まった。赤髪に合わせて動こうとしていた男たちもピタと止まっている。お前ら判断が遅すぎねえか?
今動いているのは俺の指だけだ。
「ジン、離しなさい」
「っ、あー、すまん。つい、気持ちよくて」
俺は赤髪の胸から手を離す。Cはあったな。
ミレイは大きなため息をつき、
「ジン、あんた意外と喧嘩っぱやかったのね」
「そうだな、俺も初めて知った」
いけすかない顔の男が、
「おいミレイちゃん!先に手を出したのはこいつだぜ?」
「手を出させたのはあんたたちでしょうが。全部を見てた私に通用すると思ってんの?」
虎男も言う。
「こいつを入れるのか?なら俺は抜けるぞ」
「構わないわよ?言っとくけど、ギルドを出てから襲うつもりならやめたほうがいいわよ。そいつ、そんな顔して剣術レベル3だから」
「「「「「「なんだと?!!!」」」」」」
剣術レベル3は達人クラスだ。そりゃ驚くだろう。実際そこまで俺が動けるかは眉唾だが。てか、顔は関係ないだろ。
全員が俺の顔をジロジロみる。
赤髪女が皮鎧を身につけ直し俺の前に仁王立ちで立った。
「へぇ~、見かけによらないねぇ。それは是非とも手合わせ願いたいね」
「それは剣か?ベッドか?俺はどっちでもいいが」
「ふっ、威勢の良さはレベル4ってかい?!」
と言うのと同時に、女は俺の股間を鷲掴みにしてきた。胸の仕返しだろう。
だが……、
「きゃっ!!」
赤髪は似合わない声を上げて、さっと手を引いた。
もう一人の魔法使いのような女が、赤髪に駆け寄る。
「どうしたの?!ティアモ!」
ティアモと呼ばれた赤髪は、手をプルプルとさせて、
「こいつ……っ、立ってる!!」
「うっそ?!この状況で?!」
人を変態扱いしないで欲しい。
「悪いが立ってない、これが平時だ」
赤髪は、目が落ちるほど、自分の胸が揉まれた時より目を見開いた。
「バカなっ!ありえない!あれが平時なんてっ!悪魔かよ!」
「そ、そんななの?……ならあたしも……」
魔法使い女が恐る恐る俺の股間に手を伸ばすが、ティアモはその腕を掴んだ。
「やめなリンダ!!噛まれたら虜にされるよ!」
噛まれたらって悪魔なのか蛇なのかはっきりしろ。
「一体なんの話をしてるのよ…………」
ジト目で睨んでくるミレイに止められた。
「とにかく、この8人のメンバーで行くわ。報酬は等分よ。嫌ならこの場で抜けていいわ」
「「「……」」」
どうやら誰も抜けないらしい。報酬がいいのか、ギルドの力が強いのか。




