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日本冒険社  作者: TSUJIMO
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EPISODE 6

かまぼこ蓋の頑丈そうな木箱は鉄の帯で補強されている。鍵穴は見当たらない。


「まるでドラクエだ。もう中は調べたんですか」

「いや、そんな余裕はなかった」


持ち帰れるものではない。報告すれば上がどうするか考えるはずだ。


「情報には価値があります。これは任務外ですが外観と内側の撮影だけしましょう」


橋下さんはワークレコード28を取り出した。ストロボの光が何度も室内を照らす。そこは茶室くらいの大きさの空間だった。


「開けたら罠ってことはないでしょうね」

「まあ、ないんじゃないか」


星野と前田さんが左右から重そうな蓋に取り付き、正面で橋下さんがカメラを構える。コンデンサが電気を蓄める高い音が響く。


パシャ。箱の中で輝いているのは黄金だった。


「金貨かよ。どうするのこれ」


どうしようもない。手を着けて何か言われるのも嫌だから。



何枚も撮影して蓋を閉じて黙り込む。優先順位は小林さんを無事に連れ帰ること、ゴブリンの観察、ロボットの回収。そして宝箱の報告。


「そうだ。あのスニーカーは小林さんのですか」

「俺は知らんな」


小林さんは片方だけの靴を手に取ってひっくり返して調べている。


「コンバース。これは前の行方不明者の物だろう」

「行方不明になったのは坑道だった。ここまで降りてきたはずがありませんよ」

「ゴブリンが上まで行ったんだろう。たまに宇宙人の噂があったりするのもあいつらだと思う」


それが本当なら深刻な話だ。危険な存在が浅い階層までこっそり出て来ていることになる。


「ちょっと待って。何か音がする」

「噂をすれば影がさすってやつだ。あいつら何度も様子を見に来てる。俺が眠ってたら襲うつもりだったんだ。武器の予備があったら貸してくれ」



橋下さんがストロボのチャージを始めた。


「俺がまず撮影する。明るくなったら前田さんはボウガンで狙ってくれ」

「わかった」


前田さんがボウガンの弦と矢をセットして構えた。前方の足音のするほうに向けて橋下さんに合図する。


パシャ。それは目の前の闇の中に潜んでいた。同時にボウガンが発射されて先頭のゴブリンの胸を射抜いた。


「全部で4匹見えた。星野さんは前に出てくれ」


星野は鉄パイプを短めに構えて上から振り下ろす。すぐ右に切り上げて、左に振りまわす。3撃目が命中して、足を砕かれたゴブリンは水路に転落して見えなくなった。


「今のうちだ」


撤退する2匹を追うように飛び出して星野、前田、小林、橋下の順に縦列を組む。小林さんは前田さんのナイフを借りた。


「走らなくていい。周辺に注意しながらロボットのところまで戻ろう」



足音が反響して人数を水増しする。その中にゴブリンの足音も混じっているように感じられた。


「鈍器は持っていませんでしたね」

「俺も見ていない。どこかに置いてきたのか、それとも武器を持った個体が別にいるのか」


水音が遠くなり、討ち死にしたように倒れたロボットが見えてきた。


「動いても連れてはいけないぞ」

「今はケーブルを挿しておきます。あとは技術者にまかせたらいいし、動かなくてもどうせまた誰かが金貨を取りに来ます」


TOSLINK端子を挿し込んでも見たところ変化はなかった。



彼らは階段に到達する。左手の壁には矢印が見える。


「この先の道には何があるんでしょう」

「調査隊が結成されたら参加してみたらどうですか」


星野は自分から手を挙げるつもりはなかった。見に行くだけなら誰だっていいだろう。


「階段の上でみんなが待ってますよ」

「助けられたのは初めての経験だ。ありがたいもんだな」


左の壁に手を付いてゆっくりと登る。あとすこし。


「上がれ、もっと早く」

「どうしました」

「ゴブリンが階段の下に複数いる。登ってきたら俺が押さえるから早く上がれ」


前田さんがボウガンを構えた。


「小林さんの生還が最優先です。星野さんは小林さんと行ってください」

「わかりました。急ぎます」


急ぎはするが走りはしない。小林さんは孤立していた時間以上にあきらかに疲弊している。


「要救助者を連れ帰りました。階段の下に未知の危険生物がいます。支援を願います」



崩落場所は鋼管と木材でも補強されて発電機の数が2台に増えていた。通路には冒険者が8名とHONBAの技術者たち。小林さんはその場で医師の診断を受けるよう指示される。ショットガンとフルフェイスのヘルメットを装備した冒険者がふたり階段を降りていった。冒険社の研究チームが実験をして、ダンジョンではライフル弾より鉛の散弾のほうが相対的に跳弾の危険が少ないと報告している。


「お手柄です。報告は文書でしてください。星野さんは怪我はありませんか」

「大丈夫です。橋下さんと前田さんが戻ったら地上に上がります。橋下さんが未知の危険生物の写真を撮影しております。すぐに現像したほうがいいでしょう」

「ゴブリンと呼んでもいいですよ。政府はそう呼んでいます」


奥田支部長は不本意そうにそう言った。


「事故は報道されているので救出成功の発表が必要です。ゴブリンの存在がメディアに出るのは止められません。本当はもうすこし後のはずだったのですが」


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