EPISODE 15.1
22Fの単調な通路を進んで、400m地点で左の脇道に入る。その道の突き当たりは人工の白い光で明るくなっている。右手に石の小部屋があるのだ。部屋には木と透明アクリルの扉が造り付けられている。広さは6畳ほどだ。
部屋のすぐ外の壁では昔風の木の板の配電盤が上階から来る電気を受け止めている。天井に固定された20Wの蛍光灯4本が真下の折りたたみ机とパイプ椅子を照らしている。机の上には小さなラジカセ風の通信機、下にはAC-DCコンバーター。通信機から出た黒い丸コードが足元を通って外に出て行く。これは冒険ライトの配線だ。
机の横で白いノートパソコンを見ながら踊っている男は考えていた。上の階層は端から端まで歩いて何時間もかかる広さで分岐も多くて迷子になる。下の階層は広くなくて道も少ないがゴブリンやオークに出くわす。この部屋にもそれらの生き物がいて戦闘になった。上と下はどちらがより危険だろうか。さらに下の階ではどうなっているのだろう。
ホワーッ
VAIOの画面では半裸の男が踊りながら奇声を発していた。部屋の主はそれを見ながら同じように体を動かしてみる。もちろん声も真似をして出すのだ。
アチョーオッ
「橋下さん、がんばってるね」
「あ、どうも。どうしたんですか、鷲巣さんと神谷さんまで」
「冒険ライトの点検中。切れてるのがあったから他にもないか確認してくれって頼まれた。橋下さんはひとりなの。単独行動はまずいよ」
「この部屋にもうひとりいたら危ないでしょう。ヌンチャクが当たっちゃいます。だから黙っててください」
「いいけどさ」
鷲巣さんは壁にもたれかかって水筒を取り出した。神谷さんはヌンチャク練習に興味があるようだった。
「続けていいよ。ヌンチャクが来たら避けるから」
「やりにくいですよ」
「いいから、いいから」
アチョーオッ
「声はいいんだよな。でもなんかふらふらしてるぞ。鷲巣さんはどう見る」
「俺は剣道しか知らんが。だが止めるときはしっかり止める。ふらつきながら攻撃モーションに入ると不正確になる。それは同じだろう」
「でも水になれって」
「初心者は感じるより考えろだ。水になるなら、ヌンチャクを固く持ちすぎだと思う。遠心力が活かせてない。しっかり握るのは軌道を変える時とインパクトの瞬間だけでいい。そうだろ、神谷さん」
神谷さんはジュラルミン棒で足元の石をこんこん叩いた。
「俺も実は武器はまだよくわからん。でも基礎は大事だ」
「神谷さんの空手はどうなんですか。あれでオークを倒せますか」
「みんなそれ聞くな。星野さんにも聞かれたよ。正直、素手では自信はない。棒きれでもあればやりようはある。じゃあまあ、がんばれよ。俺たちはもう行くから」
ふう。橋下さんはDVDを最初から再生することにした。なんとかモノにしたいものだ。




