南極点の街【シメリア】
街は氷石という名の溶けにくい氷のような石で出来ていた。
氷石は氷と上質な石を錬金術で合成することで作ることが出来る。
錬金術の分野で言えばかなり簡単な方で、素材が手に入りやすいこともあり、錬金術のレベリングのための鉄板アイテムとなっている。
そんな街並みを一行は歩いていた。
「すげぇすげぇ!随分と綺麗だな!」
「氷石って見た目はかなり綺麗だし、砂漠に持っていっても溶けないし便利だよね〜」
「錬金術が必要なのに、これだけ用意するなんて……凄いね……」
「……」
「ん?おーい、ケイ、どうした〜?」
テンションの高い廃人3人とは真逆に酷く冷めきった様子のケイ。
どうやら現実逃避を決め込むことにしたようだ。
「いい加減受け入れろって。これだけのマップを用意出来るほどサーバーのスペックには余裕が無いぞ」
「それだけじゃ異世界転移とは決め切れないだろ……」
「じゃあログアウトしてみなよ」
「……」
ケイもここがゲームではない事は薄々分かっていた。
メニューは開けるものの、いくら探してもログアウトボタンが見つからないのだ。
まだ「ログアウト不能の特殊イベントに巻き込まれた」という可能性がある、と言おうとして流石にそんな極悪イベントは無いだろうと思いとどまる。
「はぁ……受け入れるしかないか……」
「覚悟出来た……?」
「あぁ……とりあえずどうする?」
ようやくケイの覚悟が決まったことで、話はこれから先の事へと切り替わる。
「とりあえず選択肢としては、聞き込みかホームへの転移かが有力か?」
「そうだね、とりあえず聞き込みしてみる?」
「そうしよう」
こうして一行は聞き込みを始めた。
「あのー、すいません」
「旅、してる人間です……」
ユーイはケイの後ろに隠れている。
基本的に人と話す時は知り合いが最低1人は居ないと話にならない程度には人見知りなのだ。
二手に別れての聞き込みなのでエムティーとハルは別行動だ。
「おう、どうした……ってそんな薄着で大丈夫なのか?」
「あー、服の機能で環境耐性ってのがあるからそれの影響だな」
ケイは魔法使い用のローブ1枚、ユーイに至っては短めのスカートで脚が露出している。
しっかりコートを着込んでいる現地住民と比べれば圧倒的に薄着だが、ケイが言うように環境への耐性を持っている服なので問題ない。
「ここって初めて来たんですけど地図とか売ってませんか?」
ケイ達が声をかけたのは紙や筆記用具に食料品などを売っている雑貨屋だった。
「そうか……地図ならうちでは売ってないが、街の中心の広場にあるギルドで売ってると思うぞ」
「そうですか、ありがとうございます。あ、寒リンゴ2つ」
「おうよ、2つで120ゴールドだ」
インベントリから金を取り出し、支払う。
どうやら金はゲーム時代と同じのようで、スムーズに支払いが完了する。
「……結構美味しいなこのリンゴ」
「そうだね……でも聞いたことない品種」
「寒リンゴか、まぁ普通に寒い地方のリンゴなんだろうな」
「氷点下なのに普通の食感だし……ちょっとおかしいね」
「まぁそういう物なんだろうよ」
リンゴを食べながら歩いていると、すぐに街の中心の広場へと辿り着く。
広場の周囲で最も大きな建物には日本語で「冒険者ギルド南極点の街シメリア支部」と書かれていた。




