3人の廃人と1人の凡人
ケイはひとまずハルにフレンド通信を入れた。
ハルは称号【二刀舞姫】を持つ二刀流の廃人ゲーマーだ。
『はいはーい、ハールでーすよー』
「その言い方は辞めとけ……今時間あるか?」
『んー、今南極の氷獄にいるんだけど』
氷獄とは南極点付近にある大規模なダンジョンのことだ。
レベル500台のケイにとってはそこそこ経験値が美味しいモンスターが多くいるダンジョンでもある。
「氷獄か。実はユーイの提案で俺のレベリングをすることになってな、そっちに行ってもいいか?」
『了解。ヤマちゃんはシドニー付近の海で釣りするって言ってたから呼んできて』
「あぁ、じゃあまた後で」
そう言って通信を切る。
「エムティーはシドニーに居るらしいぞ」
「じゃあ、転移しよう」
ユーイが転移石を取り出す。
転移石は良質なプレイヤーメイド装備に相当する価格の希少アイテムで、プレイヤー間の取引以外では上位ダンジョンのボスからのレアドロップでしか手に入らない。
効果は名前の通り、どんな場所に居ても即座に任意の転移ポイントまで転移出来るというものだ。
「ちょ、そんな高価なやつ使わなくてもいいだろ!」
「いっぱい余ってるからいい」
こうして2人はシドニーへ転移した。
「あっ、ヤマちゃんいた」
エムティーは海岸で釣りをしていた。
「ん、ケイにユーイか、どうした?」
「実は……」
「ふーむ、いいぞ。新しい装備の材料が欲しかったし、アイスニードルトータス狩りでいいか?」
アイスニードルトータスとはパーティー平均の推奨レベルが800を超える、かなり強いモンスターだ。
その名から推測出来るように、甲羅に鋭い氷の針が付いていて、この甲羅を防具の素材に使うと特殊効果【反撃(大)】が付与出来る。
【反撃】は物理攻撃を行ってきた相手に対しダメージを返す特殊効果で、大中小3つのクラスがある。
【反撃の鬼】の称号を持つ廃人であるエムティーの装備には全て【反撃(大)】が付いている。
「アイスニードルトータスだったら特に準備することも無いし、行くか」
「おう」
こうしてケイ達は3人で氷獄へと向かった。
特に問題もなく、スムーズに合流した4人は8層からなる氷獄の7層目に来ていた。
アイスニードルトータスなど、推奨パーティLv.800超えのモンスターが多く湧く高難易度のマップだ。
とはいっても、レベルカンストのユーイ達から見ると雑魚ばかりなのだが。
「これで6匹目、っと」
「相変わらずおかしいよお前ら……」
「「ん?どこが?」」
「はぁ……」
Lv.500台のケイとしては推奨Lv.が300も上のかなりの難敵なのだが……エムティーが攻撃を受け止めつつ反撃スキルでダメージを与え、ハルが二刀流の乱舞で敵のHPをゴリゴリ削っていく。
後衛のケイとユーイの出番は一切無い。
雑談しながらケイにとっての難敵をサクサク倒していく。
と、ここでユーイが遠距離索敵スキルであるものを見つけた。
「ねぇねぇ、私のモンスター図鑑未登録反応があるみたい……」
「ユーイのモンスター図鑑ってほぼ100%完成してなかったっけ」
「うん、氷獄のモンスターはほとんど登録してるはず」
遠距離索敵スキルでは図鑑登録しているモンスターの反応が出た場合は、そのモンスターの名前まで表示する。
攻略サイトに載っているモンスターは全て登録しているユーイの索敵で名前が表示されていないというのはかなり珍しいことだ。
「それって新発見のレアMobじゃね?」
「多分そう」
「嫌な予感しかしねぇ……」
こういう場合、ケイの嫌な予感というのは良く当たる。
ちなみに今回は
「「「よし、追おう」」」
3人のこういう反応の予感であった。
「嫌だ!どう考えても俺のLv.じゃ無理だ!」
「そんなことないよ!私たちがいるし!」
「新発見のMobってことは行動パターンとか分からないだろ!ここのLv.考えたら俺じゃついていけない可能性が高い!」
「ヤマちゃん」
「了解」
おもむろにエムティーがケイを担ぐ。
「お、おい!ちょっと待てよ!俺には無理だって!」
「いいから行くぞ、今はパーティー組んでるんだからな」
「待ってくれぇぇぇぇぇ!!!」
こうして推奨Lv.が高すぎて他のプレイヤーは誰も居ない氷獄第7層にケイの叫びが響き渡った。
【RE:WORLD】のプレイヤーはほとんどが600台までです。
800を超えているプレイヤーは全体の0.001%にも届いていません。
だから実はケイも割とやり込んでる方だったり。




