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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第69話 忍者型スケルトン




 戦闘の口火を切ったのは一匹のゴブリン──その影だった。

 ここまで来たらもはやCPを贅沢に使ってしまえと、囮役として生み出されたゴブリンがスケルトンたちが集まる広間へと入っていく。

 広間で屯っていたスケルトンたちは、ゴブリンが足を踏み入れた瞬間、機敏に反応した。


 一斉に突き刺さる殺気。

 もしゴブリンが普通の生物であれば、その気迫だけで足を止め、無残に命を散らしていたかもしれない。

 だが、このゴブリンは自意識を持たぬ影であった。


 スケルトンアーチャーの放つ矢が己の頭を貫くより前に、ゴブリンは広間を脱する。

 一目散に逃げるゴブリンを、しかしスケルトンたちは即座に追うことはしなかった。

 不思議に思い、ゴブリンを少し広間に戻してみても、弓矢が迫ってくるだけでいつものように走り出したりしない。


「……カチカチカチ」


 忍者型のスケルトンが上に立って命令することにより、合計12体のスケルトンに統率が生まれていた。

 彼らは慎重に隊列を組み、警戒に当たる斥候を前にしつつ、前衛が壁となり後衛を庇えるように列を為す。

 そして忍者型は、そのちょうど中間あたりに位置を取り、静かに、広間から通路へと足を踏み出してきた。



「ゆっくり来てくれるならそれでも構わん。撃て撃て撃て!!」



 そんな一連の流れを、気配察知の感覚から読み取っていた俺は、奴らが姿を表した瞬間に射撃を命じる。

 囮のゴブリンは申し訳ないが巻き添えだ。


 合計5つの石壁に、それぞれ2体ずつのスケルトンアーチャー。

 一体が撃ち、その間に一体が次の矢を番えるように。なるべく間断なく矢を放てるように組ませてある。

 ボロ弓を持ったアーチャーを前にする形で、弓の性能による射程の差を誤魔化し、なるべく短期決戦で決めるつもりだ。


 広間の入り口から最初の壁までは40mほど。

 そこから3m間隔くらいで、通路に互い違いに壁を設置している。

 そして俺は、そのさらに後ろの位置で全体を見通し、アーチャー達に狙いの指示を出す。

 合計10体のスケルトンアーチャーから放たれた鈍器にも似た石矢が、挨拶代わりに斥候型のスケルトンを二体、打ち砕いた。


「よし、行ける!」


 攻撃開始からすぐに二体を落とせたことに手応えを感じる。

 だが、同時にそれは相手の警戒を生んだ。


「カチカチカチカチ!!!」


 前衛に位置していた5体の戦士型スケルトン。

 そのうち、ボロボロでも盾を持っていた三体の剣持ちが剣を捨てて身を寄せ合う。

 その後ろに、残りのスケルトンが集まり、飛んでいく石矢を払いながらじりじりと距離を詰めてくる。


「怯むな! いつまでも続くわけじゃない! 撃ち続けろ!」


 やつらがゆっくり近づいてきていても、まだ距離は25mはある。

 盾の隙間から散発的に反撃の矢が飛んできているが、石壁に守られたこっちのスケルトンには有効打を与えられていない。

 そうこうしているうちに、一体、また一体と盾持ちも崩れ、とうとう盾が残り一体となったところで、動きがあった。


 残り20mの距離を詰めようと、猛然と斧を持った二体のスケルトンが走り出す。

 その2体を援護するように、弓持ちが狙いよりも速さを優先するように矢を放ち、こちらの攻撃がわずかに阻害される。

 その瞬間を狙ったように、杖持ちのスケルトンが魔術を放ってきた。


 今まで何もさせていなかったので、スケルトンの魔術を見たのは初めてだ。

 奴が放ったのは、暗闇の魔術。

 敵スケルトン軍団を覆うように、視界を遮るような暗闇が生まれ、こちらの弓兵の狙いを乱そうとしてくる。


 だが、スケルトンと繋がり、狙いを指示しているのは俺だ。

 俺には称号効果とか暗視の効果とか、気配察知の効果とかがあって暗闇の魔術が効きづらい。

 だから、奴らが散開しようとしているのもしっかり分かっている。



「近づいた奴から丁寧に撃て!」



 急な突進に対応しまずは斧持ちを沈め、それから、順に近い気配のやつを一体ずつ丁寧に沈めて行って、何もさせずに勝つ。

 まだ距離はある。遠距離攻撃の優位は消えていない。

 そして狙い違わず、斧持ちを二体。残っていた盾持ちも一体。さらに弓持ちと杖持ちも攻撃の視野に入れたところで、気づく。



「待て! 忍者はどこに行った!?」



 俺が気づいたのと、ボロ弓持ちのスケルトンが一体、首を撥ね飛ばされたのはほぼ同時だった。



「カカカカ!」


「っ!」



 忍者型は、急に走り出した斧持ちのスケルトンの影に隠れていた。

 暗闇の魔術の範囲から飛び出し、壁を蹴って宙に舞い上がると、高い天井を蹴り石壁を越えて、スケルトンアーチャーを急襲した。

 その不意打ちで一体、こちらが体勢を立て直す前にもう一体が、忍者刀に首を飛ばされて散る。


「そいつを止めろ!!」


 俺は壁の内側に侵入してきた忍者型一体へと狙いを集中させる。

 だが、忍者型はその姿がブレたかと思った瞬間には、石壁を蹴り、ダンジョンの壁を、天井を蹴り、そして二組目のスケルトン達の頭すらを足場にして、縦横無尽に宙空を舞う。


 その落ち窪んだ骸骨の目は、目玉もないのに確かに俺を見て怪しく輝いていた。


 アーチャー達の狙いが定まらない。

 すでに弓矢の距離ではない。

 頭を踏まれたアーチャーはまだ生きているが、こちらに弓を向けて撃たせるわけにはいかない。


「くそ! 忍者はいい! 奥のやつらを狙え!」


 俺は頭を切り替えた。

 ここまで食い破られたらもう、作戦は半分崩壊だ。

 たった一体の上位種を止められなかっただけで、こうまでなるか。


「キキキカチカチカチ!!」


 弓の狙いがなくなった故か、奴は舐めたように空中軌道をやめ、出がけの駄賃とばかりにアーチャーの首を追加で二つ跳ねながら俺へと迫ってきた。

 もう彼我の距離は何メートルもない。

 俺はメタルラックを構えながら、トン、トンと後退する。


 これが忍者本来の戦闘能力。

 味方の援護ありきだが、戦闘の最中にさえ気配を眩まし、遠距離攻撃に捉えられぬ立体的な動きで翻弄し、そして的確に首を一撃で切り飛ばしていく。


 正直言うと、今の俺にできる気がしない。

 壁を蹴って天井を蹴ってって、人間にできる動きなのか。

 だが、職業的にはこれくらい出来ないと進めなくなる時がきっとあるのだろう。

 今は、作戦を破られた悔しさを胸に、忍者の動きを目に焼き付ける。

 そして、忍者が俺へと斬りかかろうとするその瞬間。



「プランBだ」



 俺は仕掛けておいた魔術を起動する。

 こっちも出し惜しみなし。

 CPにして40を注ぎ込んだ大火力。

 忍者に本丸を攻め込まれた時、自爆しないギリギリまで火力を高めて設置していたマインだ。


 最終的に狙われるのは俺だろうと思っていた。

 だから、プランA『遠距離すりつぶし』が失敗した時用に、さらに贅沢にCPは使っていた。

 採算度外視。普通のスケルトンなら秒で蒸発するだろう一撃。

 炎に飲まれた忍者型が、声にならない叫びをあげるのを幻視する。



 だが。



「カカカカカッッッッ!!」


「やっぱりな!」



 その炎の中から、クナイが飛び出してくる。

 警戒していた俺は、そのクナイをどうにかメタルラックで弾くことに成功した。

 次の瞬間、炎に飲まれ今にも崩れ落ちそうな骸骨が、決死の形相を浮かべながら忍者刀を勢いよく振り下ろしてくる。 


 クナイを弾いて体勢を崩されていた俺だが、どうにかメタルラックを構え直して防御の体勢をとる。

 両手で持ったメタルラックと、炎を纏って赤熱した忍者刀がぶつかり。


 スパッとメタルラックは切り裂かれた。


 一瞬の抵抗すら許さぬ、切れ味。

 忍者型スケルトンはそこで、確かにニヤリと笑った。

 あとは、無防備になった俺の体をHPごと切り裂くだけ。


 そう思っているのが丸わかりの、勝ちを確信した歪み。



『だからウチがいるの!』



 そして、奴の忍者刀は、俺の腹にぶつかる前にガキンと『何か』に弾かれる。


 この戦いが始まってから、ずっと俺の『背中に隠れていた』クミンが、かばうのスキルによって前に出て、敵の攻撃を防いだ。

 防具が足袋しかない俺と違って、自前の甲殻も持っていて、体ステータスも高いクミンなら相手の一撃は防げる。

 そう踏んで、プランBで仕留めきれなかったときの緊急プラン。

 クミンの存在を秘匿し続けることで、奇襲の一手を生み出す作戦。


「これで!」


『終わり!』


 必殺の一撃を防がれ、体勢を崩す忍者型。

 その足にクミンが食らいつき、奴のバランスをさらに崩す。

 そしてもはや回避も防御もままならなくなった忍者型スケルトンは、破れかぶれに忍者刀を俺に突き立てようと伸ばす。

 俺はその一撃を、今度はしっかりと見て回避し、お返しとばかりに落ち窪んだ目に向けて、半分になったメタルラックの尖った先端を突き立てた。



「ガガ、ギギカカ……」



 その一撃で、マインによって限界まで炙られていた忍者型はその命を絶った。

 忍者型スケルトンはサラサラとした粒子となって溶けていき、その場にカランとした音が響いた。



「ドロップか……」



 その場には、メタルラックを易々と切り裂いた忍者刀が、ぼんやりと熱を纏ったまま残されていた。



『上杉さん! まだ終わりじゃないですよ!』


「お、おう!」



 少し気が抜けていたところをクミンに叱責され、俺は戦闘に意識を戻す。

 とはいえ、俺が忍者とやりあっている間にもアーチャー達は仕事をしてくれた様子で、残ったのは弓持ちが二体と杖持ちが一体だけ。

 もう、敵陣に突っ込んでくる奴もおらず、杖持ちの魔術の発動を守る壁もいない。


 最後まで油断することはなく、俺は丁寧に残ったスケルトンの群れをすりつぶしたのだった。



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