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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第67話 かばう



「それで、クミンは何に悩んでるの?」


 自分の強化フェーズが終了してしまって手持ち無沙汰になった俺は、俺の足元で悩んでいたクミンに尋ねる。

 ちなみに、端末くんの画面は空中のどこにでも表示することができるらしい。

 端末、と言っているけど表示画面は空中に直接浮かんでいるみたいな感じなので、やろうと思えば複数窓も余裕だし、俺とクミンにそれぞれ画面を表示することも当然できるのだ。


 というわけでクミンの前にはクミン用の画面があって、俺はそれを覗き込む──こともなく、同じ画面を目線の高さに複写してもらった。


 ──────

 かばう:200EP


 攻撃を受ける寸前の味方が存在する場合に、その対象の前に出て代わりに攻撃を受ける。

 また、その際にダメージに0.7倍の補正をかける。

 消費CP:5

 ──────

 身代わり:400EP


 致命的な攻撃を受ける寸前の味方が存在する場合に、その対象と位置を入れ替え代わりに攻撃を受ける。

 また、その際にダメージに0.5倍の補正をかける。

 消費CP:20

 ──────


「クミン……」


『…………』


 取得を悩んでいたスキルを俺に見られて気まずいのか、クミンは明後日の方を向いた。

 まぁ、アリさんの目は横についているので、目を逸らそうとしても全然逸らせてないわけだが。


「さすがに、このスキルを取れとは言えないぞ俺は」


 クミンがどういう考えでスキルを選んでいたのかはなんとなくわかる。

 わかるからこそ、積極的に勧める気にはなれない。


『でも上杉さん。最初はウチのことを壁役にって言ってましたよね』


「それは前衛をやってもらう予定だったときの話だろ。今のクミンは前衛用のステータスを魔に回して迷彩アリになったんだから、こういう完全にタンク向けのスキルは相性が良いとは言えないぞ」


 もし、クミンのステータスがガチガチの前衛だったら、俺の方から取得をお願いしたかもしれない。

 だが、今のクミンは俺よりは硬いという程度の、バリバリの忍者職だ。


 忍者がタンクをやるゲームもあるが、そういう場合は大抵が回避盾──攻撃を避けながら引きつける役なわけで、かばうとか身代わりとか、そういうスキルとは相性が悪い。

 だから、もしこのスキルを使おうものならば、下手をすれば俺の命を守るために自分を犠牲にする、みたいな使い方になりかねない。


「俺のことを守ろうとしてくれる気持ちは嬉しいが……今回はやめておいたほうがいいだろう」


 クミンが身を呈して俺を守ろうと思ってくれたことは素直に嬉しいが、それとこれとは話が別だ。

 命をかけてまで、俺を守ってほしいとは言えない。

 だから、俺はやんわりとクミンのスキル習得を止めようとしたのだが。


『上杉さん。もう少し良く考えてみてください』


「うん?」


 クミンの静かな、諭すような声。


『命がけの場面じゃなくても、役に立つ場面は絶対にありますよ。だって外にはゾンビが溢れていて、上杉さんは一撃でも喰らったらアウトなんですよね?』


「あ」


『ウチたちモンスターは、呪腐魔病の感染対象ではありませんから。上杉さんのピンチを十分に守れますよ』


 クミンの言葉に、俺はその観点を考えていなかったことを今更ながらに思い出された。

 慌てて、端末へと尋ねる。


「端末くん。聞いてなかったけど、呪腐魔病の感染対象は人間だけなの?」


『はい。少なくとも、現時点では呪腐魔病にかかるのは人類か、それにかなり近しい種族のみです。基本的に体構造の異なるモンスターにかかることはありません』


「なる、ほど」


『もちろん、呪腐魔病の進化によって感染対象が広がる可能性はございますが、特に人類を狙い撃ちにしているウイルスが昆虫系モンスターにまで対象を広げるのは、少なくとも一日二日で起こるような変異ではないと思われます』


 思わぬ盲点だった。

 同時にもっと真剣に考えて気づくべきことでもあった。

 テイマーの優位性にはそういうものまであったのか。


 今回、チュートリアルで仲間になったクミンが、人間と遠い種族であることは、大きな意味を持つ。

 俺がウイルスに感染しそうな瞬間に、その攻撃を肩代わりしてもらえるのは、無視することのできない利点だ。



『だから上杉さん。ウチにかばう系のスキルを覚えさせるメリットは大きいですよ?』



 クミンは少し得意げにいう。

 彼女の言葉に反論できる根拠もない。


「……わかったクミン。かばう系のスキルに関しては、クミンの判断に任せる」


『はい!』


「ただし」


 大きなメリットゆえに壁役のステータスでないクミンにかばうを覚えさせるのは認めたが、一抹の不安を覚えて、俺は言葉を付け足した。


「あくまで、庇ってもクミンが無事な場合にだけ使うんだぞ……たとえ俺が死んでも、クミンはある程度の能力を引き継いで生きていけるんだから」


 それは、テイマーとしてクミンと契約したときに確認した事項の一つだ。

 テイマーが死んでも、テイムモンスターが巻き添えになって死ぬことはない。

 契約は切れて、一部の能力は失うが、それでも少なくない経験を引き継いだまま、クミンはもとのモンスター生活に戻ることになる、らしい。


『……分かってますよ。ウチだって、無闇に死ぬつもりなんてありませんから』


「それならいいんだ」


 この辺りの線引きはしっかりしないといけない。

 なれはてたものたちとの戦いは、命の危険なしでは行えない。

 お互いに死ぬつもりはないが、それでももしもは起こりうるのだから。


『じゃあ、こちらのスキルを取って、あとはレベルアップに回そうと思います』


「了解」


 クミンは言って、かばうと身代わりのスキルを両方取った。

 ……ゾンビ攻撃を防ぐだけならかばう一つで十分なのでは?

 そう思ったが、かばうは前に出る、身代わりは位置を入れ替えるで効果が違うため、場合によっては使い分けできた方がいい、という判断だと押し切られた。


 こうしてクミンが忍者らしからぬスキルを習得し、残りのEPはレベルアップに。

 迷彩アリのレベルアップに必要なEPはそれぞれ以下の通りだった。


 10→11

 200EP


 11→12

 300EP


 12→13

 400EP


 13→14

 500EP


 なんか、召魔忍者に比べてだいぶ安くない?

 しめて1400EPで、クミンは一気にレベル14までジャンプアップである。

 ジョブ習得後のレベルアップは、前から聞いていたように成長補正分のランダムボーナスがありつつ、3ポイントの任意振りはそのままという感じ。

 なのでレベル14になったクミンはこんな感じ。



 ──────

 残りポイント:12

 ボーナスポイント:9(割り振り済み)


 力18

 魔20→22

 体18

 速24→29

 運18→20

 ──────


 速のステータスによくボーナスが振られているのは、ずっとアクロバットな動きをさせ続けていたからだろう。

 魔は拠点づくりで、運はドロップ祈願の副産物……?


 とりあえず、ボーナスポイントは思ったより振られたようなので、後の希望をクミンにも訪ねてみる。


「残ったステ振りはどうしたい? 力と体を底上げして今の仕事に必要な基礎を高めるか、魔速運に偏らせていくか」


『上杉さん本人は、多分偏っていきますよね?』


「……まぁ、今さら耐久に振ってもみたいなところはあるから」


 でも、一応防具は装備したことで防御力は上がっているんだぜ?

 足袋を装備して全体の防御力が上がるって不思議なんだけど。


『上杉さんがどんどん偏るなら、付いていける速だけ維持しつつ、体と力にもバランスよく振っていくのはどうですか?』


「オールラウンダーに育っていくのも、悪くはないか」


 少なくとも、俺のステータスが尖れば尖るほど、そこを補助できる能力が欲しくなるのはそう。

 速だけはきっちり上げておけば、付いていけなくて困ることもないか。

 何より、器用貧乏になりかけてもその分レベルを上げてステータスでゴリ押せば、なんとかなるはずだ。狩りの効率を上げていけばいい。


「じゃあこんな感じか?」


 クミンの意見を取り入れて、俺はステータスを振った。


 ──────

 力18→22

 魔20→22

 体18→22

 速24→33

 運18→20

 ──────


 速を尖らせたバランス型忍者。

 レベルを上げた分、ステータスの総数としては俺と大差ないだろう。

 運がちょっと凹んでいるのが気にはなるが、それでもそこそこ成長しているので、まぁ、きっと大丈夫。


『テイムモンスター:クミンのレベルアップを完了しました』


 そして、クミンも綺麗にEPを2000消費して大強化大会は終わりを告げた。

 クミンのステータスはこんな感じだ。

 

 ──────

 クミン

 迷彩アリ

 レベル14


 HP166/234

 CP129/199


 力22

 魔22

 体22

 速33

 運20


【セットスキル】

 [パッシブスキル]

 甲殻(蟻種) 嗅覚(蟻種) 怪力(蟻種)

 壁歩き(蟻種)

《迷彩アリの心得》


 [アクティブスキル]

 掘削 加工 牽引 土石魔術(初級)

 かばう 身代わり


【テイム条件】

 1.コストCP18

 2.ウサギ肉1個/1日(保留中)

 ──────


 あれ、なんかクミンのHPとCPの伸び良くない?

 というか、その辺を考慮すると、俺より総合的に強くない?


『ううー! またずっと強くなった気がします! 走っていいですか!』


「うん。遠くに行かないようにね」


『はい!!』


 クミンの潜在能力に戦々恐々している俺を尻目に、クミンは喜びのシャトルランを行なっていた。

 速がだいぶ上がったからか、キレがいい動きであった。






「さて、今日のところはもう寝る。そして明後日には地上に戻らないといけない……クミンは初めての地上か」


『はい。そこで強敵との戦いですよね』


 クミンはまだ見ぬ怪物との戦いにわずかに身を震わせる。武者震いか。

 しかし、気づいているだろう。

 今日はここで終わり、明後日に地上に戻るとなれば、明日一日が空く。


 ここで何をするのか。

 そんなのは決まっている。


 最後に、この三階層でやり残したことをこなすのだ。




「明日、四階層への階段を降りるぞ、クミン」


『…………いよいよ、ですね』




 そう。明日、俺は忍者型スケルトン率いる12体の集団を狩る。

 なれはてたものたちとの前哨戦でもあるし。


 忍者スケルトンから、俺のための装備を手に入れる重要な戦いでもあるのだ。




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