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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第62話 拠点作成とテイムチャレンジ



 ──────

 土石魔術(中級)


 中級の土石魔術が発動できるようになる。

 魔術は発動者が任意に開発、登録し、セットした中から選択する。

 魔術のセット数、及び性能は魔のステータスの影響で変動する。

 魔術の性能に応じて消費CPは変動する。(中級魔術の場合最大50まで)

 ──────


 ステータスで改めて土石魔術の詳細を確認してみる。

 火炎魔術との違いは基本的にない。

 最初から中級になっているのは『魔道の探求者:序』の効果だろう。


「端末くん、実は前から思ってたんだけど、本来この初級を中級にするにはどうすれば良いの?」


『スキルのランクアップは、所持しているスキルを完璧に習熟する、もしくはその上位スキルをEPを消費して習得することで行われます』


「じゃあ、初級を使い続けていれば上級も目指せる?」


『可能です。ただし、スキルの習熟には個人差があり、万人にそれが可能であるとは限りません』


 うーん。スキルについては謎が多い。

 基本的には、自分の行動傾向から、その行動を補助するスキルが生えるというのが俺の見解。これはアクティブスキルも多分同様。

 で、中級になるには、スキルを習熟するかあらためて習得するかってことは。

 EPを消費することで、本来その技術を習得するための『経験』を強引に与えているみたいなイメージなのだろうか。


『ウチの土石魔術は、初級みたいです!』


「それは称号の差かな。とはいえ、基本的には扱える最大CPの違いだけだから、できることはそう変わらないと思うぞ」


 クミンは自分に与えられた土石魔術の能力に、触覚をぴょんぴょこ動かして喜んでいる様子。

 俺の方から、魔術を最初に使うときは実際に声に出してシステムの補助を受けた方が良い、とか簡単な魔術の説明を行う。

 ひとしきり説明を聞いて魔術を理解したクミンは、次に端末へと質問していた。


『端末さん。土石魔術で生み出した土や石などは、ダンジョン内でどの程度の時間残るんですか?』


『ダンジョン内に本来存在しないものは、基本的には24時間以内にダンジョンに吸収され消滅します。消滅にかかる時間は一律ではありません』


 ちゃんと聞いてなかったけどそうだったんだ。

 俺は基本的にストレージ(とリュック)に荷物は全部持ち運んでいるし、排泄物が勝手に消えてれば気にしてなかったので知らなかった。

 一方、言われたクミンは少し考えた様子。


『では、ダンジョンに土石魔術で簡易住居を作り、それを残しておく方法はありますか?』


『土石魔術などで作られた物体は、内部に魔術行使者のCPが残存しており、残存CPが無くなった段階からダンジョンの清掃対象に入ります。したがって、定期的にCPを追加することで、消滅までの猶予時間を伸ばすことが可能です』


 へー。

 火炎魔術なんかは、発動したらボワっと燃えて終わりだけど、土石魔術にはそういう効果があるんだ。

 もしかしたら、現実世界で使うときもCPが残っているうちは魔術的な保護が働いていて頑丈、消えたらただの土や石になる、みたいな特性があるのかも。


『最後に、この場所に石や土でできた簡易住居を設置することに問題はありませんか?』


『挑戦者がダンジョン内で行ういかなる行動に関しても、基本的に我々が問題視することはございません』


『ありがとうございます!』


 クミンはその辺りで質問を終えたようで、くるりと俺に向き直る。


『上杉さん。というわけでウチはこの場所に仮の拠点を作ろうかと思うんですが』


「問題ないよ。どうせどこに拠点を作っても端末には戻ってくるわけだしね」


『それじゃ、た、試しにウチが土石魔術使ってみてもいいですか!』


 クミンが、ちょっとウキウキした様子で聞いてくる。

 別に魔術を使うのに俺の許可なんていらないんだが、一応何をするつもりなのか聞いてみるか。


「仮の拠点ってどういう感じにするつもり?」


『まず、できるだけ大きな石を出して、それを掘削して上杉さんの睡眠スペースを作ります。その後、そこを補強する感じで土を付け足して行って食事や作業を行うスペース、ウチの見張りスペースなども作るつもりです。あとは脱出路もですね』


「け、結構本格的なの作るつもりなんだね」


 正直俺は、なんか土のベッドみたいなのポンと作って終わりくらいのイメージだった。

 クミンが見張っていてくれるなら、敵が来たら飛び起きてとりあえず逃げられれば良いかなくらいで。

 少なくとも、ダンジョンの中で屋根のあるスペースを作る予定はなかった。


『上杉さんもいつも言っているように、ダンジョンでは油断はできませんから。上杉さんが眠っている間はウチが見張っているつもりですが、もしもの時に上杉さんが戦闘準備できる程度の時間稼ぎができないと、拠点として困りますし』


「あ、狩るつもりなんだね」


『? 巣を守るのは当然のことですよね?』


 そういえばクミンはアリさんだったね。

 クミンからしてみれば、徘徊して獲物を狩るのも、巣に侵入してくる外敵を排除するのも、同じくらい自然な行動なのかも。

 敵が向かってくるなら、狩るのが当たり前と。

 ……その辺は、あとで意見を擦り合わせておく必要があるかなぁ。


「まぁいいや。了解。それじゃ拠点作りはクミンに任せてしまってもいいかな?」


『任せてください!』


 巣穴作りには一家言あるアリさんである。

 なんの知識もない俺があれこれ口に出すより、一度おまかせしてしまった方がいいだろう。

 出来上がったものに問題があれば、その都度伝えればいい。どうせ魔術で作ったものなのだから、補修や改修は難しくないはずだ。


 さて、ここをクミンに任せられるなら、俺は俺で行動しよう。


「それじゃ拠点はクミンに任せるよ、クミン用にCP回復薬を何個か置いておくから、必要になったら使って」


『上杉さん、どちらに行かれるんです?』


「今朝言ったように、壁役の確保を考えている」


 クミンの圧力に負けて土石魔術を優先したが、俺の当初の目標はテイムモンスターの拡充だった。

 ゴブリンでもゾンビでも良いが、とりあえず種族進化させて前衛系の能力を持ったマシな見た目のモンスターが欲しいのだ。


 目下のところはゾンビが第一候補かな。

 ゴブリンって進化してもホブゴブリンとかの、見た目ゴブリン系にしかならなそうなイメージがあるんだよね。

 作品によってはゴブリンも妖精の一種と捉えることがあるから、その場合は逆にゴブリンの方が良いってことになるかもだけど。


 え、ゾンビの進化先?

 ……パッと思いつくのはグールかな……ダメかも。

 ま、まぁ、ダメなら外には連れ出さず、ダンジョンに置きっぱとかもできるし。

 拠点の管理人とかいれば嬉しいしね!


「とりあえず、ゾンビかゴブリン、仲間にできるように交渉してくる」


『わかりました。拠点のことはウチに任せて頑張ってください!』


 と、クミンに快く送り出されたので、俺はテイムモンスター確保の旅に向かうことにした。





 というわけでやって来た第二階層。

 もはや親友の家くらいの気軽さである。

 一応、一人旅ということで今回は悪臭をオンでお送りしている。


 ゾンビと交渉するにしても、悪臭出しておいた方が印象がいいかもとちょっと思ったのは内緒だ。


「さて、肝心のゾンビだが。いるな」


 少し歩いていると、ずりずりと引きずるような足音が耳に入る。

 聞き耳のスキルも、端末くんが言っていたように習熟して精度が上がって来ている気がする。

 忍者技能として、ジョブを取った時に上がっただけかもしれない。


 どっちだっていい。

 俺はひとまず耳についた方に向かっていくことにした。


 仲間にするゾンビの希望は特にない。

 強いて言うなら、壁役というイメージ的に、女性型よりは男性型の方が頼もしいかなと思う程度だ。

 クミンが女性なのもあって、ここで女性だとテイマーの俺が肩身の狭い思いをしそう、とちょっと思っているのもある。


 そんな思いを胸に足音に近づいていくと、そこにいたのはいつものゾンビだ。

 顔はボロボロのドロドロなので、ぶっちゃけ顔からは性別はよくわからない。

 俺の判断基準は体格だ。

 そしてこいつは、たぶん男。よし、最初の標的にしよう。


 まずは、見つかる前に遠くからアライメント鑑定を行ってみる。


 ──────

 ゾンビ・男

 混沌・中立

 ──────


 うわぁ。男だったのはいいけど立派に混沌属性だぁ。

 ま、まぁ、今はプラス判定が一つ増えたと喜んでおこう。悪ではないし。

 そうポジティブに考え、俺はゾンビの前に進み出る。


「こんにちは」


「うーぅああー」


 ひとまず挨拶をしてみたが、返ってくるのはうめき声だけ。

 テイムを使ってないからな。

 ただ、無許可でいきなりテイムを使うのって失礼だったりしないかな?

 いや、許可を取れって言われても困るのだが。


 まあいいや。とりあえず『テイム』



「こんにちは」


『ウォオォオ!? ウォマエハァ!? ダレダァ!?』



 改めてテイムを使って話しかけると、今度はしっかりと返事がある。

 のだが、うるせえ……。



「ええと、自分は上杉志摩って言います」


『ゥオマエァハハ!! オレカァ!?』



 いや、上杉って言ったじゃん。

 あれ、これ大丈夫かな?

 テイムちゃんと通じてるよね?

 少なくとも、俺はお前ではない。



「えっと、俺は、君ではないなぁ」


『ソウダァアアア! ウォマエハァア! オゥレジャネエェエエ!! ジャア、オゥレハオゥレカァ!?』


「…………!?」



 ちょ、ちょっとたんま。

 何を聞かれているのかがわからない。

 なぜ俺は、ここで謎の自問自答をされているんだ?

 と、とりあえず肯定しておこう。



「そうだよ。君は君だ」


『テキトウナァ! コトォイウナァアア!? シンヨウデキネェエエエエ! 死ネェエエエェ!!!』


「なんで!?」



 言うが早いか、テイムの繋がりがぶつりと切断され、ゾンビは俺に襲いかかって来た。

 とりあえず俺は、ゾンビの背後に回り込むようにしながら、メタルラックで頭を二発ほどぶん殴り戦闘に勝利する。


 だが、戦闘に勝った余韻に浸る余裕はない。

 心の中にはずっと先ほどの交渉決裂の疑問が渦巻いていた。




「……これ、マトモな会話ができたクミンって、実はめちゃくちゃチュートリアルだったな?」


 


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