第54話 厄い称号とテイマースキルの確認
基本的に、ステータス画面で見つかった気になることは逐一確認していた俺だが、一つだけスルーを決め込んだことがある。
それは、スキルを複合したときに当然の権利のように追加されていた『闇と死の徒』という称号の確認だった。
まぁ、スキルの説明とたいした違いはないだろうと判断してのスルーでもあったのだが、今回その称号が盛大に牙を剥いている。
しかも三つも。
『闇夜と死の徒』
『混沌と孤独の同胞』
『魔道の探求者:序』
この名前の感じと、召魔忍習得条件に書いてあった神六柱以上の承認という言葉から予想は付く。
おそらく、この辺は俺の就職を後押しした神々から押し付けられたものだろう。見慣れた名前だったはずのやつも、なんかパワーアップしてるし。
「…………ふぅー、よし、確認しよう」
そして、俺は端末くんに緊急でかけていた待ったを解除した。
俺の意思を確認し、端末くんはそれぞれの称号の詳細を表示する。
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『闇夜と死の徒』
闇の女神、死の女神、夜の神から目をかけられている証。
貴方は闇とともに生き、死と共に歩み、夜と共に進んでいくだろう。
暗いまどろみの中ですら貴方は道を違えることはない。
ステータス補正:『闇の中』『死の側』『夜間』においてそれぞれ『HP、CP回復力微増』『隠密効果アップ』『速に微補正』の効果。この効果は重複する。
この称号を持つものは闇に属するものに一目置かれるようになる。
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『混沌と孤独の同胞』
混沌の神、孤独の神から目をかけられている証。
貴方が歩む先は混沌に満ち、故に貴方はいつも独りであるだろう。
恐れることはない。貴方は貴方が常に正しいことを知っている。
ステータス補正:『混乱』の状態異常を無効化。加えて『単独行動時』は『あらゆる行動にプラス補正』『あらゆる状態異常に強い耐性』を得る。
この称号を持つものは混沌の性質を持つものに一目置かれるようになる。
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『魔道の探求者:序』
魔の女神から同情を向けられている証。
貴方が望むのなら、魔術は常にあなたの進むべき道を切り拓くだろう。
闇に凍え震える手で、人類が初めて火を灯したように。
ステータス補正:魔術スキル使用時にCP変換効率上昇。あらゆる魔術の位階を一段階引き上げる。ストレージの強化。
この称号を持つものは魔術師に属するものに一目置かれるようになる。
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「見なかったことにしよう!」
そして俺はそっと表示を閉じた。
いや、なんか強いことが書かれているのはなんとなく分かったし、見なかったことにするとか言いつつ、補正の部分はしっかり頭に入れたよ。
ただそれはそれとして、厄いんだよ全体的に。
少なくとも、これらの称号の効果で俺は闇に属する混沌系の奴に一目置かれるらしい。
それなんて『混沌・悪』?
やだよ。魔王系モンスターに一目置かれるのやだよ。
あと魔の女神様は、なんか一柱だけ同情してくださってるみたいで、なんかありがとうございます。
火炎魔術にはいつもお世話になっております。ありがたくお力を借りさせていただきます。
『もうよろしいのですか?』
「とりあえず、どの神様が承認をくれたのかは分かったから良いよ」
多分、俺がノービスのレベル10になったとき、俺を高評価してくれていたらしい神々が、そのまま俺のスポンサーにでもなったような感じだった。
「これ、聞けたらで良いんだけどさ。こんだけ神に目をつけられている奴って俺以外にいる?」
これは自慢とかじゃない。
どちらかというと、自嘲気味の質問だった。
だが、端末くんはそんな俺の言葉に想定外の反応を示す。
『そうですね。詳しくは申せませんが、居ます』
こんなに可哀想な感じになっている奴は、実は俺以外にもいるらしい。
「マジで?」
『現段階で最高16柱の神々に目をかけられている方がおります。その方は【勇者】の職業を授けられました。他にも複数の方が特殊な職業を授けられています』
「……そりゃまた、なんとも」
俺が六柱で泣きそうになっているのに俺の倍以上の神様に目をつけられている奴がいるとは。
きっとそいつらも、さっきみたいな『貴方だけの特別オファー』で、職業を押し付けられているのだろう。
俺は思わず同情してしまうが、きっと勇者とかそういう職業からしてキラキラした奴らなんだろうな。
俺みたいに、突貫で作られた職業じゃなくて。
『ただ、そういった方々を見ている神々は人類に好意的な方が多く、人類全体を広く見ているとも言えましょう。人類のために戦う人々は、そういう神々に目をかけられやすいのです』
「なるほど。基本的に善い人たちなんだな。勇者様御一行は」
『対照的に、上杉様に目をかけているような神々は……お気をつけて』
「……あ、はい」
どうやら、人類に好意的とは限らない方々らしい。俺のスポンサー。
俺の中の警戒度メーターがもう限界を三回くらい越えている気がする。
いや、良いんだ。これも茉莉ちゃんのためだ。
それに俺は魔の女神様を信じてる。いざとなったら助けてください。
「まぁ、称号についてはこのくらいで良いや」
考えても仕方ないことなので、その辺りは一旦棚上げする。
もし、将来的に神々の使徒さんたちと相対することになっても、俺の行動原理は変わらない。
南小のコミュニティと一緒だ。
可能な限り協力はするが、茉莉ちゃんに危害を加えるのなら、全力で敵対してやるだけだ。
……こんな思考だから、俺のスポンサー偏ってるんじゃねえの?
「それでは、いよいよお待ちかねの方に行くか」
称号をあらかた確認し終えた俺は、ついに気になっていたスキルの詳細を確認しにかかる。
召魔忍者となっているが、忍術らしい忍術はスキルとして増えていない。
おそらく、忍者っぽい部分はパッシブスキルの方に比重が行ってて、その辺はすでに習得済みだったとか。
あるいは未修得のスキルも《闇と死の徒》──じゃなくて《闇夜と死の徒》の中に統合済みだから、増えているように見えないだけとか。
まぁ、それはおいおいとして、一番気になるのはやはりこれだろう。
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アライメント鑑定
テイム
サモン
口寄せの術
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アライメント鑑定は、まぁ、飛ばすとして。
テイマー(サモナー)らしく、テイムとサモンが、あと忍者要素で口寄せの術が追加されている。
俺はそれぞれの詳細を表示してみた。
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テイム:
モンスターに契約を持ちかけ、それに応じたものを使役状態にする。
モンスターの使役状態を維持するためには、対象に応じたコストCPを支払う必要がある。
消費CP:(使役対象のモンスターによる)
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サモン:
モンスターの影法師を呼び出し、肉体を与えて使役する。
呼び出せるモンスターは、ドロップアイテムを納品した種類のものに限る。
消費CP:(使役対象のモンスターによる)
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口寄せの術:
使役状態のモンスターを、CPを消費して喚び出す。
また、喚び出したモンスターを元の場所に送還する。
消費CP:(使役対象のモンスターによる)
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「ふむ」
ずっとテイマー(サモナー)という括弧表示だったわけだが、こういう感じなのか。
「つまり、テイムは文字通り使役して仲間にすることで、サモンは一時的に戦うモンスターを喚び出す感じね」
説明から読み取れることはそんな感じだ。
例えるなら、テイムの方は一度正式に雇用したら、固定給を支払い続ける代わりにずっと働いてもらう正社員みたいなもので。
サモンの方は、必要な時に臨時で報酬を払って仕事をしてもらう日雇いバイトみたいな感じだろうか。
想定だと、テイムモンスターは育てる要素もありそうだが、逆にサモンモンスターは、能力は一定で特殊なスキルを持っていたりもしない。
だったら、テイムモンスターの方が優秀だと思えるが、テイムモンスターの数を増やすにも、強いモンスターほどテイム状態を維持するのにコストCPがかかる。
無限にテイムモンスターを増やすことはできないのだ。
逆に、回復薬をがぶ飲みすれば、サモンモンスターは数値の分だけ無限に召喚することもできるのだろう。
一回の戦闘を切り抜けるためのドーピング的な使い方も可能だ。
これは、どちらに重きを置くかで、本当に戦術ががらりと変わってくる。
職業として、別れていてもおかしくないほどの差異がある。
最後に口寄せの術は、テイムモンスターを喚び出すということで、これは忍者特有の『隠密系』スキルだな。
普通テイムモンスターはずっと付いて回る感じなのだろう。
ただ、それだと隠密行動に支障が出る場合がある。
そんなとき、必要に応じてテイムモンスターを自由に呼び出せる技能が、召魔忍者特有の忍術として追加されたわけだ。
まぁ、なかったらなかったでサモンするだけだろうし、フレーバー感がちょっと漂うスキルだ。調整不足かな?
「とりあえず……まずはテイムの仕様を確認してみるところからかな」
スキルの詳細をざっと読み込んだ俺は、そう考える。
サモンだったら今すぐ試せるかもしれないが、テイムは実際にモンスター相手に使ってみないことには分からない。
問題は、一体誰をテイムの実験台にするかという話になる。
そんなところで、端末くんが珍しくダンジョンのシステムらしい口を挟んだ。
『上杉様。ダンジョンのジョブシステムチュートリアルとして、テイマーのチュートリアルもございますが、お受けになりますか? チュートリアルを行うことで、モンスターが一体、ランダムで使役状態にできます』
「へぇ!!」
ダンジョンのシステムくんが珍しく親切だ。
そういうので良いんだよ。たまには人類が喜ぶことができるじゃないか。




