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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第51話 弓持ちのスケルトン



 カツン、カツン。

 ガチ、キキ。



 曲がり角の向こう側で響く足音に、俺は息を潜める。

 手鏡でそっと向こう側を見れば、4体のスケルトンの姿。

 剣、剣、斧、そして弓。


(弓か……)


 俺はしばし、逡巡する。

 このパーティと戦うかどうかを。


 基本的に、俺はこの階層でも奇襲しかしない。

 というよりも、奇襲以外でスケルトンの群れを処理する方法がない。

 対ゾンビ用魔術であるマインはスケルトンにも有効だが、それはしっかりとしかける時間と、そこに相手を誘い込む余裕があればの話。


 スケルトンのパーティと、ゾンビやゴブリン達には一つ大きな違いがあった。

 それは、スケルトンには短剣を持った斥候タイプが存在していたこと。


 俺が今まで確認してきたところ、スケルトンは3体から6体でパーティを組んでいる。

 そして、そのパーティ構成で必ず居るのは剣を持った前衛型。

 あとは予想だと、剣、斧、弓、斥候、杖の順に出現率が高いランダムの組み合わせになっている。


 そして、この斥候タイプが辛い。


 最初に罠に嵌めたときは剣、剣、斧という組み合わせだったのですんなり行ったが、斥候タイプが存在すると、奴らはまず斥候に警戒をさせる。

 それでどうなるかというと、斥候一人が突出した陣形を組んでいるのだ。


 俺の隠密技術はスケルトンの斥候よりも上なようで、簡単に見つかることはない。

 だが、今まで余裕で隠れられていた距離でも、斥候がいると警戒されるパターンが増えた。

 スケルトンもいつも都合よく曲がり角のすぐそばに居るわけではないので、長い直線で斥候に見つかったときは逃げることもあった。


 また、斥候が前にいると、マインでパーティ全員を巻き込むのが難しくなる。

 奴らは斥候、前衛、後衛みたいな陣形で行動しており、CP15のマインだとそのどれか一つの列にしか当たらないイメージだ。

 当初の予定ではCP15で全体攻撃くらいになると思ったのだが、これは悪い方の誤算である。


 せめて、斥候が俺を見つけたとき、ちゃんとパーティに合流してから行動してくれればいいのだが、知能の問題か、パーティに俺の存在を伝えたあとそのまま突っ込んでくる。

 これが、どこまでもマインと噛み合いが悪い。


 一度斥候持ちのパーティと当たった時は、相手が斥候と前衛のパーティだった。

 少しタイミングを計って前衛をマインで屠ったはいいが、その間に近づいてきていた斥候とは、ガチバトルをする羽目になった。

 一応、俺のレベルが相応に高いので押し勝ったわけだが、しっかりとHPにダメージを食らってしまっている。


(俺の直接戦闘能力が相変わらず低い)


 つくづく、自分は肉弾戦ができるタイプではないと実感した。

 それから、斥候持ちは現段階では避けるようにしている。

 もちろん、後で対策は考えるが、今は無理して戦う必要はない。

 マインのCPを30にして巻き込み範囲を増やすことも考慮しているが、EP効率の悪化と、CP回復薬を買う元手の関係でまだ検証していない。


 というわけで、マッピングを行いつつ都合のいい獲物を探していたところで、ようやく見つけたのが、先のスケルトンパーティである。

 剣、剣、斧、弓。

 可能であれば全員前衛を狙いたかったが、弓の存在に思うところがあった。


 弓持ちのスケルトンはショップのラインナップを増やすためにも、いずれ狩らねばならない相手ではある。

 多少の斥候技能を有している様子だが、ナイフ型ほどではない。

 問題点は、弓を扱うが故に、前衛と配置がずれるだろうこと。

 CP15のマインでは、巻き込めない可能性が高い。


(だが、斥候はいない。CPを20にまで増やせばギリギリ届くか?)


 現在、朝起きてから午前中を費やし、三階層で合計14体のスケルトンを狩っている。


 斥候と前衛の4体パーティが一つ。

 前衛のみの4体パーティが一つ。

 前衛のみの3体パーティを二つ。


 ここまでドロップアイテムは無し。

 収入はEP336。

 

 対して、俺の元のCPは最大値58。

 宝箱からゲットしたCP回復薬1個と、端末から追加購入した回復薬2個を合わせてプラス45。

 合計で103。

 マインの消費CPが60。


 CP自然回復の分があって現在のCPは51。

 CPを30は残して撤退する予定だったので、CP20までなら、つぎ込んでも問題はない。


(……そろそろ昼時だしな。弓はいずれ狩らねばならないし、斥候入りのせいで精神的な疲労も溜まっているから、どうせ戦わなくても一時撤退だ。なら挑戦してみるか?)


 もちろん、勝算もある。

 マインで最低でも三体を倒せれば、仮に残ったとしても弓持ちが一体。

 一対一の戦いでなら、弓よりもメタルラック(槍)の方が分があるだろう。

 CP20で範囲を強化してみて、倒せるのならそれでよし。

 倒せなくても接近戦に持ち込んで狩る。


 作戦を決めればあとは実行に移すだけだ。


「(マイン)」


 俺は小声で、何度もお世話になっている地雷魔術を発動する。

 後衛を巻き込むことを考えているので、設置場所はそれも考慮して曲がり角から少し離れたところだ。

 いつもより、構築に時間がかかるのはそれだけ注ぎ込んでいるCPが多いから。

 火力を上げてCP20にしたミミックの時と比べて、構築にかかる時間が長い気がする。

 単純火力上昇よりも、効果範囲拡大の方が魔術としては高度なのだろうか。

 

 マインの構築が完了したあと、俺は静かに息を吸う。

 そして、まだ俺に気づいていない間抜けな骨どもを挑発するため、角の向こうに躍り出た。


「おらぁ! この軟骨野郎が! かかってこいや!」


 相変わらず、罵倒語は適当だ。

 別に罵倒しなくてもいい気もするが、それで俺に気づくのに個体差が生まれて、バラバラに走って来られても困る。


 スケルトンが一斉に俺に気づくと共に、弓持ちは即座に弓を構えた。


(想像より判断が早い!)


 とっさに曲がり角に逃げ込んだのに少し遅れて、俺がさっきまでいた辺りの後ろの壁にボロボロの矢がカツンと当たった。

 少しスケルトンを舐めていたかもしれない。

 だが、ここからはいつも通りだ。


 静かに息を吐いて、俺はその場から即座に逃げる。

 弓持ちが居るから後ろ向きにだ。

 全員巻き込むつもりなら、タイミングが大切。

 弓持ちが現れた瞬間を見逃さないために、速度よりも視認性を重視した。


 ガチャ、ガチャ、カツ、カツ。


 当然、そうなると俺のスピードは遅くなり、いつもより近い位置にスケルトンの集団が現れる。

 だが、まだ早い。

 マインの設置位置はもう少し先。

 弓持ちの出現は、さらに先。


 光のない骸骨の眼孔に見つめられながら、出そうになる冷や汗にまだ早いと念じて、俺は奴らから目を離さない。

 そして、前衛から少し遅れて弓持ちも姿を現し。


「今!」


 俺はマインを発動した。

 前衛のすぐ後ろで、いつもより範囲の広い炎が上がり、スケルトン三体はそこから逃れようと前へと足を伸ばす。

 マインの発動が少し遅かったかもしれない。


 ゾクリとした。


 今の走る勢いであれば、そのまま炎から逃れて襲ってくるのではと思えた。

 だが、前に踏み出した足も徐々に勢いをなくし、前衛三体は結局炎から逃れられずに火葬されていく。


「……なんだよ、びびらせんなよ」


 俺が思わず安堵の言葉を漏らした直後。

 腹にドンと衝撃が走った。


「え?」


 思わず体に目をやる。

 重ね着していた服のお腹の部分が裂け、そこにボロボロの矢が突き立っていた。


「っ!?」


 とっさに矢を抜き放って側転し、身を屈める。

 第二射は少し遅れて、さっきまで俺がいたところに届く。

 スケルトン三体が焼かれた炎の先をじっと見ると。


「まだ生きてる!」


 炎の奥に、かろうじて生き残ったという体ではあるが、確かに健在な弓持ちのスケルトンの姿が見えた。

 発動が早すぎたか、あるいはCP20じゃやはり範囲が足りなかったか。

 第三射の照準を現在の俺に合わせようとしたのを見て、俺は再び即座に転がって避けた。

 だだっ広いと思った三階層の道幅が、今はこんなにも狭く感じる。


「っ! 石!」


 牽制の意味も込めて、俺は最近使っていなかった投石を行う。

 有効射程ギリギリだったろう石だが、それは狙いを違わず弓持ちのスケルトンの頭蓋骨に当たる。

 と同時に、明らかにスケルトンがひるんだ。

 どうやら、マインによってHPの加護を失う程度にはダメージを受けていたらしい。


「仕留める!」


 その姿を見て、俺は即座に距離を詰める。

 後ろ向きに走っていたから、そう何十メートルも離れていない。

 マインはもう鎮火している。まだ地面が熱いかもしれないが、そのための安全靴だ。

 スケルトンが投石の衝撃から体勢を立て直しつつある。

 このままだと間に合わないと踏んだ俺は、走る勢いのままメタルラックを投槍のように放つ。

 今度は頭蓋骨ではなく、胸の中心あたりに当たって、それで終わりだった。


 弓持ちのスケルトンは、やはりもうHPを失っていたようで、メタルラックの一撃で光の粒子となり消えていった。


「…………油断してたつもりはなかったけど」


 結果としては、気を抜くのが早すぎた。

 前衛三体をうまく倒せてしまったのが、ある意味悪かった。


「怪我は、ないか」


 腹に突き立った矢だが、服の層を貫通しつつも俺のHPは抜けなかったようだ。

 だが、そう何度も食らいたい衝撃ではない。


「……お、ドロップアイテム。剣のほうだけど」


 戦闘の余韻から解放された俺は、マインの跡地に残っていた頭蓋骨を見つける。

 弓の方が嬉しかったが、さすがにそう上手くはない。

 ひとまずこれで、EP400分は余裕を持って確保できた。


「端末に戻るか」


 帰り道で戦闘する気はない。

 先ほどの反省を頭の中で行いつつ、俺はコソコソと三階層入り口の端末まで逃げ帰ったのだった。




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