表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/165

第48話 痛恨の見落とし




「え? もう一回言ってくれる?」


『ですから、ストレージ内では基本的に微生物を含む生物の活動が停止します。そのため、食品の劣化が起こることはありません」


 俺がウサギ肉との格闘を終え、やたらとしょっぱくなったそれらをとりあえずラップに包んで整理していたところ。

 俺の作業をじっと眺めていた端末くんはそう言った。


「……なんで?」


『ストレージ内は、物理空間風に言うのならば【魔力】という液体に満たされた状態のようなものです。これは真空に近い状態と考えてください。この【魔力】の中で動けるものは魔力に親和性のあるもののみとなり、一般的な細菌、微生物などはその活動を大きく阻害されます』


「つまり?」


『入れたものの時間が停止する、という物理現象は起こりえませんが、腐敗などの反応は基本的に停止すると思っていただいて問題ございません』


 俺は、作業の手を止めて、その場に崩れ落ちそうになった。


「なんで教えてくれなかったの!?」


『聞かれなかったので』


 端末くんは、冷たかった。

 いや、あれだけ歩み寄ってくれてたなら、そこでもう一声あっても良かったじゃん……!


 ……ま、まぁ、良いや。

 攻略中ではなかなかできない食品の下ごしらえを先に済ませたと考えるんだ。

 やたら塩辛いのも、ダンジョンで運動した後はちょうど良いはずだ。

 そう考えるんだ。


 それに、


「……昔に比べて、ストレージについて詳しく教えてくれてありがとう」


『攻略情報は進度によって解放されます。上杉様であれば、このレベルの情報は開示しても問題ないだろう、とのことです』


 ある程度、教えてくれなかったことを端末が教えてくれるようになったというのは、ポジティブな変化だ。

 なんか色々、俺のために情報公開の許可を取ってくれている節もあるし。

 今後の攻略で何か困った時、端末がヒントをくれたりするかもしれない。

 まぁ、くれないかもしれないから過度な期待はできないが。







「…………ぅあぁあ」


 作業を終え、真っ暗な部屋に戻って来た俺は最後に茉莉ちゃんの世話を少しだけした。

 別に何もいやらしいことはしてないぞ。ただ、ボロボロだった手にコンビニから拝借してきていた新品のタオルを巻いただけだ。


 それになんの意味があるのかと言われれば、きっとなんの意味もない。

 ただ、俺の手を握りつぶそうとする彼女の細い指を眺めて、ふと思ったことはある。

 手作りアクセサリーを作る、なんて約束もしていたな。

 今はそれどころじゃなくなったけど、もしあんな約束をしていなければ、先の未来はどう変わっていただろうか。


「……ごめん、ごめんよ」


 いつもより少しだけ大人しい茉莉ちゃんの髪の毛をそっと撫でた。代謝がないせいか、髪の毛は思ったよりもさらさらのままだった。

 こうなる前は、難しいボス戦なんかをクリアした時におねだりされて、撫でてあげると喜んでいたものだ。

 なんでも、小さい頃は兄によく撫でて貰っていたとか、なんとか言って。


 今は、俺が撫でたところで嬉しそうに眼を細めることはない。

 眼孔を開ききって、ギョロリとした目が暗がりの中で必死に俺を捉えようとしているのみだ。

 

「……そういえば、部屋が暗いと、少し反応が薄いか?」


 俺は暗視の効果か、真っ暗な部屋でもなんとなく様子がわかる。

 その点、茉莉ちゃんは明るい時ほど俺を正確に探れていない気がする。

 もしかしたら、ゾンビは結構視覚情報に依存しているのかもしれない。

 ……あの怪物は、そもそも目がどこにあるのかも分からないが。


 ──────

 人間・女

 状態:呪腐魔病(軽)

 ──────


 最後に、簡易鑑定の結果は変わらない。

 ただ、これがいつまで続くかは分からない。

 手遅れになる前に、必ず俺が助けるから。



「……それじゃ、行ってくる」


「ぁあ……うぅあ」



 茉莉ちゃんとしばしの別れを済ませ、今度こそ攻略のため、俺は自宅のダンジョンへと潜り込んだ。







「先に、ショップでスケルトンの武具を確認させて貰えるかな?」


『かしこまりました』


 いつもの入り口でのやり取りを済ませ、先に南小との約束のブツが本当に手に入りそうかをチェックしておく。



 ──────

 ボロのロングソード:EP15

 スケルトンが所持しているロングソード。無いよりはマシという程度だが、剣士であれば役に立つこともあるだろう。


 ステータス補正:力+1

 ──────

 刃こぼれした斧:EP15

 スケルトンが所持している斧。無いよりはマシという程度だが、戦士であれば役に立つこともあるだろう。


 ステータス補正:力+1、体+1、速-1

 ──────

 ロングソード:EP300

 スケルトンが所持しているロングソードの元の姿。駆け出しの戦士であれば、これを所持することに憧れを抱くことだろう。


 ステータス補正:力+2、体+1

 ──────


「想定外のものまであるな」


 想定していたのは、ボロボロのロングソードと斧まで。

 だが、ショップにはボロボロではないロングソードまで入荷している。


 その原因を少し考えてみて、思い当たることは二つ。

 一つは、剣士型のスケルトンは2体倒しているということ。

 一つは、剣士型のスケルトンから頭蓋骨をドロップしていたこと。


 後者な気がする。

 2体倒せれば良いというのは、ちょっと条件が緩すぎる。

 ドロップ率がどうかはまだ分からないが、ここでしっかりとした装備を手に入れられるというなら、想像以上にスケルトンの階層には価値がある。

 ……余計なことを口走らないように、なおさら気をつけなくては。


「弓や杖はないのか」


 そのほかの武具はないのかと尋ねてみても、ショップで入荷しているものはこれだけらしい。

 おそらく、弓や杖を持ったスケルトンを倒した時からラインナップに上るだろう。

 可能であれば、せめて弓くらいはボロボロじゃないものを手に入れたいところだが……痛し痒しだな。

 そもそも、弓も値段が同じであったら、彼らに無駄に借金を押し付けることになるかもしれないし。俺の成長も遅れる。


 まぁいい。予測は立ったので、あとはそれを検証するだけだ。

 悩むのは後でもできる。


「それじゃ、行くか」


 ゴブリンの階層を前にして、俺はうーんと背伸びをする。

 もちろん、相手がゴブリンだろうと油断するつもりは一切ない。

 錆びたナイフを突き立てられれば、豆腐防御の俺のHPは容易く削れるだろうし、数の暴力はそれだけで怖い。


 だから、ここは全力で掛け抜けて行く所存である。

 所存であるが、そこで端末から水を差すような一言が。



『上杉様。ダンジョンから一件のお知らせがございます』


「ええ? 嫌な予感しかしないんだけど」



 咄嗟に俺は身構えてしまう。

 お知らせは、軽いトラウマだ。

 それを無視したときの苦い記憶が蘇る。


 あの時に先に内容を見ていたら何か変わっていたのか、と言われたら困りどころではあるが、少なくとも良いイメージはない。


「せめて、良いお知らせか悪いお知らせか最初に教えてくれない?」


『ダンジョンがもたらすお知らせは、常に挑戦者のためを思ってのものです』


「…………」


 ダンジョン的には、全部良いお知らせと言いたいらしい。

 ダンジョンは人の心が分からない。


「……良いや。それじゃ教えて欲しい……」


『ダンジョン18764番の一階層と二階層の宝箱が再配置されました。マップに変更はございませんので、改めて探索することもお考えください』


「良いお知らせじゃん!?」


 身構えて損した。ダンジョンは人の欲望はよくわかっている。

 そうだよ。個人的にはこのダンジョンは宝箱とかが少ないことが不満だったんだよ。

 階層ごとに平均一個だぞ。しかも銅貨のパターンもあるわけだし、もうちょっとワクワクを感じさせる配置を心がけて欲しい。


「まぁ、良い。二階層で新たな魔術書が見つかることに期待だな」


 現状では、魔術の習得方法は魔術書を納品するか、ジョブで魔法使い系のものになるかの二択。

 あとは、スケルトンの杖型を倒したら何らかの魔法系スキルが解禁される可能性もあるか。確かそんなことを言っていたはずだ。


 とはいえ、貰えるものはなんでも貰っておきたい。

 特に、継戦能力が向上するか手札が増えるようなスキルは、喉から手が出るほど欲しいのだ。

 隠密特化は決定力が足りなくていけない。


(……それに、もしかしたら宝箱から呪腐魔病の治療薬が出る可能性だって、あるんだ)


 端末に尋ねたところで、これだけは教えてもらえないという確信がある。

 それでも、その可能性が僅かにでもあるのなら、新たに出現した宝箱を回収しに行かない選択肢はない。


「それじゃ、そろそろ行くよ。また二階層と三階層で」


『行ってらっしゃいませ上杉様。あなたの挑戦の成功を祈っております』


 端末に見送られ、俺は再びダンジョンへと入って行く。


 すでに時刻は夜。

 宝箱を回収しながらだと、どれだけ急いでも三階層に着くころには寝る時間になっているだろう。


「一階層は行きに探すけど、二階層の探索は明日に回すか?」


 別に行きで探索しても構わないのだが、そうなると寝る前のCP消化が不安になる。

 グールの時の失敗を思えば、寝不足でスケルトンのパーティに挑むのは危険だ。思わぬミスをするかもしれない。


 ただ、CPは時間経過で回復する仕様上、寝る前にはきっちり消化しておきたいのだ。

 スケルトン狩りはCPを消費する。現時点で三体狩るのにCP15。これは現状だと《闇と死の徒》を外した状態でも回復に三時間近くかかる。

 逆算して、六時間寝るつもりならば6体は狩れる計算だ。


 スケルトン狩りはCPを使う関係上、どうしても効率に限界がある。

 CPを使ったらゾンビ狩りに戻って、ゾンビを狩りながら回復を待つというルーティンを綿密にこなす必要があるだろう。

 残された時間は一週間しかない。これからは、時間との戦いになる。


「少し、急ぎ足で行こう」


 というわけで、俺はゴブリンとの戦闘を極力さけつつ、久しく回っていなかった一階層の巡回からスタートすることにした。







 そして、俺は、自分が致命的なミスを犯していた事実に直面する。




「……ああ、あぁあああ。待て、俺はなぜこれの存在を忘れていたんだ……」




 一階層を回り始めた俺が見つけてしまった、宝箱から登場したアイテムは、こちらだ。



 ──────

 CP回復薬Ⅰ

 効果:現在CPを15回復する。

 ──────



「これ確かショップで普通に買えたじゃねえかよ……!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
端末くんがデレた!これはメインヒロインですわ!(錯乱 上杉くんのほど良くPONなところが端末くんや神々の庇護欲や興味などを唆るのかしらね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ