表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/169

第46話 危険な役目



 具体的な策は決まっていない。


 と言っても、明らかに危険な相手と戦うのに用いる策というのは大方決まっている。

 仮に、現代人がどうしてもクマと戦わなければならないとなった時、どう考えるか。


 クマと真っ向勝負で打ち勝ちたいなどと考えるのは、その道の武闘家くらいだろう。

 自分より明らかにフィジカルの強い相手と、真っ向から戦うのは基本的にバカのやることだ。グールに追い詰められた誰かとか。


 というわけで普通は、数を集めて遠距離から叩くか、罠に嵌めるかの二択といったところだろう。

 むしろ、罠に嵌めた上で遠距離から叩くというのが一番取りたい策だ。


 そして、仮にそういう作戦を立てたとしよう。

 その作戦を成立させるために、一番重要な要素は何か。

 それは、相手を罠を張っている場所まで無事におびき寄せることだ。


 野生動物なら餌を置いておびき寄せるとか、通り道を探って罠をしかけるとかやり方はいろいろあるだろう。

 そして今回の相手は人を襲う化け物だ。

 となれば、餌の代わりに人間がおびき寄せるというのが、最も確実な方法になってしまうかもしれない。


 罠のところで待っていれば良い人たちと違い、実際に怪物と相対し、引きつける必要のある役目。

 最も危険で、そして最も重要な役目。


「おそらく、上杉くんには、その役目を頼むことになる」


「……まぁ、そうなるでしょうね」


 松川さんの申し訳なさそうな顔に、俺はため息を吐いて応えた。

 まぁ、仮にどう役割分担するかと考えたとき、俺に割り当てられるのはそこになってしまうだろう。


 理由の一つは、おそらく俺がコミュニティの誰と比べても一番ステータスが高く、怪物と相対したときに無事でいられる可能性が高いこと。

 理由のもう一つは、俺がコミュニティの誰と比べても一番信頼度が低く、危険な役目を押し付けられやすいこと。


 最悪のパターンで言えば、俺が途中で怪物に追いつかれてぶっ殺されたら、作戦は中断して新しい作戦を考えるとかやりやすいわけだ。

 罠をしかけているはずのところにおびき寄せても、そこに誰も待っていなかったとかは勘弁して欲しいが。


 松川さんは、俺が少し沈んだのを見て、即座にフォローを入れる。


「もし、君が無理だというのなら、もちろん断ってもらっても構わない。その場合は、俺が」


「大丈夫ですよ松川さん。俺自身、それが自然だと思いますし」


 松川さんなら、俺が断ればきっと自分が囮役を買って出るのだろう。

 ただ、松川さんと俺の速ステータスやスキルを考えれば、どちらが適任かは一目瞭然だ。


 それに、俺はここから一週間、今よりもっと強くなる。

 最悪、作戦を中断して逃走できる程度には鍛えたい。

 だから、この役目は俺が適任だ。

 それに、この役目を果たすことの意味も大きい。


「俺が危険な役目を果たせば果たすほど、杉井さんの苦労も減るでしょうし」


「……はぁ。すまない。気遣いどうもだ」


 副産物として、俺が危険な役目を果たせば果たすほど、このコミュニティで俺に不満を持つ人を減らせるだろうという目算もある。

 有り体に言ってしまえば、俺のことを探るのが危険と思わせられれば、俺の自宅を探るような動きを牽制できるはずだ。

 杉井さんは、先ほど俺にいろいろと約束してくれたが、それを果たすための苦労もあるだろう。俺のためになることなら、俺は協力を惜しまないつもりだ。


「とりあえず、どういう作戦になるにせよ、そういう役割が果たせるように考えてステータスを振っておけば良いですね?」


「すまない。あくまで上杉くんが良ければだが」


「大丈夫です。俺の成長方針とも、ずれないですから」


 そう。いざとなったら逃げられるように、というのは俺の根本のところだ。

 命を失えば、茉莉ちゃんを救うことなど夢のまた夢なのだから。

 とりあえず、俺の役割だけは決まってしまったあとで、ふと思い出したことを提案してみた。


「あと、遠距離武器に関して、ボロボロでも良ければ弓を用意できるかもしれません」


 俺の脳裏にあるのは、スケルトンのパーティ。

 俺はまだ剣持ちと斧持ちしか倒していないが、もし、弓持ちのやつを倒せれば、あるいはそいつからアイテムドロップがあれば、ショップに弓が追加されるかもしれない。

 ゴブリンだって、あの錆びたナイフは買えるようになったのだから。

 今はちゃんとチェックしていないが、ショップに剣や斧が追加されていればほぼ確実だろう。 


「ほ、本当ですか!?」


 俺の提案に、一番反応したのは榎木だった。

 ノリで弓兵を選んだは良いものの、弓がないのでナイフを装備して斥候もどきをやっている彼にとって、メイン武器が手に入る可能性というのは大きいだろう。


「確定じゃないですがおそらく」


「……それは、助かるね」


 助かる、と言ったのは杉井さんだが、同時に少し困るという顔もしている。

 ボロボロとは言え、遠距離武器が手に入りそうなことは怪物戦では大きな話であるし、同時に、俺のダンジョンを秘匿するための苦労が増えそうな話だからだろうか。


「ただ、もし、この話が漏れて、俺の自宅を探るような動きがあれば」


 俺は、そこですっと目を細める。

 ごくり、と榎木が唾を飲む音を漏らし、杉井さんが呆れた。


「分かっているさ。榎木も言いふらしたりするなよ。少なくとも、今はダメだ。分かってるな?」


「も、もちろんですよ!」


 本当に分かっているのか、と思う。

 と、同時にもう一つ思い出したこともあった。


「そう言えば、杖ももしかしたら手に入るかもしれない」


「おっと、魔術師のメイン装備も来ちゃったか」


 俺の取ってつけた補足に、桐原も心なしか目を輝かせていた。

 もちろん検証したわけではないが、杖を装備することで魔法に何らかの良い影響がある可能性は高いと思う。

 でなければ、スケルトンが杖を装備している理由がないのだから。


 そして杉井さんは、再び頭を抱える。


「……仕方ない。上杉くん、あとで戦力になりそうな人数構成を伝えるから、可能であれば武器を融通してくれ。弓や杖だけでなく、もし他にもあるなら、それも。もちろん、タダでとは言わない。EPはあとで可能な限りドロップアイテムで支払うし、報酬の先払いでウサギ肉も渡せる分を渡しておこう」


「確定ではないですし、人数分揃えられるとも限らないですが大丈夫ですか?」


「もしダメだったら、ウサギ肉は働いて返してくれればいいさ」


 そう言った杉井さんは、吹っ切れたような笑みであった。

 ついでに松川さんは、自分が使うことになりそうな武器がもらえるかどうか、ちょっと気になるのかソワソワしていた。






「では、自分はこれで」


「ああ。くれぐれもよろしく頼む」


 四人を代表した松川さんの声に見送られ、ストレージの空きにウサギ肉を詰め込んだ俺は南小学校を後にすることにした。

 時間はすでに夕暮れに少し足を踏み込んでおり、もう間も無く世界は夜へと変わるだろう。思った以上に話し込んでいたようだ。

 遅い時間に出ることを心配されたが、今は1秒でも時間が惜しいと言えば、それ以上引き止められることもなかった。


「よっと」


 行きは裏門のあたりで派手にやったが、帰りは校内にある木に登って、そこから適当に塀を飛び越えて外に出た。

 周囲にゾンビの気配がないことはわかっていたが、目視できる範囲にも姿はない。

 完全に一人だ。

 さっきまで人と一緒にいたという事実が、一人になった瞬間に去来して少しだけ寂しくなる。

 だけど、振り返っているような暇はない。



「帰るか……いや、行くか」



 口に出して、俺は未練を断ち切った。

 俺は、これから再びダンジョンに潜る。

 家で食肉の加工を少し済ませたら、今日中に二階層で寝床を確保しておきたい。

 そのためにも、すぐにここから離れなければいけないのだ。


「……追っ手の気配はないな」


 しばらく後ろを警戒してみたが、誰も追って来てはいない。

 時間のせいもあるだろうが、杉井さんはしっかりと約束を守ってくれる気があるとわかった。

 それでも、少しだけ複雑な道順をたどって、無駄に時間をかけてから俺は家へと戻ったのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ