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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第41話 初めての会話



 怪物から逃げ帰った俺は、自室のアパートで少し息を整えたあと、すぐに南小のコミュニティに接触することに決めた。

 それは、現在時間がすでに昼過ぎになっており、すぐに行かなければ夜になってしまうと思ったから。


 今の俺は《闇と死の徒》の中に暗視のスキルを含んでいるため夜間の行動もできなくはないだろうが、それでも積極的に夜に出歩きたいとは思わない。

 特に、電気が止まったこの世界は、本当に暗い。

 月明かりくらいしかまともな光源のない夜は、本来は満月でもなければ数メートル先だって見えないほどの暗闇だ。


 暗視がどこまでの能力があるのかは、おいおい検証するとしても、とるべき選択肢は二つ。

 一つは、さっさと接触して今日中に帰ってくる。

 そしてもう一つは、一晩待って接触を明日にする。


 俺の中で相手のコミュニティに合流する気が無い以上、相手のところに泊まらせてもらうという選択肢を、意識して排除した。

 借りを作るといざという時にちらついて判断が鈍る。貸し借りは可能な限り少なくしたい。

 俺個人ならまだしも、茉莉ちゃんの存在がある以上、相手とは常に一定の距離が必要だ。


 また、明日にするということは、ダンジョンに潜る日が1日遅くなるということ。

 それはつまり、茉莉ちゃんを救う日が1日遅くなるということ。

 呪腐魔病についての知識がない以上、いつ重症化するかもしれない現状で1日は貴重だ。

 行動はなるべく早いほうがいい。


 あと、俺の脳裏にはあの怪物の姿が色濃くこびりついている。

 もっと強くならなければ──最低でもジョブを身につけなければアレと戦う未来は想像できない。

 遭遇=死に直結するような化け物がうろついている現状で、自分の強化を1日遅らせるのも、怖かった。



 ということで、とるべき選択肢は早めの接触となり、俺は早速、南小へと向かうことにした。



 南小は、コンビニとは少し方向が違うが、距離としては同じくらいの位置にある。

 詳しいことは何一つ知らないが、公立の小学校らしい、いわゆる普通の公的な建物だ。

 特筆するところをあげるならば、立地の関係で校舎の裏にこの近辺では大きな公園が隣接しており、安全を確保できれば校庭以外にも畑になりそうな土地を確保できそうなところか。


 道中の俺は、初めて探索に出た時と同じ程度に神経を張り詰めさせていた。

 スキルを信じて切り抜けたは良いものの、脳裏に怪物の姿がちらついて仕方なかった。

 小学校は避難所になっていたからか、ここまで車で乗りつけようとした人間がそれなりにいたらしく、隠れるのに困らないほど遮蔽物は多かった。

 それだけ、事故を起こして無駄に亡くなった人物も、多そうだったが。


 南小への道中は、思っている以上にゾンビとの遭遇が少ない。

 おそらく周遊型らしいゾンビと少しすれ違ったくらいで、ほとんど苦労もなく小学校の正門へとたどり着いた。

 そして、そこで遭遇が少なかった理由をなんとなく理解した。



(正門前に、ゾンビが集まっているな)



 俺は適当な車に隠れたまま、まずは一番の出入り口らしき正門の様子を探る。

 正門は、そのまま校庭へと繋がっている大きな門で、最大まで開放すれば車がすれ違えるくらいの広さになる。

 その門が今、簡易なバリケードを装備して固く閉ざされている。


 そして、正門に取り付くように、何十体ものゾンビが蠢いている姿が見えた。

 この近辺のゾンビは、ここに集まっているから道中では数が少ないのだろう。


 正門のちょっと近くに、これまた簡易に作られた物見櫓のような、骨組みの建築物があり、男が一人、見張りとゾンビの引き付け役を兼ねたように姿を見せつつあたりをチラチラと警戒していた。

 俺がコンビニで見た四人組とは、顔が一致しない。多分別人だろう。



(しかし、これだと正門からは入れないな)



 ゾンビの侵入を防いでいるのは良いが、これでは人間も迂闊に近づくことができない。

 いっそのこと、どこか手薄なところから忍び込むことも考えたが、ファーストコンタクトで敵対的に取られそうな行動を取るのも気がひける。

 そう思った俺は、少し考えたあとにストレージから庭石を取り出した。


(届け!)


 俺は遠投の姿勢で、車の裏から櫓に向かって石を投げる。

 石は骨組みに当たり、コツンと音を立てた。

 これで、周りを見回してくれれば、ゾンビたちに気づかれない程度にアピールして、どこか通用口に案内してもらうつもりだ。


 だが、見張りの人間は、特に気にした様子がない。


(見張りのくせになんで鈍いんだよ!)


 俺は内心で悪態を吐き、もう一度石を投げる。

 まだ、気づかない。

 そして三度目の投石で、ようやく見張りはさっきまでコツンコツン鳴っていた音が、骨組みの軋む音では無いことに気がついた。



「おーい! 誰かいるのか!」



 見張りの男が大声を上げる。

 一見悪手に思えるが、ゾンビは人語を解している様子がないので、こうすることで視線を自分に引きつけつつ、隠れている人間に声をかけることができるのだろう。

 俺は、隠れている車から少し身を乗り出し、手を振った。

 ──のに、男はまた気づかない。


「おーい!」


(見張りなんだからちゃんと気づいてくれよぉ)


 俺も大声が出せれば楽なんだが、そんなことをすればせっかく隠れているのにゾンビたちに見つかってしまう。

 こんな大量のゾンビに囲まれたら普通に危ない。

 俺は見つからないことにかけては自信があるが、見つかったあとの対処には向いていない。


 少し考えたあと、もったいないと思いながら、ちょっとCPを消費して火柱を上げる。

 ゾンビたちに気づかれない程度に、そして人間にはちゃんとわかる程度に意識したのが功を奏し、ようやく見張りの男は俺に気付いた。



「正門は閉鎖してる! 北のほうに裏口があるから、そっちに回ってくれ!」



 俺は了解の代わりに、大きく腕で丸を描いた。

 それで意思疎通は完了し、男は俺の動きを助けるようにもう一度大声を出してゾンビを引きつけてくれていた。

 同時に、シンバルのようなものを取り出して何度か鳴らしている。もしかしたら、生存者が来たことを他の人間に知らせているのかもしれない。



 南小の裏口は、正門とは違い校舎の少し奥まったところに繋がっている門だ。

 ただ、教職員用の駐車場がすぐ近くにあるので、教員たちと北のほうから通っている生徒にとっては、こちらの方が正門扱いだろう。

 裏口も相応に改造されていたが、正門ほどではない。

 また、渋滞している車も正門ほどではないが、それでもかなりある。

 ただ、事故を起こしているというよりは、ここで乗り捨てて身一つで学校に向かったという感じに見えた。裏口に向かった人の方がやや冷静だったのかもしれない。


 俺が裏口に着くと、そこにも少しのゾンビ。

 門の向こう側には四人ほどの男がいた。

 男たちは、どうやら俺がコンビニで見た四人組らしかった。


「今、開ける! ただ、その前にこいつらを排除しないといけない! 手伝えるか!」


 リーダーと呼ばれていた大男が、声を上げた。

 俺がそこを通るために、群がるゾンビ数体を排除すると。

 俺は、それを聞いて少しだけ顔を歪める。


 ──────

 人間・男

 状態:呪腐魔病(軽)

 ──────

 ──────

 人間・女

 状態:呪腐魔病(軽)

 ──────

 ──────

 人間・女

 状態:呪腐魔病(軽)

 ──────


 彼らは、まだ人間の状態だった。

 少なくとも、現時点では治る見込みのある存在だ。

 それを、俺が学校に入るために排除させるのは、気が咎める。

 何より、俺が入るだけなら排除は必要ない。


「要らないから下がっててくれ!」


 俺は、ギリギリ通るだろうという声量で、四人に告げる。

 そうすると、さすがに俺の声に反応したゾンビが何体かこちらに向かってくる。

 俺はそれらを避けるようにして、以前大男がやっていたように車の屋根に飛び乗った。


 身体能力は向上している。

 車の屋根の高さと、裏門のバリケードの高さはそう違いがない。

 そして、一番近い車からバリケードまでは何メートルも離れているわけじゃない。


 俺は、助走をつけるように車の屋根を渡りながら、裏門に狙いを定め。

 そして、最も門に近い車の屋根から跳んだ。


 目測と寸分違わぬ跳躍によって、俺はバリケードを軽く越えると、地面にスタッと着地する。

 速のステータスが向上した今なら、このくらいの芸当はできるようになっていた。もっと上がれば、多分車や助走も必要なくなるだろう。


「すげぇ」


 四人組のうち、大学生くらいに見えた男の一人がそう呟いていた。

 そう声を出した男以外の3人も、少し驚いたように目を丸くしているのがわかった。

 俺は、ふぅーっと軽い運動後の息を吐き、リーダーだと思われる大男にまずは名乗った。



「上杉志摩です。コンビニに残っていたメモを見て来ました。情報交換をさせてもらえたらありがたいです」



 そう言って、俺は握手を求めるように手を出す。

 先ほどの俺の跳躍に面食らっていた大男だが、すぐにその表情を崩して笑った。



「松川勇吾だ。すげーな兄さん! まるで忍者みたいだった!」



 そして、ガシリと応えるように大男──松川さんは握手をした。

 これが、俺がゾンビアポカリプスが始まって以来、初めて交わした人間との会話であった。





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