第33話 ジョブ解禁
さて、レベルアップが終わったらいよいよ待ちに待ったジョブの習得だ。
ぶっちゃけ、救済措置で解放されたと言われた時のドキドキをずっと持ち越して来たから、期待はえらいことになっている。
複合スキルについての説明も気になるが、それはいったんジョブを確認して、そのあとスキルを確認する時でいいだろう。
「というわけで、メニューのジョブ習得をぽちっとな」
俺は独り言を呟きながら、ジョブ習得を開く。
……ちょっとテンション高めなのを、端末くんが突っ込んでくれないかなって思ったけど、彼(彼女?)はこういうときは冷たい。
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【ジョブ習得】
所持EP:273
現在のジョブ:ノービス(無職)
習得可能ジョブ:
戦士:0EP(救済ジョブ)
魔法使い:0EP(救済ジョブ)
僧侶:0EP(救済ジョブ)
斥候:0EP(救済ジョブ)
弓兵:0EP(救済ジョブ)
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ジョブ習得の上の方の表示はこうだ。
どうやら、この救済ジョブとやらが、ゾンビに対抗するために人間に与えられたジョブのようだ。
ちゃんと俺にも無料で解禁されているようで良かった。
多分確認くらいはできるだろうと思って、軽くタッチしてみる。
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戦士:0EP(救済ジョブ)
武器を持ち、仲間たちの前に立って戦うジョブ。
HP、力、体に成長補正。
※救済ジョブは初回のジョブ選択のみ0EPとなります。一度救済ジョブを選択すると、他の救済ジョブのEPは通常(100EP)に戻ります。
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説明文はまんま戦士といった感じの簡易な説明。
成長補正とやらが良くわからない。
「端末くん。この成長補正というのは?」
『ノービス以外のジョブは、これまでの行動を評価してレベルアップ時にボーナスポイントが割り振られる場合があります。また、レベルアップ時のHPとCPの増加値は基本的にはジョブ毎に異なります』
「なるほど」
なんとなくだけど、同じ戦士でも敵を倒そうと前に出るやつには力のボーナスポイントが振られるし、仲間の盾になって守ろうとするやつには体のボーナスポイントが振られるといった感じかな。
積み重ねによってはだいぶ差が開くだろうし、かなり重要な要素だと思える。
「じゃあいよいよ、お待ちかねのこいつらか」
戦士以外のジョブもさくっと確認したが、特筆することはない。
今までRPGをプレイしていれば、説明されるまでもなく、大体の性能は知っていたと言える感じ。
まぁ、僧侶と魔法使いで共に魔を参照するのか、とかはちょっと気になったけど今はいい。
俺がお待ちかねといったのは、救済ジョブとは違って明らかに異彩を放つその下のジョブ群のことである。
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暗殺者:200EP
魔法戦士:200EP
罠師:200EP
狩人:200EP
ギャンブラー:200EP
忍者:400EP
テイマー(サモナー):400EP
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200EPの方が普通の上位職っぽい感じで、400EPの方が特殊職って感じ。
この辺が俺の行動だのステータスだのから解禁されたジョブということだろう。
「いや、なんでギャンブラーが?」
そんな大博打を打った覚えなんてないんだけど。
いつも比較的安全に戦っていたはずだが。
『ほとんど普段着みたいな格好でダンジョンに入ってくる人間は、ギャンブラーと言っても差し支えないのでは?』
「そうですね……」
端末くんの説明には納得せざるをえない。
金属バットと重ね着した服でダンジョン探索は、言われてみればギャンブラーとしか言えんわ。
今思うと、ゴブリンに不意打ち出来てなかったら普通に危なかったし。
「この200EPと400EPのジョブの違いは?」
『習得難易度による違いが基準になります。400EP以上のジョブは、いくつかの特殊な条件とステータス条件の両方を満たしたときにのみ習得可能です』
つまり、ノービスの時になんらかの条件を踏みつつ、ステータスも基準にまで持って行けた場合にのみ就けるようになるジョブね。
そんなの、普通のオタクだったら400EPのジョブしか選択肢にないじゃんね。
いや、付け替えは自由らしいし、最終的には全てのジョブのレベルマックスとかも目指したい気持ちはゼロじゃないけど。
むしろ下級職から初めて、基礎スキル鍛えながらジョブチェンジしていきたい気もするけど。
そんなの言っていられるほど、現状は甘くない。
だってダンジョンは食料を恵んでくれないし。
外にはゾンビが嫌っていうほど溢れているんだから。
死ぬ前に死ぬ気で選んだジョブのレベルを上げろというのが現状だ。
だったら主義主張は捨てて強力なジョブに手を伸ばすべきだ。
「じゃあ、まずは忍者から」
とりあえず、習得候補その一の忍者を開く。
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忍者:400EP
斥候、暗殺者、罠師の職能を含む特殊上級職。
隠密に長け、豊富な手札を持ち、魔力を用いた術も扱う。
CP、力、魔、速に成長補正。
習得条件1a:不意打ちを300回以上成功させる。
習得条件2a:闇に属する者に関わる称号を持つ。
習得条件3:ノービス時の力、魔、速、運がそれぞれ14以上。
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どうやら、このシステムにおける忍者はNINJAの要素を多分に持つらしい。
多分、火遁と言いながら火を吐きつつ、瞬間移動みたいなスタイリッシュアクションをする忍者だね。
ステータスの条件が結構シビアだけど、魔法剣士系をイメージしてステータスを振っていたら、運以外はクリアできそう。
ただし、称号が条件に入っているのが気になった。
「この習得条件に称号が入ってるんだけど、称号ってそんな簡単に取れるの?」
『称号は、偉業に対してシステム及び神々から与えられるものです。挑戦をしないものに称号が与えられることはまずありません』
「じゃあ、かなり幸運に恵まれないと特殊ジョブは解禁されないんだな」
俺だって、この称号条件はグールとの不意の遭遇で満たしてしまったものだ。
普通にやっていたらグールとなんてエンカウントしていないし、解禁されることもなかっただろう。
仮に運良く(運悪く?)遭遇していても、死んでいたら終わりだ。
とはいえ、これで即決というわけではない。もう一つ、400EPの職業が存在している。
「次は、テイマー(サモナー)か。なんでかっこで表示されてるんだろう」
『テイマー(サモナー)は、使い方次第でテイマーともサモナーとも呼べる戦い方が可能になるため、両者が統合された結果です』
「ふーん?」
分かるような分からないような説明を受けつつ、こちらのジョブの詳細も開いた。
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テイマー(サモナー):400EP
モンスターの力を借りて戦う特殊職。
契約したモンスターの種類によりあらゆる状況に対応できるが、弱点は常にあなたである。
個の集まりとなるか、群となるかはあなた次第である。
CP、魔、速、運に成長補正。
習得条件1c:モンスタースキルを合計100時間以上使用している。
習得条件2e:生態系に関わる称号を持つ。
習得条件3:ノービス時の魔、速、運がそれぞれ16以上。
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モンスタースキルってなんぞや……。
あ、悪臭か。あれゴブリンのスキルだもんな。
悪臭を100時間以上垂れ流していたからテイマーが解禁されたのか。
判定ガバガバじゃない?
「しかも生態系に関わる称号って、グールの頂点捕食者と意味違うくない?」
いや、取れてしまったことに文句はないんだよ?
でも、忍者が割と真っ当な条件を満たして取れた感じなのに対して、こっちはなんというか、だいぶ裏技めいた方法で条件満たした感じがするというか。
ゾンビとグールは別に生態系築いてないのに、称号の説明がノリノリだったせいでうっかり条件満たしちゃった感じというか。
習得条件1と2の後ろにある意味深なアルファベットも、なんか『後ろの方』って感じが満載だし。
『システムに何かご不満がおありでしょうか?』
「いえ、ありがたく頂戴いたします」
貰えるものは貰っておく主義だ。
まだ実際にジョブを取得したわけではないが、条件を一度満たしたら、称号が剥奪されるまで消えることはないだろう。
「ところでこのステータス条件って、ノービスを過ぎたらもう満たせないの?」
『ステータスの割り振りをやり直す方法を手に入れた場合、そのやり直しを行うことで後天的に条件を満たすことは可能です』
「ああ、言ってたシステムはそういう救済措置なんだ」
最初にレベルアップした際に、ステータスの振り直しができると言っていたのは、こういう時の為なんだ。
実際、テイマーの条件とか、スキル条件も称号条件もきついが、なによりステータス条件がきつい。
運とか、条件を知ってないとこの時点で16も振れないだろ。
俺だってボーナスポイントがポンと入ってなかったら満たしてない。
「ボーナスポイントか」
確か、前に救済でジョブを解放した際にステータスに欠損が出るという話を聞いていた。
あの時は意識していなかったけど、大きいのはこのボーナスポイントなのではとも思う。
「ついでに、救済措置でジョブを解禁した場合って、ノービス時のレベルアップ分のステータスとかどうなるの?」
『初期ステータス設定時の基準をもとにジョブに合わせて自動で割り振られます。自力でノービスレベル10にした場合と比較して10〜20ポイント分のステータスが欠損します』
「でかいな。レベルにして3から7くらい失う感じか」
俺の現在のステータスは、称号とボーナスポイントで結構盛られているし、これがなくなるだけでもだいぶ寂しくなる。
現在の状況が状況だけに贅沢を言っていられる場合じゃないだろうが、勿体ないとは思ってしまうな。
「さて、じゃあ、どっちを選ぶか」
一度、説明を閉じて、俺は二つのジョブを見比べた。
隠密と手札、そして魔法火力が補強される忍者。
これはまさしく、現在の俺の戦い方をまっすぐに強化するものになるだろう。
隠れて隙を伺い、豊富な手札でもって少しずつ確実に敵を削っていく姿は、ソロでダンジョンに潜る形としては一つの正解な気がする。
ただ、もう一つのテイマー(サモナー)も魅力的だ。
テイマーの魅力はなんといっても、ソロであってソロではなくなるところだ。
俺の今の戦い方は、どうあがいても一人でできることしかできない。
現在はそんな場面に遭遇していないが、例えば二つのモンスターのパーティに挟まれる形になれば、忍者でも隠れていることは難しいだろう。
そうなった時が、俺の終わりだ。
だが、テイマーなら変わってくる。
モンスターがどこまでこちらの指示に従うかは分からないが、今までの戦い方から一転、真っ向からモンスターと戦闘して打ち破るという道も見えてくる。
その分、個人としての能力は、忍者を選んだ際と比べて格段に落ちるのだろうが。
「強みを伸ばすか、弱みを消すか」
そして、俺が選んだ結論は。
『上杉様は現在EPを273ポイント所持しています。どうしますか?』
「……うん、足りないよね」
『端末個人としては、まずは必要なEPを貯めてから悩むことを推奨します』
結論は、先延ばしであった。
だって、取れないものを今悩んでも仕方ないじゃん。




