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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第219話 収支トントンちょい赤字

ごめんなさい!

予約忘れてました!




「くそいてえ」


 人狼との戦いが終わった今。

 俺は涙目になりながら、左足に回復薬をぶっかけていた。


 戦闘中は背水の効果を切らさないために回復一切なしでやっていたが、戦闘が終わりスキルを切った途端に、今までのツケを払えと言わんばかりに血が吹き出したよね。

 俺もびっくりしたしクミンもびっくりした、なんなら俺たちの戦いを見ていたんだかいないんだかな端末くんまでびっくりしていた。


 そもそも、背水を切った時点でこの足をどうやって動かしてたんだか分からんレベルでズタズタだった。

 そこに闇を埋め込んでたとか自分で言って自分で『何言ってんだこいつ?』って思った。


 とりあえず回復薬をぶっかけたらなんとかなるかと思って試したが、えぐれたふくらはぎの肉は、全然戻る気配がない。

 泣きそうなくらい痛い、というか泣いてる。



「端末くん」


『肉体の欠損を埋める際には、欠損回復薬を使ってください。必要な効果により費用が大きく異なる点と、回復の際に肉体の持っているエネルギーを同時に消費する点にご注意ください』



 言いながら、端末くんはいつの間にショップに入荷したのかわからない『欠損回復薬』なるものを表示してくれた。



 ──────

 欠損回復薬Ⅰ:EP3000


 失われた血肉を埋め合わせ回復させる薬。

 主に筋肉や骨の再生に効果があるが、ちぎれ飛んだ手足や内臓を再生するほどの効果はない。

 ──────

 ──────

 欠損回復薬Ⅱ:EP400000


 失われた血肉を埋め合わせ回復させる薬。

 欠損した手足や内臓までを再生させるが、体の半分以上が残っていることが最低条件。

 ──────



「高えし、効果がやばい」


 当たり前のようにお出しされた、欠損回復薬に対するレビューはそんなところだ。

 Ⅰの方はまだ良い。たぶん今の俺なら、ご飯食べて時間が経てば回復するくらいの傷を即時に回復させる程度の効果だろう。

 ステータスのせいで人間やめてるから、素でそれくらいの回復力はあるはず。


 Ⅱの方が明らかにやばい。値段もぶっ飛んでいるが、効果がそれ以上にカッ飛んでいる。

 逆に言えばこの先、手足が吹っ飛ぶような怪我や、内臓が消失するような怪我をするかもしれないけど、回復できるから頑張ってねみたいな、ダンジョン側からの意思を感じる。


 といっても、それを買えるようになる頃にはどうなってるのかさっぱり分からない。

 だって40万だぞ。

 俺が今まで稼いで来たのを累計しても届かねえよその値段。


 それでいて、もし本当にそれだけを目的に戦えば、一ヶ月もあれば現代医学じゃどうにもできない傷を回復できてしまうということにもなる。


 ダンジョンという存在が改めて、不気味に思えた。

 ダンジョンは何のために生まれて、俺たちに何をさせたいのか。

 なぜ俺たちを奥へと誘おうとするのか。


 端末くんに言わせたら、その辺も五階層を突破すれば、少しはわかるのかもしれないが。



「そして、回復薬Ⅰの方なら普通に『買うかぁ』って思えてしまう今の俺が怖い」



 EP3000とか、ひと昔前ならキレ散らかした程度のEPだというのに。

 召魔忍者になった時は1レベルアップにEP2000で絶望してたのに。

 今だと「まぁ、時間短縮のためなら買ってもいいか」と思えるくらいの価格になっている。


 それもこれも、先のグール無限湧きというEPインフレが発生したがゆえであろう。

 多分、というかほぼ確実に、これで稼ぐ想定ではないと思う。この五階層。

 それ言ったら吸血蝶狩りも怪しいけど。


 もし、そのあとの人狼戦が既定路線だったとしても、普通に考えたら『総力をあげてグールを撃退しよう』みたいなイベントだろう。


 だって俺の記憶が正しければ、四階層のゴーレム一筆書きの旅ですら、端末くんは『五階層より効率いいかも』みたいなこと言ってたんだから。

 それが更新されてしまっている時点で、多分やってる。



「まぁ、時間がないので許してほしい」


『誰に言っているのですか……』



 俺のボソッとこぼした一言に、端末くんが呆れ声を返した。

 さて、現在も俺に体の大切さを訴えかけている左足も大事だが、欠損回復薬を買う前にもう一つ、解決しないといけない問題があった。


 それは。



「ところでクミンさん。いつまで怒ってるの?」


『反省するまでです』



 さっきの戦いで、ちょっとおこの状態になったクミンの機嫌であった。

 彼女が怒っているのは簡単な理由で、さっきの戦闘中に打ち合わせの時間がなかったとはいえ、俺が自分の命を使って人狼の攻撃を誘発したのが原因だ。


 俺としてはクミンならあのタイミングで庇ってくれるだろうし、食いしばりの保険もあれば絶対大丈夫、と踏んでの行動だった。

 だがクミンにしてみれば、なんの相談もしないでの行動は、ちょっと論外と言いたいということだ。



「あの状況でのんびり相談している余裕はなかっただろ」


『本当ですか? 一声かけるくらいのことは出来たんじゃないですか? その一声があるのとないので、どれくらい変わったか想像できないんですか?』


「……………………」



 正論である。

 いや、実際にできたかどうかで言われると、できた。

 ただ、俺が声をかけていたらクミンにも俺の行動の意図が伝わり、クミンの動きも多少は変わっただろう。

 それが元で人狼にこちらの作戦が看破されるのでは、と懸念を抱いたのだ。


 敵を騙すにはまず味方から、ではないが。

 敵を罠に嵌めるには、味方同士の意思疎通も最低限にしたほうがいい。

 クミンがかばってくれるというのは、意思疎通をギリギリ必要としない程度の連携だと思ったのだ。


 という論調でクミンを説得しにかかったら、クミンには盛大なため息を吐かれた。アリなのに。



『意図はわかりました。ですが、それでも一声あった方が嬉しかったというウチの気持ちは、変わらないってことは覚えておいてくださいね』


「はい。じゃあその、欠損回復薬買って良い?」


『気にしないで買ってくださいよ』



 流石のクミンも怪我人にはお説教してこない、と踏んだ作戦が功をそうした。

 そして、俺は端末くんのアイテムショップで、EP3000の方の欠損回復薬を購入した。


 ──────

 上杉志摩

 所持EP:44598→41598

 ──────


 欠損回復薬は、いつもの回復薬やCP回復薬と印象はそう変わらない。

 フラスコみたいな小瓶に入った赤色の液体だ。

 使い方を聞いたところ『飲めば全身をまんべんなく修復、かければかけた箇所を重点的に修復します』とのことだったので、迷うことなく肉の抉れた左足にぶっかけた。


「ぬぉああ!? なんか、なんか痒い!」


 かけた瞬間から、言いようのないむず痒さのようなものが左足から生じる。

 元々の痛みと痒さが合わさった絶妙な痛痒さは、拷問にも似た感触を俺に与えた。

 といっても、修復自体はすぐに終わり、10秒もしないうちに俺の左足は元気に元通りしたのだが。



「欠損回復薬、やばいな。あとなんか腹も減ったし」


『上杉さん。これで多少は被弾しても回復できるな、とか考えないでくださいよ』


「考えないよ。怪我したいわけないからな」



 クミンに釘を刺されるまでもない。

 死にかける戦いも、手足を吹き飛ばす戦いも、ない方がいい。

 俺だって時間に追われてなければ安全マージン取って戦うわ。



「というか、俺一つ気づいたことがあるんだよ」


『なんでしょう』


「あの人狼のEPなんだけどさ」



 俺は、さっき欠損回復薬を買った時に表示されたEPを見て「ん?」っと思った。


 先のグール大戦争の前、俺たちは入念に準備をしておいた。

 その時にEPを消費してCP回復薬を大量に買い込み、準備に相当つぎ込んだのはまぁいいだろう。その分のリターンはグールからもらっている。

 で、グール大戦争を始める前の俺のEPは、4098だったはずだ。


 そこから、グールが250体出てきて、グール1体のEPは150くらいだったはず。

 だから、250体倒すと、合計で37500EPを獲得できるはず。


 これらを足し合わせると合計41598となる。

 お判りだろうか?

 ぴったり、俺が現在所持しているEPになってしまったことを。



「人狼あんだけ苦戦させておいて、EP3000しか持ってねえのかよ……」



 ふざけんなよ!

 お前、あんな死ぬ思いして戦って、なんとか勝ったのに!


 お前に食らったダメージ回復するだけで収支トントンじゃねえかよ!

 なんだったら、その前に使った魔術だの、サモンだの、秘密兵器だの、ダメにされた防具の買い替え代だの考えたら、完全に赤字だよ!


 許せねえ。アイアンゴーレムだってもうちょっと太っ腹なEPしてたのに。



『あえて言わせていただきますが、現時点で格上の相手に総力を尽くして勝てたのが幸運であり、そこから儲けを見出そうというのは人間の傲慢なのではないでしょうか?』


「端末くんももしかして怒ってるのかな?」



 端末くんにも釘を刺されるように冷ややかに言われて、俺はちょっとシュンってなった。

 まぁ、普通に考えればそうなんだけど。

 なんならイベントボスなんかは、経験値と労力が割に合わないなんてよくある過ぎることではあるんだけど。赤字はやっぱ嫌だよね。



「じゃあ、まぁ、収支の分は置いといて、手に入った特別なものだけは、期待させてもらおう」



 EPに関してはもう諦めるとしても、それ以外で手に入ったものがある。

 仮にあいつがイベントボスだとして、意味深に落としたアイテムがあるとすれば。

 それがこの階層の攻略に関わってくると考えるのが普通だ。



「端末くん。この鍵は、いったいなんだ?」



 それは、消し炭になった人狼が残したアンティークな鍵。

 この森にはそぐわぬアイテムであり、同時に一つだけ心当たりがある鍵。

 吸血鬼ラベンダーが潜むという『館』に、関係がありそうな最初の手がかりだ。




『そちらの鍵は……』


「鍵は?」



 そうやって鍵を差し出したところで、端末くんは悩むように言葉を切る。

 俺が続きを促したところで、端末くんははっきりと言った。




『申し訳ございません、詳細不明です』




 え?


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