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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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212/220

第212話 今日一日で何回死にかけてるんだ?



 吸血鬼、あるいはヴァンパイア。

 それは様々な作品に現れては、猛威を振るったりたまに萌えを振るったりする、超有名な種族である。


 それこそ、ファンタジー作品やバトル作品だけでなく、ラブコメだったり、ホラーだったり、日常系だったり、ありとあらゆる作品に引っ張りだこだ。


 その性質を一言でまとめるのは難しい。

 だって、吸血鬼ってとにかく特性が多いんだ。


 たしかもともとは昔(17世紀くらい?)からの民間伝承が発祥で、小説の形で出てきたのも今から二百年以上前になる。

 そして現代にいたるまで、様々な媒体で取り扱われ、数々の変遷をたどってきたので、属性が増えたり減ったりしてきているのだ。

 原典的にはこう、というのはあるんだけど、作品によって弱点や特徴をいい感じにいいとこ取りしていたりするので、だいたいの吸血鬼がこう、というのだけまとめるとこんな感じか。


 弱点を突かないと死なない。

 人の血を吸う。

 日光に弱い。

 にんにくが苦手。

 十字架が苦手。


 以上だ。


 冗談抜きで、共通する特性っていったらこんなものだろう。

 なんだったら、日光やにんにく、十字架なんかが効かない吸血鬼だっているし、ちょっとコメディタッチの作品なら人の血が苦手なんてタイプもいる。

 心臓に白木の杭を突き立てたら死ぬみたいなイメージはあまり外さないが、それやったらだいたい誰でも死ぬ。


 とはいえ、モンスターとして出て来たからには、これらのステレオタイプはそこまで外さないと思う。


 ……いや、正直にいえば不安はある。

 俺がテイムでうっかり繋がってしまった吸血鬼ラベンダーは、この程度の弱点は克服していてもおかしくない気配はあった。


 だって、そもそも繋がったのが日中である。ど昼間である。

 昼夜逆転しているなら、ぐっすりすやすや眠っていてもおかしくない時間に、当たり前のように返事をされたのだ。


 しかし、グールに鉄が有効だったように、そういった弱点に関しては結構元ネタを拡大して拾ってくれている気はするのだ。このダンジョンは。

 ゴーレムの有名な弱点は存在していなかったが、ここのゴーレムはコアを持ったロボット的なタイプだったからというのはある。


 だからこそ、神聖な金属として扱われる『銀』が、吸血鬼に有効な可能性もそれなりにあると考えている。


 元々、銀──というより『銀の弾丸(シルバーブレット)』が弱点なのは人狼──ウェアウルフであり、元々の吸血鬼にそういう描写はないらしい。

 だが、いつの間にか両者のイメージが混ざり合って現代の吸血鬼は『銀』が弱点というイメージが定着した、らしい。


 だから俺は、クミンに鉄と並行して『銀』の生成をお願いしてみたのだ。

 効くかどうかは、半々といったところだろうか。


 余談だが、さっきから『多分』とか『らしい』とかが多いのは俺が昔調べた知識が曖昧になってきているからだ。

 モンスター研究家でもないのに、そんな事細かにモンスターの性質なんて覚えていられるわけがない。

 現代人からネットを取り上げると、知識系が一気に弱くなるのは仕方ないだろう。ゲーマーだってモンスターの記憶は徐々に忘れていくんだよ。








「というわけで、銀──まぁ、銀鉱石からの加工になるかな。いけそう?」


『んー、作れないことはない気がします。多分作るだけなら鉄より簡単ですかね?』


 俺のお願いを聞いたクミンは、少しうんうん悩んでからそう答えた。


「それは本当か?」


『はい。ただ、多分ですけど、鉄鉱石よりCPのレートがべらぼうに高い気がします』


「ああ、そういうあれね」


 俺は鉄鉱石と違って、銀鉱石をどういう風に精錬すればいいのかは知らない。

 なんか灰吹法だか、そういうのが使われていたって単語だけは知っているが、それがどういう化学反応を使ったものなのかもわからん。

 多分また酸化させてうんぬん、かなぁ、ネットがあれば一瞬でわかるのに。


 ただ、クミンの口ぶりからすると、作業工程自体は鉄鉱石よりも少ないのだろう。


 しかし、土石魔術としての仕様か、あるいは貴金属ゆえの制限があるのか、そのCPレートは鉄鉱石よりもかなり高いらしい。

 鉄鉱石を作るだけでも、土の30倍くらいのCPが体感必要だったが、銀鉱石はそこから最低でも10倍、下手したら50〜100倍くらいはかかるらしい。

 土石魔術に関しては上級になっているクミンでそれなので、俺がやろうとしたらどうだろう。


 ……魔のステータスは俺の方が高くなっているが、俺はまだ銀鉱石を土石魔術で作るイメージが結ばれない。

 無理やり頑張ったら、クミンのさらに三倍くらいCPを使いそうだ。

 その辺りのセンスは、ステータスで補助されているのとはまた別か。

 俺の魔のステータスは、戦闘とかそっち方面のセンスに伸びているみたいだよ。


「とりあえず、まずは鉄を優先で。余裕があれば銀くらいでいいよ。メイン武器が鍾馗なのは変えられないし、サブウエポンで何か出来たら御の字で」


『わかりました。余裕があったら試してみますね』


 とクミンに色々とお願いしたところで、くらりと頭が揺れる。

 思わず倒れこみそうになったところで、踏ん張って耐えた。


『上杉さん!?』


「いや、大丈夫。ちょっと立ちくらみしただけ」


 まぁ、さもありなん。

 今日一日も結構色々あったからな。疲れているのだ。

 朝のランニングゴーレム狩りから始まって、フィードバックで5回くらい臨死体験して、テイムで一回死にかけて、そのあとグールで一回死にかけて。


 おかしいな、俺今日一日で何回死にかけてるんだ?


 体ステータスと魔ステータスに思考加速スキルとかの影響で、身体と頭の疲労はまだ我慢できる程度なんだが、心の方が休めと悲鳴を上げている気がする。

 でも、まだ深夜3時だ。

 もう少し、無理して起きておいた方が、身体のリズムが夜型に近づくはず。



『いや、無理しないで寝てください。上杉さんだって精神構造は人間なんですから、変な地雷抱え込まないように休んでください』


「……そうした方がいい?」


『前から思ってましたけど、眠るのは大事なんですよ。ウチだってこまめに寝てるから動けるだけで、ずっと起きているわけじゃないんです』



 クミンに滔々と諭されてしまう。


 クミン曰く。

 寝不足によるパフォーマンスの低下というのは馬鹿にならない。

 いくら思考を加速しようと、もともとの思考が死んでいてはいいアイデアも生まれない。

 ただでさえ、ダンジョンからの受ける影響のようなものもあるのだから、そういう所にはなおさら気を使うべきだ。

 気になるなら、ゴーレムランニングが終わったあとに昼寝でもすれば良いのだ、と。




「そこまで言うなら」




 そうして、クミンの説教から逃げるように、俺は降参の意を示した。

 ただ、それでもただ眠るだけでは時間が勿体無い。

 できる種は蒔いておこう。


「さっきの二戦目で稼いだEPは、だいたいCP回復薬に変換していいんだよね?」


『それで悩むことがなくなるなら良いと思いますよ。レベルアップには足りないんですよね?』


「そう」


 現在の俺は召魔忍者レベル20。

 ここから次のレベルに上げるのに必要なEPは、14000となっている。


 インフレ激しくねーか? 救済ジョブの連中なんてこれだけあれば10から25まで上がるのに、俺は1レベルしか上がんねーんだぞ。

 しかもこっから先はこれより重いのが確定している。

 まぁ、その分ステータスは伸びている自覚があるから良いんだけど……。


 で、さっき稼いだ分ではこのレベルアップに足りない(厳密にはドロップアイテムによるおまけで足りてはいるが、そうするとCP回復薬が全然買えなくなる)ので、ここは思い切って回復薬を買い込もうとなったのだ。


 ただ、EPを全部回復薬に使い切る前に、ちょっと取りたいスキルが生まれていた。


「サモンモンスター強化系のスキルは取って良い? 戦闘しないなら、CPのマージンを取っておく必要はないわけだし」


 これから寝るとなると、俺は動けない。

 ただ、サモンモンスターは俺が寝ている間にも活動できることは分かっている。

 となれば、俺がやるのは、サモンモンスターの人海戦術による情報収拾しかあるまいよ。


「寝る前に、グールの群れを放つ。同格のグール相手なら、強化しておけば遭遇しても逃げるくらいはいけるはずだ。おまけもつけるし」


『おまけですか?』


 クミンのつぶやきに頷く。

 俺は頭の中でサモンのリストを開いた。

 必要なのは、この二体だ。


 ──────

 ゴブリン:10CP

 グール:50CP

 ──────


「ゴブリンとグールを組み合わせて、行けるところまで行かせようかと思って」


『それで?』


「途中で敵グール集団に絡まれても、ゴブリンを囮にすれば一回くらいは楽に逃げられるだろう」


 まぁ、今思いついただけの話だけど、そう難しい話でもない。

 囮として犠牲になるゴブリンは可哀想だが、サモンモンスターはそういう宿命だ。


「そして、もし、囮が機能せずにグールとゴブリンが同じ場所で死んだパターンがあれば、そこは要注意スポットになる」


『逃げられないような地形か、罠か、あるいは強力なモンスターがいる可能性があるってことですか?』


「そんな感じ」


 オートマッピングとサモンモンスターを連携すると、地形とかの地図埋めはとても捗るのだが、逆に言うとそれ以上の情報は得難い。

 だからこそ、視覚リンクやフィードバックを取ったのだが、真新しい発見がなさそうなのに、グール全員の死をフィードバックしていては心がパーンってなってしまう。


 それを避けつつ、見るべきところを発見しようと思ったのが、このゴブリンとグールの組み合わせだ。


「本当は、吸血蝶とグールの組み合わせを考えてたんだけどね。グールが死ぬ瞬間に吸血蝶を空に放って、そこで吸血蝶と視覚リンクをすれば、空という安全地帯から何があったのか確認できると思って」


『良いから寝てください』


「そう言われるから計画を変更したんじゃないか」


 まぁ、本命の目的はあくまで五階層の調査だ。

 五階層は昼も夜も厄介なモンスターが多くて、まだ全体の広さですら分かっていない。

 ただ、四階層よりも狭いということはないと感じている。


 だから、眠っている間だろうと全力で調査は行う。

 特に夜の時間の調査は積極的にだ。

 まだ見つかってないオブジェクトの発見、特にラベンダーの屋敷の発見は、死活問題でもあるし。


『とりあえず言いたいことは分かりました。解き放つだけなら良いですから、それ終わったらさっさと眠りましょうね』


 と、子供が寝付く前にぐずるのをあやす母親のようなことをクミンが言い出したので、俺はおとなしく計画を実行するのだった。



 使役強化(速):3200EP(コストCP:15)

 群体強化:4000EP(コストCP:70)



 しめて7200EP。プラスして呼び出したグール軍団は300CP分。

 さっき稼いだ分の半分くらいは軽く消し飛ぶ値段であった。


 現時点では、グールはどうやら5体までしか呼び出せないようだ。ゴーレムよりは制限が緩いが、安易に数を増やせはしないか。

 これ以上増えるかどうかは、グール狩りでドロップアイテムを納品しまくって確かめるほかない。

 というわけで、暗闇よりもなお黒いサモングールの軍団を野に解き放って、俺はしばし眠ることにした。



 このまま朝まで生き残る個体がいたとすれば、グールが日を浴びるとどうなるかも分かるかな、とか考えながら。

 2分もしないうちに、自分で思うよりよっぽど疲れていた俺は、夢の海の中に沈んでいった。


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