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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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211/219

第211話 二度目のチャレンジ




 時刻は深夜2時を回っている。

 いつもの俺は、もうスヤスヤタイムに突入しているが、今日はまだだ。


 心地よい体の疲労に、頭や心臓を酷使した心労もあるが、もう少し。

 夜の攻略をメインにすると決めた以上、無理矢理にでも体を夜型に持っていきたい。

 それに、ことが始まれば多少の眠気は吹っ飛ぶだろう。


「ゲームやって引きこもってると、苦労しなくても勝手に夜型になるんだけどなぁ」


『上杉さん。寝ぼけてますか?』


「寝ぼけていられたら楽なんだけどな」


 生憎と、今から始めるのは死と隣り合わせの踊りの続きだ。

 とはいえ、屍肉草もとい喚屍草の威力をしっかりと認識した俺たちだ。

 準備が違う。


 まず、俺のレベルは20になっている。

 神様からの忖度によってステータスは魔に全振りだが、そのおかげでCPには多少の余裕ができている。

 今はこんな感じだ。


 ──────

 HP 255/275

 CP 147/303(使用中271/574)


 力:35

 魔:104

 体:25

 速:55

 運:36

 ──────


 清々しいくらいの魔力一点突破である。

 なんなら魔力だけならレベルブーストしていたときに迫る勢いだ。


 ここまで来たら、あの時の万能感までもう一息、と思いたいのだが、未だにちょっとだけ壁を感じている。

 もしかしたら、魔のステータス以外にレベルでもある程度、魔術の扱いに補正がかかっているのかもしれない。


 まぁ、俺の魔術の手触りは一度置いておこう。

 お分かりいただけるだろうか。

 俺のCPが一つの大台に乗っていることに。


 そう、この魔へのステ振り集中で、なんとかギリギリ《混沌の魔君》とT君の同時運用ラインに乗ったのである。


 さっきの戦いで、俺はちょうど思考加速と並列思考のありがたみを嫌というほど実感した。

 その上でもう一度戦うとなったらそこを懸念するのは当然で、これを取り戻せて本当に良かった。

 今後はもう手放したくない。立派なスキル依存症である。


 ……実際のところ、グールの収支だけではEPがちょっと足りなかったので、何かあった時用の吸血蝶の羽ドロップを、いきなり全ツッパすることになったのはご愛嬌だ。

 むしろ《混沌の魔君》が装備できていないという状況が、何かあった時と言っても過言ではないから問題ない。




 というわけで、できる限りの準備はした。

 洞窟前広場にはさっき反省会をした時の改良も加えている。

 石玉やゴーレムの事前準備を済ませ、さらに投石専用ゴーレムも配備している。

 鉄棒だけは、まだ折れた分を補充できていない(しかも折れた鉄棒は消えた)が、残った分にはクミンがCPを注ぎ込んで補強は済ませてある。

 そして、今度は忘れないように、自分も含めたメンバー全員に闇纏をかける準備まで済ませてある。

 暗視もグループリンクのおかげでスムーズに共有可能だ。


 と、さきほど反省した分は全て直した。

 これでもダメなら、もう一回洞窟に引きこもって作戦の練り直し。


 あとは、衝風魔術で喚屍草の呪いをもう一度撒き散らすだけである。



「……やっぱちょっと怖いな、心臓バクバクしてきてる」


『そのために、たくさん罠をしかけたんじゃないですか』


「足止め程度だけどな』



 前回は、あれほどのグールがくると思ってなかったので、陣地はグールを整列させるため、くらいのものだった。

 だが、今回はもう、めちゃくちゃに押し寄せてくることが分かっているのでコンセプトを変えている。


 T君を配置するあたりだけは変更がないが、そこに到るまでの地面には、これでもかというくらい穴を掘ってある。

 行軍速度を下げるのが本命の狙いで、石玉を避けられても面白くないので、嫌がらせ程度の深さだ。


 この接敵前の段階でどれくらいグールを減らしていけるかが、最初のポイントになるだろう。


 前回は余裕がなかったが、今回は投擲手がたくさんいる。

 T君は引き続き。

 それに加えて俺と投擲のためにあえて人型になったクミン。

 それに経費削減のため土で作られたクレイゴーレムが二体。

 気持ち前回の二倍くらいの密度で、石玉の雨が降るだろう。


 その攻撃をかいくぐって来たところでいよいよ接近戦になるわけだが、それに関しても少し対策した。

 T君だけに負担がいかないように、両脇のゴーレムを働かせるのは当然として、俺とクミンも隠密状態で援護する。

 T君の死角に入ってくるグールを、積極的に棒手裏剣などで始末するのが仕事だ。


 本来は魔術で派手に援護したいんだが、前述した喚屍草の件があるので、流れ弾でおかわりみたいな状況にならないよう配慮した形になる。

 投擲が終わったら、クミンはアリさんに戻って好き勝手動く予定。


 T君との連携の確認が取れていないのが不安なところだが、サモンモンスターのT君をCP300払って連携のために呼び出すのはちょっと重かった。

 無理なレベルアップのせいでCP回復薬がカツカツなのだ。余裕は1500CPくらいしかない。


「最低でも、さっき以上は稼ぐぞ。かけてるCPが違うんだからな」


 前回の失敗でも大幅な黒字になってはいるとはいえ、気持ち的に負けは負けだ。

 吸血鬼ラベンダーに挑むっていうのに、その前哨戦みたいなところで負けていられない。



「じゃあ、撒くぞ」


『はい』



 そして、俺とクミンは意を決して、喚屍草を再び土石魔術ですりつぶしたのに、衝風魔術で丁寧に呪いを振りまいたのだった。













「普通に予測が外れたな」


『そうですね』


「……呆気なかったな」


『……そうですね』




 そして、そのおよそ30分後。

 俺たちはグールを殲滅していた。

 ただし。



「喚屍草で呼ぶ場合にも、倒したグールはリポップまでちょっと時間がかかる仕様があるみたいだな?」



 そう。

 さっきの失敗を糧に、めちゃくちゃ気合い入れて準備して臨んだ再戦であったが……集まったグールは100体にも満たないくらいだった。

 殺意満々で待ち構えていた俺たちは、結構な効率でグールを叩いてのめした結果、想定していた時間の半分程度で戦闘を終えた。


 フィールドに存在する上限を無視できる喚屍草でも、リポップタイムの短縮はできなかったよ……。


 もちろん、そこまで余裕だったかと言われるとそんなことはない。

 十分に準備をした上で、投石だけで全てを処理しきることはできず、結局T君無双タイムは必要だった。


 ただ、最初よりも数が少ないのに最初よりも準備していたとあっては、拍子抜けするのは仕方ないだろう。


 あとで手に入れたEPから逆算したところ、今回襲いかかって来たグールは数にして84体程度だったことは分かった。

 ドロップしたグールの牙は3個。

 まぁ、20〜30体で一個と考えると、やや確率が低いかなくらいだ。

 きちんと落ちてはいるのでリアルラックの問題だろう。



「UUURRRRRRRRRR!!」


「T君もありがとう。今日は本当にお疲れ様。明日もまた呼ぶことになると思うけどその時はよろしく」


「OU」



 そして、先の戦いの主役、キル数ではぶっちぎりの首位であろうT君は、相変わらず日本語が分かっていそうな感じの声を残して消えていった。

 闇纏によって強化されてもスピードは変わらないのだが、攻撃力と防御力が強化されたT君は、先に比べてもかなりダイナミックな動きをしていた。

 まさにバーサーカーたるやといった感じ。テンション上がったのか、鉄棒一本ぶん投げて三体貫通とか意味わからんことしてたし。


 とにかく、二度目のグールパニックでは事前準備と敵の減少が重なって肩透かしだった。俺もクミンも、遊撃で動く必要すらなかったのだ。

 これを勝ちと認めるのは、いささか微妙な気分だ。本番は明日の夜に持ち越されたと思っておこう。

 一応用意していた『秘密兵器』も、明日には日の目をみるかもしれない。


『それで、整地はどうしましょうか? もしかしたら、朝が来ると同時に地形が元に戻っちゃうかもしれませんが』


 ドロップアイテム探しも終わったところでクミンが尋ねる(ちなみにクミンはとっくにアリさんに戻っている)。

 俺たちは夜の間好き勝手地形をいじってしまったが、ここはダンジョンの不思議フィールドだ。環境変化とともに不思議な力で戻ってしまう可能性もある。

 少し考えて、俺は首を横に振った。



「一旦そのままで良いだろう。どうせ昼になったら屍肉草は生えて来るんだろうし、どっちにしろボロボロになる気がする」


『わかりました。じゃあ、これからどうしましょうか』



 俺は視界が悪い森の夜空を見上げた。

 ちょっとガスっぽい感じで、空はよく見えない。


 先の戦いで稼いだEPと、ドロップアイテムの収入で、ギリギリもう一度レベルアップはできる。

 だが、CPが回復できなくなる。そうなると、朝のランニングがてらゴーレム狩りに行くこともできなくなるか。


 一旦、EPの大部分は回復薬に回してしまおう。

 そして、クミンにはCPを潤沢に使って鉄の生産を頼もう。

 鉄棒は一本ダメになったし、残り三本も補修したとはいえ、いつ壊れるかもしれない。



 で、EPをレベルアップに使わないとなれば、貯蓄の他にもう一つ選択肢は出てくる。

 クミンもそろそろ鉱物理解を自前で習得してもらった上で、一つ進めて欲しいものがあった。



「可能なら、クミンには『銀』の生成に挑戦して欲しい」


『「銀」ですか?』



 それはいったい何のために? という疑問をクミンの視線から感じる。

 だが、これに関しては、ゲーマーでなくともピンと来る人が多いと思う。



「このダンジョンが、モンスターの弱点を導入しているなら『銀』は吸血鬼に有効な可能性があるんだよ」



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