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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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210/220

第210話 いったい誰だよ確認もしなかったマヌケは




 激戦の傷を癒し元気一杯になったT君は、さっそく五階層の入り口前にいたグール達を一掃した。数は7体だった。

 全く傷を負った様子はなく、再召喚も問題なさそうなのを確認してから、俺とクミンは事前に考えていた準備を行っていく。


 まずは、荒れに荒れていた洞窟前広場の整地からだ。

 新たに地形を変えていくにしても、最初は均しておいた方がいい。

 だが、整地する前にまずやらなければいけないことがある、と、俺はちょっとだけ期待を込めて探し物をしていた。



「……これか? これっぽくないか?」



 目的のものっぽいけれど、微妙に自信がない。

 ただ、明らかにここにあるのはおかしそうなものなので、多分これだと思う。


 というわけで、俺は先ほどの乱戦の中で荒れに荒れ果てていた洞窟前広場に落ちていた、犬の牙のようなものを拾い上げた。

 大きさは大型犬もかくやというほど巨大で、十センチくらいはある。これが人間サイズの口の中に収まっているとは思いたくない。


 そう、俺はグールのドロップアイテムを探していたのだ。


 途中で撤退を余儀なくされたとはいえ、合計で100体以上のグールを倒したのだから、その過程でアイテムがドロップしていてもおかしくない。

 とはいえ、このドロップアイテムはモンスターの方でどういう扱いなのかはわかってないので、もしかしたら回収されたりしているかもという不安はあった。

 だが、熱心に探して見たところ、同じような牙があと3個ほど見つかった。


 本当はもっと落ちているかもしれないが、目星先生を駆使してもこれ以上見つからなかったので諦めることにした。



「とりあえず見つかったから、作業進めちゃってクミン」


『はーい』



 目的のブツを見つけたら、もう現場保存の必要はない。

 クミンに整地作業は任せて、俺は端末の前まで戻って来た。



「端末くん、これがグールのドロップアイテムで合ってるかな」


『はい。納品いたしますか?』


「全部頼む」


『かしこまりました』



 端末くんへと謎の牙を差し出すと、端末くんは二つ返事でそれらをいつもの謎の粒子へと変換していく。

 これ一つでおそらく1500EPのはずだ。

 扱うEPのインフレっぷりにしみじみするが、少なくともレベル50とかになってくるとEP3000クラスのモンスターがいることだけはわかっているんだよな。


『グールの牙四つの納品を確認しました。一部スキルが解放されます。新たなモンスターのサモンが可能になりました。EPを6000還元します』


 EPに関しては想像通りだった。

 新たなアイテムを納品したことで、少しだけ俺のステータスの拡張性が上がる。

 サモンに関してはグールが増えているだろうから後で確認するとして、俺は思い出したことがあった。


「端末くん、新たに解放されたスキルってさ、グールの言語が理解できるようになるやつとかある?」


『グールの言語を理解できるスキルはございません。ですが、その理解を助ける可能性があるスキルならございます』


「それは?」


『こちらです』


 いつもの淡々とした様子で、端末くんはスキルを表示する。


 ──────

 声真似グール:750EP


 グールが発している声を真似ることができる。

 ただし真似ているだけなので会話ができるスキルではない。


 消費CP:10

 ──────


「これでどうしろと?」


『このスキルを利用すると、言葉の意味はともかくグールの言葉を真似することはできます。それらを研究し、その声真似がなんの意味を持つのか類型を作り、まとめることで、理解できるようになる可能性があるかと』


「遠回しすぎる」


 鳥類研究家が鳥の声を録音してまとめ、それらを発している状況を観察して意味を推測するようなあれかな?

 ふと思ったことだったけど、やっぱりいきなりグールを理解できるようになる近道は存在しないか。


 ちょっとがっかりしつつ、俺は端末くんをじっと見つめてみる。



『なにか?』


「いや……」



 さっきのグール大量発生について、端末くんに聞いても何も教えてくれない気はする。

 だが、だからと決めつけて聞かないのもあれか。

 ダメ元で聞いても、損するわけじゃないしな。



「グールの習性とか、気になる点について聞いたら教えてくれるかなって」


『攻略に関する情報は、上杉様の進度に応じて解放されます』


「じゃあ、屍肉草がグールに与える影響とか、教えてくれたりする?」


『もうしわけありません』



 やっぱりダメか。

 まぁ、だいたい端末くんの情報開示の傾向は理解している。


 まだ攻略できていないことを聞いても、端末くんは教えてくれない。

 一度自力で困難を乗り越えられたら、ようやくその困難に関する情報を開示してくれる。

 それが基本的なパターンだ。

 攻略に直接関係しない情報だったら、ぽろっと教えてくれたりもするんだけど。


 まぁ、そもそも端末くんから攻略情報を集めて攻略する系のダンジョンじゃないからなここは。

 神々の思想なのか、ダンジョンの設計が元からそうなのかは知らないが、ダンジョンは人間を誘い、試練をふっかけるのが仕事のように思える。

 それをして何をしたいのかは、まだわからない。



「そういえば、なんで屍肉草って夜はあのつくしみたいなやつだけになるの?」


『五階層の夜に屍肉草は存在しません』


「…………え?」



 攻略情報を諦めて、軽い雑談くらいのノリで尋ねたら、端末くんがいきなり知らない情報を出して来た。



「いや、あの、赤くて三十センチくらいあるつくしみたいな草。屍肉草じゃないの?」


『はい』


「じゃあ、なんなの?」


『そういった情報は、上杉様がご自身で確認されるべきかと』



 まぁ、広義の意味では、それも攻略情報なのかもしれない。

 俺は次のグール大戦に備えてレベルアップを図ろうと思っていた矢先に、自分が見落としていたかもしれない情報を突きつけられて、慌てて外に向かった。



『上杉さん? 整地はもう少しかかりますよ』


「それはいい。クミン、あのつくしもどき、近くにある?」


『まばらではありますが、周囲にはいくらでも』



 と、目を凝らせばすぐ近くにあったつくしもどきを一つ、いつものように根っこごと採取する。土石魔術による土への干渉が植物採取専門になってきている。

 とにかく、そのつくしもどきを持って帰り、端末くんに鑑定を頼むと結果はこうだった。



 ──────

 喚屍草:0EP


 ダンジョン18764番、五階層『吸血鬼の森林樹海』にて採取された特殊な植物の一種。

 その実態は、植物というよりも強力な呪いの媒体であり、傷つけると血液のような匂いの汁を垂れ流す。

 呪いを喚起することで、どこからともなくグールを呼び寄せるため、周囲に敵影がなくとも取り扱いには細心の注意が必要。

 なお、食したものの精神を腐らせ、人間をグールのごとき生きた死体へと変えるため食用には適さない。

 ──────



 似ているようで全然別物じゃねえかよ。

 むしろ書いてあるフレーバー的には、危険度数倍の呪物じゃねえかよ。

 いったい誰だよ、これを屍肉草だと思い込んで確認もしなかったマヌケは。


 俺だよ!!!!!



『情報が解禁されました。この階層の夜には、この喚屍草がいたるところに存在しています。不用意に傷をつけた場合、眠っていたグールを呼び起こす危険性があるため、お気をつけください』


「その眠っていたグール、というのを詳しく聞いていい?」


『……限定的に情報を解禁します。この階層に存在しうるグールの数は上限が設定されています。この喚屍草はその上限を超えた数のグールを、階層に呼び起こす可能性があります』


「あー、おっけー、だいたいわかった」



 つまりあれだ。

 俺の仮説によると、このダンジョンには、モンスターの出現するポイントがある程度決まっている。

 そして、モンスター数が階層に設定されている上限に達するまでは、そのポイントからランダムにモンスターが出現する。


 で、数が上限になったら待機状態になり、どこかでモンスターが倒されると、その待機状態のポイントからランダムにグールがまた出現──リポップする。

 このリポップは一日の制限があるのか、純粋な時間管理なのかは分からないが、ある程度間隔が決められている。

 狩り続けているとモンスターとのエンカウント率が下がるのは、この下の階層で散々体感している。


 だが、この喚屍草を使うと、そのルールを無視してポップするポイントから、わらわらとグールがポップするようになる。

 おそらく、リポップまでのクールタイムも無視して、効果範囲にかぶったらいくらでも湧いてくる感じなんだろう。


 で、肝心の使い方はよく分からないが、衝風魔術で匂いを撒き散らしたのが『呪いを喚起した』という判定に引っかかっている気がする。

 詳細は分からない。詳しく知るには呪術の知識が必要そうだ。



「重要なのは、衝風魔術で匂いを撒き散らすと、さっきの再現は簡単にできそうってことか」



 屍肉草と同じだと思って、昼間と同じノリで匂いを撒き散らしたのは、完全に失策だったというわけだ。

 言うなればこの喚屍草は、この五階層に擬似的なモンスターハウスを作り出すギミックのようなものだ。


 本来、喚屍草は、罠としてこの階層に存在しているのだろう。


 俺以外のパーティの実情は知らないが、五階層まで来ているパーティで、魔術を一つも持ってないというパーティはないだろう。

 そうなればグールとの戦闘中でも当然魔術は使うだろうし、もし戦闘中に魔法でうっかり喚屍草を傷つけてしまったら、この呪いが発動するのだ。


 そして気づけば、恐ろしい量のグールに囲まれて、パーティは全滅の危機だ。

 まぁ、衝風魔術で呪いを撒き散らすような行為をしなければ、常識的な範囲のグールに囲まれるくらいなんだろうが。

 考えてみれば、最初にグールと戦ったときにクミンが土石魔術で切ったくらいでは、さっきの雄叫びのようなものは起こらなかったしな。


 この辺りも、昼夜で姿を変える五階層らしいギミックなのだろう。


 昼の屍肉草は一面に茂っていて、気をつけていても傷つけてしまい吸血蝶を呼び寄せる。

 夜の喚屍草は、暗闇というフィールドでただでさえ見落としやすいところに、まばらに罠として配置しており、それをうっかり攻撃するとグールを呼び寄せる。

 屍肉草と喚屍草の密度が違うのは、喚屍草がぎっしり詰まっていては、夜の攻略が実質不可能になるからだろう。


 確かに、昼と夜で植生ががらっと変わっているのだから、種類の違いは警戒するべきだった。

 ここも反省ポイントだ。



「とはいえ、もしグールを狩り切れるとしたら、これは重要なアドバンテージに化ける」



 色々と考えてみたが、一つ言えることがある。



 適正レベル帯でモンスターハウスは、死と隣り合わせの極悪な罠だ。

 だが、そこにオーバーパワーの強力なユニットがいれば、経験値稼ぎのギミックにもなりうるのだ。


 ちゃんと、死なない準備ができていれば。



「上等だ。利用して時短してやるよ。RTAみたいにな」



 俺には残された時間もないが、逆に俺にしか切れない切り札は持っているのだ。

 それらを最大限有効に活用して、クソみたいなダンジョンのデストラップを、しゃぶれるだけしゃぶり尽くしてやろうじゃねえか。


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