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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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205/229

第205話 自分の生殺与奪を他人に握らせるような下策




「というわけで、スキルセットは完了」


 スキルとしての《混沌の魔君》を外した俺は、大きく伸びをし、体を解す。


 さっきまでは戦闘とは呼べぬほど緊張感のない戦いを繰り広げていただけだった。

 だが、ここから先はそうも言っていられない。

 全く検証が進んでないフィールドの中を、何枚も手札を落とした状態で探索することになるのだから。


 暗視関係は基本的に《闇夜と死の徒》に入っているので、視界としては大きく困ることはない。


 だが、それ以外の超自然的な感覚に関わるようなスキルは、大半が《混沌の魔君》に統合されていたので、それらがごっそり抜けると違和感があった。

 特に『思考加速』や『並列思考』それに『磁場理解』あたりはもはや無意識に感じるスキルだったので、それらがなくなるとえもいわれぬ不安感があった。


 だが、それも今だけだ。

 グール狩りの効率を極め、レベルを上げれば取り戻せる。


 ほぼ魔に全振りした場合のCPの増加量は一レベルあたり34ってところだった。

 レベル25まではあと8レベルで、このまま魔に全振りをし続けると25でCPは272増える計算になる。

 そこまで増えれば《混沌の魔君》を装備したまま、CP444を確保することは可能だ。


 ただし、それをすると俺のステータスが極端に魔に偏った歪なものになる。

 極振り魔法使いを目指すならともかく、はっきり言って、忍者としては戦いづらいステータスが完成する。

 それは少々困る。


 吸血鬼ラベンダーを倒すために【十歩必殺】が必要だったとしても。

 【十歩必殺】のために他のステータスを犠牲にして戦いになりませんでした、では問題なのだ。


 こうなるとある程度の賭けは必要だ。


 クラスチェンジによる成長を信じず、魔にステを振り続けるか。

 クラスチェンジによってCPが伸びるのを信じて、魔に偏らせつつバランスよくステを振っていくか。

 限られた時間によってEPに全く余裕がない──言い換えれば間違いが許されない状況でそれは、ギャンブルにしても怖すぎる。賭け金は己の命だ。



「……端末君」


『申し訳ありませんが……』


「いやいい」



 ダメ元で端末君に正解を尋ねてみたが、本題に入る前に断られた。

 そりゃ言えないだろう。当たり前だ。

 クラスチェンジに必要だろうEPを、そっと教えてくれただけで十分危ない橋を渡っているのだから。


 ついでに俺の想定だとクラスチェンジに必要なEP30000は、召魔忍者のための特別仕様で間違いない。

 根拠はクミンの種族進化に必要なEPが8000だったこと。

 あの種族になるのが8000で、救済ジョブのクラスチェンジが30000はまずありえないだろう。

 だから、端末君が一般論と言っていたのはただのごまかしである。端末君に問い詰めても、そう認めることはないだろうが。



 話が逸れた。



 今の俺にとって重要なのは、どういう風にステ振りしていくかという決断をすることだ。

 ……実は一つだけ、他力本願にもほどがある作戦があるのだが、流石にそれを即座に選ぶのは、どうかという思いで留めているものがある。

 ひとまず、その大博打を打つのは保留して、意見を求めた。



「……クミンはどう思う?」



 俺自身が思いついていない、画期的なアイデアはないだろうか。

 俺に尋ねられたクミンは、少し考え込んだあとに言った。



『他力本願なのは重々承知で、神々に委ねてみるのはどうでしょうか?』



 果たしてそれは、実は俺が保留した案と一緒だった。



「……クミンもそう思うか……?」


『不本意ですが。現状、先を知っているのは神々だけです。そして彼ら彼女らがこの困難に放り込んだ責任を取る気があるのなら、その調整役くらいは担うのが筋ではないですか?』



 そう。これは本当に、他力本願にもほどがある発想になるのだが。

 ひとまず自由に振れるレベルアップのポイントは全て魔に注ぎ込んで行き、神々がボーナスポイントを魔に振るのをやめた段階で、他に全振りするというものだ。



 ようは、神々が振るだろうボーナスポイントに全乗っかりするということだ。

 神々が、これ以上振らなくていいと判断するまで。



 それと言うのも、さっきのボーナスポイントは忖度にまみれた振り方をされていた。

 これはつまり、ボーナスポイントの割り振りを担当している神々は俺の事情をこの上なく知っているという可能性が高い。


 さらに言えば、この先で俺が求めているもの(最大CP444)も神々は知っているはずで、クラスチェンジ先のことを知っているのも神々だけだ。

 この状況で、条件を満たすために必要な魔の値を知っているのは、それが計算可能なのは、実際に召魔忍者を作った神々だけなのだ。


 だから、とりあえず必要なラインになるまでは魔に振り続ける。

 これ以上は過剰だからと、神々がボーナスポイントを魔に振らなくなったところで、俺も他に全振りするという考えだ。


 当然ながら、これは全く褒められたやり方ではない。

 そもそも、神が俺を助けてくれることに頼った、策とも言えないものである。

 例えるなら、自分の生殺与奪を他人に握らせるような下策だ。



 だが、この状況に叩き込まれて策を選んでいる余裕がないのも事実である。



 そもそものスタートラインはCP444の確保。

 それを満たしたのち、どのステにどれくらい振れば良いのかの正解なんかもありはしない。


 それでも、CPが確保できなければ負け確なのだ。

 ただでさえEPが稼ぎきれるか微妙なラインで、さらにそんなことにまで頭を悩ませたくはないんだ。



「頼むよ神様。無条件で助けてくれなんて言わない。でも、なす術もなく無様に死ぬのを見たいわけじゃないんだろ? だったら、それくらいのサービスはあってもいいんじゃないか? その代わり、存分に楽しませてみせるからさ」



 相当に、生意気なことを言っているだろう。

 これが、ちょっと気難しい神様であれば、それだけで与えてもらった諸々を剥奪されたっておかしくない。

 過去の考察が当たっていれば、即死する可能性だっていくらでもある。



 だが、生憎と俺を見ている神様は、物好きが多いんだ。




『……上杉様。一件のお知らせがございます』




 俺の言葉の直後に、おずおずと端末君が言った。

 件名なしのお知らせを開くと、端的に言葉が綴ってある。




 ──────


 吐いた唾は飲めんぞ?


 ──────




 ゾクゾクするね。

 これで相手が不機嫌になったような気配はない。

 ただ、いつもは腹を抱えて笑っていそうな連中が、にんまりと唇を歪めた姿を幻視するような気持ちだ。



「上等」



 わざわざ、素直じゃない言葉を選んだ。

 自分の命がかかっているから、というわけではないが、これで後戻りはできなくなった。

 ここまでやって挑むところまで行けなかったら、俺の死後の安寧さえ危ういかもな。



「ま、死んだ後のことなんて、考えたってしょうがないか」


『上杉さんは死なないように少しくらいは気をつけてくださいね』 



 クミンに小さく釘を刺されながら、俺はひとまずのステ振りの方針を固めたのだった。

 これからは一レベルずつ細かく上げていこう。








「というわけで、まずは検証からスタートしたいな」


 レベルアップに関する悩みをある程度解決したところで、ようやくグール狩りに移行する。

 と言っても、まずは様子見の中の様子見。


 実際にTくんがグール相手にどこまで戦えるのかの確認からスタートである。


「いや、そもそもちゃんと呼べるかな」


 ここまでお膳立てしておいて今更不安になる。

 Tくんの召喚自体が、実はあのクソダンジョン限定の仕様でいつの間にか召喚できなくなっている、という可能性を考慮していなかった。

 いや、リストには残っているから大丈夫だと思うんだけど。


 そんなわけで、俺は少しビクビクしながらサモンのリストを表示する。


 ──────

 ゴブリン:10CP

 ホーンラビット:10CP

 吸血蝶:10CP

 ゾンビ:15CP

 スケルトン:20CP

 スケルトンスカウト:20CP

 スケルトンアーチャー:20CP

 スケルトンマジシャン:20CP

 ゴーレム:120CP

 ?????????:300CP

 ──────


 ちゃんと居るな。

 ついでに吸血蝶もちゃんといる。10CP族ということは、一応最低価格のサモンモンスターかな。


 リストの?????????に意識を合わせれば、召喚できる手応えのようなものもちゃんとある。

 いつでも召喚できるという実感を得たので、一度リストを閉じた。

 召喚するのは、実際に接敵してからの予定だ。


 スケルトンスカウトは戦闘以外でも馬車馬のように働かせているが、本来のサモンは戦闘用のスキルだ。

 十中八九大丈夫だとは思うが、無駄に呼び出しておいていざ戦闘となったときに時間切れで退場とかなったら目も当てられない。



「まずは、軽く探索しながらグールを探そうか」


『どう歩くつもりですか?』


「そうだな」



 俺は、オートマッピングで作られた地図を一瞥する。

 この地図だが、現在、少し考えて二種類の五階層の地図を作ることにしている。

 すなわち『昼の地図』と『夜の地図』だ。

 理由は言うまでもなく、昼と夜で地形情報が違いすぎるからである。


 たとえば、昼間は謎のモンスターが居るため近寄るの厳禁の湿地帯が、夜は歩きやすい広間になっているかもしれない。

 たとえば、夜はグールの溜まり場になっている危険な墓地が、昼間は邪魔な木々のない草原になっているかもしれない。


 可能性としてはどちらもありえないわけはない。

 少なくとも、昼と夜で歩きやすさに違いがあるのは確かなのだから。


 そう考えたら、それらの情報を一枚の地図で管理しようとするのは、おそらく無茶だ。

 最低限共通する情報だけを共有しつつ、地図を二種類用意するのが無難だと思った。


 ただ、そうなってしまうと夜の地図は全く情報が更新されてない、と思うかもしれない。

 だが、ここに一つ、昼のスケルトンが探し当てた大金星があるのだ。



「到達を目標とはしないが、まずはこの『一つ目のオブジェクト』を目指して地図を埋めてみようか」



 そう呟いて俺は、絨毯作戦で地図を埋められるようにゴブリンを横にずらっと5体ほど並べた。

 その目的地は──昼間のスケルトンスカウトが、吸血蝶に集られながらも発見したものは──五階層にいくつも存在するという特殊なオブジェクトの一つ。


 その名も『ホブゴブリンのねぐら』というらしい。


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