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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第176話 複合スキル再び



 複合スキルについて、俺よりもお世話になっているやつはそうおるまい。

 このゾンビパニックが始まって三日目くらいには、もうお世話になっていたのだからな。


 その複合スキル《闇と死の徒》が無ければ、控えめに言って何度死んでいたのか分からないくらいだ。

 そのくらい、このスキルによるCP圧縮の恩恵を俺は受けている。

 今は《闇夜と死の徒》にランクアップしているが、CPは据え置きにしてくれたし。


 そんな複合スキルが、まさかこのタイミングで再びやってくるとは思わなかった。



「どうして急に?」


『以前から申請されていたようなのですが、先ほどの上杉様の醜態が大ウケして、許可が出たようです』


「そんなことある!?」


『冗談です』


「…………」



 端末くんも言うようになったな……。

 それともあれか。普段から想定外の行動を取っている俺に対する意趣返しか何かか。


『複合スキル二つ目になると、一つ目よりも多くの神の賛同が必要になります。その賛同がようやく得られたのが先ほどのタイミングです』


「……それやっぱり俺の醜態がウケたんじゃ」


『可能性はゼロではありません』


 なんとも言えない気持ちになる。

 まぁ、いい。

 経緯はどうあれ、複合スキルが俺に力を与えてくれるのは確かだ。


『また、複合スキル二つ目は、一つ目よりも習得に必要なEP、およびコストCPが増加します。それでも全体的なコスト削減には繋がるはずですが、どういたしますか?』


「とりあえず、概要を見せてもらっていいかな」


『かしこまりました』


 ほんの少し、レベルアップに必要なEPを考えると足が出まくる気がしないでもない。

 だが、それを差し置いても、コスト削減につながる複合スキルは強力なのだ。

 心のなかで取ることはほぼ確定だが、一応確認はしておきたい。


 少し待っていると、端末くんはすぐに習得予定の複合スキルの内容を表示してくれる。


 ──────────

 複合スキル(名称未設定):EP2000


 スキル『神出鬼没』『思考加速』『並列思考』『並列起動』『調理』『発破』『煙術』『水泳』『天候観測』『狙撃』『石工』『土木』『掘削』『磁場理解』を統合する。

 コストCP:100

 ──────────


「なんかありがたいけど無秩序じゃない?」


 最初の感想はそんな感じだった。

 いやもちろん、めちゃくちゃありがたいよ?

 だけど、統合されるスキルにどうも統一感がない。


 あえて言えば、魔術に関連するスキルばかりであるというのは特徴かもしれないが、どちらかといえば手に職つけている感じというか。

 一人現場仕事みたいな、そんな印象が漂う。


『特に問題がなければ、習得に進みますが」


「待った、内容はともかく一番重要なことが抜けてる」


 俺の感想を置いておいて端末くんが話を進めようとしたが、俺はそれに待ったをかけた。

 重要なことだ。

 前回、もっと突っ込んでおけば良かったと後悔したことだ。

 これを聞かないと話は進まない。



「名称未設定は嘘だろ。仮の名称もう決まってるだろう。教えて」


『いえ……名称はまだ決まっておりません』


「いいから。そういうのいいから、絶対前振りだって知ってるから、後生だから、ね?」



 端末くんから微かな罪悪感の気配を感じ取る。

 もちろん、本決まりしてないということはあるだろう。

 だが、この時点で仮決めくらいはしていると踏んでいる。


 俺はその確認を怠ったおかげで、前回痛い目にあったのだ。

 今思えば、あれが俺の方向性を決めた瞬間だったと言っても過言ではない。

 同じ轍は踏まないぞ。


『……ではあくまで仮の段階ですが』


 と、俺のお願いにやっと端末くんが折れて、仮決まり状態のスキル名称を教えてくれた。



 ──────────

 《混沌の魔王(仮)》:EP2000


 スキル『神出鬼没』『思考加速』『並列思考』『並列起動』『調理』『発破』『煙術』『水泳』『天候観測』『狙撃』『石工』『土木』『掘削』『磁場理解』を統合する。

 コストCP:100

 ──────────



「危なっ!!」


 しつこく確認しておいて良かったと、今以上に思ったことはない。

 危うく《闇と死の徒》以上に人に見せられないスキルを習得するところだった。

 魔王はないよ魔王は、どうしてそうなるんだよ。


『主に混沌の神と孤独の神の話し合いで決まりました。魔の女神の要望は【魔】を入れることであり基本的に干渉しておりません、その他の神も同様です。大部分は混沌の神による命名となります』


「魔の女神様ちゃんと監修してくださいお願いします」


 いや、きっと忙しいだろうことはわかってるんですけどね、絶対これ混沌の神様の悪ノリですよね。

 人に魔王とか付けて楽しみそうな匂いをいつも感じてますからね。


『この名称でよろしいですか?』


「よろしくないです。もうちょっとマイルドにしてくださいませんか」


『…………』


 しばらくして、端末くんは名称の部分を書き換えて表示してきた。



《混沌の魔皇(仮)》:EP2000



「違う、そうじゃない」



《混沌の魔帝(仮)》:EP2000



「まず方向性がそうじゃないんです」



《混沌の魔神(仮)》:EP2000



「恐れ多いにもほどがあるでしょう!?」



 めちゃくちゃ遊ばれている、それがわかる。

 俺の中で混沌の神様は、死の女神様、闇の女神様コンビに続くちょっかい枠である。

 でもこの神様と孤独の神様からもらった称号が、割とこのダンジョンアタックの根幹を支えているのも事実で、頭が上がらないんだよな。


 だから、もう、あとは拝み倒すしかないんだが。


「贅沢は言いません。ぱっと見の印象だけでいいんです。ぱっと見普通ならもう何も言いませんから」


 そもそも誰かに見せるステータス欄でもない。

 ただ、この先で鑑定スキル持ちなどが現れたりして、誰かに見られないという保証はない。

 せめて、ぱっと見で人類の敵認定が避けられそうならそれでいいのだ。


 そう思っていたところで、最後につけられたのがこうだった。



《混沌の魔君まくん(仮)》:EP2000



「もうこれでいいです」



 俺のハードルは大分下がっていた。

 冷静に考えれば魔の君主だから魔王と意味合いは変わらないんだが、一見した時のインパクトが違う。

 これなら、ぱっと見でいきなり人類の敵認定とかはされないだろう。

 ヨシッ!


『ではこれより、スキルの統合を行います』


「よろしく」


 端末君の言葉に、俺は頷きを返す。

 同時に、いつかの複合スキルの習得と同じように、俺の中に吸い込まれていたスキルが色とりどりの粒子となって一度端末へと戻っていき。

 やがて虹色の粒子となって俺へと帰ってきた。

 一度習得済みのスキルだからか、今回は頭痛もなにもない。



『スキルの統合を終了します。複合スキル《混沌の魔君》を獲得しました。またそれに伴い称号『混沌の魔君』を付与されています』



 そういえばそれもあった。

 まぁ、称号が増えるのはもう今更だろう。

 何か嬉しいステータス補正が付いていたらそれだけで良いやという、半ば諦めの境地に達している俺だ。


 心の準備など特に行わず、そっと詳細を開いてみる。



 ──────────

 《混沌の魔君》


 混沌と孤独の中においても、自らの魔道を開くための技術を集めた複合スキル。

 混沌の神、孤独の神、魔の女神より期待を、慈愛の女神、従魔の女神より祈りを受けた証でもある。


 『神出鬼没』『思考加速』『並列思考』『並列起動』『調理』『発破』『煙術』『水泳』『天候観測』『狙撃』『石工』『土木』『掘削』『磁場理解』を内包する。


 複合効果:内包されたスキルが混沌に満ちるほど効果が微増する。


 コストCP:100

 ──────────


 この辺は《闇と死の徒》と似たようなものだ。

 もしかして、複合スキルの条件を満たしたの、俺が各属性入り混じった混沌としたスキルを習得したからなのでは、とちょっとだけ思ってしまうが。


 ついでに称号はこんな感じ。


 ──────

 『混沌の魔君』


 無秩序を愛せ、停滞を恐れよ、固着はさらなる崩壊を生むと知れ。

 君主は常に孤独、君主は常に一人、その手を最後に引くものは己自身と知れ。

 故に、己の手で道を拓くため、魔を統べ、すべとする何もかもを求めよ。


 ステータス補正:習得したスキルの系統数に応じて、魔にプラス補正。また、配下の種類に応じて、配下の能力にプラス補正。

 この称号を持つものは混沌の性質を持つものに敬意を抱かれるようになる。

 ──────


 魔君と銘打っているのに、どちらかというとクーデター起こしそうな感じの説明なのはなんなんだろうか。

 あるいは、ダンジョンサイドが何かを俺に伝えようとしているのだろうか。


 分からない。一体俺に何になって欲しいのかがさっぱり分からない。

 あとテイムに補正入ってそうだけど、混沌属性が敬意を抱いた結果どうなるのかも怖い。

 一応、優秀そうなステータス補正が貰えてありがたい限りではあるのだが。


「この配下ってのは?」


『テイムモンスター、またはサモンモンスター、あるいは盟約や契約によって縛られた存在などが該当します』


「知らない情報が、最近ちょいちょい解禁されるようになったなぁ」


 今までずっとゾンビワールドのあれこれで忙しかったけど、ダンジョンはダンジョンで謎が多すぎる。

 少なくとも、俺たちがダンジョンについて知っているのは、本当に浅い層のうっすらとした部分だけなんだと再認識した。


「盟約や契約ってのは、教えてもらえる?」


『多くの情報は、五階層突破時に開示されます。詳細についてはその時にもう一度お尋ねください』


「了解。今は忘れる」


 端末君の答えに俺は頭を切り替えた。

 最近特に思うのだが、五階層はダンジョンの一つのターニングポイントらしい。


 呪腐魔病の治療薬も五階層。

 明確に『ボス』と明言された吸血鬼ラベンダーも五階層。

 そして、多くの情報の開示も五階層。


 果たして、治療薬を手に入れた後に、これ以上ダンジョンの情報を俺が欲するのかは定かではない。

 だが、ダンジョンの謎の一端に触れる覚悟だけはしておこう。


「とりあえずわかった。可能なら今日、その五階層に足を踏み入れてやるさ」


『上杉様の健闘をお祈りいたします』


 これで端末君との朝の用事は終わった。

 あとは、磁場理解と付与魔術の検証を行って、アイアンゴーレム突破への道を開くだけだ。



 五階層は、もうそこまで来ている。



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