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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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173/198

第173話 がっかり箱?



「罠なし。敵意なし。周囲に異変無し。問題なし」


 見つけた宝箱に対して、俺は一人で指差し確認する。

 これまで、気が抜けたときの宝箱には結構痛い目を見てきたからな。

 特に四階層ミミックが出てきたら普通に嫌なので、チェックは念入りに行っておく。

 そんな俺のチェックを現場監督していたクミンが、うむと頷く。


『それじゃ開けて良いですよ』


「オッケー」


 今回は特に問題ないと判断されたので、宝箱を開けてみる。

 中に入っていたのは。


「方位磁石か?」


 冒険にはおなじみの、方位をずっと指し示し続ける磁石であった。

 俺も昔ホームセンターで買った方位磁石を持ち込んでいたのだが、このダンジョンの構造が思ったよりも単純で、今まで方位を確認する必要もそうなかったので使っていなかった。


 今思い出したように取り出して見たのだが、別に使えないことはないように見える。

 並べて見ても、ダンジョン産のそれとそう大差はない。

 ダンジョン産もホームセンター産も、どちらも北をずっと指している、ような?



「……外れか?」



 俺の心を、少なくない落胆が襲う。

 ここにきて、外れアイテムか。

 クミンがいなければ、そのまま開いた宝箱に頭を突っ込んであーあー言いたい気分になった。



『ただ、この先いつまで地上の方位磁石が使えるかはわかりませんよ』


「それはそうなんだけど、仮に地上のが使えなくなってもあんま問題ないんだよ」



 俺がそう言い切る根拠は、俺の視界の左上あたりにある。



「オートマッピング先生が、方位も完璧に教えてくれるから」


『…………』



 そう、伊達に2000EPのスキルではないのだ。

 俺の要望に応える形で、オートマッピング先生はマップの上と方位の北を合わせてくれている。

 さらに、それ用に加工した三角形の小石で、俺たちの現在地も表示してくれるようにした。

 つまり、マップを見ればどっちが北で、俺たちがどっちを向いているのかは丸わかりなのだ。


「地上のが使えなくなっても、オートマッピング先生が使えなくなることは多分ないだろう」


『……そうですね』


「仮に使えなくなったら、この方位磁石もわりと危ういよ」


 まだ短い付き合いだが、俺はもうオートマッピング無しでは生きられない体になっていた。

 今一番重要なのは、オートマッピング先生のための紙を切らさないことだ。


「……ただ、紙が濡れる水中とか雨の中とか、紙が燃える火山地帯とかだとやっぱり有用か……?」


『そんな場所に突入する予定があるんですか』


「場合によっては」


 水中や火山はともかく、次のフロアでは雨の可能性がないとは言えない。

 なんたって五階層の名称は『吸血鬼の森林樹林』だからな。

 屋外フィールドからの自然たくさん食料たくさんの可能性が十分にある。はず。


 まあ、オートマッピング先生の真骨頂は、仮に濡れていたとしてもどこかで雨宿りしながら新しく描いてもらえば問題ないところなので、雨までは対応できると踏んでいるが。


「もう、遅い時間だ。とりあえず今日は一度、端末くんのところまで戻ろう」


『そうですね』


 夕飯を食べてから諸々の検証を行い、ゴーレムを一体倒したところでもう22時だ。

 明日、残った未探索エリアと最後のゴーレム狩りを行ってから、改めてアイアンゴーレムの突破を検討することにしよう。


 鉱物理解による学びはあったが、一手足りない感は拭えない。

 端末くんへの質問を頭でまとめながら、俺とクミンは帰路に就いたのだった。







「さて、端末くん。何かお知らせはあるかな」


 寝る前の恒例行事として、俺はまず端末くんにそれを訪ねた。

 朝と夜、1日2回のお知らせチェック。


 基本的に良いことしか言われないはずなのに、毎回お知らせがあるとビクついてしまう不思議である。


 まぁ、そのお知らせが入っている頻度はそう多くないのだが、今日は違った。



『新規お知らせが一件ございます』



 端末くんからの言葉に、背筋を正す。

 なんだろう。二階層の宝箱復活なら喜び勇んで、寝る前ダッシュで取りに行くんだけど。

 そう期待して待っていると、端末くんがお知らせを伝えてくれる。


『上杉様のテイムモンスター『クミン』に、新たに称号が送られました。そちらをご確認ください』


「おう?」


『ウチですか?』


 お知らせは俺宛ではなくクミン宛だったらしい。

 俺は心の底でなぜかちょっとホッとしながら、クミンのステータスを確認する。

 新たな称号はすぐに分かった。


 ──────

 魔術の素養:土


 基本魔術のうち、土石魔術について十分な修練を積んだ証。

 魔の女神による、更なる探求への誘いでもある。

 貴女はもうその先へと進む資格がある。恐れずに進むと良い。


 ステータス補正:土石魔術スキル使用時にCP変換効率上昇。土石魔術の位階を一段階引き上げる。

 この称号を持つものは魔術師に属するものに一目置かれるようになる。

 ──────


「やったなクミン! 土石魔術中級だぞ!」


『えへへ』


 どうやらクミンは、魔の女神様より土石魔術の扱いを認められたらしい。

 俺が手放しで褒めると、クミンは普段のアリさんらしからぬ嬉しそうな声を上げていた。

 ただ、どうだろう、ちょっと走ってくるゲージMAXには足りないくらいか。


『確かに最近、初級ではちょっと窮屈だったんですよね。でも上杉さんはもう上級までの許可はあるじゃないですか』


「いや俺のは、なんというか最初から忖度を感じたし、扱いが上手くなったのもレベルブーストのあれがあったからだし」


 確かに俺も魔術の中級はずっと扱ってきていたが、どちらかと言えば召魔忍者を押し付──選んだ時に激励みたいな感じで称号をもらっただけだ。

 クミンはそういうの抜きで土石魔術を使い続けて、それで魔の女神様に認められたわけだから、俺よりもすごいと言っても良いんじゃないだろうか。


『なんにせよ、これでウチも上杉さんのお手伝いができそうですね。鉱物理解をリンクしてもらえば、そっちもお手伝いできますし』


「良い子や……」


 土石魔術の腕が上がって最初に考えることが俺のお手伝いって。

 アリさんは出来た子だよほんと。


 それに俺としても少し興味はある。

 アリさんはその種族的に穴掘りの専門家でもある。

 クミンの取得可能スキル一覧には鉱物理解は存在しないらしいが、俺がスキルリンクしてクミンがその扱いになれていけば、自然と生えて来たりするんじゃないだろうか。


 もしかしたら、そういう成長促進的な使い方がスキルリンクにはあるかもしれない。

 要検証項目が増えていくな……。


 と、俺たちが様々な思惑を巡らせつつ主従でほのぼのしているところで、端末くんがぼそっと付け足した。


『また、先ほどのお知らせに、魔の女神より追伸がございます』


「え?」


 魔の女神様から追加のメッセージが?

 俺の中で勝手に、優しい方というイメージがあるので、さらに背筋を伸ばしてそれを待った。


『【迷彩アリは暗黒魔術にも適正があるゆえ、習得をおすすめする。また、先ほどの磁石を使わないのなら納品するのはどうだろうか。言えるのはここまで】とのことです』


「めっちゃ見られとる」


 魔の女神様にも、俺がさっき宝箱でがっかりしていた姿が見られたと思うとちょっと恥ずかしい。

 正直、闇の女神様と死の女神様にはいつも見られてるんだろうなみたいな諦めがあるんだけど、魔の女神様だと恥ずかしくなるのはなんでなんだろう。

 幼馴染に着替え見られるのはいいけど、クラスで憧れのあの子だと恥ずかしいみたいなあれか?


 などと、答えの出ない悶々とした気持ちに一旦蓋をして。

 個人への肩入れは難しそうなのに、それでも伝えてくれたアドバイスには素直に従おう。



「端末くん。この方位磁石は納品できる?」


『可能です。納品いたしますか?』


「それをするとどうなる?」


『新たなスキルが習得可能になるかと』



 どうやら、魔の女神様のオススメはこのスキルにあるようだな。

 もう一度、方位磁石を失うことのデメリットを考えてみる。

 水中、雨、汚れや焼失で一時的にマップが見えなくなることのリスクがある。

 ただし、方位磁石を持っていてもわかるのは方位だけか。


 ……オートマッピング先生と魔の女神様に信頼をおけばこそ、ここは納品を選ぼう。


「お願い」


『かしこまりました。【単機能】の方位磁石の納品を確認しました。一部スキルが解放されます』


 言いながら、端末くんは新たに習得可能になったスキルを表示してくれる。

 今までダンジョン内で手に入れたアイテムを納品することで解放されてきたのは、火炎魔術などだ。

 装備品などは納品しようと思ったことがないし、多分ショップで普通に買えるアイテムを納品してもEPがチョロっともらえるくらいだろう。


 ここにきて、方位磁石はどんなスキルを俺にもたらすのか。


 ──────

 磁場理解:800EP


 磁場に対する知識を得る。また磁場を感覚的に感じることができるようになる。

 コストCP:15

 ──────

 ──────

 付与魔術【磁力】(初級):1200EP


 物体(主に金属)に磁力を付与することができる付与魔術の一種。

 魔術は発動者が任意に開発、登録し、セットした中から選択する。

 魔法のセット数、及び性能は魔のステータスの影響で変動する。

 魔法の性能に応じて消費CPは変動する。(初級魔術の場合最大30まで)


 磁場理解スキルや雷光魔術スキルなどを習得している場合、プラス補正。

 ──────


 新しい魔術生えてきた。

 まじか。


「セットで2000EPもするんだけど」


『付与魔術は基本魔術の一つ上の位階に位置する魔術になります。習得には適性および、基本魔術の習熟が必要です。上杉様はそれらを満たしているため習得可能になりました』


「なるほど」


 俺はもう一度、付与魔術を確認する。

 備考っぽい欄に、ちらっと『雷光魔術』とあるだけで、ちょっと嬉しくなる。

 たぶん暗黒魔術と同じで、基本魔術とは別系統のスキルなのだろう。

 まぁ、それはおいておいて。


「磁力。磁力ね。なるほど、なるほど」


 俺たちが突破しないといけないのはアイアンゴーレム、つまり鉄でできたゴーレムだ。

 鉄の性質は知っている。



 鉄は磁石に引き寄せられるのだ。

 その磁石を任意に作れる魔術が、このタイミングで手に入った。



 これは、ハズレだと思っていたアイテムが、とんだ切り札に化けたかもしれない。

 魔の女神様には頭が上がらないな。



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