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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第169話 You know you're right



 とりあえずそれから何回か試して『ゴーレムバレル』の使用感はだいたい分かった。


 まず、普通に呼び出した状態から、自然に消滅するまでの戦闘回数はだいたい12回。

 呼び出すのにCP120必要なので、一回の戦闘換算がCP10の計算になる。

 だが、不思議なもので一戦闘毎にケアしてあげると、毎戦闘でCP5も補充してあげればずっと動き続けるのだ。


 サモンのシステムについてはよく分からない。

 が、勝手な想像をすると。


 コアを形成するのに必要なCPが60、そして稼働用に確保しているCPも60とかそんな感じなのだろうか。

 この辺の仕様については、端末くんに聞いても教えてもらえなかったので正解はわからない。

 いずれにせよ、消えてから呼び出すよりは、継続的に少額を払ってあげる方が長持ちするという認識で問題なさそうだ。


 サブスクかな?





 ゴーレムバレルのおかげでEP効率も上昇し、スイスイとオートマッピングに表示してあるゴーレムを破壊していく。

 そうこうしているうちに、四階層のマップ完成率はおよそ85%といったところまで来ていた。


 四階層もこれまでの階層と同じように、マップとしては正方形に近い直方系のようで、だいたいの広さは分かっている。

 だから、残りがどれくらいかも把握できるわけだ。


 ただし、安全に埋められるのはここまでだ。


「残るは、無傷では難しそうだ」


 その残り15%の先を塞いでいるのは、曲がり角を曲がってすぐのところにいるゴーレムなのだ。


 基本的に、このダンジョンのモンスターは倒されたら初めてリポップする形式を取っているらしい。

 つまり、日を改めればゴーレムが退いてくれるとか、そういう希望がない。


 だから、その先に進むにはガチンコでゴーレムを処理し、無理やり道を開ける必要がある。

 その面倒な配置のゴーレムが、5体。

 より正確には7体なのだが、うち2体はリポップの結果道を塞いでしまったゴーレムで、その先はすでに探索済みである。


『その15%を無理して探索する必要あるんですか?』


「うーむ」


 クミンの言葉に唸る。

 その質問に対する答えは、微妙なところだ。


「その先に何もない可能性もなくはない。ただし、その先のどこかに宝箱がある可能性は高いと踏んでいる」


『その心は?』


「三階層には宝箱が二つあったのに、四階層ではまだ一つしか見つけてないから」


 もちろん、根拠というほどの自信はない。

 ただ、あのクソダンジョンと違って、こっちのダンジョンの製作者には少しばかり通じるところを感じている。


 困難と、それに伴う報酬。

 その2点を、できるだけ外さないようにしている気がするのだ。


 二階層はともかく、三階層からは難易度が跳ね上がったダンジョンだが、その分、EPの効率や宝箱の数も製作者はちゃんと増やしてきた。

 奥に進めば、奥に進んだだけの報酬がある。

 地味だが、人をダンジョンへと駆り立てるのにこれほど魅力的な要素はない。


 言い方を変えれば、進めば進むほど気持ちよくなれるダンジョン、を設計の思想に含めているように思えるのだ。


 そんな製作者が、三階層では二つに増えた宝箱を、四階層で再び一つに戻すようなことをするだろうか。

 俺はしないと思う。なんならもう一つ増やして三つ配置していても良いくらいだ。


「だから、未探索エリアに宝箱は配置されていると思うんだよ」


『まぁ言いたいことはわかりました』


「ただ、問題は」


『ゴーレムとガチでやり合う準備が足りてないことですよね』


 俺の論理にクミンは一定の理解を示したが、同時に問題点にも行き当たる。

 いまだに、ゴーレムとやりあう決定的な武器を入手していないことだ。


「防御の面で言えば、サモンゴーレムで大分余裕ができたと思うんだがな」


 そう。

 テイムモンスターではないが、そこそこ連れ歩けることが判明したゴーレムは、メイン盾として活用できる。

 素材は今の所、岩が最硬だろうからそれ一択になってしまう。

 それでも土や泥といったゴーレムと殴り合っても負けることはあるまい。


 だが、同時にゴーレムは攻撃よりも防御に定評のあるモンスターだ。

 相手の攻撃を防げるようになったからといって、相手の防御が満足に抜けなければ、長期戦は避けられない。

 ゴーレム同士の殴り合いは、泥仕合に発展しかねない。

 相手を一撃で倒すような火力が、まだ手札に揃ってないのである。


「まぁ、その辺も込みで、一旦スキルの見直しを行ってみるか?」


『そうですね。運良く、上杉さんはほぼ目標に到達できそうですし』


 俺とクミンはお互いの考えをまとめ直し、そういう結論に至った。

 現状、よっぽど遠いところにいるゴーレムを除いて、可能な限り最短ルートで索敵できたゴーレムを狩り尽くした。


 時刻は夕方。17時過ぎ。

 稼いだEPは丁度19800。

 それにプラスしてドロップが2個だ。


 およそ十時間で31800EPは、ドロップ運があったとはいえ、あのクソダンジョンに迫るペースであった。

(まぁ、あのクソダンジョンにドロップがあったら話は変わるのだが)





『ゴーレムの動作未確認コアの納品を確認しました。一部スキルが解放されます。一部アイテムが解放されます。納品数が3個に達したため、新たにゴーレム一体のサモンが可能になりました。EPを12000還元します』


 大量のEPを手に入れて、EPのインフレを身近に感じる今日この頃だ。

 いや、本当に大丈夫かな。スケルトンから比べて効率が跳ね上がりすぎではないだろうか?


「EPのバランスだけ調整間違ってないかなこれ」


 そんな俺の思いが、うっかり独り言で漏れていた。

 思わず口を塞いだが、目の前の端末くんはちょっと呆れたように答えた。


『上杉様の疑問に一つお答えいたしますと』


 そして淡々と、本来の想定を話す。



『この四階層では、レベル10から20程度の6人パーティでの攻略が想定されています。そして、ゴーレムは一体一体が強力なモンスターであるため、一体を倒すのにも最低30分程度はかかる見込みです。一戦ごとの休憩の時間も加味すればこれだけではありません。この時点で、スケルトンより一体ごとの所持EPは多くとも、時間対コストの観点ではそれほどのインフレにはなりません』


「6人パーティか」


『それを、二人で、ほとんどノータイムノーリスクで討伐し続けるのは、こちらの想定にはありません。正直に申し上げますと、今の上杉様の場合、五階層よりも四階層の方が、EP確保の観点から言えば優れている可能性が考えられます』


「あー、なるほどねぇ」


『さらに申し上げますと、四階層の平均攻略期間はおよそ一ヶ月を想定しています。地上との往復時間は含めず、です。上杉様は何日めですか?』


「三日目、いや前にお邪魔したのも入れると四日目か」


『つまり想定の8~6倍ほどの動きをしているとご理解ください』



 そう言われてしまうと、この四階層のバランスが悪いのではなく、たまたま俺とクミンが特化した動きを発見してしまっただけと言われるのも分かる。


 俺たちはゴーレム一体倒すごとに山分けして300EP。

 本来は6人がかりなら、ゴーレム一体のEPを山分けすれば一人頭100EP。ドロップが入っても1000EP。

 彼らが一体に一時間かける横で、俺たちは移動込みで今なら三体は処理できる。


 この時点で、EPだけでも9倍の効率だ。

 そりゃ、俺たちだけインフレしててもおかしくない。



『あえて小言を言わせていただくと、正攻法で階層を攻略しながら、もう一度先ほどの言葉をおっしゃっていただきたいくらいです』


「……はは」



 これには、思わず俺も乾いた笑いしか返せない。

 そりゃ、裏技使っといて『このゲーム簡単じゃね?』って言われたら、制作側は文句の一つや二つは言いたくなるだろう。

 それについては、大いに反省する。



 だけど。



「でも、時間がないんだ。茉莉ちゃんを助けるために、一ヶ月もかけてらんないんだよ」


『…………その点に関しては、私からはなんとも』


「そうか」


 ただ、相手の想定がどうであろうと、俺には時間がない。

 もしかしたら、ダンジョン側の試算では、呪腐魔病の軽症者は。本来そのくらい時間をかけても大丈夫って感じなのかもしれない。

 あるいは、時間経過で呪腐魔病は進行しないという可能性だってある。



 だが、俺は楽観視できない。

 それだけ、ウイルスと直接相対したときの悪寒が背中に残っている。



 やつが俺に興味を示しているのは確かだ。

 そして、俺が一度やつに繋がってしまったのは、まさしく茉莉ちゃんを通してだった。


 やつが茉莉ちゃんに興味を示さないとはとても思えない。


 ダンジョン側が今、あの部屋を隔離していると言っても、そのダンジョンのシステムが突破されたからクソダンジョンがあったんだ。

 いつまで安全かなんて、分かるわけがない。



 俺に残されている時間は、多分、他の人よりもずっと短い。

 俺はそう考えている。



「だから、俺の足を止めないでくれ。茉莉ちゃんを救った後になら、ナーフでもなんでも好きにすればいい。今は、今だけは許してくれ」


 俺は、気づいたらそう懇願していた。

 俺たちのやり方が、システムの隙をつくようなものだとは分かっている。

 それでも、一度そちらのミスを救ったのも俺じゃないか。


 だから、今だけは許してほしい。

 そう強く思う。


 端末くんは、また少しの沈黙を挟む。

 問い合わせというよりは、誰かの言葉をただ受信しているような、そんな間があった。



『…………私の口からはなんとも、ただ』


「ただ?」



 ようやく話し始めた端末くんが、静かに、誰かの言葉を告げた。



『You know you're right』


「…………」


『あなたは、あなたの道を行ってください。これはあなたの冒険です。ミスター』


「了解」



 俺は、ダンジョンからの返事だと受け取った。


 少なくとも今、彼らが俺を邪魔することはない。

 ただし、彼らが俺を必要以上に助けることもないだろう。


 俺は俺の道を行く。

 俺の正しさも、俺の苦しみも、全て俺が選ぶことだ。


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上杉君の道→体0背水一撃必殺技
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