第167話 必要EPとサモン:ゴーレム
そして今回のアタックから四日目。
そろそろ、アイアンゴーレム突破の目処を立てたい今日この頃。
ゴーレムのドロップアイテム『動作未確認コア』の値段は、今までの例に漏れず驚きの6000EPであった。
スケルトンの階層に比べて、凄まじいEP効率の上昇っぷりである。
その代わりと言ってはなんだが、スケルトンは群れで現れるためドロップアイテムはそれほどの頻度で拝んでいたわけだが、ゴーレムはそうではない。
単体で現れるゆえのドロップ効率の悪さもあるわけで、そう考えると破格と言い過ぎるほどでもないのかもしれない。
この感じだと、一日中狩っていても一個落ちるかどうかのところで落ち着きそうだ。
「それでも、落ちた時のリターンは半端ないわけで、そこには夢がある」
昨日は、帰って来た段階で寝る時間間近だったので、アイテムの納品だけ済ませてステータスその他もろもろを弄ることはしなかった。
深夜テンションで無駄なことをしそうだという恐怖もあったからな。
というわけで迎えた朝。
寝ている間に回復した分のCPは、早速スケルトンスカウトに注ぎ込んで、せっせと本日の索敵へと向かってもらう。
それで、俺たちは朝食(ウサギ肉のスープ)を済ませたところで、昨夜確認しなかったもろもろの確認を行おうと思った次第だ。
「まず、そろそろパーティ資産としてのEPの確保を考えているんだがどうだろうか」
『良いと思いますよ。CP回復薬とかを上杉さんだけに負担させるのは違うと思いますし、もっと早く考えてもよかったところです』
クミンは一も二もなく賛同してくれた。さすがは出来たアリさんだ。
多少話あった結果、このパーティ資産については、必要経費に+αしたくらいの比率を分けることになった。
昨日稼いだEPは、18600で、ドロップアイテムを除けば12600だ。
ゴーレム一体から貰えるEPは600。
そしてゴーレム一体を討伐するのに必要なCPが90なので、必要な回復薬代をEPに換算すると180となる。
そこから、サモンやスキルリンクの諸経費がかかる点も考慮して、だいたい稼いだEPの1/3をパーティ資産に当てることにした。
『だいたい1/3』なのは、端数まで綺麗に分けるのが面倒だから。
微妙に余る分は全てパーティ資産にしてしまえと決めた。
一応、これは四階層での話であって、他の階層ではまた変化があると想定した上での話だ。
なので、昨日の稼ぎだと、4600EPを共有資産に当てて、今日は全てCP回復薬に変換してしまう。
余った14000を二人で分けて、一人7000。
俺はここで、ようやく端末くんへと、今後の計画を練る上で重要な情報を求めた。
「端末くん。俺がレベル15になるまでに必要なEPは?」
『召魔忍者レベル10から召魔忍者レベル15に上げるために必要なEPは、16500です』
「微妙に狙えそうな値を突いてくるな」
一日の稼ぎ換算で考えれば、まぁ届く感じが見える値である。
実際にはパーティ資産や山分けにする分などを考えると、五日目までに達成するか微妙なラインではあるのだが。
「ちなみに、クミンがレベル25になるまでに必要なEPは?」
『迷彩アリレベル13から迷彩アリレベル25に上げるために必要なEPは、26300です』
「思ったより、必要だな」
軽い気持ちでレベル25と設定してみたが、召魔忍者レベル15以上にEPを要求されるか。
それだけ、成長すればするほど必要EPは飛躍的に伸びていくということなのだろう。
そう考えると、暴利に思えた奥義の20000EPは、やっぱり相当条件を付けて割り引いていた値なのだと実感してしまう。
桁が一つ二つ違うと感じたのも、あながち間違いじゃないだろう。
あと、怖いもの見たさじゃないけど、もう一つ聞いてみたくなった。
「ついでに、召魔忍者を25まで上げるのに必要なEPは?」
『154500です』
「アッハイ」
六桁に乗るかぁ。
いやでもゲームの経験値だって積み重ねていくものだからな。
レベル1からレベル20にするには膨大な数値が必要でも、レベル19からレベル20にするには意外とそうでもないものだ。
だからまぁ、今はアリさんと比較して10倍になっていないことを喜んでおこう、うん。
当面の目標は定まった。
クミンはレベルアップを優先し、俺の方はレベリングが済んだらパッシブスキルの精査の方を進めよう。
余裕があったら、コスパが良いスキルをクミンに共有して(共通するスキルがあればだが)双方の強化を図る。
……そして、場合によっては、クミンの2回目の種族進化の必要分をさっとだして汚名返上名誉挽回を画策しておこう。うん。
五日目にアイアンゴーレム討伐を視野に入れていたが、場合によってはもう少し強化に時間をかけた方がいいかもしれないな。
五階層のEP効率は分からないが、安全な狩りができる四階層の方がトータルでは効率が良い可能性もなきにしもあらずだし。
とりあえず、今日の狩りで昨日からさらにどれだけ効率が上がるかを確認してからだ。
ひとまず、俺とクミンは今持っているEPで可能な分だけレベルアップをした。
これにより俺は召魔忍者レベル12。クミンは迷彩アリレベル19にまで上がった。
細かいステータスは、アイアンゴーレムに挑戦する際に改めて整えようと思う。
「とりあえずこんなところか、スケルトンスカウトの進捗は……まだまだだな」
昨日に引き続き酷使されているスケルトンスカウトだが、まだ頑張って走っている段階だ。
彼が集めた今日のゴーレム情報がある程度出揃うまで、もう少し時間があるだろう。
未探索エリアの効率的な調査も考えると、もう少しね。
「じゃあ、いよいよお待ちかねの検証といくか」
使えるスキルのリストアップの予定もあるが、その前に喫緊で確認したいことがあった。
ずばり、昨日ドロップしたコアからサモンできるようになった、ゴーレムの検証である。
俺は頭の中でサモン可能モンスターの一覧を開く。
──────
ゴブリン:10CP
ホーンラビット:10CP
ゾンビ:15CP
スケルトン:20CP
スケルトンスカウト:20CP
スケルトンアーチャー:20CP
スケルトンマジシャン:20CP
ゴーレム:120CP
?????????:300CP
──────
これが俺が昨日納品したゴーレムの必要経費だ。
120CPは、俺たちが普段ゴーレムを狩るのに使っている連携魔術よりはちょっとお高いが、逆に言えばゴーレムをサモンして安定的に狩れるのなら、十分に選択肢になりうることを指している。
だが、気になることもある。
基本的にこの階層に出てくるモンスターを一緒くたでゴーレムと表現しているが、実際にはサンドゴーレムとかマッドゴーレムとか、アイアンゴーレムとか名前がそれぞれ異なっている。
例えば有名なRPGでゴーレムとだけ称されていたらそれは石製のゴーレムかもしれないが、このダンジョンではストーンゴーレムになるだろう。
つまり、俺の予想では、このゴーレムは、何者でもない状態でサモンされるのではないだろうか。
「検証してみたいんだけど、CP無駄遣いしても良い?」
『必要だったら何も言いませんよ』
クミン(レベルアップの余波でちょっとご機嫌)の許可ももらったところで、俺はCP回復薬を飲んでなんとか120CP確保し、試しにサモンを試みる。
「サモン:ゴーレム」
途端、ごっそりとCPが抜かれた感覚を経て、俺の目の前に黒いボールが現れる。
それはふよふよと浮かんで周囲の気配を伺うようにしたあと、じっと俺の命令を待機するように動かなくなった。
「やっぱりコアの状態だな」
『こう間近でみるのは不思議な感覚ですね』
今まではるか遠方から狙撃していたコアを、近くで見るのは初めての経験であった。
まぁ、このコアは俺の影を固めたような真っ黒っぷりなので、厳密には全然似てないのだが。
「それで、やっぱりコアだけだと、ただのコアにすぎないか」
しばらくそのままで待ってみても、コアが周囲の素材──例えばダンジョンの床だの壁だのを使って体を作る気配がない。
俺の感覚的にも、外装を用意してくれとコアが要求している気になる。
「あと、これあれだな。サモンする個体に数制限がある」
なんとなくだが、そんな気配を感じていた。
これまで俺のサモンモンスターだと、ゴブリンからスケルトンまでは何体呼び出そうと上限に達するような感覚はなかった。
だが、ゴーレムは明確に、現時点では一体までしか出せない感じがある。
ちょうど、■■と同じような感じだから、なんとなく分かる。
「端末くん」
『攻略情報を解禁します。一定レベル以上のモンスターは、納品されたドロップアイテムの個数によって、サモン可能な個体数の上限が変化します。さらに一定レベルを超えると、ドロップアイテム複数の納品を必要とした上で、一体しかサモンできないモンスターも存在します』
「思ったより帰ってきた情報が多かった。ありがとう」
だが、必要な情報は知れた。
どうやら、俺の手持ちで言えばゴブリンからスケルトンまでは無制限サモン可能なモンスターで、それ以上は条件付きらしい。
ゴーレムを複数呼び出したかったら、ドロップアイテムも複数入手しろということだろう。
「あー、これは場合によってはゴーレム狩りをライフワークに設定する未来もあるかもな」
俺の勘だと、コア一個につきサモン可能なゴーレムが一体増える感じ。
言うまでもなくゴーレムは現時点ではかなり強力なモンスターなので、できる限りサモン可能な個体数は確保したいものだ。
「まぁ、良いか。コアが呼び出されるのはわかったし、一番近い地形エリアに行って外装を纏えるかも確認しよう」
『ですね』
ゴーレムの検証はまだ始まったばかりだ。アイアンゴーレム突破の鍵になりそうなので、気になるところはちゃんとチェックする。
そう思って、俺とクミンは、歩き出す。
ゴーレムのコアは、そんな俺たちを見送るようにずっとふよふよ浮かんでいた。
「やっぱり自律行動できないのかよ!」
『とりあえず、持って運びましょうか……』
一つわかったこと。
ゴーレムのコアはやっぱりその場から動くことはできないらしい。




