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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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160/163

第160話 ゴーレムハント




「こんなところか」


 塵となって消えて行くスケルトンの残骸を静かに見送って、俺はつぶやいた。

 夕方にダンジョンに入ったのを一日目とすると、今日は二日目。

 昨日はEP不足もあって寝る前の狩りを満足に行えなかったが、その分今日は存分に狩りに勤しめた。


 かつては割と恐怖の対象だったスケルトンの群れも、狩り方が完成している今となっては、せいぜい油断したらぶっ殺される程度の脅威でしかない。


 いや、これ結構大事なことではあるんだが、やっぱり俺の精神は多少あのクソダンジョンで鍛えられたところはある。

 油断しなくてもぶっ殺される、むしろ油断など許さず自分の能力を限界ギリギリまで絞り出してもぶっ殺されるレベルの戦いを経た今、油断したらぶっ殺される程度はまぁ、普通。


 慢心するつもりはないが、相手としてはやや緊張感に欠けるといったところだった。

 この恐怖への鈍感さが、やっぱりダンジョンに潜っているせいなのかどうかは、判断に困るところだ。


『頭蓋骨ドロップしましたよ』


「よし、これで目標は達成か」


 狩りをする上で重要なことの一つは、達成するべき目標を正確に定めることだと思う。


 必要十分な成果があればそれ以上求めるのは、時間の無駄だ。

 これが食料調達の狩りで、まだ余裕があるとかなら話は変わるだろうが、俺に必要なのはこの先に進むための必要最低限のEPだ。


 もし、俺の思惑がカッチリハマるなら、狩りの効率はスケルトンよりもゴーレムの方が圧倒的に良い。

 命の危険が少ないからとか、狩るのが楽だからとか、そういう理由で三階層に立ち止まっている暇はないのだ。


「じゃ、そのまま四階層に進むか」


『了解です』


 必要十分なEPが集まったところで、俺とクミンはその足で四階層へと向かった。

 幸運なんだか、それとも当然なんだか、三階層の階段前広場に忍者型スケルトンの姿はなかった。試練はやはり一度きりということだろうか。

 まぁ、鍾馗が何度もドロップしたらEP稼ぎはそれ一択になるしな。





『本当にこれだけでよろしいのですか?』


「ああ」


 四階層にたどり着いた俺は、端末くんからの訝しみの声にそう応える。

 三階層で稼いだEPは合計で2000程度。(CP回復薬分を除く)

 大金は大金だが、あのクソダンジョンのせいでやや感覚が麻痺している俺にとっては、大層な額とは思えない程度である。


 ただ、クミンと分け合う前提だと、実はちょっと足りなかったりするのだが、その辺はクミンに許可をもらった。


 曰く『上杉さんに先行投資することで、その後のリターンが望めるのなら、今は上杉さん優先で全く構いませんよ。そもそもテイムモンスターですし』とのこと。


 テイムモンスターには決定権がない、という話なのだろうが、俺は俺でEPは山分けという点は崩したくなかったところなので、ここで融通してもらった分は借金としてちゃんと覚えておく。


 ということで、もらったEP2000の使い道は、主にこの二つ。


 一つは、先延ばしになっていた鍾馗の修復。


 現時点で、レベル50相当の戦いを刻み込まれた鍾馗は、すでにその位階の人間が装備するだろうレベルの武器に成長している。

 そんな鍾馗を修復するのは、この先を考えた上で最優先事項である。

 下手な魔術より、鍾馗の通常攻撃の方が強いレベルなのだ。


 そしてもう一つが、対ゴーレム用のスキルの獲得。


 さて、出会ったのはつい先日のことだったが、ここでゴーレムの基本的な挙動をおさらいしておこう。


 このダンジョンのゴーレムは、核が中心となり、その核に周辺の素材が寄り集まることで体を形成するタイプのモンスターだ。

 その行動原理は、完全に待ち型であり、ゴーレムの索敵範囲に入らない限りは攻撃されることはない。


 ただし、索敵範囲に一歩でも足を踏み入れれば警戒態勢に入られ、そこから近づこうものなら、今の俺たちの攻撃力ではロクにダメージを与えられない堅固なボディを身に纏う。

 接近戦では分が悪く、俺たちのメイン火力である『マイン』に誘い込むことが困難という、厄介な性質をもったモンスターだった。


 そして、それに対処するために考えられる対策は、簡単。


 相手が警戒態勢に入る外側から一方的に攻撃するか、相手の内側に入って核を直接攻撃する手段を考えるか。


 前者は、俺とクミンの現在の装備は遠距離攻撃に全く向いていないという点で難しいと考えられ、後者は、俺たちがそういうわかりやすい火力を持っていないため難しいと考えられた。


 そう、現状では打つ手なしであり、そもそも正攻法がどういう戦い方なのかも定かではない相手であった。



 だが、あのクソダンジョンを超えた今の俺には、秘策があった。



 そして、クミンに無理を言ってEPを前借りし、手に入れたのがこちらのスキルである。


 ──────

 衝風魔術(初級):400EP


 初級の衝風魔術が発動できるようになる。

 魔術は発動者が任意に開発、登録し、セットした中から選択する。

 魔術のセット数、及び性能は魔のステータスの影響で変動する。

 魔術の性能に応じて消費CPは変動する。(初級魔術の場合最大30まで)

 ──────

 ──────

 狙撃:600EP


 離れた位置に存在する相手に対する射撃にプラス補正。

 観測、遠視、風読み、隠密などのスキルによりさらに精度が高まる。

 コストCP:10

 ──────


『狙撃で風を飛ばしてもしょうがないと思いますけど』


 スキルを取った俺に対するクミンの言葉は、そういう呆れを含んでいた。

 まぁ、分からなくもない。

 もともと、狙撃スキルは遠距離攻撃を主に扱うジョブが習得するべきスキルだ。

 俺が取れるのは、あのレギオン戦において土石魔術でできた棒手裏剣で、ひたすら顔を狙っていた功績からのおこぼれだろう。


 そして、現在の俺の魔のステータスでは、その時にメイン火力にしていた火炎と土石の複合魔術はまず扱えない。制御できないと感覚でわかる。

 さりとて、土石魔術で作っただけの棒手裏剣だけでは、ゴーレムくらいの強さの相手には、射程も火力も全く足りていない自覚がある。


 だが、そこに一つに可能性を与えるのが、衝風魔術だ。

 というか、あのクソダンジョンに入るまで、俺も衝風魔術というものを侮っていたところがある。



 話は変わるが、このダンジョンが現れたところで俺たち人類は急に魔術というものを手に入れることになった。

 そして魔術は、神聖魔術と暗黒魔術を枠外にすると、錬金術的な四大元素の分け方にそった種類のものが用意されている。


 火を司る火炎魔術。

 水を司る氷水魔術。

 風を司る衝風魔術。

 そして土を司どる土石魔術。


 この四つが、基本的な魔術となっている。

 これは、サンプルは少ないが南小のコミュニティ(と、伝聞による他の四つのコミュニティ)から聞いた情報によってまず間違いない。


 さて、そういう基本とされる四つの魔術だが、この中に一つ、圧倒的に不遇なものがある。

 それは衝風魔術だ。


 なぜかというと、風には、サバイバルに活用される利点や、モンスターやゾンビと戦う上でのアドバンテージが他に比べてあまりないからだ。


 火炎魔術と氷水魔術は、特に説明する必要はないだろう。

 火は言わずと知れた人類の最古の道具でもあるし、水は生存には欠かせないものだ。

 プリセットされた魔術にしても、火の槍や水──ではなく氷の槍はモンスターに対して明確なダメージ源となる。


 土石魔術も、地味ながらその利便性は俺が最もよくわかっている。

 氷にも真似できるところはあるかもしれないが、物理的な土や石として魔力と引き換えに現れる足場やバリケード、さらには地面を柔らかくするといった副次効果も合わせれば、直接戦闘はともかく、ゾンビ世界においてその利便性は疑うことはない。


 それに比べて衝風魔術はどうだろうか。

 この魔術のプリセットは、他と比べてパッとしない。

 なぜならこの世界の魔術には、風の刃で敵を切り裂くウインドカッター的なものがないからだ。

 

 衝風魔術でできることは、相手を吹っ飛ばすとか、風を起こして足止めするとか、そういう感じ。

 また、他の魔術は攻撃を遠方に飛ばす手段があるが、衝風魔術はそれにも一手欠ける。実体のないものを遠くに飛ばすのは難しい。

 殺傷力といった観点では他の魔術に一段劣り、おまけにサバイバルでも有用性は微妙、というのが大多数の認識だった。


 だが、俺はこの衝風魔術の可能性を信じずにはいられない。

 それは衝風魔術が『風』魔術ではなく『衝』風魔術であるという点だ。


 先のクソダンジョンで、俺は魔術というものが自分の想像力次第でどこまでも自由に扱えるものだと知った。

 もちろん、あの時の全能感からすれば、魔のステータスが激減した今の俺にできることは大分限られている。

 だが、だからこそ、今の俺は衝風魔術に強い可能性を感じている。


 その可能性を、今からお見せしたい。





『目標発見しました』


 第四階層。

 これまでの階層に比べても横幅が広く、道全体が集団戦を意識しているような階層。

 地形は土から始まって、砂、泥、木材、岩石と幅広く、それに応じて生成されるゴーレムも多岐に渡るだろうと予想されているフロア。


 そのフロアにおいて、俺たちはゴーレムのコアを発見していた。

 相変わらず、一定範囲に近づかなければ無害であり、無警戒のコアがぷかぷかとただ浮いているだけの存在である。

 彼我の距離はだいぶ空いている。五十メートルかそこらはあるだろう。

 アーチャーであれば、ギリギリ狙えるか狙えないかといったところ。


 俺は、その無警戒のコアの前に、土石魔術でそれを生み出した。


「命名『ロングバレル』だ」


 それは、言ってしまえばただの大砲の砲身──筒である。

 地面に固定する形で持ち運びはできない。一個作るのにもCPを30は使う。

 そして何より、強度を考えて照準を定められる機構を排除しており、完成した時点で決まった場所しか狙えないという、欠陥的な砲身だ。


 だが、頑丈。

 そして、狙いを定められないという欠点は、最初に補う。


 それは、測量スキルと狙撃スキルの合わせ技。

 測量でこちらとコアの位置関係を正確に計り、並列思考で土石魔術と狙撃スキルを同時に起動。

 砲身を作成する段階で狙撃で正確な狙いを定めることで、作る段階で既に照準は合わせてある。

 さらに余分にCPを10も使ってライフリングまで見よう見まねで刻んである。


 あとは、クミンの力を借りる。


『うちは、ひたすら硬くしてればいいんですよね?』


「その通り」


 このロングバレルはただの筒だ。

 砲弾は存在しておらず、それは発射するときに作成する必要がある。

 だが、筒であるがゆえにあらかじめ砲弾を詰めようにも、傾斜に従ってするすると落っこちてしまう。

 だから、魔術の並列起動ができない場合は砲弾を作る役の人がいる。


 そして、その砲弾をクミンに任せ、俺はもう一つの魔術を起動する。

 それが衝風魔術。


 もともと、砲というものは火薬を爆発させた衝撃で銃弾を加速させ相手を狙う武器だ。

 だが、火炎魔術でその爆発を担おうとするのは危険だ。はっきりいうとこっちにもダメージがくる恐れがある。


 そこで衝風魔術だ。

 そう。これは風魔術ではない。

 衝撃と風の魔術だ。


「なんかこう、風の球みたいだな」


 俺の拳に、衝風魔術の魔力が満ちていく。

 やっていることは単純、俺が殴った対象にCP50を注ぎ込んだ魔術の衝撃がただ伝わるというだけのもの。


 俺はこれで、今から、石の弾丸を。

 殴る。


 他の魔術単体でも、攻撃を遠方へと飛ばすことはできる。

 だが、遠方に飛ばそうと思った際に、そのコントロールや速度、威力を高めようとすると、それだけでCPをバカ喰いしてしまう。

 それこそ、CP50をかけても、ゴーレムのコアの狙撃には遠く及ばない程度に。


 だから、全部分けた。


 コントロールを土台作成の時点で定め、速度は他の魔術で代用する。

 肝心の砲弾も、これまた別にして強度を担保。


 複合魔術であれば一発でできたことを、三つの工程に分け、それぞれにCPを注ぐことで中級魔術の域を超えた火力を生み出す。


 今、総計でCP110を数える弾丸が、全く警戒もしていないゴーレムのコアに狙いを定め。


「吹っ飛べ」


 俺の拳が、ロングバレルの底にとどまっていた石の弾丸を撃ち出した。

 CPを50も込めた衝撃は、爆発音はなくともその衝撃を周囲に撒き散らす。

 ただし、その大部分はロングバレルに、ひいては石の弾丸へと飲み込まれた。


 そうして打ち出された石の弾丸は、急速に回転しながらゴーレムのコアを目指す。

 ゴーレムのコアも突如現れた魔術に、慌てて体を形成しようとするが、音速にも届きそうな弾丸の前にはあまりにも遅い。


 パキン、という音とともに、形成されつつあった岩石の身体ごとゴーレムのコアは砕け散り、それでも止まらぬ弾丸が遠くダンジョンの壁に突き刺さって轟音をあげた。


 後に残っているのは、ゴーレムの知覚外から狙撃を成し遂げた一人と一匹だけである。


「……たーまやー」


『絶対過剰火力でしたよね』




 その調整はこれから行うとして。

 俺たちは四階層のゴーレムを相手に、戦わずして勝つ手段を手に入れてしまったのだった。



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― 新着の感想 ―
このやり方が一番早いと思います() 一番有効なのは対ゾンビ戦だろうけどね
やっている事は「反撃されないよう、遠くから魔法を撃ち込む」なので何もおかしくないはずなのに、まるでズルをしているかのような印象ですわ???
反作用で拳がぶっ飛ばないのは有情だな
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