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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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140/164

第140話 勝機は一つしかない



 心情的にはまったく取りたくなかったスキルであるが、状況がそれを許さないので俺は『背水』も習得することにした。

 これで、残りは46EP。流石にもうどうすることもできない。

 念のため30EPのCP回復薬Ⅰと10EPの回復薬Ⅰでも買っておくか。


「これでEPは使い切ったか」


 実際はまだ精算を済ませたわけではないが、ほぼ余すことなく使い切ったことだと思う。

 しかしこうやって習得可能スキルを並べてみると、いずれ時間があるときにじっくりと確認したい欲求にかられる。

 問題は、その時間があるとき、というざっくりしたタイミングは、茉莉ちゃんを救えるまで訪れなさそうなことなのだが。


「これで、準備は……いや」


 準備は済んだか、と思いはするが、ダメ元で聞きたいことはあったのだった。

 それは俺の生死に直結するような話である。


「端末くん。一つ聞きたいことがある」


『答えられる範囲でしたら、お答えします』


「この三階層にも、俺を呪腐魔病に感染させようとするギミックは存在するのか?」


 思い起こすのは、一階層、二階層と共にあった、ゾンビや怪物とはまた違う厄介なギミックのこと。


 例えば一階層であれば、状態異常耐性を極限まで高めなければ数分も耐えられないような密度の状態異常ウイルス攻撃がフィールドからかけられていた。

 例えば二階層であれば、HPが0の状態であれば即座に感染するような、ウイルスの付着したガラス片が床という床に散らばった状態であった。


 そのどちらもが、対策なしで行ったら確実に詰むようなギミックであり、ダンジョンに挑むものをゾンビにしようとする強烈な意志を感じるものだった。


 これまでの傾向からして、この三階層にも同様のギミックがあっておかしくない。

 むしろ、その合わせ技が来る可能性だってある。


『……………………』


 端末くんは、俺の質問にしばし沈黙した。

 やはり、攻略情報扱いで教えてもらえないか、と考える。

 だが、答えは少し違った。


『この先の攻略情報については、お答えすることはできません。ですが』


 いつものきっぱりとした断りではなく、付け足すような言葉。

 ルール違反にならないギリギリのラインで俺を助けようとするような言葉を付け足した。


『奥義を発動し、HPが0になった状態でも、生きてダンジョンを脱出する方法はあります。それだけは、保証いたします』


 呪腐魔病に関しては何も言わないが、そこまでたどり着けたら生きて帰ることはできるだろう、と。

 もともと死ぬつもりはなかったし、ゾンビになるつもりもなかったわけだが、道があると教えてもらえただけで少し気楽になった。


「了解、あとは心の準備だけだな」


 ここからは、本当に未知の領域だ。


 単純なステータスではどうあがいても勝ち目のない化け物と、その取り巻き連中を相手に、俺一人で勝つ。

 どう考えても無謀だ。できるわけがない。

 でも、成し遂げなければ俺に道はない。

 なら、やるしかない。


「まぁ、勝機は一つしかないだろうが」


 狙うのは一つだけだ。

 会敵と同時に姿をくらまし、相手の準備が整うのを待たずして、最速で急所をとりに行く超短期決戦。


 はっきり言って、相手の方が多数である時点で、まともにやりあうのは難しい。長期戦になればなるほどこちらが不利。

 であれば、開幕で速攻闇に紛れて、何も気づかれずに暗殺するのが最善。

 次善としても、スケルトン数打ち作戦で混乱を招いてからの暗殺だろうか。


 とにかく、まともにやりあって勝てるわけがない。

 その感覚は、事務室での遭遇で骨身に染みている。

 奥義発動中はまだ分からないが、可能なら奥義なしでなるべく近づいた上で、確実に奥義を当て、歩数が残っているうちに離脱、というのが理想だ。


「……一応確認だけど【十歩必殺】って五歩で暗殺して五歩で逃げるとかもアリよね?」


『スキルの終了条件が『十歩』または『歩みを止める』なのであれば、可能であると判断します』


「よかった」


 一応、テキストを読んで可能だろうなとは思って居たが、端末くんからのお墨付きが出たので安堵する。

 ピーキーではあるが、スキルの継続に関してはそれなりに大目に見てくれそうだ。


 もっと細部を詰めたいところもあるが、気になりだすと時間がたりなくなるからな。

 そろそろ、覚悟を決めるころだ。


「とりあえず、買い物と回復を済ませよう。そして3分だけ休憩して、先に進もう」


 細々とした用事を済ませ、買った回復薬をその場で何本も飲み干し、俺の準備は終わった。

 少々行儀が悪いが、店の中にあったレジ台に座って、膝を抱え、少しだけ目を閉じる。

 3分。体力回復にも気力回復にも十分な時間とは言えないが、このダンジョンでようやく取った休息らしい休息だ。


 残ったのはHP回復薬8本とCP回復薬12本

 最終的なステータス関係は以下の通りだ。


 ──────

 護刀・鍾馗しょうき+3

 疫病を払う守護の力を宿した忍者刀。

 武器としての性能もあるが、その本質は装備者に降りかかる厄災をはねのける護りの力である。

 三段階成長している。


 ステータス補正:力+7、魔+3、体+5、速+15、運+2

 特殊1:成長する武具(装備者の意志の力に応じてその性能を増していく)

 特殊2:対魔(戦闘中に一度だけ、魔術によるあらゆる攻撃に高い耐性を得る)

 特殊3:修復(EPを注ぐことで損傷を修復することができる)

 特殊4:対呪(精神系、および病理系状態異常に耐性を得る)

 特殊5:継戦(戦闘中の体力の消費を軽減する)


 番外0:奥義(奥義【十歩必殺】を覚醒している)

 ──────


 ──────

 上杉 志摩

 召魔忍者

 レベル50(+40)

 所持EP:6


 HP 570/570(+400)

 CP 846/846(使用中221/1067)(+800)


 力:108(+80)

 魔:116(+80)

 体:81(+60)

 速:148(+100)

 運:26


【所持スキル】

 [パッシブスキル]

 悪臭 


【セットスキル】

 [パッシブスキル]

 《闇夜と死の徒》 神出鬼没 ストレージ(極小) 石工

 思考加速 並列思考 並列起動


 [アクティブスキル]

 強打 目星 測量 火炎魔術(中級) 土石魔術(中級)

 暗黒魔術(中級)

 簡易鑑定 アライメント鑑定 テイム サモン

 口寄せの術 武装召喚

 スキルリンク ステータスリンク 背水


【奥義】

 【十歩必殺】

 

【称号】

 『屍鬼を喰らいし者』

 『闇夜と死の徒』

 『混沌と孤独の同胞』

 『魔道の探求者:序』

 『暗澹たる死よ来たれ』


【テイムモンスター】

 『クミン』(迷彩アリ)(通信不良)


【登録武具】

 護刀・鍾馗+3

 ──────


 さらっと鍾馗が成長している。速だけを10増やすあたりに、暗殺に対する本気が垣間見える。

 あと、鍾馗装備時専用だけど、奥義はステータス画面にも乗るらしい。

 相変わらず、人に見せるのを躊躇うステータスである。特に称号欄。



 でも、ステータスを考えていると少しだけ未来への希望が湧いて来る。



 例えば、ここを無事に突破できたら衝風魔術を取得しようとか。

 あれだけスキルが増えているんだから《闇夜と死の徒》に複合できるスキルを探そうとか。

 やりたいことがいくらでも湧いて来る。


 茉莉ちゃんだって、呪腐魔病が直せたら、今度こそ一緒に冒険できるんだ。

 俺が先輩として、ステータスのアドバイスしてあげたり、一緒にビルド考えたり、きっと楽しいはずだ。

 ゾンビ溢れる世界は問題だが、いずれ勇者だのなんだのが解決してくれると信じてみたりして。


 だから、だから。



「生きて帰る」



 3分経って、俺は目を開けた。

 これ以上は、眠ってしまいそうだ。

 今寝たら、今度こそ起きられないまま世界が終わってしまう。

 起こしてくれるクミンは近くに居ないしな。



「そろそろ行くよ、端末くん」



 俺は立ち上がり、出口付近の端末くんへと声をかける。


『何かやり残したことはございませんか?』


「欲を言うなら、ここでセーブしていきたいってくらいかな」


『当端末にセーブ機能はございません』


「それは残念だ」


 まぁ、その機能が自由に使えたら、俺は真っ先にゾンビパニック前に戻っているだろうが。

 冗談の通じない端末くんに苦笑いしていたら、端末くんの方からも声がかかる。



『この先におきましても、そちらの携帯端末からサポートは致しますが、あえて言わせてください。ご武運を』


「おう」



 現代で生きていたらなかなか言われる機会ないだろうな。ご武運をって。

 まぁ、俺に加護をくれている神様は『武』っていうよりは『愉』って感じだけど。

 ここ抜けたら、陽系の方達も少しくらい見直してくれるのかね。



「じゃ、行こう」



 そして俺は、おそらくホームセンターの外──駐車場に続いているだろう自動ドアを潜った。





 自動ドアの向こうは、俺の想像通りホームセンターの駐車場だった。

 正確には『自動ドア』『なんかよく分からないスペース』『自動ドア』『園芸用品とかのコーナー』の向こうだが細かいことは良いだろう。

 とにかく、園芸用品とかのコーナーを抜けて、駐車場に足を踏み入れたところで、明らかに空気が変わった。


 空は夜空に見えるのに、どこか赤っぽい淀みが混じっていて、なんて言うんだろう──大禍時にも似た印象だ。


 駐車場の中心の方に目を向ければ、そこには数えるのも億劫になるほどの一本腕のなれはてたものたちの姿。

 そしてその真ん中には、当然のように、人の顔が集まった肉塊の化け物の姿が──。



「は?」



 ──ない。



 あの、肉塊の化け物、模造人類試練、悪性変異体レギオンの姿が──どこにもない。

 駐車場に出たと同時に展開するつもりだった『夜のカーテン』の発動を一時保留し、周囲の様子を伺う。

 だが、眼に映る範囲のどこにも、あのおぞましい姿が見当たらない。

 あんなでかい化け物、隠れられるスペースなどどこにもないのに。


「どういう……」


 俺の困惑に答えたわけではないのだろう。

 だがその瞬間、端末くんとは違う、ダンジョン本来のアナウンスが空々しく流れた。





『資格なきもの試練に挑むこと能わず。汝、その身を以って力を示し、試練に挑むに足る証を示すべし』





 思考時間にして、おそらく0.2秒ほど。

 俺はこの非常時だというのに、頭が真っ白になった。


 怒りで。




(ここまで来てギミックボスかよ!? クソダンジョンが!!)




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― 新着の感想 ―
上杉君レベル50になってようやくステータス3桁なのね… レベル50ならラスボスまでいけそうなのにこれではダメだわ感溢れる
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