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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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134/163

第134話 連携△



 シャッターを破って現れた二体の敵を尻目に、頭の中では小狡い計算が駆ける。


 例えば、あの二体をスルーして、この場所を抜けることはできないか、など。


 二体が現れたシャッターの隙間は、ギリギリ奴らが通れる程度の大きさだ。

 となれば当然、俺も通ろうと思えば通れるわけで、ここで意表を突いて抜けられれば、この戦闘を回避できるのではないか、という考えが浮かぶのは当然といえば当然だった。


 だが、ここがダンジョンであり、こいつらが予定されたモンスターであったとすれば、ダンジョンがそんな抜け道を許すわけがないことなど、少し考えたらわかることではあった。




『お客様にお知らせいたします。ただいま、当店入り口のシャッターの破損を確認しました。安全のため一時的に全通用口の閉鎖を行います。お客様にはご不便をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします』




 マニュアル通りのお手本のようなアナウンスが流れ、破損したシャッターの奥で、違うシャッターのようなものが降りたのが音でわかった。

 現実準拠で考えれば、問題がないとわかるまで閉じているわけだろうが、ダンジョンギミック的に考えればボスを倒せということだろう。

 まぁ、わかってたさ。


「Ururrr」


 俺の隣で、黒塗りの怪物が静かに闘志をみなぎらせているのがわかった。

 こちらは黒塗りの三本腕、相手もまた三本腕。

 相手の特徴としても、剣と杖を持っている以外は、こちらの怪物と変わりはない。その点だけを見れば、ただの同僚関係のように思える。

 だが、もし俺の推測通りであるならば。


 あの二体は、このホームセンターが壊滅するきっかけとなった、二人を素体にして誕生した存在に見える。


 又聞きになるが、この世界の変革のタイミングで悪意でもって動き、結果としてホームセンターのコミュニティを崩壊させた二人。

 その二人はそれぞれ、戦士と魔法使いだったはずだ。

 ちょうど、目の前の相手の武器が、そうであるように。


「Ruruuuu」


 であるならば、黒い怪物の声に感情が滲んでいたとしてもおかしくはない。

 これは、いわば唐突に訪れた復讐の機会のようなものなのだから。


「…………」


「…………」


 その二人は、まるであくびでもするかのようにじっと俺を見つめたまま大口を開けていた。

 一見すれば、隙だらけにしか思えないその態度。

 きっと目星を使っていれば、キラリとした弱点が映っただろう。


 だが、肌で感じる感覚が告げている。

 この二体は、道中さんざんやりあった一本腕より、大分強い。


『上杉様。現在のCP 283/926です。CPの残量に注意してください』


 端末くんからの警告が入る。

 ここで■■を召喚したことにより、俺のCPは一気に危険域へと突入した。

 だが、まだ中級魔術を最大で五発。他の搦め手を使う余裕もある。

 なにより、出し惜しみして勝てる相手とは思えない。


 俺は、ちらりと自身の隣に目をやる。

 俺が呼び出した、黒塗りになった三本腕の怪物。

 対して、向かい合うのは武装した三本腕の怪物が二体。


 単純計算で考えれば、武装の分こちらが不利。


 それゆえの余裕か、あるいは油断か。

 敵は俺たちの様子をじっと観察しているようにも、準備が終わるのを待っているようにも見えた。


「武器はいるか?」


「Ruu」


 はいでもいいえでもないが、肯定の意思を感じた。

 俺は少し考えて、黒い怪物の前に、土石魔術でとにかく硬い石の棒を生み出した。


 イメージは俺が散々お世話になったメタルラックの足に近いが、当然細部は全然違う。

 中までずっしりと詰まった石の棒は、見た目のイメージよりだいぶ重い。

 それでいて、CPを込めるだけ込めた耐久値の向上により、CPが抜けるまではそんじょそこらの金属をも凌ぐ耐久値を誇っている。

 つまり、折れず曲がらぬ石の棒は、こと武器同士のぶつかり合いでは、半端な剣に劣らぬ凶器となるのだ。


「URRRuuu」


 がしり、と黒い怪物が石棒を握りしめ、満足げな声を上げた。

 そして、それが合図だった。


「うるるうぅう」


「るるぅうるう」


 こちらの様子を伺っていた二体が、じりじりと、距離を詰めてくる。

 剣士が前、魔法使いが後ろという王道の陣形。

 俺たちが待っている広間の中央にまでたどり着いた剣士は、即座に距離を詰めて腕を振りかぶった。


「ううるるうううう!!!」


 剣を握った腕が、ブレるように動く。

 速度はやはり、一本腕よりも上だ。

 加えて、頭から生えた腕は、実際の腕よりもしなやかで自由だ。


 それはまるで、鞭がしなるような動き。

 あえて振り下ろすタイミングを外すような、鋭い剣の一撃は、遠く照らす松明の残像を残しながら、恐ろしいスピードで俺たちへと振るわれる。


 だが、それが俺たちを傷つけることはない。


 ガギン、という音が響き、黒い怪物が見事に石の棒で剣を跳ね上げていた。

 思わずたたらを踏む剣士型に向かい、黒い怪物はさらに石の棒を振り下ろす。

 先ほど見た敵の剣の速度と、■■の振るう棒の速度を比較すると。

 振り下ろしの速度は、こちらの方が速い。


「るううう!」


 だが、スピード以外の部分に違いがあった。

 全体的な能力は、俺の贔屓目でなければ黒い怪物の方が上に見える。


 しかし、こと剣を扱う技量に目を向ければ、それは逆転する。


「RUUUURURRRRRR!!」


「うるうるうううううう!!」


 黒い怪物は、闘争本能をそのまま映したかのような、荒い剣戟を幾度となく見舞う。

 それは小さな嵐のようで、今の俺であっても素の状態で受けるには難しい、暴力の発露に思えた。


 だが、剣士型はその一撃を技術でさばいていく。

 その動きは、確かに剣術を感じさせるものであり、同時に俺の疑惑は確信へとつながる。


 やはり、こいつらの武器は見掛け倒しではない。

 こいつらには、最低限、武器を扱うための素養が与えられている。


「るるぅうう!!」


 一種の膠着状態に陥った場を動かしたのは、もう一体の三本腕。

 杖を持った魔術師型のほうだった。 


 奴は、この状況を動かそうとするように、握っている杖を頭上に掲げて魔術を行使する。

 剣士型もその動きに気づき、露骨に防御の姿勢を固め、援護を待った。


 気配は、炎。

 発動前でなお、確かな熱を感じさせる空気の高ぶりが、遠く揺れている松明の火を揺らす。


 南小から聞いた話では、救済ジョブで魔法使いになった場合、プリセット的ないくつかの魔術の使い方を一緒に習得するらしい。

 自力で覚え開発していた俺にはなかったものだが、救済であるのならそれくらいあってもおかしくはない。

 ジョブについた時点で、戦える力を与えられるのは、おかしなことではない。


 そしてもし、奴らが魔術の研鑽を積んだわけでもないのなら、繰り出される魔術はそのプリセットから選ばれるはず。

 その火炎魔術のプリセットを、俺は知っている。



「だから、邪魔するぜ!」



 相手の魔術の発動を見て、俺は即座に手元に棒手裏剣を生み出し、相手の杖めがけて正確に打った。


「るうる!!?」


 魔術師型の三本腕が、集中を乱されて鈍い唸り声をあげた。

 即座に持ち直すも、タイミングを逸したのか、狙いを外したのか。

 完成した魔術が黒い怪物へと襲いかかることはない。


 轟々と燃え盛るような、直径一メートルはあろうかという火球。


 それは、代わりに俺めがけて凄まじい速度で飛んできた。

 ともすれば、その火球はかつて俺のHPを存分に削った、スケルトンアーチャーの弓矢を彷彿とさせるものだった。


「…………っ」


 込められたCP──あるいは魔力は、一本腕のステータスからは明らかに外れているだろう。並みの量ではない。

 少なくとも、レベルブースト前の俺であれば、余波だけで焼け死んでもおかしくない程度の威力を感じさせる。


 だが、俺はそれを見ても冷静だった。


 本来、魔術は繊細なコントロールによって行使されるものだ。

 繰り返し利用することの慣れによって、コントロールは磨かれ、CP効率は向上し、ちょっとやそっとでは失敗しなくなる。

 相手がただジョブを得ただけの素人なら、魔術の扱いは俺に一日の長がある。

 とっさの攻撃で集中を乱し、お返しとばかりに俺へと向けられた程度の火球であれば、そこに繊細なコントロールなどはない。

 ましてや、追尾などしようはずもない。


 何が言いたいかというと。



「おせえ!」



 弓矢程度の速度の魔術であれば、集中していれば避けることはできる。

 そういう体に、今の俺はなっている。

 俺は体を横向きにして、最小限の動きで敵の火球をやり過ごした。



(……見えた)



 そうして、剣士型と魔術師型の動作を確認できたところで。

 俺はこの場でどう戦うべきかの道筋を立てた。



 火球を避けた勢いで、俺は一歩を踏み出す。

 背後で、炎が弾けたような光が炸裂し、俺の影を目的地へと伸ばす。

 狙うは、魔術師型に肉薄するような距離。

 だが、そのためには後衛を守るように立つ剣士型をどうにかしないといけない。



「■■!」



 声をあげ、石の棒と金属剣で命がけのチャンバラをしている二体の怪物を見る。

 俺の視線を感じ取った■■は、俺の意思を尊重するように、大ぶりの横薙ぎを放つ。

 それによって強引に道は広げられ、剣士型の三本腕は、俺と魔術師型の接近を阻むことはできなくなる。



 もとより、俺と■■は連携ができるほどお互いを知っているわけではない。



 その二人が無理して連携を取ろうとするのは難しい話だ。

 俺が合わせる形でできなくはないだろうが、無理をする価値があるかも分からない。


 逆に相手の連携能力は謎だ。

 だが、少なくともあの激しい攻防の最中に、魔術で援護をしようと思える程度には、通じ合えるものがあるらしい。

 つまり、連携は相手の方が上だと想定したほうがいい。



 だから戦場を分ける。

 二対二ではなく、一対一を二つに。

 その分担はもう終えた。



 剣を持った三本腕は、石の棒を持った■■が担当し。

 杖を持った三本腕は、魔術を習得している俺が担当する。


 お互い、どちらが強いのかは分からない。

 最悪、■■を始末した剣士型が、俺を背中から刺す可能性もある。

 だが、現状ではこれが丸い。

 互いの相性を考えれば、こうするしかない。



 俺たちは、それぞれがそれぞれ、担当する怪物の前に立った。



「るるるうううる」



 魔術師型の三本腕は、近づいてきた俺を獲物と捉えているような、楽しげな声を上げる。

 レベルブーストで俺のステータスは上がっている。

 ステータス競争では、おそらく俺に軍配があがるはず。


 だが、純粋な個体としての、肉体の性能差がある。

 奴らのHPは低くとも、それが死にやすさにつながるわけじゃない。

 その事実を敵も知っているからこそ、一人のこのこと出てきた俺を、奴は獲物だと認識する。


 相手の武器は杖。

 だが、三本腕の脅威は、決して武器などではない。

 その無手の腕そのものが、なまくらの刀よりよほど強力な武器なのだ。

 相手は、魔術も使える三刀流の剣士のつもりで相手した方がいい。



「……三刀流……いや違うな」



 そうまで考えて、俺はふと思った。

 今のこいつは、ただ、魔術の威力を高めただけの素人。

 自身で魔術を研鑽したわけでもなければ、ろくにモンスターと戦ってきたわけでもない。


 魔術師ではなく、魔術を使えるだけの怪物。

 そんな奴の魔術を、一本の刀に例えるのは失礼だ。


 だから、三刀流から刀を取って。




「こいよ三流魔術師。魔術の先輩が相手してやるよ」





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