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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第132話 滞在費



 道中は、それまでの店内がなんだったのかと言いたいほどの混み具合だった。

 ざっと見ただけでも通路には何体ものゾンビが配置されていて、これらが全て襲いかかってきたら処理にどれだけの手間がかかるだろう。

 まさに満員、ゾンビパニックが発生する前だって、この店がこんなに混み合っているのは見たことがない。


「うぅううおぉ」


「あああぅううぉおお」


 だが、今の俺には、多少注意が必要な障害物程度の話でしかない。

 店内にはほのかに明るげなBGMが流れているが、それとは対照的に店内は真っ暗だ。

 買い物客に扮しているゾンビですら、自分たちが何を見ているのかが分かっていない。

 これほどの闇の中にあって、暗視も持っていないゾンビは、もはや俺の影すら見ることはできないだろう。影ないしな。


「…………」


 ゾンビ達の隙間を縫うように、俺は小走りくらいの速度で進んでいく。

 相手がこちらに気づかぬ以上、こちらから何かをする必要もない。

 言葉を選ばずに言えば、殺す理由がない。


 一階層の最後では、防火扉の前に雪崩れ込んできたゾンビたちの物量作戦があったが、レベルブーストされた今の俺であればあの程度は何十分でも凌げるだろう。

 そのくらい、今の俺と前の俺にはステータスに差があった。



「うるるぅう!」



 だが、時たまゾンビでない奴の姿が混じる。

 この一本腕とて、この暗闇の中で俺が見つけられないのは同じだが、ゾンビ達と違う部分もある。

 それは、無駄に図体がでかくて通り抜けが難しいところだ。


 気を付ければいけないことはないだろうが、それは同時に、気を付けなければいけないという意味でもある。

 なにより、ゾンビと違ってこいつらの群れが雪崩れ込んできたら、流石に無理だ。


 だから、こいつらは先に始末しておく。

 悪く思うなよ。


「…………」


「るるぅぅうう!?」


 俺の気配をつかめず無防備だった一本腕の足をまず割いた。

 この時点で、こいつらは俺の気配を探り当てることができるようになるが、今は目隠しではないしっかりとした闇の中だ。

 称号のバフ効果も相待って、奴らの攻撃はさらに一段階遅く見える。


 回避ではなく、攻撃にカウンターを合わせることすら可能なほどだ。

 伸びてくる腕に合わせて、その付け根にそっと鍾馗の刃を重ねた。

 


「うるぅう……」



 満足な断末魔を上げることすらできず、一本腕は腕首を切り離されて塵になった。

 俺はふぅ、と息を吐いて緊張状態を解くと、また緩やかに走り出した。



 そうやって、ゾンビを回避し、一本腕を処理しながら頭の中で考えをまとめておく。

 ほとんど確信してはいたのだが、先ほどの手応えからやはり、という結論を得た。


 というのも、現在の俺のステータスは、おそらく一本腕達よりもはっきりと上だということだ。


 考えていたことではあるのだ。


 そもそも、レベル10の俺だったら、奴らの攻撃を一発貰ったらHPの如何にかかわらず即死していただろう。

 だが、先ほどの肉回廊の中で、俺は不意をつかれるほどのクリティカルな一撃を貰っても生存した。


 反対に、俺の攻撃はレベル10の頃でも奴らのHPを抜いてダメージを与えられていたし、レベル50になってからは、腕や頭(?)を切り落とすことすら容易になった。


 このことから推測するに。

 あいつらは、見た目に反してステータス上の防御力はそれほどでもないのだ。

 俺の勝手な推測でよければ、あいつらの能力はこんな感じではないだろうか。


 ──────

 力:100〜200くらい

 魔:不明

 体:20あるかないか

 速:30くらい

 運:不明

 ──────


 それに対してレベルブーストされた俺のステータスはこうだった。


 ──────

 力:108(+80)

 魔:116(+80)

 体:81(+60)

 速:138(+100)

 運:26

 ──────


 こう見ると俺のステータスはほとんどあいつらを上回っているのだ。

 もちろんこれはステータス上の話で、実際にあいつらには元から備わっている強力な肉体がある。

 スピードもパワーも、ベースが人間の俺とは違う。

 こちらの攻撃が簡単にやつらのHPを抜いたとしても、そこから致命傷を与えられるかはまた別の話ということだ。


 だが、この推測に立って見れば、二つほど見えてくることがある。


 一つは、ステータス的に格下の相手なのだから、丁寧に戦えばまず負けることはないだろうという安心。

 もちろん、相手の攻撃力はステータスの見た目以上に脅威なのだが、それでもHP満タンの俺を即死させられないことは分かっている。


 つまり、俺は一撃は貰っても大丈夫なのだ。


 もちろんダメージを貰うのは現状では死活問題ではあるが、それでも一撃で死ぬか死なないかは俺の緊張感に関わる。

 俺は奴らとの戦闘を過度に恐れる必要がない。

 これは、俺の戦闘中の動きを変えた。

 紙一重の回避が可能になったのは、この余裕があったからだ。


 そしてもう一つ見えてくること。

 それは単純だ。


 レベル50の冒険者30人規模で挑むには、少しこいつらのステータスが控えめ過ぎるということ。


 俺はレベルの最大値は知らないし、こいつらのステータスの偏りから、レベル50であっても不意の一撃で壊滅状態に陥る可能性は当然ある。

 だが、例えば防御力が紙寄りの俺じゃなくて、ちゃんとしたタンクとして育った人間であれば、やつらの攻撃をしっかり受け止めることはできるのではないか。


 適正レベルで潜るというのがどういう状況なのかも情報はないが、搦め手の呪腐魔病対策をしっかり行えていれば、5人パーティであっても一本腕に苦戦することはなさそうに思える。


 俺が自分に最大限有利な環境を作っているからこそ、戦えているという事実はあるし、称号効果やユニーク武器で大分下駄を履かせているのはある。

 だが、その状況でも俺が潜れているという一点で、疑惑は募るのだ。


 もちろん、ウイルスの貫通や侵食というどうにもならない問題はあるが、単純なステータスで考えれば、レベル50が30人必要なレベルには、まだ足りないのだ。


 つまり何が言いたいかというと。



(この先にもっと悪辣な仕掛けがあるか、悪性変異体レギオンがぶっちぎりでヤバいか。この二択だ)



 前者ならまだマシ。その仕掛けを超えられるかどうかという話なだけ。

 後者はぶっちぎりでヤバい。説明する必要もないだろう。


 俺はこのダンジョンを侮ることだけはしたくない。

 一階層で絶望的な目にあったからこそ、二階層が怖いのだ。


 今はまだ、問題がない。

 だが、あのセルフレジを抜けようとしたとき。

 そこに何が待っているのか。それがただ怖い。






 そして、道中は特になんの問題も起こらず、俺はセルフレジの用意されていた最奥へと戻ってこられた。



『商品を置いて、バーコードを読み取ってください』



 かなり身構えつつセルフレジを起動してみたが、ダンジョンに変化は起きず、ただただ、そういうアナウンスが帰ってくるだけだった。


「商品を置いてって言ってもな」


 俺はそっと、これまで通ってきた道を眺める。

 確かにそこは道という名前の商品棚だ。

 一階層でガソリンを拝借したように、商品棚から適当な商品を用意することはできなくはないだろう。


 だが、そもそもどうしてセルフレジを使う必要があるのだろうか。


 そう思っていたところで、暗闇の中で場違いなBGMを垂れ流していた店内放送がアナウンスに切り替わる。



『ご来店中のお客様にお知らせします。当店では、滞在時間に応じたお買い物をお願いしております。100EP以上で1時間、1000EP以上で二時間、3000EP以上で三時間までの滞在が許可されます。それ以上につきましては、店舗スタッフの方までお問い合わせください』



 どんなホームセンターだよ、と思わずツッコミかけた。

 だが、なんとなく、システムが分かった。


「この階層に三時間以上留まると、ボスラッシュが始まるという感じかな」


 おそらく、この階層がタイムアタックの要素が強かったのはこれが原因だろう。

 端末くんの口ぶりからしても、EPを消費しないと抜け出せないというのは正しい。

 どんなに急いでも、最低で100EPを消費しなければ、この出口は開かない仕掛けなのだ。


 で、俺の所持EPは現在3000だから、三時間までなら攻略に時間がかかってもいい。

 ただし、それ以上になると何の保証もない。

 加えて言えば、端末くんがウイルス側をシステムから締め出していられる時間も三時間だった。


 この階層で三時間以上経過していたら、ここが俺の墓場となっていたことだろう。


 レベル50の30人がなんで必要なんだよと思ったけど、やっぱりここでも大事かもしれない。

 人海戦術で1時間なら3000EP、二時間以上かかったら90000EPは、ギミックを知っていても相当悪辣だ。

 そうなったらボスラッシュを避けられず、三時間以上足止めされるのは間違いない階層だ。

 そもそも、端末が乗っ取られたままだと、EPすら貰えないかもしれないし。


 だが、今の俺はこの階層の攻略を始めてから二時間半未満。

 残していたEPもぴったり3000なので悠々と脱出できるというわけだ。


「で、問題はこのセルフレジだけど、商品は?」


『商品でしたら、やはり店内で選んできていただくしかないかと』


「やっぱりその辺は買い物なのか」


 俺は少しため息を吐いてから、試しにとこの部屋の近くの棚にあったマグカップを一つ、手に取って戻ってくる。

 価格は『298円』だが、EPだとどうなのだろう。


 レジにバーコードをかざすと、レジが応答した。


『298EPです』


 どうやら、円とEPは一対一連動のようだ。

 だとしたら、あとは適当に3000EP分の商品を集めて……。



「いや待て、ぴったり3000って難しくねーか?」



 さっきのマグカップがそうだったように。

 日本の商品は、3000円にはせずに2980円とかにするのが主流だ。

 そっちの方がお得っぽいという話なのだろうが、今の俺には問題だ。


 俺の予算はぴったり3000EP。

 2980円のものだと20EPどっかで埋めないといけない。


「待て待て、ちょっと商品を一から探って計算しないと死ぬぞこれ!?」




 突然始まった算数の授業に、俺は日本のニーキュッパ信仰を初めて恨んだ。


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