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ダンジョンサバイバルinゾンビワールド  作者: score


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第124話 HP計算




 さて、一度の戦闘を終えて、改めて状況を整理しておく。


 この第二階層は、フィールドギミックの色が強い階層だ。

 歩き回るだけでHPが削られていくギミックと、こちらの気配察知の及ばないところから出現する怪物が、ルートを広げるギミックが現在確認できている。

 そして、これ以外のギミックとして、EPを利用した何かがあるのは確定。


 他にもなんらかのギミックが仕込まれていると考えていいだろう。


 対して、今の俺の状況としては、即死頼りで戦う危険性を認識し、即死に頼らなくても一対一なら十分に戦えそうだという実感を得た。

 もちろん、即死が効いてくれた方が楽なのだが、奴の弱点位置の関係上、効かなかった時には反撃を受ける覚悟がいる。

 であるならば、即死ではなく堅実に勝つ方法を組み立てた方が安定するだろう。


「端末くん。俺の現在HPを教えてくれ」


『HP 286/570です。入り口から現在までで26のダメージを受けています。あと1のダメージでHPが半分になります』


「2分ちょっとで26、1分で大体12くらいはダメージを受けるのか」


 先ほどの戦闘でのカスダメもあったかもしれないが、それを抜きに計算するものでもない。

 この階層にいる以上、戦闘は避けられないのだから、戦闘によるダメージ自体も避けられないものと考えた方がいい。


 1分で12ダメージとすると10分で120、1時間で720ダメージ。

 制限時間は3時間とすると、概算で2160ダメージは覚悟しないといけない。

 そして、俺の手持ちのHP回復薬は……1200ダメージ分しか回復できない。



 …………なるほど。



「よし、一度入り口に戻ろう」









『…………暫定対処として、フレッシュゴーレム1体分のEP、600をお支払いします』


「いや、仕方ないじゃん……」


 端末くんのすごく何か言いたげな物言いであるが、仕方ないものは仕方ないじゃないか。

 だって現実的にHP足りなさそうだったんだもの。


 制限時間的にあまりマージンを取ってもという思いはあるが、HP回復薬がなくなる=ゾンビ化という状況だったら、可能な限りはマージンを取っておきたい。

 今の計算だと、全く寄り道せず、被弾もせず、それで2時間以内に階層を突破できたらHPはギリギリ足りるくらいの量だった。


 だったら、敵を一体倒したことで支払ってもらえる(想定)EPで回復薬を買い足しておいた方がいい。

 不意の戦闘でHPをガリガリ削られる可能性や、ギミックの回避に失敗する可能性も考えたらそれがベターだった。


 ただちょっとだけ、これから進もうって雰囲気に反していただけで。


『取得したEPはどうなさいますか?』


「全て回復薬に変換してほしい」


『かしこまりました』


 ここで手に入ったEP600は全てHPの回復薬へと変える。

 これによって、回復薬Ⅲが6本──HP換算だと1800分の回復量だ。

 もともとの分と合わせれば合計3000分のHPになる。

 行き帰りで減った分を回復したので、今だと2700分になっているのだが。


「とはいえ、ストレージがなければこんなに回復薬をじゃらじゃら持ち歩くことはできないんだけどな」


 端末くんが具象化した回復薬を、ストレージへと収めながら俺は一人ごちた。

 現在、ストレージの一枠はほぼ回復アイテム専用に使っている。

 考えてみると、このストレージというスキルも謎だ。


 最初は、自分自身で大量の荷物を運んでいたことが取得条件なのかと思っていたが、どうやら違うらしい。

 というのも、俺がストレージの存在を教えてから、今まで、南小でストレージの再現に成功した人物はいないらしい。


 俺の想定が間違っていたのか、あるいは、何か条件が足りていないのか。

 いずれにせよ、俺のソロ探索を支えている主要因の一つは、ストレージである。


 とはいえ、ストレージもそろそろ頭打ちになっている気がする。

 ここから先を目指すなら、ストレージ(極小)の極小部分を成長させるなんらかのブレイクスルーが必要なんだろう。


 魔の女神様あたりの管轄な気はするので、この辺、魔術スキルを探求していけばどうにかならないかな、と密かに思っていたりする。


 ま、ここを生きて出られたらの話だけど。


「それじゃ、改めて行こうか」


『時間がありません、先へ急ぎましょう』


 俺の唐突な逆行に対して、端末くんがややチクチクと言葉を刺して来た。

 設置型の端末と、耳につけている端末による同時攻撃である。

 俺はもう一度、仕方ないんだと言い訳をして、再度荒れ果てた店内へと戻った。






 サクサクという感触を足裏に感じながら、俺は早歩きと駆け足の中間くらいのスピードで足を進める。

 ステータスが向上しているおかげだろうが、少し飛ばし気味で動いていても体が全く疲れる気配がない。

 もともと疲れ果てていたというのに、少しおかしいくらいだ。

 もしかしたら全力疾走でもずっと行動できる可能性があるが、流石に未知のダンジョンでそれをする勇気はない。


 そうして、先ほどの戦闘があった場所まで戻って来てから、俺は道を眺めた。

 すなわち、もともと続いていた道と、先ほど怪物が開通させた道だ。


「メタ的には怪物が開通させた道が正解な気もするんだけど、そういうのは教えてもらえるのか?」


『申し訳ありませんが、階層突破に関するクリティカルな話題に関しては、お答えいたしかねます』


 まぁ、そういうこともあるだろう。

 俺は二つの道を見比べてみる。


 もともとの道は、特に何の変哲も無い荒れ果てた店内通路である。

 荒れ果てている時点であれだが、特に変わった様子はない。


 対して、怪物がこじ開けた道の方は、少しだけ雰囲気が違う。

 バックヤードっぽいというか、店員用の道っぽいというか。

 そう、あれだ。


「倉庫っぽいな」


 そういう感想が出た。

 棚は棚でも、商品陳列棚という感じではなく、段ボールが無造作に積まれた大雑把な管理用の場所っぽいというか。

 少なくとも、客を招き入れる用の空間には見えない。


「……さて、どう読む?」


 普通に考えると、どうだろう。

 いきなり開通したルートだ。普通のダンジョン管理者なら、この道を行く意味くらいは持たせるものだ。


 考えられるのとしては、こちらが正解のルートか、正規ルートのショートカットか、あるいは何らかのキーアイテムが隠されているか。

 だが、ここのウイルスのことだから、そう思わせてただの罠という可能性も否定できない。


 もしこれがゲームであれば、とりあえず元のルートのマップを埋めてから、改めて新規ルートのマップを埋めに行く、という行動をとるのだが、いかんせんタイムアタック中だ。


 できるだけ、正解だけを選びたい。


「…………虎穴に入らずんば、か」


 俺は覚悟を決めて、開通ルートを選ぶことにした。

 しかし、それとは別の可能性も考慮しておく。

 元々のルートが正規ルートだった場合に備えての、保険を一つかけておこう。


「サモン:スケルトンスカウト」


 俺は分かれ道の前で、おそらく呼び出すことはないのだろうなとずっと思っていた、スケルトンスカウトを召喚する。

 そう思っていた理由は、ずばり俺と技能が丸かぶりしていそうだから、なのだが。

 今回に限っては、劣化俺として働いてくれることを期待している。


「君は、俺の代わりにこの正規ルートを通ってみてくれ。そしてできる限り、罠を看破してその場所に目印を残しながら進んで欲しい」


『カチカチカチカチ』


 スケルトンスカウトは、歯を打ち鳴らして俺の命令を受け取った。

 今回、初めてサモンと別行動を取ってみることにした。


 今まで、サモンで呼び出したモンスターは一戦闘くらいで消えていたが、果たしてお使いとしてどのくらい生存してくれるのだろうか。

 とりあえず、召喚の際に余剰にCPを与えたので、すぐに消えるということはないと思っている。


 あとは、あれだな。


「もし、戦闘になったら無理して戦わなくていい。勝てそうになければ、その場で、死んでくれ。そうすればこちらに伝わる」


『カチカチ』


 サモンしたモンスターが消えた場合は、なんとなくこちらに通じるようになっている。

 それによって反応が消えたら、改めて正規ルートを探るときに警戒ができるので、それはそれでいい。

 実験的な運用だ、今は少しでも時短につながってくれれば御の字だ。


「それじゃ、任せた」


『カチカチカチ』


 歯を打ち鳴らしてスケルトンスカウトが去って行くのを横目に、俺は俺で、横穴のほうに向き直る。

 ゾクゾクと背筋に伝わる怖気は、知らなかったことにする。

 恐怖で立ち止まっていては、どこにも進めない。


「よし、行こう」


『心拍数上昇を感知。深呼吸を提案します』


「……おう」


 端末くんの何気ない一言を受けて、一度深呼吸をしてから、俺は従業員専用エリアらしきところに足を踏み入れるのだった。



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